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【発明の名称】 電磁弁
【発明者】 【氏名】数藤 聰

【氏名】高西 孝一

【要約】 【課題】自動変速機の変速ショック抑制などに使用する電磁弁において、背反的性質のある応答性及び耐振性を共に許容範囲内に入れる。

【解決手段】電磁弁は、電磁コイル13への制御電流に応じてストロークされる可動部材16と、供給ポート25と制御ポート26と排出ポート27が形成された弁スリーブ20と、この各ポートの間の連通を制御するスプール30と、スプールを可動部材に押圧するスプリング35と、弁スリーブとスプールの間に形成され制御ポートの制御圧が導入されてスプールを軸線方向に押圧するフィードバック室24を備えている。可動部材先端のテーパ部16aの角度α及び可動部材とステータ11の間の隙間dを調整することにより、可動部材の「ストローク−吸引力」特性の傾斜が、制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じとなるように調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電磁コイルに印加される制御電流に応じて生じる吸引力により軸線方向にストロークされる可動部材を有する磁気駆動部と、この磁気駆動部に取り付けられ軸線方向に間をおいて供給ポートと制御ポートと排出ポートが形成された筒状の弁スリーブと、この弁スリーブの内孔に摺動自在に嵌合され前記供給ポートと制御ポートの間の連通を制御する供給側ランド部及び前記制御ポートと排出ポートの間の連通を制御する排出側ランド部を有するスプールと、このスプールを軸線方向に押圧して前記可動部材またはこれと共にストロークする部材に当接させるスプリングと、前記弁スリーブとスプールの間に形成され前記制御ポートに出力される制御圧が導入されて同スプールを軸線方向一方に押圧するフィードバック室を備え、前記スプールは中間位置では前記両ランド部が何れも前記内孔とオーバラップして前記各ポートの間の連通を制御し、一方に移動した位置では前記供給側ランド部が前記内孔とのオーバラップを解除して前記制御ポートを前記供給ポートに連通させ、他方に移動した位置では前記排出側ランド部が前記内孔とのオーバラップを解除して前記制御ポートを前記排出ポートに連通させるようにしてなる電磁弁において、前記可動部材の「ストローク−吸引力」特性の傾斜が前記制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じとなるようにしたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】 前記可動部材は前記電磁コイルが巻回されたステータの筒状部内に同軸的に挿通され、前記可動部材の「ストローク−吸引力」特性は前記可動部材の先端部に形成したテーパ部の角度及び前記筒状部と前記可動部材の間の隙間を調整することにより調整することを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】 前記電磁コイルに印加する制御電流を中間範囲において所定値だけステップアップした場合に、前記スプールが最終的に到達する位置において前記フィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、それに到達する前に前記排出ポートが閉じて前記スプールの移動速度が遅くなる位置において前記フィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差が所定の応答性評価基準値より小となるように、かつ制御電流を最大電流付近から所定値だけステップダウンした場合に、前記スプールが最終的に到達する位置において前記フィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、それに到達する前に前記供給ポートが閉じて前記スプールの移動速度が遅くなる位置において前記フィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差が所定の耐振性評価基準値より大となるように、前記可動部材の先端部に形成したテーパ部の角度、前記筒状部と前記可動部材の間の隙間及び前記スプリングのばね特性を調整したことを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機の油圧制御回路において変速ショックを抑制する目的などに使用するのに適した電磁弁に関する。
