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【発明の名称】 フローティング式ポペット弁装置
【発明者】 【氏名】藤田 敏晴

【要約】 【課題】ポペット弁の温度上昇を抑制して該ポペット弁の摺動部にOリング等のシール部材の使用を可能とし、該摺動部におけるガス漏れによる弁のスティックの発生を防止するとともに、弁に作用する流体力を抑制して弁の拗れ及びこれに伴う作動不良の発生を防止する。また、ポペット弁の開閉駆動力を増大して応答性、作動性を向上する。

【解決手段】シリンダ内の往復摺動自在に嵌合されたポペット弁上下面が臨む2つの室の圧力差により、該ポペット弁の先端シート部を弁座に着脱してガス通路を開閉するように構成されたフローティング式ポペット弁装置において、前記ポペット弁は耐熱複合材料からなり、前記摺動部にはOリング等のシールリングが嵌装され、さらにその軸心線に対称に、前記2つの室を連通しオリフィスを有する通孔が穿孔されてなる。また、アキュムレータに収容されたガスをパイロット弁によってポペット弁の圧力室に給排する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダ内に往復摺動自在に嵌合されたポペット弁の上下面が臨む2つの室の圧力差により、該ポペット弁の先端シート部を弁座に着脱してガス通路を開閉するように構成されたフローティング式ポペット弁装置において、前記ポペット弁は耐熱複合材料からなり、前記摺動部にはOリング等のシールリングが嵌装され、さらにその軸心線に対称に、前記2つの室を連通し、オリフィスを有する通孔が穿孔されてなることを特徴とするフローティング式ポペット弁装置。
【請求項2】 前記耐熱複合材料として、セラミックス繊維の耐熱複合材を用いたことを特徴とする請求項1記載のフローティング式ポペット弁装置。
【請求項3】 シリンダ内に往復摺動自在に嵌合されたポペット弁の上下面が臨む2つの室の圧力差により、該ポペット弁の先端シート部を弁座に着脱してガス通路を開閉するように構成されたフローティング式ポペット弁装置において、前記2つの室は、前記ポペット弁の上面が臨み、作動気体の供給口及び吐出口が設けられた圧力室と、前記ポペット弁の下面が臨み前記ガス通路の供給口に連通される入口室とよりなり、前記作動気体が封入されたアキュムレータを前記圧力室の供給口に接続するとともに吐出口を大気に接続し、前記供給口及び吐出口を開閉するパイロット弁を設けたことを特徴とするフローティング式ポペット弁装置。
【請求項4】 前記パイロット弁は、弁棒の両端に球状の弁体を固着してなり、一方側の弁体が前記供給口又は吐出口の一方を閉止しているとき、他方側の弁体が前記供給口又は吐出口の他方を開放するように構成されてなる請求項3記載のフローティング式ポペット弁装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロケットエンジンのスラスタ装置における推力制御等に使用されるフローティング式ポペット弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】固体推進薬を使用するロケットエンジンにおいては、燃焼室に通ずるノズルスロート部におけるスロート面積を変化させることにより、ノズルスロート部を通過する燃焼ガス流量を制御している。かかるノズルスロート部のスロート面積を制御する技術として、特公平6−58090号の発明が提供されている。この発明においては、燃焼室チャンバの後端にピントルを固着するノズルスカートを有して該ピントルとによりノズルスロート部を形成するノズルホルダーを前記燃焼室チャンバに軸方向移動可能に装着し、該ノズルホルダーを軸方向に移動させてノズルスロート面積を連続的に変化させるように構成している。かかる発明の場合は、ノズルスカートを有するノズルホルダーを軸方向に移動するため、移動部分が大型になる。
【0003】そこで、上記のような問題点を有しないスロート面積を変化させる手段として、図5〜図6に示されるフローティング式ポペット弁装置が提案されている。図5〜図6は、かかるフローティング式ポペット弁装置の概略構成を示し、図5はポペット弁の閉弁時、図6は開弁時である。
