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【発明の名称】 地下式消火栓
【発明者】 【氏名】笠波 幸夫

【要約】 【課題】火災発生時の放水用等に使用される地下式消火栓に補修用の弁を並設し、かつ全体の高さを低く、コンパクトなものとすること。

【解決手段】上流側開口部には配管等への接続部が設けられ、下流側には消火給水用開口部を備えた弁箱を有する地下式消火栓において、前記弁箱の内部に、上流側流路に連通する開口部を開閉する回転式の弁体と、下流側の消火給水用開口部を開閉する回転式の弁体とを互いに独立回転可能に並設し、一方の弁体を支持する回転軸を中空に形成して、その内部に他方の弁体を支持する回転軸を挿通することにより、上記二つの弁体の回転軸を同心に配置し、かつ、上記二つの弁体を互いに独立に開閉することのできる操作手段を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上流側開口部には配管等への接続部が設けられ、下流側には消火給水用開口部を備えた弁箱を有する地下式消火栓において、前記弁箱の内部に、上流側流路に連通する開口部を開閉する回転式の弁体と、下流側の消火給水用開口部を開閉する回転式の弁体とを互いに独立回転可能に並設し、一方の弁体を支持する回転軸を中空に形成して、その内部に他方の弁体を支持する回転軸を挿通することにより、上記二つの弁体の回転軸を同心に配置し、かつ、上記二つの弁体を互いに独立に開閉することのできる操作手段を設けたことを特徴とする地下式消火栓。
【請求項2】 弁箱の上流側流路と弁箱内部とを連通するバイパス流路を設けると共に、当該バイパス流路を開閉する開閉操作手段を設けた請求項1に記載の地下式消火栓。
【請求項3】 上流側の弁体の操作手段として、該弁体の回転軸に取り付けられたレバーが設けられ、下流側の弁体の操作手段として、外部に設けられた回転軸部をハンドルで回転させることによりウオームギヤ装置を介して回転軸を回転させる回転装置が設けられている請求項1又は2に記載の地下式消火栓。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消火水利、給水、配水管路における充水時の管内空気の排出等に利用される地下式消火栓の構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】火災が発生した時の消火等に利用される消火栓が都市の道路の交差点や分岐点の要所要所に設置されている。この種の消火栓としては、交通等の邪魔にならないように地中に埋設した地下式消火栓が多い。
【0003】図12、図13は従来の地下式消火栓を例示するもので、この消火栓100は、弁箱101に弁棒を取り付け、該弁棒に弁体103を取り付けている。弁箱101の底部には管路に連通する開口部が設けられ、この部分に弁座が取り付けられている。上記弁棒はウオームギヤ装置Wを介してキャップ105と連結されており、該キャップにTハンドルを取り付けて回すことにより、ボール状の弁体を回転させ、上記開口部を開閉するようになっている。
【0004】一般に消火栓は、設置後にバルブに種々の不具合が生じる。この不具合のうち、最も多いのが、全閉位置において弁座部より水漏れするという不具合である。この水漏れは、全閉時におけるゴミ等の異物のかみ込みによる弁座(主にゴム等の弾性体で作られているものが多い)の損傷や摩耗、経年変化によるシール性能の低下等が原因となっていることが多く、弁体(主に金属等で作られている)の不具合はほとんど生じない。したがって、上記不具合が生じた時は、弁座を取り換えさえすれば、弁体は再使用できることが多い。
【0005】上記従来の消火栓100は、水漏れ等の故障やトラブルが発生した時に、弁座等の部材を取り外して容易に修理できるように、その上流側(図の下側)へ補修用の弁装置110を介装して設置されるのが一般的である。この補修用弁装置110は、ボール状の弁体と弁棒(図示を省略)に操作レバー111等が連結されており、操作レバー111を90度回転させることにより、補修弁装置110を開閉することができる。なお、この補修弁装置110は、通常開いた状態となっており、消火栓100の修理を行う場合は、これを閉じることによって、水を噴出させることなく、消火栓の弁座等の部品を取外しや修理が行えるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記消火栓を地中に設置する場合は、補修用弁装置をその下側に併設する必要があるので、全体的に消火栓と補修用弁装置を合わせた背の高いものとなり、重量も重くなる。このため、地中の掘削量が多くなり、施工や部材の費用が高価となるほか、作業性が悪いという問題点があった。最近地下式消火栓の埋設深さを浅くすることに対する要望が強くなっているが、従来のように、消火栓と補修用弁装置とを上下に重ね合わせて設置する方式では、この要望に応えることができなかった。
