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【発明の名称】 温度膨張弁
【発明者】 【氏名】福田 栄二

【氏名】渡辺 和彦

【要約】 【課題】カーエアコン等に装備される温度膨張弁のハンチング現象の防止を図る。

【解決手段】温度膨張弁の弁本体50は、弁室54内に弁体120を有し、蒸発器へ向かう高圧冷媒の流量を制御する。蒸発器から戻る冷媒は、通路63内を通過する際に感温・圧力伝達部材100に接触し、温度を伝達するとともに、冷媒圧力をパワーエレメント部80側に伝える。パイプ状の感温・圧力伝達部材は、パワーエレメント部80のダイアフラム82の位置に応じて弁体120を付勢して高圧冷媒の流量を規制する。感温・圧力伝達部材100内には、樹脂製チューブ140が挿入され、チューブ140内に熱バラスト材40が充填される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 蒸発器から圧縮器へ向う冷媒通路を内部に有し、その通路内に温度感知機能を有するその内部に中空部の形成された感温・圧力伝達部材を内蔵した温度膨張弁において、その感温・圧力伝達部材の中空部の先端をこれを駆動するパワーエレメント部を構成するダイアフラムの中央開口部に固着し、上記ダイアフラムによって形成されるパワーエレメント部内の上部圧力室と上記中空部とを連通させて作動流体の封入された密閉空間を形成すると共に、上記中空部に収容された熱バラスト材と上記中空部の内壁との間に時定数遅延材を具備することを特徴とする温度膨張弁。
【請求項2】 減圧すべき液相冷媒の通路及びエバポレータからコンプレッサへ向う気相冷媒の通路とを有する弁本体と、弁本体に装着されるパワーエレメント部と、液相冷媒の通路に設けられたオリフィスを流れる冷媒流量を調整する弁体と、パワーエレメント部を構成するダイアフラムと、ダイアフラムに連結される感温・圧力伝達部材と、感温・圧力伝達部材と弁体を連結するシャフトとを備え、上記パワーエレメント部の感温作用により上記弁体を駆動する膨張弁であって、上記感温・圧力伝達部材は中空のパイプ形状をなし、その中空部の先端が上記ダイアフラムの中央部の円孔に取り付けられる上記中空部と上記パワーエレメントのダイアフラムの上部空間とで密閉空間を形成すると共に、上記感温・圧力伝達部材の中空部に収容された熱バラスト材と上記中空部の内壁との間に時定数遅延材を具備したことを特徴とする温度膨張弁。
【請求項3】 上記時定数遅延材は、上記中空部の上記熱バラスト材の収容されている範囲に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の温度膨張弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷凍サイクルに使用する温度膨張弁に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、冷凍サイクルにおいて蒸発器に供給する冷媒流量の制御と冷媒の減圧の目的に、図2に示す温度膨張弁が使用されている。図2において、角柱状の弁本体510には、オリフィス516が形成されている第1の冷媒通路514と、第2の冷媒通路519と、が相互に独立して形成されている。第1の冷媒通路514の一端は蒸発器515の入口に連通され、蒸発器515の出口は第2の冷媒通路519、圧縮器511、凝縮器512、レシーバ513を介して第1の冷媒通路514の他端に連結されている。第1の冷媒通路514に連通する弁室524にはオリフィス516に接離する球形の弁体518を付勢するバイアスバネである付勢手段517が設けられている。なお、弁室524はプラグ525で封止され、弁体518は支持部526を介して付勢される。弁本体510には第2の冷媒通路519に隣接してダイアフラム522を有したパワーエレメント520が固定されている。ダイアフラム522で仕切られたパワーエレメント520の上方の室520aは気密にされており、温度対応作動流体が封入されている。
【0003】パワーエレメント520の上方の室520aから延出している小管521は上方の室520aからの脱気及び上方の室520aへの上記温度対応作動流体の注入に使用された後に端部が密封されている。パワーエレメント520の下方の室520bでは、弁本体510の中を弁体518から第2の冷媒通路519を貫通して延びる感温・伝達部材たる弁体駆動部材523の延出端が配置されダイアフラム522に当接している。弁体駆動部材523は熱容量の大きな材料で形成されていて、第2の冷媒通路519を流れる蒸発器515の出口からの冷媒蒸気の温度をパワーエレメント520の上方の室520a中の温度対応作動流体に伝達し、この温度に対応した圧力の作動ガスを発生させる。下方の室520bは弁本体510の中で弁体駆動部材523の周囲の隙間を介して第2の冷媒通路519に連通されている。
