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【発明の名称】 比例電磁弁の制御装置
【発明者】 【氏名】羽根田 吉富

【氏名】寺川 智充

【氏名】小田 直史

【氏名】内藤 隆生

【要約】 【課題】電磁弁の耐久性および信頼性を低下させることなく、電磁弁に係るヒステリシスの影響を可及的に取り除くことが可能な比例電磁弁の制御方法を提供する。

【解決手段】ソレノイドコイル11に通電される駆動電流に応じて作動する比例電磁弁の作動時のヒステリシスHを検出する検出手段17と、ヒステリシスHが第1の所定値a以上と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より増加し、ヒステリシスHが第1の所定値aより小さい第2の所定値b以下と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より低減するディザー振幅補正手段21、22、23、24、25と、を備える比例電磁弁の制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コイルに通電される駆動電流に応じて作動する比例電磁弁の作動時のヒステリシスを検出する検出手段と、前記ヒステリシスが第1の所定値以上と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より増加し、前記ヒステリシスが前記第1の所定値より小さい第2の所定値以下と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より低減するディザー振幅補正手段と、を備える比例電磁弁の制御装置。
【請求項2】 前記第1の所定値は、前記比例電磁弁の振幅量の大きさに対して急激に大きさが変化するときのヒステリシスに設定されることを特徴とする、請求項1の比例電磁弁の制御装置。
【請求項3】 前記比例電磁弁は、駆動電流に応じて軸方向に作動するスプールと該スプールを内装するとともに前記スプールのランドの位置により遮断されるポートを有するシリンダとを備え、前記第2の所定値は、前記比例電磁弁の振幅量が前記ランドの軸方向長さから前記ポートの径を差し引いた長さのときのヒステリシスに設定されることを特徴とする、請求項1或いは請求項2の比例電磁弁の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、比例電磁弁の制御に関するものであり、特に比例電磁弁の作動ヒステリシス特性の影響を除くための制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の技術として、特開平10−198431号公報に開示される技術がある。この公報には、流量指定値または圧力指定値と計測した流量または圧力とを比較して比例電磁弁の駆動電流のヒステリシス量を超えるディザー量を算出し、これをもとにディザーを作り、比例電磁弁の流量指定値または圧力指定値相当の電流値に加算して、比例電磁弁をディザー制御する制御装置が開示されている。
【0003】この技術によると、個体のバラツキ、流体温度等の影響を受けることなく流量調整または圧力調整を最適に行なうことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】流量制御弁のヒステリシスとディザーの関係について、取り除こうとするヒステリシスが小さくなるにつれてディザーの振幅は大きくなる。上記従来技術では、比例電磁弁のヒステリシスの大きさに上限および下限が設定されていないので、常にヒステリシス量を超えるようにディザー振幅量が設定される。このような制御では、比例電磁弁のディザー振幅が非常に大きくなってしまうことが考えられる。ディザー振幅が大きくなると比例電磁弁の振幅量も大きくなり、電磁弁の耐久性の低下に繋がる。更に、ディザー振幅が大きくなって電磁弁の振幅量が電磁弁の作動可能量以上に設定されてしまうと、電磁弁の作動による媒体の流通の制御がうまく行われず、流量制御弁の信頼性の低下にも繋がり好ましくない。
【0005】そこで本発明は、上記の実情に鑑みて、電磁弁の耐久性および信頼性を低下させることなく、電磁弁に係るヒステリシスの影響を可及的に取り除くことが可能な比例電磁弁の制御方法を提供することを技術的課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1の発明は、コイルに通電される駆動電流に応じて作動する比例電磁弁と、比例電磁弁の作動時のヒステリシスを検出する検出手段と、ヒステリシスが第1の所定値以上と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より増加し、ヒステリシスが第1の所定値より小さい第2の所定値以下と判断されたときには駆動電流のディザー振幅を前回のディザー振幅より低減するディザー振幅補正手段と、を備える比例電磁弁の制御装置とした。