【0002】
【従来の技術】このような電磁弁Vとしては、例えば図2に示すようなものがある。この電磁弁Vは、磁気駆動部10と弁スリーブ20とスプール30とスプリング35により構成され、弁スリーブ20とスプール30の間にはフィードバック室24が形成されている。磁気駆動部10は、同軸的に一体結合されてそれぞれの中心部に互いに向かい合う1対の筒状部11c,11dが形成されたコア部11a及びヨーク部11bよりなるステータ11と、このステータ11の筒状部11c,11dを巻回するように設けられた電磁コイル13と、外周辺部がカバープレート14と重ねられてステータ11にかしめ固着されたディスクスプリング18と、その中心部に外端部16bが固着されてステータ11の筒状部11c,11dの内周面との間に多少の隙間dをおいて軸線方向移動可能に支持されたプランジャ(可動部材)16を主要な部材としている。プランジャ16の内端側のテーパ部16aはコア部11aとヨーク部11bの各筒状部11c,11dの間に形成されたギャップ付近に位置しており、このプランジャ16の内端にはロッド17が圧入などにより同軸的に固定され、このロッド17はコア部11aの内面に圧入固着されたブッシュにより摺動自在に支持されて弁部20側に向けて突出している。
【0003】磁気駆動部10のステータ11と同軸的に設けられる弁スリーブ20は、一端のフランジ部がコア部11aの外側に重ねられると共にヨーク部11bにかしめ固着され、その内孔20aには軸線方向に間をおいて、スプール30との間にそれぞれ供給室21、制御室22及び排出室23を形成する3つの環状溝が、磁気駆動部10側から順に形成されている。供給室21よりも磁気駆動部10側となる弁スリーブ20の内孔20aにはスプール30との間にフィードバック室24を形成する環状溝が形成され、その両側となる内孔20aの断面積は磁気駆動部10a側の方がSだけ小となっている。弁スリーブ20には、それぞれ供給室21、制御室22及び排出室23と連通される供給ポート25、制御ポート26及び排出ポート27が形成され、制御ポート26とフィードバック室24は連通路(破線により図示)により連通され、またスプール30の両端と弁スリーブ20により形成される各空間も排出ポート27に連通されている。
【0004】弁スリーブ20の内孔20aに摺動自在に嵌合されるスプール30は、供給室21と制御室22の間の連通を制御する供給側ランド部31と、制御室22と排出室23の間の連通を制御する排出側ランド部32が形成され、またフィードバック室24の両側において上述のように断面積したがって径が異なる弁スリーブ20の内孔20aとそれぞれ嵌合するランド部が形成されている。このスプール30は、弁スリーブ20の内孔20aに軸線方向位置調整可能にねじ込んだスプリング受け36との間に介装したスプリング35により磁気駆動部10側に向けて付勢され、プランジャ16に固定したロッド17の先端に当接されている。スプリング35のばね力はディスクスプリング18のばね力よりも大であり、スプリング35により付勢されたスプール30、ロッド17及びプランジャ16は、電磁弁Vaに何の入力もない状態では、プランジャ16の外端がカバープレート14に当接して停止され(図2の下半部に図示した自由状態参照)、電磁コイル13に印加する制御電流が増大するにつれてスプリング35の付勢力に抗してストロークし、制御電流が所定値以上となればロッド17に固定したリング17aがヨーク11に当接してプランジャ16は停止される(図2の上半部に図示した最大ストローク位置参照)。上記自由状態では供給室21と制御室22が連通され、最大ストローク位置では制御室22と排出ポート27が連通され、その中間位置のある範囲では両ランド部31,32が何れも内孔20aとオーバラップして各ポートの間の連通を制御するようになっている。