【0004】図5〜図6において、1はハウジング、2は該ハウジング1に形成されたシリンダであり、該シリンダ2内にはフローティング式のポペット弁03が往復摺動自在に嵌合されている。該ポペット弁03はタングステン等の耐熱金属によって構成されている。8は該ポペット弁03の上面とシリンダ2とにより区画形成された圧力室で、該圧力室8にはパイロット弁6によって開閉される作動流体供給口7が開口している。該パイロット弁6は、アクチュエータ(不図示)によって開閉作動することにより、前記圧力室8の圧力を制御するようになっている。
【0005】5は、前記ハウジング1内に形成された燃焼ガスの入口室で、前記ポペット弁03の下部03bの外周が臨んでいる。9は該入口室5への燃焼ガスの供給口で、燃焼室(不図示)に接続されている。4は燃焼ガスを噴出させるためのノズルである。前記ポペット弁03は、その下端部03bの先端に円錐状のシート部03aが形成され、ハウジング1に設けられた弁座1aと着脱することにより、前記入口室5とノズル4との間を開閉するようになっている。
【0006】また、前記ポペット弁03にはその外周寄りの部位に前記圧力室8と燃焼ガスの入口室5とを連通する通孔011が穿孔され、該通孔011の途中には通路を絞ったポペットオリフィス010が設けられている。
【0007】かかるフローティング式ポペット弁装置の作動時において、燃焼室(不図示)にて生成された燃焼ガスは供給口9から入口室5に導入される。一方、ポペット弁03の閉時には、図5に示すように、パイロット弁制御装置(不図示)によって、パイロット弁6が閉じられて圧力室8内の作動流体の圧力が高圧となり、該作動流体の圧力による下向きの力が入口室5内の燃焼ガス圧力による上向きの力よりも大きくなって、ポペット弁03のシート部03aがハウジング1の弁座1aに押しつけられ、燃焼ガスのノズル4への流出を遮断している。
【0008】図6に示すように、前記パイロット弁制御装置によってパイロット弁6が開弁されると、圧力室8内の作動流体が排出され、入口室5内における燃焼ガスによる上向きの力が前記作動流体による下向きの力よりも大きくなってポペット03は上動し、前記シート部03aが弁座1aから離れてポペット弁は開弁する。該ポペット弁03の開弁により、燃焼ガスが、図6の矢印に示すように、入口室5からノズル4へと流れて外部に噴出されることにより、推力を発生する。
【0009】一方、入口室5内の燃焼ガスの一部は、通孔011に入り、ポペットオリフィス010にて絞られて圧力室8側へ流入した後、パイロット弁6を経て外部に排出される。このポペットオリフィス010の絞り度つまり通路面積を変化させることにより、ポペット03の開弁速度及び閉弁速度を調整する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】図5〜図6に示される従来技術に係るフローティング式ポペット弁装置にあっては、ポペット弁03は供給口9から入口室5に導入される燃焼ガスによって2000℃以上に加熱されるため、タングステン材等の耐熱金属から構成されている。このタングステン材は熱伝導率が大きく、ポペット弁03全体が高温となる。このため、該ポペット弁03の外周面とシリンダ2との摺動部にはゴム製のOリングの使用は不可能となり、前記ポペット弁03の外周面とシリンダ2との摺動部はOリング等のシール部材を有しない金属接触部となることから隙間を大きく形成せざるを得ず、該隙間を燃焼ガスが流れてポペット弁03の熱スティックの発生をみることが多い。
【0011】また、前記タングステン材は比重が19g/cm3 程度と大きいため、ポペット弁03の重量が大きく該ポペット弁03の応答性が低くなる。また、前記タングステン材は加工性が悪いため、ポペット弁03に複雑な形状の溝加工が困難であり、このためポペットオリフィス010を有する通孔011はポペット弁03の外周寄りの肉薄の部位に穿孔されている。従って、前記通孔011がポペット弁03の軸心03c上に無いため、該ポペット弁03の下部03b周りの燃焼ガスの流れが軸心03cに対称な流れとならず、該軸心03cに直角方向の流体力Tがポペット03に作用し、該ポペット弁03には、この流体力Tによって拗れが発生し、これによりポペット弁03のスティックが引き起こされる。