【0007】これを改良するものとして、消火栓本体を上側に、補修用弁装置を下側に一体に設けた複合式の弁装置が開発されている。このものは消火栓と補修用弁装置を別々に製作して並設するよりは高さが低くなるが、二つの弁が上下に並設されているので、満足できるほど高さを低くすることはできていない。そこで、本発明は、補修用弁装置を備えた地下式消火栓を、より高さの低いコンパクトなものとすることを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用した。すなわち、本発明にかかる地下式消火栓は、上流側開口部には配管等への接続部が設けられ、下流側には消火給水用開口部を備えた弁箱を有する地下式消火栓において、前記弁箱の内部に、上流側流路に連通する開口部を開閉する回転式の弁体と、下流側の消火給水用開口部を開閉する回転式の弁体とを互いに独立回転可能に並設し、一方の弁体を支持する回転軸を中空に形成して、その内部に他方の弁体を支持する回転軸を挿通することにより、上記二つの弁体の回転軸を同心に配置し、かつ、上記二つの弁体を互いに独立に開閉することのできる操作手段を設けたことを特徴としている。
【0009】この消火栓は、消火栓自体の弁装置(主弁)の他に、補修用の弁装置(副弁)が一体に設けられているので、設置する時の施工が簡単である。通常の使用状態においては、上流側の副弁が開き、下流側の主弁は閉じた状態としておく。火災等が発生した場合には、給水口にホースを繋いで、消火栓の主弁を開くことにより放水を開始することができる。また、消火栓の修理等が必要になった時は、上流側の副弁を閉じて上流側流路からの水の流入を遮断することにより、水道配管は通常通りの通水状態のままで、主弁の補修を容易に行うことができる。
【0010】なお、補修弁として機能する上流側の副弁を開く時は、弁体に配管側から水圧がかかっているため該弁体の開操作が困難である。これを改良するには、上流側流路と弁室とを連通する開閉可能なバイパス流路を設けておくのが好ましい。上流側の弁の開操作に先立って、このバイパス流路を開けば、弁室内と上流側流路とが短絡して両側の水圧が等しくなるので、弁の開操作が容易となる。このバイパス流路を開閉する弁の操作を、上記上流側の副弁を開閉する操作手段を利用して開閉するように構成すると、操作上便利である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に表された本発明の実施の形態に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
【0012】図1は、本発明にかかる消火栓を例示するもので、この地下式消火栓1は、その弁箱2の下部に水道配管に接続するための接続部3が設けられ、上端部には放水用のホースが繋がれる給水口4が設けられている。弁箱2の内部には弁室5が形成されていて、この弁室5の底部と天井部にそれぞれ上流側開口部7と下流側開口部8が設けられている。上流側開口部7は、消火栓よりも上流側の流路と弁室5とを連通させる流通路であり、下流側開口部8は弁室5と給水口4とを連通させる流通路である。これら両開口部には、それぞれ金属あるいは金属に弾性体を取り付けた弁座7a,8aが取り付けられている。図中の2aは弁座押え、2bは蓋、2cは回り止めナット、6は給水口の差し金具、9は押し輪である。上記弁座8aは、蓋2bにねじ込まれた弁座押え2aの先端部に設けた溝部に嵌り込んでいる。弁座押え2aの外周部はねじ切りされており、上端面には回転用の有底穴が4個開けてある。弁座押え2aには、該弁座押えのねじ込み深さを位置決めする回り止めナット2cが螺着されており、回り止めナット2cの外周部には回転用の角溝が4箇所に設けられている。
【0013】弁室5内には、上流側開口部7を開閉する副弁V’の弁体10と、下流側開口部8を開閉する主弁Vの弁体11とが設けられている。これら弁体10,11は、いずれも凹状裏面を有する球分状の弁体であり、それぞれの回転軸15,16によって回転可能に支持され、前記開口部にそれぞれ設けられている弁座7a,8aと協働して開口部7,8を開閉するようになっている。