【0004】従ってパワーエレメント520のダイアフラム522は上方の室520a中の温度対応作動流体の作動ガスの圧力と下方の室520b中の蒸発器515の出口における冷媒蒸気の圧力との差にしたがって弁体518のための付勢手段517の付勢力の影響の下で弁体駆動部材523によりオリフィス516に対する弁体518の弁開放度(即ち、蒸発器の入口への液体状の冷媒の流入量)を調整する。
【0005】かかる従来の温度膨張弁において、パワーエレメント520が外部雰囲気に露出されていて、上方の室520a中の温度対応作動流体が弁体駆動部材423によって伝達される蒸発器出口の冷媒の温度ばかりでなく外部雰囲気特にエンジンルームの温度の影響も受ける。さらには蒸発器の出口における冷媒の温度に敏感に反応し過ぎて頻繁に弁体518の開閉を繰り返す所謂ハンチング現象を生起し易いこともある。このハンチングの要因としては蒸発器の構造、冷凍サイクルの配管の方法、温度膨張弁の使用方法また熱負荷とのバランス等がある。
【0006】上記ハンチング現象を防止する手段として熱バラスト材を用いることが従来採用されている。図3は熱バラスト材を用いた温度膨張弁の断面図であり、図2の従来の温度膨張弁とはダイアフラムと感温・圧力伝達部材たる弁体駆動部材の構成が大きく異なっており、それ以外の構成は基本的に同じである。図3において、温度膨張弁は角柱状の弁本体50を有し、弁本体50には、凝縮器512を経てレシーバタンク513から流入する液相の冷媒が第1の通路62に導入されるポート52と、第1の通路62からの冷媒を蒸発器515へ送り出すポート58と、蒸発器から戻る気相の冷媒が通過する第2の通路63の入口ポート60と、冷媒を圧縮器511側へ送り出す出口ポート64が設けられる。
【0007】液相の冷媒が導入されるポート52は、弁本体50の中心軸線上に設けられる弁室54に連通し、弁室54はナット状のプラグ130で封止される。弁室54はオリフィス78を介して冷媒を蒸発器515へ送り出すポート58に連通する。オリフィス78を貫通する小径のシャフト114の先端には球形の弁体120が設置され、弁体120は支持部材122により支持され、支持部材122はバイアスバネ124により弁体120をオリフィス78に向けて付勢する。弁体120がオリフィス78との間に形成される間隔を変化することによって、冷媒の流路面積が調節される。液相の冷媒は、オリフィス78を通過する間に膨張し、第1の通路62を通ってポート58から蒸発器側へ送り出される。蒸発器から戻る気相冷媒は、ポート60から導入され、第2の通路63を通ってポート64から圧縮器側へ送り出される。
【0008】弁本体50は、上端部から軸線上に第1の穴70が形成され、第1の穴にパワーエレメント部80がネジ部等を利用してとりつけられる。パワーエレメント部80は、感温部を構成するハウジング81及び91と、これらのハウジングに挾み込まれると共に、これらと溶接により固着されたダイアフラム82を有し、ダイアフラム82の中央部の円孔に感温・圧力伝達部材100の上端部が、ダイアフラム支持部材82’と共に全周溶接にてとりつけられる。なお、ダイアフラム支持部材82’はハウジング81に支持される。
【0009】ハウジング81及び91内には、通路62内に流れている冷媒と同じか又は性質の似ている気液二相の冷媒が温度対応作動流体として封入されていて、封入後は小管21により封止される。なお、小管21の代わりにハウジング91に溶接される栓体を用いてもよい。ハウジング81及び91内は、ダイアフラム82で仕切られ上部室83と下部室85が形成される。
【0010】感温・圧力伝達部材100は、第2の通路63中に露出される中空のパイプ状の部材で構成され、その内部に熱バラスト材40が収容されている。感温・圧力伝達部材100の頂部は上部室83に連通し、上部室83と感温・圧力伝達部材100の中空部84とで圧力空間83aを構成する。パイプ状の感温・圧力伝達部材100は弁本体50の軸線上に形成された第2の穴72を貫通し、第3の穴74に挿入される。第2の穴72と感温・圧力伝達部材100との間には隙間が形成され、この隙間を通って通路63内の冷媒がダイアフラムの下部室85に導入される。
【0011】感温・圧力伝達部材100は、第3の穴74に対して摺動自在に挿入され、この先端部はシャフト114の一端に連結される。シャフト114は弁本体50に形成された第4の穴76に摺動自在に挿入され、その他端が弁体120に連結される。