【0007】請求項1によると、検出手段にて検出されたヒステリシスが第1の所定値以上のときにはディザー振幅を増加させることでヒステリシスを小さくして、ヒステリシスが第2の所定値以下のときにはディザー振幅を低減することでヒステリシスを大きくする。これにより第1の所定値から第2の所定値の範囲内にヒステリシスを保持することが可能になる。したがって、個体のバラツキや比例電磁弁の経時的な変化によらず、ヒステリシスの影響を可及的に取り除くことが可能になる。また、ヒステリシスの下限を第2の所定値として設定しているので、ディザー振幅が大きくなりすぎることがなくなり、比例電磁弁の耐久性の低下を抑えることができる。更に比例電磁弁の振幅量が電磁弁の作動可能量以上に設定されることがなくなり、比例電磁弁の信頼性が低下するのを防ぐことが可能になる。
【0008】請求項2の発明は、請求項1における第1の所定値を、比例電磁弁の振幅量の大きさに対して急激に大きさが変化するときのヒステリシスに設定したことである。
【0009】請求項2によると、比例電磁弁の振幅量の大きさに対して急激に大きさが変化するときのヒステリシス、所謂ヒステリシスの変極点に第1の所定値を設定したことにより、比例電磁弁の振幅量が可及的に小さく且つヒステリシスが急激に大きくならない安定した値にすることが可能になる。
【0010】請求項3の発明は、比例電磁弁が駆動電流に応じて軸方向に作動するスプールとスプールを内装するとともにスプールのランドの位置により遮断されるポートを有するシリンダとを備え、比例電磁弁の振幅量がランドの軸方向長さからポートの径を差し引いた長さのときのヒステリシスに第2の所定値を設定したことである。
【0011】請求項3によると、ヒステリシスの下限である第2の所定値をスプールのランドの軸方向長さとポートの径から設定しているので、比例電磁弁の振幅量が大きくなってランドによるポートの遮断が妨げられることがなくなり、比例電磁弁の信頼性が向上する。
【0012】
【実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態では自動クラッチシステムにおける比例電磁弁の制御について説明する。図1は本実施の形態の自動クラッチシステムのシステム図である。
【0013】自動クラッチは、本体18内にシリンダ15およびスプール14を内装し駆動電流に応じてスプール14を軸方向に作動させる比例電磁弁10と、フルードを貯留するリザーバ30と、リザーバ30内のフルードを比例電磁弁10に圧送するモータポンプ40と、モータポンプ40と比例電磁弁10の間のフルードを蓄圧するアキュムレータ50と、モータポンプ40の駆動のオン・オフを切換えるべくモータポンプ40と比例電磁弁10の間のフルードの圧力に応じてオン・オフする圧力スイッチ60と、モータポンプ40とアキュムレータ50との間のフルード圧が所定圧以上になると、モータポンプ40とアキュムレータ50との間のフルードをモータポンプ40とリザーバ30との間にリリーフするリリーフバルブ70と、モータポンプ40から比例電磁弁10へのフルードの流れのみを許容するチェックバルブ80と、比例電磁弁10から出力されるフルードに応じて作動するクラッチレリーズシリンダ90と、比例電磁弁10の作動を制御する制御装置20とを備えている。
【0014】比例電磁弁10は本体18内にシリンダ15とシリンダ15内を摺動するスプール14を内装しており、ソレノイドコイル11への通電時には可動コア12とともにプッシュロッド13が図1の左方向に作動してスプール14の位置が変化し、各ポートへのフルードの流通・遮断が切換えられる。各ポートの連通・遮断を切換えることで出力ポート15bからクラッチレリーズシリンダ90に出力されるフルードが調整される。
【0015】クラッチレリーズシリンダ90は比例電磁弁10の出力ポート15bと連通し圧力室93を形成するピストン91と、ピストン91に取り付けられるロッド92を備えており、出力ポート15bから出力されたフルードに応じて圧力室93が高圧になるとピストン91が押圧され、ロッド92がレバー94を押し付けることで図示しないクラッチの係合・非係合を切換えている。
