トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 切換弁
【発明者】 【氏名】橋田 浩一

【要約】 【課題】構造が簡素で安価に作れ、しかも広範な状況下で作動音が効果的に低減される作動流体用の流路開閉のための切換弁を提供する。

【解決手段】ボディ10内の流路中に弁座3を通過した流体の流れ方向をほぼ180°反転させて出口ポート2に向かわせる流路反転部8を含ませ、その流路反転部を上流側8aと下流側8bに区画する区画手段9と、絞り12を設け、区画手段9に対向して加わる流体に絞り12で圧力差を生じさせ、この圧力差による閉弁方向の力を弁体4に加えて弁体4と弁座3間の隙間が微小量に制御されるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入口ポートから出口ポートに至る流路を備えたボディ、前記流路の途中に設ける弁座と弁体及び弁体の駆動手段を有し、前記弁体を位置固定の前記弁座よりも出口ポートに近い流路の下流側に配置し、この弁体を弁座に接離させて流路を開閉する切換弁において、前記弁座から出口ポートに至る間の流路に、弁座を通過した流体の流れ方向をほぼ180°反転させる流路反転部を含ませ、この流路反転部内に、流路反転部を弁座に近い上流側と出口ポートに近い下流側とに区画し、上流側と下流側の流体圧を有効面積の等しい対向受圧面で各々受ける区画手段を設け、さらに、その区画手段によって区画された流路反転部の上流側と下流側を連通させる絞り通路を設け、前記区画手段が流路中の作動流体から受ける閉弁方向の力を前記弁体に伝えるようにしたことを特徴とする切換弁。
【請求項2】 前記ボディの内部に円筒状突出部を形成してその円筒状突出部の先端に前記弁座を、外周に前記流路反転部を各々設け、前記区画手段を前記円筒状突出部の外側に嵌まる形状にしてこの区画手段の内周面と円筒状突出部の外周面との間及び区画手段の外周面とボディの内面との間に前記絞り通路となる隙間を各々形成した請求項1記載の切換弁。
【請求項3】 弁体の駆動手段が電磁石であり、この電磁石の可動子を前記区画手段として兼用した請求項1又は2記載の切換弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両用アンチロックブレーキシステムの液圧制御装置用電磁弁として特に好適な、作動音低減策を講じた作動流体用切換弁に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用アンチロック液圧制御装置では、快適性の観点から近年、電磁弁の作動に伴う作動音が問題にされるようになり、様々な対策が提案されている。
【0003】その策のひとつに、特開平11−72176号公報に開示されている方法がある。その方法では、弁体を弁座(開口部)の上流側に置き、作動流体が弁体と弁座との間の隙間を通過することによって弁体に開弁方向の力を働かせる共に、弁体と弁座間の隙間を所定の微小量に維持する弁体維持機構を備えさせ、その機構で作動中の隙間を微小量に保つことにより作動音を低減させる。
【0004】また、他の策として、上記公報に従来技術として述べられている方法もある。この方法は、流体が流れることによって弁体に働く吸引作用を利用するものである。即ち、弁座の座面(シート面)と弁体間の隙間を流れる流速が速いため弁体にシート面に向かう力が発生する。この力で弁体とシート面との間が微小に開いた絞り状態を維持して弁体の急激な開きによる流体の脈動等を抑制する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した2つの方法のうち、後者は、特開平11−72176号公報にも指摘されているように、流速の特に速くなる状況でないと閉弁方向の力が十分に発生せず、作動音低減効果が十分に発揮されない。
【0006】一方、前者の方法は、かかる不具合の解決策として提案されているものであって、確実な作動が期待されるが、比較的複雑な構造となり、コスト増を招く可能性が高い。