【0005】このような電磁弁Vでは、電磁コイル13に印加する制御電流Iを一定とした場合における、磁気駆動部10がプランジャ16に加える吸引力は、プランジャ16のストローク位置に応じてある特性で変化する。図4はこの種の電磁弁の第1の従来技術において種々の制御電流Iを印加した場合におけるプランジャ16の「ストローク−吸引力」特性(吸引力特性)の通常の一例を示している。この図4には、スプリング35の「ストローク−押圧力」特性(ばね特性)Kと、電磁弁Vのスプール30の「ストローク−印加電流」特性(作動特性)Eも記入されている。なお、プランジャ16の吸引力特性は、制御電流Iが小さい時には、ディスクスプリング18のばね力の影響を大きく受ける。
【0006】次に、図2及び図4により、この第1の従来技術による電磁弁Vの作動の説明をする。供給ポート25には一定の圧力の作動流体が供給され、制御ポート26は自動変速機の変速ショックを抑制するためのアキュムレータに連通され、排出ポート27はリザーバに連通されている。先ず制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合の作動を説明する。
【0007】制御電流IがIaのときは、電磁弁Vのスプール30の作動位置はそのときの吸引力特性Iaと作動特性Eが交差した点Aにあり、両ランド部31,32は何れも内孔20aとオーバラップして、オーバラップした部分における両ランド部31,32と内孔20aの間の隙間を通る作動流体の作用により供給ポート25からの供給圧は分割されて、制御ポート26には制御圧paが出力されている。この制御圧paはフィードバック室24に導入され、スプリング35と抗する向きにスプール30を押圧するフィードバック力Pa(=pa×S、Sは前述)が生じる。このフィードバック力Paの値は、図4において、点Aとその真上となるばね特性K上の点Lとの間の距離(=スプリング35による押圧力−磁気駆動部10による吸引力)となる。
【0008】制御電流IがIbにステップアップすれば、スプール30の作動位置は最終的には吸引力特性Ibと作動特性Eが交差した点Bに移動してフィードバック力はPbとなり、制御ポート26には減少した制御圧pb(=Pb/S)が出力される。しかし図4に示す第1の従来技術の特性ではただちには点Bに移動せず、応答性が悪くなるという問題がある。次にその理由を説明する。制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合、スプール30は瞬間的にはストロークできないので作動点Aは吸引力特性Ib上の点A1 に移動し、またアキュムレータなどの被制御機器に連通された制御ポート26の制御圧paはただちには変化されないので点Lは吸引力増加分を加えた点L1 に移動する(A1−A=L1 −L)。これによりフィードバック力が過大となるので弁スリーブ20は吸引力特性Ibと平行なIb′に沿って排出ポート27が全開となるまでフルストロークして点L2 に移動し、その間に排出ポート27が開かれて制御ポート26の作動流体が排出され、制御圧(従ってフィードバック室24によるフィードバック力)が減少するので更に点L3 を通り、吸引力特性Ibに沿って点Bに戻ろうとする。しかしながら点L4 に達して排出側ランド部32が内孔20aとオーバラップした後は、制御ポート26から排出ポート27への作動流体の排出はオーバラップした排出側ランド部32と内孔20aの間の隙間を通ってなされるだけとなるので、それ以後におけるpbへの制御圧の接近速度は遅くなる。
【0009】すなわち、制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合、図4上におけるスプール30の作動点は、フィードバック力がPL4となる点L4 に達するまでは速やかに変化するが、点L4 における制御圧pl4(=Pl4/S)は最終制御圧pbとの間にpe(=Pe/S=(PL4−Pb)/S)なる差を生じ、この差が0になるには相当な遅れを生じる。これにより制御ポート26に連通されるアキュムレータ等に精度のよい圧力制御を行うことができず、充分な変速ショック抑制効果を得ることはできない。この差peが大きく、また遅れが大きいほど、制御ポート26に連通される機器からの戻り流量が排出されにくくなり、その圧力制御の精度は低下する。また、作動流体の温度が低下して粘性が増大すれば、上述した応答性の遅れは増大するので、この圧力制御の精度の低下は増大する。図4に示す第1の従来技術におけるフィードバック力の差Peは42kPaであった。