【0012】また、図5〜図6に示される従来のポペット弁装置にあっては、ポペット弁03の開放(図6)から閉鎖への動作時には圧力室8内の圧力Pvは入口室5内の圧力即ちシステム圧力Ps以上には設定できないため、該ポペット弁03の開閉動作に必要な駆動力が制限され、大きな駆動力を必要としない。
【0013】一方、前記従来技術にあっては、ポペット弁03の閉鎖(図5)から開放(図6)への動作時には、圧力室8内の圧力Pvは、前記システム圧力Ps、ポペットオリフィス010の面積Ah及びシート部03aの面積Abとの間に次の(1)式の関係がある。
Pv=(Ah/Ab)×Ps …(1)
従って、前記ポペット弁03の閉→開動作時には、前記圧力Pvは小さい方がポペット弁03の駆動力は増大するが、該圧力Pvは前記(1)式のように、値よりも小さくできない。
【0014】本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、ポペット弁の温度上昇を抑制して該ポペット弁とシリンダとの摺動部にOリング等のシール部材の使用を可能として、該摺動部における燃焼ガスの漏れによるポペット弁の熱スティックの発生を防止すると共に、開閉時の応答性を向上することを第1の目的とする。
【0015】また、本発明の第2の目的は、ポペット弁の軸心に直角方向の流体力の発生を抑制して、ポペット弁の拗れ及びこれに伴うポペット弁の作動不良の発生を防止することにある。
【0016】また、第3の目的は、ポペット弁の閉動作時により大きな駆動力を得るとともに、開動作時におけるポペット弁の抵抗を最小限にして、ポペット弁の開閉を高い応答性で以ってなし得るとともに、作動性が向上されたポペット弁装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる課題を解決するため、請求項1記載の発明として、シリンダ内に往復摺動自在に嵌合されたポペット弁の上下面が臨む2つの室の圧力差により、該ポペット弁の先端シート部を弁座に着脱してガス通路を開閉するように構成されたフローティング式ポペット弁装置において、前記ポペット弁は耐熱複合材料からなり、前記摺動部にはOリング等のシールリングが嵌装され、さらにその軸心線に対称に、前記2つの室を連通し、オリフィスを有する通孔が穿孔されてなることを特徴とするフローティング式ポペット弁装置を提案する。
【0018】そして、好ましくは、請求項2記載のように、前記耐熱複合材料として、セラミックス繊維の耐熱複合材を用いる。
【0019】また、前記オリフィスを有する通孔は、ポペット弁の軸心線上に1個所設けるのが好適であるが、前記軸心線に対称に複数個設けても良い。
【0020】かかる発明によれば、ポペット弁の材料を従来技術におけるタングステン材よりも熱伝導率が大幅に小さい耐熱複合材で構成しているので、高温ガス上に直接触れる下部から外周摺動部への熱伝導率が少なくなり、該外周摺動部の温度上昇が抑制される。これにより外周摺動部に耐熱、耐油ゴム製のシールリングの使用が可能となり、外周摺動部のシール性が向上し、該部からのガスの漏洩が回避され、該漏洩によるポペット弁の熱スティックの発生が防止される。
【0021】また、ポペット弁はその軸心に対称にオリフィス付きの通孔を設けているので、ポペット弁に作用するガスによる流体力がバランスし、従来技術のようなアンバランスな流体力の作用が回避される。これにより、かかるアンバランスな流体力による弁の拗れの発生及びこれにより引き起こされるポペット弁の作動不良の発生を防止することができ、ポペット弁を滑らかに作動させることができる。
【0022】さらに、ポペット弁は従来技術に係るタングステン材よりも比重がはるかに小さい耐熱複合材で構成されているので、軽量となり、弁開閉の応答性が向上する。
【0023】また請求項3記載の発明は、シリンダ内に往復摺動自在に嵌合されたポペット弁の上下面が臨む2つの室の圧力差により、該ポペット弁の先端シート部を弁座に着脱してガス通路を開閉するように構成されたフローティング式ポペット弁装置において、前記2つの室は、前記ポペット弁の上面が臨み、作動気体の供給口及び吐出口が設けられた圧力室と、前記ポペット弁の下面が臨み前記ガス通路の供給口に連通される入口室とよりなり、前記作動気体が封入されたアキュムレータを前記圧力室の供給口に接続するとともに吐出口を大気に接続し、前記供給口及び吐出口を開閉するパイロット弁を設けたことを特徴とするフローティング式ポペット弁装置にある。