【0016】図2から図4は本実施の形態の比例電磁弁10の要部拡大図である。図2はソレノイドコイル11が通電されていない状態を示しており、スプリング16a、16bの釣り合いによってスプール14が図面右方向に位置しており、フルードの入力ポート15aとクラッチレリーズシリンダ90への出力ポート15bとがランド14aにより遮断されるとともに、リザーバ30と連通するリザーバポート15cと出力ポート15bとが連通している。尚、この状態では圧力室93と出力ポート15bとを連通する連通路18aを介して圧力室93内のフルードがリザーバ30へ貯留されており、ロッド92はレバー94を押し付けることなくクラッチ(図示せず)は係合している。図3はソレノイドコイル11への通電によりスプール14が図面左方向に移動して、ランド14aにより入力ポート15aと出力ポート15b、およびリザーバポート15cと出力ポート15bとが遮断されて圧力室93内のフルード圧を保持した状態を示している。この状態ではロッド92の位置は直前の位置を保持している。図4はソレノイドコイル11への通電量が大きくなり、スプール14が図3の状態から更に図面左方向に移動して入力ポート15aと出力ポート15bとが連通するとともに、出力ポート15bとリザーバポート15cとがランド14aにより遮断された状態を示している。この状態ではモータポンプ40にて圧送されたフルードが入力ポート15a、出力ポート15bおよび連通路18aを介して圧力室93に供給されて圧力室93内が高圧になり、ピストン91およびロッド92が図面右方向に移動してロッド92がレバー94を押し付け、クラッチ(図示せず)は非係合となる。
【0017】図2から図4で説明した作動において、可動コア12と固定コアとの間およびスプール14とシリンダ15との間に働く摩擦により、駆動電流と比例電磁弁10の作動位置との関係は図5に示すグラフのようになる。図5において駆動電流の幅Hがヒステリシスである。このようなヒステリシスHが大きいと駆動電流に対する比例電磁弁10の作動位置が大きくずれてしまい、比例制御弁の制御性が悪くなってしまう。そこでヒステリシスHを可及的に小さくするために、ソレノイドコイル11に流す駆動電流にディザーを加えて比例電磁弁10を微振動させることで可動コア12と固定コアの間およびスプール14とシリンダ15の間における摩擦係数を静摩擦係数から動摩擦係数に変えている。これによりヒステリシスHが小さくなり、駆動電流に対応する比例電磁弁10の位置が大きくずれることがなくなる。
【0018】制御装置20は、エンジン回転数、車速、アクセルペダルの踏込み量、ブレーキペダルの踏込み量、シフトレバーの位置、シフトレバーの操作、およびクラッチレリーズシリンダ90のロッド92の位置を入力し、これら入力された情報に基づいてクラッチレリーズシリンダ90の作動、すなわちロッド92の位置およびロッド92の移動速度等が決められ、この決められた条件でクラッチレリーズシリンダ90が作動するように比例電磁弁のソレノイドコイル11へ通電する駆動電流を演算する。また、制御装置20はプッシュロッド13の位置を検出する検出手段である位置センサ17の検出値を入力し、後述するようなディザー振幅量の演算を行なっている。
【0019】制御装置20によるディザー振幅の補正について説明する。図7は制御装置20のディザー振幅補正手段に係る回路図である。ディザー振幅補正手段はヒステリシス演算回路21、ディザー補正回路22、波形補正回路23、電流生成回路24、スイッチング回路25から構成されている。位置センサ17にて検出されたプッシュロッド13の位置はヒステリシス演算回路21に入力され、図5に示すヒステリシスHが演算される。次にディザー補正回路22に演算されたヒステリシスHと前回のディザー振幅量が入力され、ディザー補正回路22にてヒステリシスHの大きさが所定値内になるようにディザー振幅が補正される。波形補正回路23にて補正されたディザー振幅の波形が出力され、電流生成回路24に入力される。電流生成回路24では各種情報から演算された駆動電流波形とディザー振幅波形を加算する。そしてスイッチング回路25にてディザー振幅波形が加算された駆動電流波形となるべくソレノイドコイル11への電流を制御している。
【0020】比例電磁弁10の制御について図9および図10のフローチャートを用いて説明する。図9は比例電磁弁10の制御のメインルーチンを示している。先ず、ステップ101にて各変数をイニシャライズする。このとき車両のエンジン水温に応じてディザーの振幅量が設定される。そしてステップ102に進んで車両の状態や運転者の意志に応じたクラッチレリーズシリンダの制御量、即ちロッドの移動量を演算する。次にステップ103に進んで、ステップ102にて演算した制御量を得るために比例電磁弁10のソレノイドコイル11へ供給する駆動電流を演算する。そしてステップ104にて駆動電流に加えるディザーの振幅量を補正する。ステップ105はディザーの生成であり、ステップ104にて補正されたディザーをステップ103にて演算した駆動電流に重ねて出力する電流値を生成する。ステップ105で生成された電流値はステップ106にて比例電磁弁10のソレノイドコイル11に出力される。