【0007】そこで、この発明は、構造が簡素で、しかも流速が遅い状況下でも弁部に確実に絞り効果が生じて作動音の低減効果が生じる切換弁を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明においては、入口ポートから出口ポートに至る流路を備えたボディ、前記流路の途中に設ける弁座と弁体及び弁体の駆動手段を有し、前記弁体を位置固定の前記弁座よりも出口ポートに近い流路の下流側に配置し、この弁体を弁座に接離させて流路を開閉する切換弁において、前記弁座から出口ポートに至る間の流路に、弁座を通過した流体の流れ方向をほぼ180°反転させる流路反転部を含ませ、この流路反転部内に、流路反転部を弁座に近い上流側と出口ポートに近い下流側とに区画し、上流側と下流側の流体圧を有効面積の等しい対向受圧面で各々受ける区画手段を設け、さらに、その区画手段によって区画された流路反転部の上流側と下流側を連通させる絞り通路を設け、前記区画手段が流路中の作動流体から受ける閉弁方向の力を前記弁体に伝えるようにしたのである。
【0009】この切換弁は、前記ボディの内部に円筒状突出部を形成してその円筒状突出部の先端に前記弁座を、外周に前記流路反転部を各々設け、前記区画手段を前記円筒状突出部の外側に嵌まる形状にしてこの区画手段の内周面と円筒状突出部の外周面との間及び区画手段の外周面とボディの内面との間に前記絞り通路となる隙間を各々形成したものにするとより好ましい。
【0010】また、アンチロック液圧制御装置等に採用される切換弁は、弁体を電磁石で駆動する電磁弁が一般的である。その電磁弁にこの発明を適用する場合は、電磁石の可動子を前記区画手段として兼用することができ、そのようにするのも好ましい。
【0011】
【作用】この発明の切換弁は、開弁状態で入口ポート側が出口ポート側よりも高圧になって入口ポートから出口ポートに向かう流れが発生すると、絞り通路による絞り効果によって区画手段を境にした上流側と下流側に流れの大きさ(流量)に応じた差圧が発生し、この差圧による力が区画手段から弁体に閉弁力として伝わる。
【0012】しかし、この力で切換弁が完全に閉弁することはない。何故なら、区画手段に働く力は流れの大きさに応じるものであり、完全に閉弁して流れが止まった状態では前述の差圧がゼロになって区画手段に働く力もゼロになるので、弁体は弁座との接触点よりも内側部分に加わる流体圧で押されて開弁する。
【0013】即ち、この発明の切換弁では、区画手段に働く力と、弁体を押し開こうとする流体圧力(開弁の確実化のために弁体をスプリング等の付勢手段で付勢したものはその付勢手段の力を加算した力)とが平衡する位置に弁体が自動的に動いて保持される。このときの弁体と弁座間の隙間は絞り通路の絞り度合によって決まる。従って、その絞り度合を適切に設定することにより、弁体と弁座間の隙間を微小にしてかつ必要十分な大きさに自動調整することが可能になる。
【0014】その自動調整の結果、開閉切換時に作動流体に発生する脈動が低減され、脈動等に起因する作動音も低減される。
【0015】作動音の低減については、上記の自動調整作用で弁体と弁座間の隙間が小さく保たれることにより、電磁石等の駆動手段から弁体に閉弁力が加えられた瞬間に弁体が動く距離が短くなって弁体の閉弁速度が小さくなることも有効に作用すると考えられる。
【0016】微視的に見れば、駆動手段から閉弁力が加えられた場合も、その力を含めた形で上記の平衡状態が維持されたまま閉弁に至り、その間、区画手段に働く閉弁方向の力が漸減するため、弁体の閉弁速度は更に小さくなり、その速度低下で作動流体の脈動や弁座に対する弁体の接触音がより小さくなる。
【0017】このように、この発明では、区画手段に働く流体圧の差圧を利用して弁体と弁座間の隙間を自動調整するので、上記の隙間を小さくする効果が不十分になったり、その効果が生じる状況が限定されたりすることが無く、流れの大きいとき、小さいときとも作動音の低減効果を十分に発揮させることができる。また、弁体維持機構を採用したものに比べて構造を簡素化できる。
【0018】なお、ボディの内部に円筒状突出部を設けてその先端に弁座を、外周に流路反転部を各々形成し、区画手段を円筒状突出部の外側に嵌めてその区画手段の内周部と外周部に生じさせた隙間を絞り通路となすものや、電磁石の可動子を区画手段として兼用するものは、部品加工の容易化や部品数削減が図れ、コスト面でより有利になる。
〔発明の詳細な説明〕
【0019】図1に、この発明の切換弁の第1実施形態を示す。図中10は切換弁のボディであり、入口ポート1、出口ポート2、弁座3を設けている。4は弁体であり、その内部に後述する流路反転部を作り出すための内部流路11を設けている。