【0024】そして好ましくは、前記パイロット弁は、弁棒の両端に球状の弁体を固着してなり、一方側の弁体が前記供給口又は吐出口の一方を閉止しているとき、他方側の弁体が前記供給口又は吐出口の他方を開放するように構成されてなる。
【0025】また、前記作動気体は、前記入口室内のガス圧力よりも高圧に加圧された不活性ガスを用いるのが良い。
【0026】かかる発明によれば、パイロット弁は常時アキュムレータからの低温の気体に触れているため、温度上昇が抑制される。これにより、パイロット弁に耐熱材料の使用することが不要となり、低コストの材料を使用できるとともに、熱スティックの発生も完全に防止される。
【0027】また、ポペット弁の開弁→閉弁時に作用する圧力室内の圧力はアキュムレータ内のガス圧力をそのまま加えることとなるので、該圧力を高圧に設定することが可能となって、ポペット弁の駆動力を増大することができる。これによって、ポペット弁の応答性及び作動性が向上する。
【0028】一方、ポペット弁の閉弁→開弁時には、パイロット弁により供給口を閉、吐出口を開として圧力室内を大気圧にすることができ、ポペット弁の開放に要する上向きの力、即ち開閉力が大きくなって、その応答性、作動性が向上する。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】図1〜図2は本発明の第1実施形態に係るロケットエンジン用フローティング式ポペット弁装置の概略構成を示し、図1はポペット弁の閉弁時、図2は開弁時を示す。
【0031】図1〜図2において、1はハウジング、2は該ハウジング1に形成されたシリンダであり、該シリンダ2内にはフローティング式のポペット弁3が往復摺動自在に嵌合されている。8は該ポペット弁3の上面とシリンダ2とにより区画形成された圧力室で、該圧力室8にはパイロット弁6によって開閉される作動流体供給口7が開口している。該パイロット弁6は、アクチュエータ(不図示)によって開閉作動することにより、前記圧力室8の圧力を制御するようになっている。
【0032】5は、前記ハウジング1内に形成された燃焼ガスの入口室で、前記ポペット弁3の下部3bの外周が臨んでいる。9は該入口室5への燃焼ガスの供給口で、燃焼室(不図示)に接続されている。4は燃焼ガスを噴出させるためのノズルである。前記ポペット弁3は、その下端部3bの先端に円錐状のシート部3aが形成され、ハウジング1に設けられた弁座1aと着脱することにより、前記入口室5とノズル4との間を開閉するようになっている。
【0033】以上の構成は図5〜図6に示す従来技術と同様である。本発明においてはポペット弁の材料及び内部構造を改良している。
【0034】すなわち、図1〜図2において、ポペット弁3は熱伝導率の小さいセラミックス繊維等の耐熱複合材からなる。11は該ポペット弁3の内部に穿孔された通孔である。該通孔11はポペット弁3の上面、つまり前記圧力室8に臨む面に開口され、この上面からポペット弁3の軸心3cに沿って下方に延び、該ポペット弁3の下部3bにおいて直角方向に分岐(11a)し、前記入口室5に開口している。そして、該通孔11の途中には、図5〜図6に示す従来技術と同様に通路を絞ったポペットオリフィス10が設けられている。尚、この実施形態では、ポペットオリフィス10を有する通孔11を1個、ポペット弁3の軸心3cに沿って設けているが、該通孔11はポペット弁3の軸心3cに対称な位置であれば、2個以上に設けてもよい。
【0035】前記ポペット弁3の外周摺動部には、耐熱耐油ゴム材からなるOリング12が、並びに該Oリング12の上下に耐熱性及び摺動性の良好な金属からなるピストンリング13,13が嵌装されている。
【0036】かかるフローティング式ポペット弁装置の作動時において、燃焼室(不図示)にて生成された燃焼ガスは、供給口9から入口室5に導入される。一方、ポペット弁3の閉時には、図1に示すように、パイロット弁制御装置(不図示)によって、パイロット弁6が閉じられて圧力室8内の作動流体の圧力が高圧となり、該作動流体の圧力による下向きの力が入口室5内の燃焼ガス圧力による上向きの力よりも大きくなって、ポペット弁3のシート部3aがハウジング1の弁座1aに押し付けられ、燃焼ガスのノズル4への流出を遮断している。