【0012】かかる構成において、時定数遅延材として機能する熱バラスト材は次の如く作用する。即ち、熱バラスト材40として、例えば粒状活性炭を用いた場合には、温度対応作動流体と熱バラスト材40との組み合わせは、吸着平衡型でありかなりの温度範囲で圧力を温度の一次式で近似でき、しかもその一次式の係数は熱バラスト材40として封入した粒状活性炭の量により自由に設定できるので、温度膨張弁の使用者が温度膨張弁の特性を自由に設定できる。
【0013】したがって、吸着平衡型の圧力−温度の平衡状態の設定には蒸発器515の出口からの冷媒蒸気の温度の上昇時及び下降時のいずれの場合にも比較的時間がかかり、つまり時定数を大きくし、上記ハンチング現象の要因である外乱の影響による温度膨張弁の過敏な動作を抑制することができる空調器の性能を安定させて空調器の動作効率を向上させる。
【0014】さらに熱バラスト材として、例えばアルミナ・シリカ焼結体を用いた場合には、温度対応作動流体と熱バラスト材40との組み合わせは、気液平衡型である。この場合には、蒸発器515の出口からの冷媒蒸気の温度の上昇時には熱バラスト材40の多数の微小孔中に入り込んでいるパワーエレメント20の一方の室20a中の温度対応作動流体の液相から気相への変化(ガス化)が遅らされ、つまり時定数を大きくし、また上記温度の下降時には上部室83及び熱バラスト材40以外の空間の作動ガスがこれらの壁面で気相から液相へ急速に変化(液化)するのを妨げない、つまり時定数を小さくするのである。即ち、前者の場合には蒸発器の入口に流入する冷媒の流量を序々にしか増大させず、後者の場合には蒸発器の入口に流入する冷媒の流量を急速に低下させるのである。
【0015】ここで、温度が下降して急に弁を絞り、蒸発器への冷媒供給量が減少し、その結果、温度が上昇しても弁は急速に開かないので蒸発器への冷媒供給量は急激に増加することはないのである。このようにして冷凍サイクルにハンチングが生ずるのを防止できるようにしている。蒸気の熱バラスト材を用いた温度膨張弁のハンチング抑制特性は有効であることから広く採用されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなハンチング現象は、個々の冷凍サイクルの作動特性によって異なり、特に蒸発器から送出される低圧冷媒に細かい温度変化が生じると冷媒に生じる小さな脈動がそのまま弁体の開閉動作に伝わってしまい、弁動作が不安定となり、熱バラスト材を用いてもハンチング現象が抑制できないことが生じる場合がある。
【0017】そこで本発明は、従来の温度膨張弁を変更することなくそのまま用いて従来の動作を維持しつつ、蒸発器から送出される低圧冷媒に細かい温度変化があっても、ハンチング現象を防止して、安定した動作によって、蒸発器に送出される高圧冷媒の量を制御できる温度膨張弁を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の温度膨張弁は、蒸発器から圧縮器へ向う冷媒通路を内部に有し、その通路内に温度感知機能を有するその内部に中空部の形成された感温・圧力伝達部材を内蔵した温度膨張弁において、その感温・圧力伝達部材の中空部の先端をこれを駆動するパワーエレメント部を構成するダイアフラムの中央開口部に固着し、上記ダイアフラムによって形成されるパワーエレメント部内の上部圧力室と上記中空部とを連通させて作動流体の封入された密閉空間を形成すると共に、上記中空部に収容された熱バラスト材と上記中空部の内壁との間に時定数遅延材を具備することを特徴としている。
【0019】また本発明は、減圧すべき液相冷媒の通路及びエバポレータからコンプレッサへ向う気相冷媒の通路とを有する弁本体と、弁本体に装着されるパワーエレメント部と、液相冷媒の通路に設けられたオリフィスを流れる冷媒流量を調整する弁体と、パワーエレメント部を構成するダイアフラムと、ダイアフラムに連結される感温・圧力伝達部材と、感温・圧力伝達部材と弁体を連結するシャフトとを備え、上記パワーエレメント部の感温作用により上記弁体を駆動する膨張弁であって、上記感温・圧力伝達部材は中空のパイプ形状をなし、その中空部の先端が上記ダイアフラムの中央部の円孔に取り付けられる上記中空部と上記パワーエレメントのダイアフラムの上部空間とで密閉空間を形成すると共に、上記感温・圧力伝達部材の中空部に収容された熱バラスト材と上記中空部の内壁との間に時定数遅延材を具備したことを特徴としている。
【0020】このような構成を備えた本発明の温度膨張弁は、感温・圧力伝達部材の中空部の内壁とその中空部に収容された熱バラスト材との間に時定数遅延材を設けたので、感温・圧力伝達部材から熱バラスト材への温度伝達が遅れ、熱バラスト材のみを用いるよりも一層時定数を大きくすることができる。この結果、感温・圧力伝達部材が温度上昇したときは温度対応作動流体の液相から気相への相変化に一層の時間遅れを生じさせることとなり、感温・圧力伝達部材が温度低下したときは、上記作動流体の気相から液相への急速な変化は妨げられることはないのであり、温度膨張弁が開弁方向に動くときは一層の時間を要し、逆に閉弁方向に動くときは、急速であることから温度膨張弁のハンチング現象の防止を一層有効に実施できるのである。