【0020】5は弁体駆動用の電磁石であり、コイル7に通電して発生した磁力で可動子6を図中上向きに吸引し、その可動子6で弁体4に閉弁方向の付勢力を加える。
【0021】8は、入口ポート1から出口ポート2に至る流路中に含ませる流路反転部であり、内部流路11通過後の作動流体の流れ方向をほぼ180°反転させて出口ポート2に向かわせる。9は、流路反転部8内に設ける区画手段であり、この区画手段9によって、流路反転部8を弁座3に近い上流側8aと出口ポートに近い下流側8bとに区画している。この区画手段9には、流路反転部の上流側8aと下流側8bを連通させる絞り(オリフィス)12を設けている。また、区画手段9は、弁体4に係止させて図中上向きの力が弁体4に伝わるようにしている。
【0022】以下、図1の切換弁の動作について詳しく述べる。
【0023】入口ポート1の作動流体圧力をP1、出口ポート2の圧力をP2とし、P1>P2であるとする。コイル7に通電している間は可動子6に図中上方に向かう電磁力が発生し、その力が弁体4に伝えられるので弁体4は弁座3に接触して閉弁状態を維持する。
【0024】ここでコイル7への通電をやめると、電磁力が無くなるので、弁体4は弁座3によるシール点の内側即ち図1(b)の面積Bの部分にP1−P2の差圧を受けて図中下方に移動し、弁部が開く。
【0025】すると、作動流体は、入口ポート1→弁座3→内部流路11→流路反転部の上流側8a→絞り12→流路反転部の下流側8b→出口ポート2、の経路を辿って流れる。その時、絞り12の前後即ち区画手段9の前後に差圧ΔPが発生する。その結果区画手段9は弁体4を閉弁方向にF1=ΔP×A(Aは区画手段9の有効受圧面積)の力で付勢する。
【0026】すると、弁座3と弁体4との間の隙間が小さくなり、通過流量は区画手段9からの付勢力F1が無い場合に比べてやや少なくなり、ΔPもその流量に応じた値になる。最終的には区画手段9に働く力F1と、弁体4を押し下げる流体圧力F2とが平衡する位置で弁体4が自動的に保持され、通過流量が定まる。
【0027】このように弁体4の位置が、作動流体から受ける力のバランスによって定まるので、部品精度の制約を受けることなく弁座3と弁体4との間の隙間を小さく維持することができる。
【0028】この状態で再びコイル7へ通電すると、電磁力Fmが発生する。この電磁力の発生は速やかなものであるが、詳しく見れば時間と共に電磁力が増えていくことが知られている。この状況では弁体4は、区画手段9に働く力F1と、弁体4を押し下げる流体圧力F2と、徐々に増加する電磁力Fmの3者が平衡するように移動していくことになる。この間通過流量は漸減するので、区画手段9に働く力F1も漸減する。従って、閉弁方向の力、即ち(F1+Fm)の時間あたりの増加勾配はFmの時間あたりの増加勾配より小さくなる。このことと元々の開弁時の隙間が小さいこととが相まって閉弁完了時の弁体の速度が小さくなるので閉弁に伴う作動流体の脈動も小さくなり、作動音が低減される。
【0029】ここで、絞り12による絞り効果、即ちΔPを大きく設定する必要はない。ΔP自体は小さくとも、ΔPが作用する有効受圧面積Aを弁座3と弁体4との封止面積Bに対して大きくできるので区画手段9が弁体4に与える力は自由に大きくすることができる。
【0030】また、P1>P2がこの発明固有の作用を発揮するための条件であるが、この切換弁にてP1<P2として逆向きに作動流体を流しても問題ない。この時は区画手段9には開弁状態を維持するような力が作用するだけである。
【0031】図2はより実用に適した第2実施形態の切換弁を示す。20はボディであり、入口ポート21、出口ポート22、弁座23を設けており、弁座23はポディ20の内部に設けた円筒状突出部30上に設けられている。24は弁体である。
【0032】26、27は弁体駆動用電磁石25の可動子及びコイル、28は円筒状突出部30の外周に設けた流路反転部、29は流路反転部28を上流側28aと下流側28bに区画する区画手段である。円筒状突出部30の外側に嵌めたこの区画手段29の内外周には絞り通路となる隙間31、32が設けられている。区画手段29は延伸部33で弁体24に係合するが、この係合部分は圧入等の方法で固定してもよいし、固定しなくてもよい。また、延伸部33には横穴34を設ける。その横穴34は作動流体が通過する際に抵抗にならないように十分大きいことが望ましく、また、必要に応じて複数設けてもよい。さらにこの実施例では開弁状態を確実にするためのスプリング35を設けている。