【0014】主弁Vの弁体11を支持する軸16は、軸心の等しい二つの軸部16aと16bに2分されており、基部側の軸部16aの先端部には所定深さの中空部16cが形成され、他方の軸部16bは全体が筒状に形成されている。基部側の軸部16aの外側の端部には、外周部に歯が切られた歯車部16dが設けられている。また、この歯車部16dの内側にはストッパー用のピン17が直径方向に挿通されており、さらにその手前側にはOリングのシール部18が設けられている。上記歯車部16dには、ウオーム19が噛合しており、該ウオームの軸19aにはキャップ19bが取り付けられている。上記歯車部16d、ウオーム19等は、軸16を介して弁体11を回転させる回転装置であるウオームギヤ装置Wを構成する。
【0015】上記基部側軸部16aは、弁箱2の一方の軸受け部20によって回転自在に支承され、前記ストッパー用のピン17の突出両端部は、ギヤケース20’に設けた拡径部20a内に嵌合している。軸16を構成する反対側の軸部16bは、弁箱2に取り付けた軸受け部材22によって回転自在に支承されている。これら軸16を構成する二つの軸部16a,16bの内側端部には、弁体11の左右両側に一体に設けられた取付け部11a,11bがそれぞれスプラインあるいはキー嵌合により取り付けられている。したがって、軸16を回せば弁体11が回転して下流側の開口部8を開閉する。
【0016】一方、上流側に設けられている副弁V’の弁体10を支承する軸15は、前記軸16の場合と同様に、基部側の軸部15aと反対側の軸部15bとに2分されていて、基部側の軸部15aは前記軸16の軸部16bの中空部と軸受け部材22の中空部に挿通されて支承されている。この軸部15aの外側端部にはキャップ25が固着されている。キャップ25にはレバー30が取り付けられると共に、位置決めロック部35が設けられている。位置決めロック部35には、通孔35aが設けられ、該通孔内にボール34を保持するボール押え36、該ボール押えを押圧するコイルバネ37及び該コイルバネの端部を押える栓体38が設けられている。一方、弁箱2に取り付けた蓋部材39の外周部には、複数の位置決め用の凹部39a,…が所定の間隔で設けられており、前記ボール34がこのいずれかの凹部に嵌り込むことにより、副弁V’の弁体10を所定の開度位置で位置決めするようになっている。
【0017】軸15を構成する反対側の軸部15bは、前記軸部16aの中空部16cに回転自在に嵌合して支承されている。この軸部15bの内側端部と、基部側の軸部15aの内側端部は、副弁V’の弁体10に一体に設けられた左右の取付け部10a,10bにそれぞれ嵌合し、ピンによって固定されている。したがって、軸15を回せば弁体10が回転して上流側の開口部7を開閉する。なお、主弁Vの弁体11と副弁V’の弁体10とは、共に凹状内面を有する球分状であるが、副弁V’の弁体10の方が主弁Vの弁体11よりも外径が小さく、回転時に該弁体11の内側に嵌り込んで、両弁体が互いに干渉しないようになっている。
【0018】この消火栓1は、常時は図2に示すように、上流側の副弁V’が開き、消火栓の主弁Vが閉じた状態で設置されている。火災等が発生して放水を行う時は、キャップ19bにTハンドルを取り付けて開方向に回す。すると、軸16の回転装置であるウオームギヤ装置Wを介して弁軸16が弁体11と共に回転するので、弁体11が弁座8aから外れ、消火栓弁が開いて、給水口に接続したホースから放水することができるのである。図3はこの弁体11が90度回転した開状態を表す。
【0019】一方、消火栓の主弁Vに水漏れ等のトラブルが生じて補修を行う場合は、レバー30を閉方向に90度回して上流側の副弁V’を閉じる。図4はこの副弁V’と消火栓の主弁Vが共に閉じた状態を表す。上記副弁V’を閉じると、上流側から弁室5に至る流路が遮断され、水道配管の水が弁室に流入しなくなるので、主弁Vの各部材を自由に取り外すことができる。このため、補修作業を容易に行うことができるのである。
【0020】上記補修作業の手順について具体的に述べれば、まず、副弁V’の弁体10を全閉とし、消火栓への水道水の流入を遮断する。水道本管は通常通りの通水状態のままでよい。この状態で蓋2bを取り外せば、弁内部の状況の点検、観察が可能である。弁座8aのみを点検、交換するときは、主弁Vの弁体11を全閉にする。弁座押え2a端面の回転用の有底穴に丸棒等を挿入して回転させ、ねじ込みをゆるめて取り外すと、弁体用弁座8aがこれに嵌り込んでいるので、目視等で状態を判断することができる。そこで、異物が付着しているようなら、これを取り除き、必要なら旧品を取り外して新品と交換する。
【0021】弁座押え2aの取り付けは、上記取り外しと逆の手順で行う。弁座押え2aのねじ込み位置が決まると、回り止めナット2cを蓋2bの上面までねじ回転し、固定させる。副弁V’の弁体10を少し開くと、消火栓へ水道水が流入してくるので、全閉の主弁Vの弁体11から弁座漏れがないことを確認する。漏れやその他の異常がなければ、副弁V’の弁体10を全開位置等、元の通水状態に復帰させて作業を終了する。なお、本発明の消火栓では、通常使用時は下流側の主弁の弁体11が開閉し、上流側の副弁の弁体10は全開位置にある。したがって、主弁の弁体11の弁座8aのほうが損傷、摩耗することが多い。