【0010】次に制御電流Iが最大電流(スプール30が実質的にフルストロークする電流)IdからIcにステップダウンした場合の作動を説明する。制御電流IがこのようなIdのときは、電磁弁Vのスプール30の作動位置は吸引力特性Idと作動特性Eが一致した点Dにあり、制御ポート26と排出ポート27が連通して制御ポート26に出力される制御圧は0(大気圧)であり、フィードバック力も0である。
【0011】制御電流IがIcにステップダウンした場合、スプール30の作動位置は最終的には吸引力特性Icと作動特性Eが交差した点Cに移動してフィードバック力はPcとなり、制御ポート26には増大した制御圧pc(=Pc/S)が出力される。しかし図4に示す第1の従来技術の特性ではただちには点Cに移動せず、やはり応答性が悪くなる。この場合は、制御電流IがIdからIcにステップダウンした場合、スプール30の作動点は先ずDからばね特性Kに沿って吸引力特性Icとの交点Qに移動する。次いで吸引力特性Icに沿って点Cに移動しようとするが、これにはフィードバック力をPcまで増大(従って制御圧も増大)する必要がある。ところが点Qと点Cの間では供給側ランド部31は内孔20aとオーバラップしているので、供給ポート25から制御ポート26への作動流体の供給はオーバラップした供給側ランド部31と内孔20aの間の隙間を通ってなされるだけであるので、制御圧の増大が遅れ、制御ポート26から所望の制御圧pb(=Pc/S)が出力されるまでに時間がかかり応答性が低下する。前述の場合と同様、この制御圧pbが大きく、また遅れが大きいほど、制御ポート26に連通される機器への圧力供給がされにくくなり、その圧力制御の精度は低下する。図4に示す第1の従来技術におけるフィードバック力の差Peは117kPaであった。しかしながら制御電流Iがステップダウンする場合(制御ポート26へ圧力供給する場合)の応答性の遅れは、前述したステップアップする場合(制御ポート26への戻り流量を排出する場合)に比して深刻ではない。
【0012】上述のように第1の従来技術では応答性の遅れが問題となるが、これを解決する手段として、図5に示すように、制御電流Iが大きい範囲におけるプランジャ16の吸引力特性の傾斜をスプリング35のばね特性Kの傾斜に近づけるように調整した第2の従来技術がある。このような調整は、プランジャ16のテーパ部16aの角度αを第1の従来技術よりも増大させることにより実現することができる。ただし、制御電流Iが小さい範囲では、吸引力特性はディスクスプリング18のばね力の影響を大きく受けるため、スプリング35のばね特性Kの傾斜とは逆の傾斜になっている。
【0013】次に、図2及び図5により、この第2の従来技術による電磁弁Vの作動の説明をする。先ず制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合の作動を説明する。第1の従来技術と同様、制御電流IがIaのときは、電磁弁Vのスプール30の作動位置はそのときの吸引力特性Iaと作動特性Eが交差した点Aにあり、制御電流IがIbにステップアップすれば、スプール30の作動位置は最終的にはステップアップ後の吸引力特性Ibと作動特性Eが交差した点Bに移動して、制御ポート26から出力される制御圧は減少する。第1の従来技術の場合と同様、この場合にもスプール30は排出ポート27開側に一旦フルストロークしてから点Bに戻るが、作動点がL4 に達した後は排出側ランド部32が内孔20aとオーバラップするので、点Bにおける最終的制御圧pbへの制御圧の接近速度は遅くなる。しかしながら、この第2の従来技術ではプランジャ16の吸引力特性の傾斜がスプリング35のばね特性の傾斜に接近しているので、点Bと点L4 におけるフィードバック力の差Peは第1の従来技術よりも小となり、これに伴いpbへの制御圧の接近速度(すなわち点L4 から点Bへのスプール30の接近速度)も速くなる。従って上述した応答性の遅れによる問題は大幅に低減され事実上解消される。
【0014】その一方で、この第2の従来技術では、上述のように点L4 から点Bへのスプール30の接近速度が速くなり、また吸引力特性の傾斜とばね特性の傾斜が接近していることによりスプール30が慣性によりオーバシュートした場合に点Bに押し戻す力が減少するので、スプール30が振動しやすくなる(耐振性が低下する)という問題が生じる。しかしこの問題は次に述べる制御電流Iがステップダウンする場合に比して、それほど深刻ではない。図5に示す第2の従来技術におけるフィードバック力の差Peは6kPaであった。