【0033】この図2の切換弁は、図1の切換弁における絞り12の役割を隙間31、32が果たす。
【0034】作動原理は図1の切換弁とほぼ同じであり、区画手段29に働く力F1と、弁体24を押し下げる流体圧力F2と、スプリング35により付勢力とが平衡する位置で弁体24が自動的に保持され、通過流量が定まる。
【0035】また、図2の構造では、図1で弁体に設けた内部流路11は不要になる。これは弁座23が円筒状突出部30の先端にあるので、弁座23から出口ポート22に向かう流路が自ずと反転流路となることによる。これにより、延伸部33を備えた区画手段29を設けるだけで発明の目的を果たすことができ、加工等が容易になって、コストも下がる。
【0036】図3は、第3実施形態の切換弁である。40はボディであり、入口ポート41、出口ポート42、弁座43を有している。弁座43は、図2の切換弁と同様、ポディ40内に円筒状突出部50を設けてその突出部の先端に設けている。53は弁体の開きを確実にするスプリングである。
【0037】46は、電磁石45の可動子であり、一体的に形成された弁体44を有しており、同時に流路反転部48を上流側48aと下流側48bに区画する区画手段でもある。この可動子46の内外周とボディ40との間には絞り通路となる隙間51、52が設けられ、さらに、可動子46の内部に流路55が設けられている。電磁石45は、可動子46の図中上側の端面とこれに対向するボディ40の面との間に磁気吸引力が働くように構成する。47はコイルである。
【0038】このように、図3の切換弁は、電磁石の可動子46が流路反転部48の区画手段を兼ねるので、部品点数が少なく、非常に簡素で加工性にも優れ、コスト低減が図り易くなっている。
【0039】この図3の切換弁は、隙間51、52が絞り通路となって可動子46の前後に差圧が生じ、図2の切換弁とほぼ同じ原理で作動する。
【0040】なお、図3の切換弁は、電磁石の可動子46が区画手段を兼ねているので、外周隙間52は電磁石設計上の制約からかなり小さくする必要があり、そのため、絞り流路の主体は内周側隙間51となり、外周隙間52の寄与度は小さくなるが、この外周隙間52を通る流体の流量が極く少ないとしても流路55を省略することはできない。その流路55が無いと、可動子46(即ち区画手段)に流路反転部の上流側48aと下流側48bの流体圧を対向して作用させることができず、通過流量に応じて区画手段に働く力が全て開弁方向を向くものになって発明の趣旨に反する。
【0041】このように、区画手段の設置状況によっては、区画手段の受圧面が流路反転部の上流側に直接に対面しない例が考えられ、この場合には、図3の如き流路55を設けて流路反転部の上流側と下流側の流体圧が有効面積の等しい受圧面に対向して働くようにする必要がある。
【0042】また、加工性の面であまり好ましいことではないが、絞り通路は、例えば図1、図2の切換弁の場合、ボディ10、20に、区画手段9、29によって区画された流路反転部の上流側と下流側を連通させるバイパス路を設け、そのバイパス路に絞りを設ける方法でも形成でき、そのような構成でもこの発明の目的が達成される。
【0043】
【発明の効果】以上述べたように、この発明の切換弁は、流路反転部内の区画手段に対向して作用する流体圧の差圧を利用して開弁した弁体に閉弁方向の力を加えるので、流体の流れが大きいときは勿論、小さいときにも確実に弁座と弁体間の隙間を必要最小限の大きさに制御することができ、切換時の作動流体の脈動、弁体の早い速度の閉弁を抑制して作動音を低減することができ、この切換弁を用いるアンチロック液圧制御装置等の静粛性を高めることができる。
【0044】また、構造が複雑にならないので、コスト増も回避できる。特に図2の構造の切換弁や図3の構造の切換弁は、簡素で作り易く、また、図3の切換弁は部品点数も増えず、コスト低減の効果が大きく発揮される。
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成11年5月14日(1999.5.14)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2000−320702(P2000−320702A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−134043