【0022】次に、図8乃至図11は上記と異なる実施の形態を表すもので、この形態では、上記構成に加えて、上流側の流路と弁室とを結ぶバイパス流路Bが設けられている。他の部分は概ね上記実施形態と同様であり、同じ部分には同じ記号を付している。この消火栓1’の弁箱2’には、上流側流路に臨む位置に、バイパス流路を兼ねた中空部50が設けられている。この中空部の先端部は細孔50aによって上流側流路と連通しており、該中空部の側面部には弁室5と連通する細孔50bが設けられている。
【0023】上記中空部50には、弁金具55が嵌合しており、この弁金具55の先端面55aが弁座となっている。そして、弁金具55の芯部に設けた通孔55bに弁軸56が軸方向に摺動自在に挿通されている。54はシール材である。弁金具55の通孔55bの内側端部付近は径が若干大きい拡径穴55cとなっており、この部分に、前記中空部の細孔50bに連通する細孔55dが設けられている。一方、弁軸56の内側端部には、通孔55bの開口部を開閉する弁体57が取り付けられ、弁軸56の外側端部には筒状のバネ押え58と軸端部材59が取り付けられている。このバネ押え58と弁金具55の外側端面との間に弁体57を閉方向に付勢するコイルバネ60が設けられている。
【0024】弁箱2’の側端部にあって弁軸15の端部に取り付けられるキャップ65には、軸66によってレバー70が上下に回動自在に取り付けられると共に、該レバー70を直立状態に付勢するスプリング73が設けられている。レバー70の下側端部はほぼ直角な屈曲部70aとなっており、その丸みを帯びた先端部70bが前記弁軸56の軸端部材59に臨んでいる。キャップ65には傾斜内面を有する偏心穴65aが形成されたガイド部材67が一体に設けられ、この偏心穴65aに前記レバー70が挿通されている。このため、レバーを偏心穴65a内で所定角度だけ外側に倒すことができる。レバー70が副弁V’を閉じた閉位置にある状態において、該レバー70を外側へ倒すと、その先端部70bが前記弁軸56の軸端部材59に当接して該弁軸56を図8の左方向に押し込むので、弁体57が弁座から離れて中空部50と上流側流路7とが連通する。
【0025】上記消火栓1,1’において、副弁V’を閉じた状態では、弁室5内の水圧が殆ど0となり、上流側の水圧が一方的に弁体10に作用するので、該弁体10が重くなり、レバー70を開方向に回すには大きな力が必要となる。しかしながら、上記のように、上流側流路と弁室5との間に比較的小さな力で開くことのできる開閉自在なバイパス流路Bを設けておけば、副弁V’を開操作する前に、レバー70を外側へ倒して該バイパス流路の弁体57を開き、上流側流路と弁室5とを細孔55b、拡径部55c、細孔55dを介して連通させることによって、上流側流路と弁室内の水圧を等しくすることができる。このため、レバー70を軸66回りに回して副弁V’を開く操作を比較的弱い力で楽に行うことができるという利点がある。
【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の地下式消火栓は、本来の消火栓の弁である主弁の他に補修用の副弁が一体に設けられているので、設置の際の施工が簡単である。また、主弁と副弁がそれぞれ単独でシール(止水)できるから、シール寿命(開閉回数)は概略2台分となり、長寿命が期待できる。消火栓の主弁にトラブルが生じた時は、副弁を閉じることにより、水道配管の水の流通を止めなくても、上流側からの水の流入を遮断することができるので、主弁の各部材の取外しや補修を簡単に行うことができる。しかも、本来の消火栓の主弁と補修用の副弁とを軸心を等しくする一対の回転軸に取り付けて共通の弁室内に設けたので、全体の高さを低くコンパクトな構造とすることができ、埋設深さの浅い場所にも設置することが可能となった。。
【出願人】 【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
【出願日】 平成11年5月19日(1999.5.19)
【代理人】 【識別番号】100083611
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 弘志
【公開番号】 特開2000−329253(P2000−329253A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願平11−138491