【0015】次に制御電流Iが最大電流IdからIcにステップダウンした場合の作動を説明する。制御電流IがこのようなIdのときは、第1の従来技術と同様、電磁弁Vのスプール30の作動位置は点Dにあり、制御ポート26に出力される制御圧は0であり、フィードバック力も0である。制御電流IがIcにステップダウンした場合、スプール30の作動位置は最終的には吸引力特性Icと作動特性Eが交差した点Cに移動して、制御ポート26から出力される制御圧は増大する。第1の従来技術における制御電流Iがステップアップした場合から類推されるように、図5上のスプール30の作動点は、先ず制御圧が0のままばね特性Kに沿って供給ポート25が全開となるフルストロークして点M1 に移動する。その間に供給ポート25が開かれて制御ポート26に作動流体が供給され、制御圧(従ってフィードバック室24によるフィードバック力)が発生するので更に点M2 を通り、吸引力特性Icに沿って点Cに戻ろうとする。しかしながら点M3 に達して供給側ランド部31が内孔20aとオーバラップした後は、点Cにおける最終的制御圧pcへの制御圧の接近速度は遅くなる。しかしながら、この第2の従来技術ではプランジャ16の吸引力特性の傾斜がスプリング35のばね特性の傾斜に接近しているので、点Cと点M3 におけるフィードバック力の差Pfは第1の従来技術の場合のPcよりも小となり、これに伴いpcへの制御圧の接近速度(すなわち点M3 から点Cへのスプール30の接近速度)も速くなる。従って上述した応答性の遅れによる問題は事実上解消される。
【0016】その一方で、この第2の従来技術では、上述のように点M3 から点Cへのスプール30の接近速度が速くなり、また吸引力特性の傾斜とばね特性の傾斜が接近していることによりスプール30が慣性によりオーバシュートした場合に点Bに押し戻す力が減少するので、スプール30の耐振性が低下して、制御ポート26に連通される機器に対する圧力制御の精度は低下するという問題が生じる。図5に示す第2の従来技術におけるフィードバック力Pfは13kPaであった。制御電流Iがステップダウンする場合の耐振性の低下は、前述したステップアップする場合に比して一層深刻である。これは、供給ポート35が開かれ圧力供給されることにより、スプール30の減衰性が低下するためである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、図4に示す特性の第1の従来技術は、耐振性は良いが応答性は悪く、図5に示す特性の第2の従来技術は、応答性は良いが耐振性は悪く、何れも満足すべき性能を有していない。本発明は、前述した構造の電磁弁に、上述のように背反的性質のある応答性及び耐振性が共に許容範囲内に入るようにすることを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明による電磁弁は、電磁コイルに印加される制御電流に応じて生じる吸引力により軸線方向にストロークされる可動部材を有する磁気駆動部と、この磁気駆動部に取り付けられ軸線方向に間をおいて供給ポートと制御ポートと排出ポートが形成された筒状の弁スリーブと、この弁スリーブの内孔に摺動自在に嵌合され供給ポートと制御ポートの間の連通を制御する供給側ランド部及び制御ポートと排出ポートの間の連通を制御する排出側ランド部を有するスプールと、このスプールを軸線方向に押圧して可動部材またはこれと共にストロークする部材に当接させるスプリングと、弁スリーブとスプールの間に形成され制御ポートに出力される制御圧が導入されて同スプールを軸線方向一方に押圧するフィードバック室を備え、スプールは中間位置では両ランド部が何れも内孔とオーバラップして各ポートの間の連通を制御し、一方に移動した位置では供給側ランド部が内孔とのオーバラップを解除して制御ポートを供給ポートに連通させ、他方に移動した位置では排出側ランド部が内孔とのオーバラップを解除して制御ポートを排出ポートに連通させるようにしてなる電磁弁において、可動部材の「ストローク−吸引力」特性の傾斜が制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じとなるようにしたことを特徴とするものである。