【0037】図2に示すように、前記パイロット弁制御装置によってパイロット弁6が開弁されると、圧力室8内の作動流体が排出され、入口室5内における燃焼ガスによる上向きの力が前記作動流体による下向きの力よりも大きくなって、ポペット弁3は上動し、前記シート部3aが弁座1aから離れて、ポペット弁は開弁する。該ポペット弁3の開弁により、燃焼ガスが、図2の矢印に示すように、入口室5からノズル4へと流れて外部に噴出されることにより、推力を発生する。
【0038】一方、入口室5内の燃焼ガスの一部は通孔11に入り、ポペットオリフィス10にて絞られて圧力室8側へ流入した後、パイロット弁6を経て外部に排出される。このポペットオリフィス10の絞り度つまり通路面積を変化させることにより、ポペット弁3の開弁速度及び閉弁速度を調整する。
【0039】かかる実施形態において、ポペット弁3は従来のタングステン材に比べて熱伝導率が充分に小さいセラミックス繊維の耐熱複合材で構成されているため、燃焼ガスに直接触れる下部3bが加熱されて高温となるが、シリンダ2との摺動部への熱伝導量が少なくなり、該摺動部の温度上昇が抑制される。これにより、該摺動部に耐熱、耐油ゴムからなるOリング12を用いても、これが焼損を起こすことは無く、また当然ながら金属製のシールリング13,13を使用しても充分に高い耐熱性を有する。
【0040】従って、ポペット弁3の外周摺動部のシール性が金属面のシールである従来技術に比べて大幅に向上する。これにより、外周摺動部からの燃焼ガスの漏洩が回避され、該漏洩によるポペット弁の熱スティックの発生が回避される。
【0041】また、該ポペット弁3は、その軸心3cに対称にポペットオリフィス10付きの通孔11を設けているので、該ポペット弁3に作用する燃焼ガスによる流体力Tがバランスし、従来技術のようなアンバランス力の発生が回避される。これにより、該アンバランス力によるポペット弁3の拗れの発生及びこれにより引き起こされるポペット弁3の作動不良の発生が防止され、ポペット弁3は滑らかに作動可能となる。
【0042】更に、該ポペット弁3は、従来技術のタングステン材(比重=19g/cm3程度)に比べて比重が小さいので、軽量となり、開閉時における応答性が良好となる。
【0043】図3〜図4は、本発明の第2実施形態に係るロケットエンジン用フローティング式ポペット弁装置の概略構成を示し、図3はポペット弁の閉弁時、図4はポペット弁の開弁時を示す。
【0044】図3〜図4において、ハウジング1の上部にはガス供給口23及び吐出口24が対向して設けられている。21は窒素ガス等の不活性ガスが収容されたアキュムレータ、該アキュムレータ21は供給管22を介して前記供給口23に接続されている。
【0045】25はパイロット弁である。該パイロット弁25は、球形状の供給弁体25a及び吐出弁体25bが弁棒25cの両端に設けられて、前記ハウジング1の弁支持部1bを往復動することによって前記供給口23及び吐出口24を開閉するようになっている。26は弁駆動アクチュエータ(不図示)に連結される駆動リンク、27は駆動レバーである。該駆動レバー27は支点28にて前記ハウジング1に支持されており、一端側を前記駆動リンク26に連結され、他端側を前記パイロット弁25の弁棒25cに連結されて、駆動リンク26に付与されるパイロット弁駆動力をパイロット弁25に伝達するようになっている。また、この実施形態では、前記第1実施形態における通孔11及びポペットオリフィス10を廃止している。
【0046】その他の構成は図1〜図2に示す第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号にて示す。
【0047】かかる第2実施形態において、燃焼室(不図示)にて生成された燃焼ガスは、供給口9から入口室5に導入され、該入口室5の圧力Psは燃焼ガス圧力に保持されている。一方、ポペット弁3の閉時には、図3に示されるように、弁駆動装置(不図示)から駆動リンク26及び駆動レバー27を介してパイロット弁25が右動せしめられ、供給弁体25aが供給口23を開くとともに、吐出弁体25bが吐出口24を閉鎖する。