【0021】上述したディザー振幅の補正であるステップ104について図10のフローチャートを用いて説明する。ステップ201はヒステリシスHの計測であり、駆動電流を増加させたときの比例電磁弁10の所定の位置Pにおける電流値Aと、駆動電流を減少させたときの比例電磁弁10の所定の位置Pにおける電流値Bとを検出し、A−BをヒステリシスHとして計測する。次にステップ202に進んでヒステリシスHが第1の所定値a以上であるか否かを判断する。ヒステリシスHが第1の所定値a以上と判断された場合には、ステップ203に進んで前回のディザーの振幅量(制御の初期においてはステップ101にて設定したディザーの振幅量)に補正振幅量αを付加した振幅量を新振幅量として設定する。ステップ202にてヒステリシスHが第1の所定値aより小さいと判断された場合には、ステップ204に進んでヒステリシスHが第2の所定値b以下であるか否かを判断する。ヒステリシスHが第2の所定値b以下と判断された場合には、ステップ205に進んで前回のディザーの振幅量(制御の初期においてはステップ101にて設定したディザーの振幅量)に補正振幅量βを差し引いた振幅量を新たな振幅量として設定する。そしてステップ206で、上記ステップ203、205にて設定されたディザーの振幅量およびステップ204でヒステリシスHが第2の所定値bより大きいと判断されたときのディザーの振幅量を新たな振幅量として更新する。
【0022】本実施の形態では、図6に示す比例電磁弁10の振幅量とヒステリシスとの関係を示すグラフにおいて、グラフ上でヒステリシスHの傾きが急激に変化する点を比例電磁弁10の振幅量の最小値として第1の所定値aに設定している。図8は図3の拡大図であり、図8においてランド14aの幅Rから出力ポート15bの径Rを差し引いた量を比例電磁弁10の振幅量としたときの図6のグラフにおけるヒステリシスHの大きさを比例電磁弁10の振幅量の最大値として第2の所定値bに設定している。このように設定された第2の所定値bは、スプール14が微振動してもランド14aが出力ポート15bを遮断した状態を確実に保持する振幅量となるように設定されている。
【0023】本実施の形態ではディザー振幅波形の周波数が一定であるものとして説明したが、周波数が一定でなくとも、例えば周波数に応じてヒステリシスの第1の所定値a、第2の所定値b、補正振幅量α、βを変化させるように制御することで、上記の実施の形態に示すディザー振幅補正を行なうことが可能である。
【0024】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定される意図はなく、本発明の主旨に沿った形態のものであればどのようなものであってもよい。
【0025】
【発明の効果】請求項1の発明によると、第1の所定値から第2の所定値の範囲内にヒステリシスを保持することが可能になる。したがって、個体のバラツキや比例電磁弁の経時的な変化によらず、ヒステリシスの影響を可及的に取り除くことが可能になる。また、ヒステリシスの下限を第2の所定値として設定しているので、ディザー振幅が大きくなりすぎることがなくなり、比例電磁弁の耐久性の低下を抑えることができる。更に比例電磁弁の振幅量が電磁弁の作動可能量以上に設定されることがなくなり、比例電磁弁の信頼性が低下するのを防ぐことが可能になる。
【0026】請求項2によると、比例電磁弁の振幅量の大きさに対して急激に大きさが変化するときのヒステリシス、所謂ヒステリシスの変極点に第1の所定値を設定したことにより、比例電磁弁の振幅量が可及的に小さく且つヒステリシスが急激に大きくならない安定した値にすることが可能になる。
【0027】請求項3によると、ヒステリシスの下限である第2の所定値をスプールのランドの軸方向長さとポートの径から設定しているので、比例電磁弁の振幅量が大きくなってランドによるポートの遮断が妨げられることがなくなり、比例電磁弁の信頼性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
【出願日】 平成11年3月30日(1999.3.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−283325(P2000−283325A)
【公開日】 平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願番号】 特願平11−90056