【0019】前項の発明の可動部材は、電磁コイルが巻回されたステータの筒状部内に同軸的に挿通されるものとし、可動部材の「ストローク−吸引力」特性は可動部材の先端部に形成したテーパ部の角度及び筒状部と可動部材の間の隙間を調整することにより調整することが好ましい。テーパ部の角度の調整は「ストローク−吸引力」特性の傾斜を全体的に変化させ、筒状部と可動部材の間の隙間の調整は制御電流が高い範囲で排出ポート開付近における吸引力の低下を少なくする。
【0020】また前項の発明は、電磁コイルに印加する制御電流を中間範囲において所定値だけステップアップした場合に、スプールが最終的に到達する位置においてフィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、それに到達する前に排出ポートが閉じてスプールの移動速度が遅くなる位置においてフィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差が所定の応答性評価基準値より小となるように、かつ制御電流を最大電流付近から所定値だけステップダウンした場合に、スプールが最終的に到達する位置においてフィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、それに到達する前に供給ポートが閉じてスプールの移動速度が遅くなる位置においてフィードバック室に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差が所定の耐振性評価基準値より大となるように、可動部材の先端部に形成したテーパ部の角度及び筒状部と可動部材の間の隙間を調整するのがよい。
【0021】
【発明の実施の形態】先ず、図2に示すような構造の電磁弁の応答性及び耐振性を評価する手段を考える。このような手段としては、図3に示すような表が考えられる。これは横軸の応答性評価値として、制御電流Iを中間範囲において所定値だけステップアップした場合における、スプール30の最終位置においてフィードバック室24に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、排出ポート27が閉じてスプール30の移動速度が遅くなる位置においてフィードバック室24に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差Peをとり、縦軸の耐振性評価値として、制御電流Iを最大電流から所定値だけステップダウンした場合における、スプール30の最終位置においてフィードバック室24に加わる制御圧により与えられるフィードバック力と、供給ポート25が閉じてスプール30の移動速度が遅くなる位置においてフィードバック室24に加わる制御圧により与えられるフィードバック力の差Pfをとったものである。この評価表に記入した耐振性評価基準値X(=90kPa)及び応答性評価基準値Y(=30kPa)は経験的に定めたものであり、差PfがXより大きく、かつ差PeがYより小さい範囲、すなわち左上のハッチンを施した範囲がこの種の電磁弁の応答性及び耐振性が共に満足される範囲である。前述した第1の従来技術と第2の従来技術は、この評価表の上でそれぞれ点u及び点vで示され、それぞれ耐振性は良いが応答性は悪い範囲、及び応答性は良いが耐振性は悪い範囲に入っている。
【0022】以下に、図1及び図2により、本発明による電磁弁の実施の形態の説明をする。この実施の形態の電磁弁の構造は、すでに説明した図2に示すものと同一であるので説明は省略する。図1は、この実施の形態において種々の制御電流Iを印加した場合におけるプランジャ16の「ストローク−吸引力」特性(吸引力特性)を示している。この図1には、スプリング35の「ストローク−押圧力」特性(ばね特性)Kと、電磁弁Vのスプール30の「ストローク−印加電流」特性(作動特性)Eも記入されている。
【0023】電磁コイル13に制御電流Iを印加した場合における、プランジャ16のストロークに対するプランジャ16に加わる吸引力の特性(吸引力特性)Iは、図1に示すように、その傾斜が制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じとなるように調整してある。これは、制御電流のほゞ全範囲において、吸引力特性の傾斜が全体としてほゞ同じとなるように調整すること、及び制御電流が高い範囲で排出ポート開付近における吸引力の低下が少なくなるように調整することよりなっている。吸引力特性の傾斜は、ディスクスプリング18のばね特性の傾斜にほゞ一致している。