【0048】これにより、アキュムレータ21内の不活性ガスが供給管22及び供給口23を経て圧力室8内に導入され、該圧力室8内の圧力は、アキュムレータ21の圧力と同レベルのPvとなる。そして、該圧力室8内の圧力Pvによる下向きの力が前記入口室5の圧力Psによる上向きの力に打ち勝つこととなり、ポペット弁3はそのシート部3aが弁座1aに押し付けられて閉弁される。
【0049】また、前記ポペット弁3の開時には、図4に示されるように、前記パイロット弁25が左動せしめられて供給弁体25aが供給口23を閉じるとともに吐出弁体25bが吐出口24を開く。これにより圧力室8内の不活性ガスは吐出口24から外部に排出されて該圧力室8内の圧力は大気圧となり、入口室5内の燃焼ガスの圧力Psによる上向きの力が前記圧力室8内の圧力Pvによる下向きの力よりも大きくなってポペット弁3は上動され、シート部3aが弁座1aから離れて開弁し、入口室5内の燃焼ガスはノズル4に流出して推力を発生する。
【0050】かかる実施形態によれば、アキュムレータ21内に収容された低温の不活性ガスを供給口23を通して圧力室8に供給し、また吐出口24を通して外部に排出するので、該供給口23及び吐出口24を開閉するパイロット弁25の温度上昇が抑制される。これにより、パイロット弁25に耐熱材料の使用を不要として、低コストの材料を使用でき、また該パイロット弁25の熱スティックの発生も完全に回避できる。
【0051】また、前記アキュムレータ21内の圧力は、高圧に設定可能であるため、該圧力を入口室5内の圧力即ち、燃焼ガス圧力Psよりも充分に大きく採ることができ、従来は前記燃焼ガス圧力Psが上限であった圧力室8内の圧力Pvを前記アキュムレータ21内の圧力まで上昇させることができる。これにより、ポペット弁3の開→閉時の駆動力を従来技術に比べて増大することができ、該ポペット弁3の応答性及び作動性が向上する。
【0052】また、ポペット弁3の閉→開時には、パイロット弁25により、供給口23を閉じるとともに、吐出口24を開口することにより、アキュムレータ21から圧力室8への不活性ガスの供給を遮断するとともに、圧力室8内のガスを排出することにより、該圧力室8内の圧力Pvを大気圧まで減圧可能となる。この結果、ポペット弁3の閉→開時においても、該ポペット弁3の上向きの駆動力即ち、開弁力が大きくなり、応答性及び作動性が向上する。
【0053】
【発明の効果】以上記載のごとく、本発明によれば、ポペット弁が、熱伝導率の小さい耐熱複合材からなるので、該弁の外周摺動部の温度上昇が抑制され、耐熱、耐油ゴム製シールリングの使用が可能となり、該外周摺動部におけるガスの漏洩を防止でき、該漏洩によるポペット弁の熱スティックの発生を防止することができる。
【0054】また、ポペット弁は、軸心に対称にオリフィス付きの通孔を設けているので、ガスの流体力のアンバランスの発生が回避され、これによって引き起こされるポペット弁の拗れの発生を防止でき、ポペット弁を滑らかに作動させることができる。
【0055】さらに、前記のように、ポペット弁は従来技術に係るタングステン材よりも比重が小さい耐熱複合材からなるので、軽量となり、弁開閉の応答性が向上する。以上により、耐久性が高く、応答性が良好で、滑らかな作動がなされるポペット弁装置を得ることができる。
【0056】また、請求項3乃至4の発明によれば、ポペット弁を開閉作動させる圧力室への作動気体にアキュムレータに封入された低温気体を用いるので、パイロット弁の材料として低コストの材料の使用が可能となるとともに、熱スティックの発生が防止される。また、かかる発明によれば、ポペット弁の閉弁時の作動圧力をアキュムレータ内の圧力まで上昇させることが容易にできるため、開弁駆動力が増大し、さらに、閉弁時には圧力室を完全に大気圧に低下せしめることができるので、ポペット弁の下面からの開弁力が大きくなる。これにより、応答性が高く、かつ作動性が向上されたポペット弁装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成11年3月29日(1999.3.29)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久 (外1名)
【公開番号】 特開2000−283301(P2000−283301A)
【公開日】 平成12年10月13日(2000.10.13)
【出願番号】 特願平11−85736