【0021】また、本発明は時定数遅延材を用いるのみであるので従来の温度膨張弁に変更を加えることなくハンチング現象を抑制することが可能となるので、組立てコストを低くすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下本発明の温度膨張弁の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る温度膨張弁の一実施形態を示す縦断面図であり、本実施の形態においては、従来の温度膨張弁とは感温・圧力伝達部材の構成が異なるのみであるから、従来の温度膨張弁と同一の機能を奏する物については同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】図1において、140は例えば樹脂材又はステンレス等からなる時定数遅延材であり、図ではポリアセタールからなる樹脂製のチューブを示しており、熱バラスト材40と感温・圧力伝達部材100の中空部の内壁との間に設けられている。したがって、感温・圧力伝達部材100の中空部にはバラスト材40と樹脂製のチューブ140が具備されていることとなる。本実施形態では、樹脂製のチューブ140は中空部84に充填されている熱バラスト材40の存在範囲まで設けられているが、ハンチング現象の程度によって樹脂製のチューブを設ける範囲をバラスト材40の一部の範囲としてもよいのは勿論である。
【0024】而して、本実施形態においては、熱バラスト材40として粒状活性炭を充填し、この粒状活性炭充填の感温・圧力伝達部材100とダイアフラム82を上述のように溶接して、パワーエレメント部80と感温・圧力伝達部材100の一体空間83aを作る。この空間83aを形成する蓋91には、温度対応作動流体の封入のための小管(封入キャピラリー)21を取付けておき、この小管21の一端(図では封止になっている)から脱気し、この脱気後に上記作動流体を封入し、小管21の一端を封止する。なお、小管21の代わりに従来と同様栓体を用いて封入してもよいのは勿論である。
【0025】このように構成された上記空間83a内の圧力は、感温・圧力伝達部材100がさらされる第2の通路63の冷媒ガスの関数となり、かなりの温度範囲で圧力が温度の一次式で近似できることになる。しかも、蒸発器の出口からの冷媒上記の温度の上昇時及び下降時のいずれの場合にも樹脂製チューブ140の存在により、熱バラスト材への熱伝達が遅延することにより時定数を大きくすることができ、これが外乱の影響による温度膨張弁のハンチング動作をさらに抑制することとなる。
【0026】また、熱バラスト材に例えばアルミナ・シリカ焼結体を用いた場合にも、蒸発器の出口からの冷媒上記の温度の上昇時(加熱殿上昇時)には、樹脂材の存在により熱バラスト材への熱伝達が遅延することになり、熱バラスト材40の多数の微小孔中に入り込んでいるパワーエレメント部80の上部室83中の温度対応作動流体の液相から気相への変化(ガス化)が遅らされ、また上記温度の下降時(加熱度の下降時)には上部室83及び熱バラスト材40以外の空間の作動ガスがこれらの壁面で気相から液相へ急速に変化(液化)するのを妨げない。即ち、前者の場合には蒸発器の入口に流入する冷媒の流量を熱バラスト材のみの場合に比較して、一層序々にしか増大させず、後者の場合には蒸発器の入口に流入する冷媒の流量を急速に低下させることができる。
【0027】以上述べた本発明の実施形態においては、時定数遅延材の材質及び厚さを適宜選定することにより時定数を選定することができるのは勿論である。
【0028】
【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明の温度膨張弁は、感温・圧力伝達部材の中空部に樹脂を熱バラスト材を用いてハンチング現象を抑制する構成としたので、時定数を大きくすることができ、ハンチング現象をより効果的に抑制することができる。また、本発明の温度膨張弁は従来の温度膨張弁を大幅に変更することがないので、組立工程を容易にし、製造コストを低減した信頼性の高いものとすることができる。
【出願人】 【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
【出願日】 平成11年5月11日(1999.5.11)
【代理人】 【識別番号】100095913
【弁理士】
【氏名又は名称】沼形 義彰 (外3名)
【公開番号】 特開2000−320706(P2000−320706A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−130312