【0024】吸引力特性の傾斜の全体的調整は、プランジャ16の先端部に形成したテーパ部16aの角度αを調整することにより行うが、制御電流Iが小さい範囲では吸引力特性の傾斜はこの調整による影響をあまり受けない。この角度αを減少すれば、図1において全体として右上がりとなっている吸引力特性Iの傾斜は増大し、角度αを増大すれば吸引力特性Iは減少し、角度αを更に増大すれば吸引力特性Iは右下がりとなる(図5に示す第2の従来技術参照)。ただし前述のように制御電流Iが小さい範囲では吸引力特性の傾斜はこの調整による影響をあまり受けないので、吸引力特性の傾斜が全体としてほゞ同じとなるようにする調整は、制御電流Iが小さい範囲の吸引力特性に合わせるようにして行う。また、制御電流Iが中間範囲と大きい範囲では後者の方が吸引力特性の傾斜(特に作動特性Eと交わる付近における吸引力特性の傾斜)が大きくなる傾向が避けられない。従って、制御電流のほゞ全範囲において吸引力特性の傾斜がほゞ同じになるようにするとは言っても、この実施の形態では、図1に示すように、制御電流Iの中間範囲における傾斜を多少小さめにしている。
【0025】この種の電磁弁では、プランジャ16に対する吸引力を高めるために、制御電流Iが最大となる付近において磁束密度が飽和に近づくようにしている。このため、図4に示す、プランジャ16のテーパ部16aの角度αがそれほど大きくない第1の従来技術では、排出ポート開付近における吸引力の低下が著しく、これが制御電流のほゞ全範囲において吸引力特性の傾斜がほゞ同じになるようにするのを阻害している。これを防ぐためにこの実施の形態では、ステータ11の筒状部11c,11dとプランジャ16の間の隙間dが大きくなるように調整し、これにより制御電流Iが最大となる付近における磁束密度の飽和を減少させて、図1に示すように、制御電流が高い範囲で排出ポート開付近における吸引力の低下が少なくなるようにしている。
【0026】図1においてスプリング35のばね特性Kを変化させれば、制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合の差Peと、制御電流Iが最大電流IdからIcにステップダウンした場合Pfとは変化するが、この2つの差PeとPfの変化の度合いは異なっている。このばね特性Kは、差Peが応答性評価基準値Yより小さく、差Pfが耐振性評価基準値Xより大きくなるように調整する。このようにすれば、ばね特性Kは、各吸引力特性との傾斜は逆で、交差角は比較的小さくなる。
【0027】次に、図1及び図2により、この実施の形態による電磁弁Vの作動の説明をする。先ず制御電流Iが中間範囲においてIaからIbにステップアップした場合の作動を説明する。上記各従来技術と同様、制御電流IがIaのときは、電磁弁Vのスプール30の作動位置はそのときの吸引力特性Iaと作動特性Eが交差した点Aにあり、制御電流IがIbにステップアップすれば、スプール30の作動位置は最終的にはステップアップ後の吸引力特性Ibと作動特性Eが交差した点Bに移動して、制御ポート26から出力される制御圧は減少する。上記各従来技術の場合と同様、この場合にもスプール30は排出ポート27開側に一旦フルストロークしてから点Bに戻るが、作動点がL4 に達した後は排出側ランド部32が内孔20aとオーバラップするので、点Bにおける最終的制御圧pbへの制御圧の接近速度は遅くなる。しかしながら、この実施の形態ではプランジャ16の吸引力特性とスプリング35のばね特性との交差角が比較的小さいので、点Bと点L4 におけるフィードバック力の差Peは第1の従来技術よりも小となり、これに伴いpbへの制御圧の接近速度(すなわち点L4 から点Bへのスプール30の接近速度)も速くなる。従って第1の従来技術で見られた応答性の遅れによる問題は大幅に低減され事実上解消される。図1に示す実施の形態におけるフィードバック力の差Peは27kPaであった。
【0028】なお、上述のように点L4 から点Bへのスプール30の接近速度が速くなり、プランジャ16の吸引力特性とスプリング35のばね特性との交差角が比較的小さいので、第2の従来技術のように耐振性が低下する傾向はあるが、制御電流Iがステップアップする場合には、排出ポート27が開く方向であるためスプール30は比較的減衰しやすく、この耐振性の低下が実質的に問題となることはない。
【0029】次に制御電流Iが最大電流IdからIcにステップダウンした場合の作動を説明する。制御電流IがIdのときは、上述した各従来技術と同様、電磁弁Vのスプール30の作動位置は点Dにあり、制御ポート26に出力される制御圧は0であり、フィードバック力も0である。制御電流IがIcにステップダウンした場合、スプール30の作動位置は最終的にはステッブダウン後の吸引力特性Icと作動特性Eが交差した点Cに移動して、制御ポート26から出力される制御圧は増大する。第2の従来技術の場合と同様、この場合もスプール30は供給ポート25開側に一旦フルストロークしてから点Cに戻るが、作動点がM3 に達した後は供給側ランド部31が内孔20aとオーバラップするので、点Cにおける最終的制御圧pcへの制御圧の接近速度は遅くなる。これにより応答性が低下する傾向はあるが、制御電流Iがステップダウンする場合(制御ポート26に圧力供給する場合)であるので実質的に問題となることはない。またこの実施の形態では、プランジャ16の吸引力特性とスプリング35のばね特性との交差角が比較的小さいとはいえ、傾斜が逆向きであるのでスプール30が慣性によりオーバシュートした場合に点Cに押し戻す力が増大し、従ってスプール30の耐振性が低下することはなく、これにより制御ポート26に連通される機器に対する圧力制御の精度は低下するという問題も生じない。図1に示す実施の形態におけるフィードバック力の差Pfは105kPaであった。
【0030】図3に示す応答性及び耐振性の評価表に、上述したPe及びPfに基づき上記実施の形態を記入すれば、点wで示す位置となり、耐振性及び応答性が両方とも許容される範囲に入っている。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、可動部材のストロークに対する同可動部材に加わる吸引力の特性の傾斜が制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じとなるようにしたので、スプリングの特性を適切に選択することにより、制御電流を中間範囲において所定値だけステップアップした場合に生じがちな電磁弁の応答性の低下を許容できる範囲に保ち、かつ制御電流を最大電流付近から所定値だけステップダウンした場合に生じがちな電磁弁の耐振性の低下を許容できる範囲に保つことが可能となる。また上述した吸引力特性の傾斜が制御電流のほゞ全範囲においてほゞ同じであるので、制御電流の違いにより応答性と耐振性に違いが生じることもない。
【0032】前項の発明において、可動部材をステータの筒状部内に同軸的に挿通されるものとし、特性は可動部材の先端部のテーパ部の角度及び筒状部と可動部材の間の隙間を調整することにより調整するようにした発明によれば、テーパ部の角度の調整により吸引力特性の傾斜は全体的に変化し、筒状部と可動部材の間の隙間の調整により制御電流が高い範囲で排出ポート開付近における吸引力の低下を少なくすることができるので、前項で特定した吸引力特性の調整を容易に行うことができる。
【0033】また前項の発明において、電磁コイルに印加する制御電流を中間範囲において所定値だけステップアップした場合に上述のようにして与えられるフィードバック力の差が所定の応答性評価基準値より小となるように、かつ制御電流を最大電流付近から所定値だけステップダウンした場合に上述のようにして与えられるフィードバック力の差が所定の耐振性評価基準値より大となるように、可動部材の先端部に形成したテーパ部の角度、筒状部と可動部材の間の隙間及びスプリングのばね特性を調整した発明によれば、電磁弁の応答性及び耐振性の低下を共に許容できる範囲に保つことができる。
【出願人】 【識別番号】000003470
【氏名又は名称】豊田工機株式会社
【出願日】 平成11年4月2日(1999.4.2)
【代理人】 【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一 (外2名)
【公開番号】 特開2000−291811(P2000−291811A)
【公開日】 平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願番号】 特願平11−96530