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【発明の名称】 弁構造
【発明者】 【氏名】佐藤 裕之

【要約】 【課題】更なる信頼性と低コスト性を備えた弁構造を提供すること。

【解決手段】弁体と弁座とを備え、一方の当接面(第一当接面)がゴム成形部34とされ、他方の当接面(第二当接面)がプラスチック成形部38とされ、さらに前記第一当接面に層状構造の無機微粒子からなる粘着防止層32が形成されている弁構造。粘着防止層32をMoS2 等の単層構造無機微粒子33とタルク等のサンドイッチ構造無機微粒子40の混合物で形成する。サンドイッチ構造無機微粒子40の外側層がゴム成形部34からブリードする粘着成分36を吸着する特性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 弁体と弁座とを備え、一方の当接面(第一当接面)がゴム成形部とされ、他方の当接面(第二当接面)がプラスチック成形部とされ、さらに前記第一当接面に層状構造無機微粒子からなる粘着防止層が形成されている弁構造において、前記粘着防止層が単層構造無機微粒子とサンドイッチ構造無機微粒子の混合物で形成され、該サンドイッチ構造無機微粒子の外側層が前記ゴム成形部からブリードする粘着成分を吸着する特性を有していることを特徴とする弁構造。
【請求項2】 弁体と弁座とを備え、一方の当接面(第一当接面)がゴム成形部とされ、他方の当接面(第二当接面)がプラスチック成形部とされ、さらに前記第一当接面に層状構造の無機微粒子からなる粘着防止層が形成されている弁構造において、前記粘着防止層が二硫化モリブデンとフィロケイ酸塩の混合物で形成されていることを特徴とする弁構造。
【請求項3】 前記フィロケイ酸塩がタルクであることを特徴とする請求項2記載の弁構造。
【請求項4】 前記二硫化モリブデンとタルクの混合重量比が、前者/後者=0.3/9.7〜8/2であることを特徴とする請求項3記載の弁構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、弁体と弁座とを備え、一方の当接面(第一当接面)がゴム成形部とされ、他方の当接面(第二当接面)がプラスチック成形部とされ、第一当接面に層状構造無機粉末からなる粘着防止層が形成されている弁構造に関する。
【0002】特に、ゴム材料中の粘着成分(低分子量成分)がブリードし易い流体(たとえばガソリン等)の通路に配される弁装置の弁構造として好適な発明である。
【0003】本発明を適用すると好適な弁装置としては、フュエルキャップ弁装置、ORVR(Onboard Refueling Vapor Recovery)バルブ、カットオフバルブ等を挙げることができる。
【0004】ここでは、フュエルキャップに内蔵されている弁装置である正・負圧弁を例に採り説明するが、これに限られるものではない。
【0005】
【背景技術】図1に一般的なフュエルキャップ12に内蔵される正・負圧弁の一例を示す。
【0006】ゴム製の第一弁体14とプラスチック製の第二弁体16とを備えている。第一弁体14は、第一バルブ押え18を介して第一付勢コイルばね20で下方へ付勢されている。第二弁体16は、キャップ首部22の内側に形成された弁箱小径部24内に上下動可能に収納され、該第二弁体16と弁箱小径部24の底壁24aとの間に介装された第二付勢コイルバネ26で上方へ付勢されている。即ち、常態においては、第一弁体14は弁箱小径部24と弁箱大径部28との連結段部を第一弁座29として当接して、第二弁体16は第一弁体14の下面内側を第二弁座15として当接して、それぞれ閉状態にある。
【0007】当該フュエルキャップ12をフュエルタンクのフィラーネック(図示せず)にねじ込んで使用する。そして、タンク内が過圧状態になると、第一弁体14が第一付勢コイルばね20のばね力に抗して上昇し、第一弁体14が第一弁座29から離れて開らく。逆に、タンク内が負圧状態になると、第二弁体16が第二付勢コイルばね26のばね力に抗して下降し、第二弁体16が第二弁座15から離れて開く。
【0008】ここで、第二弁体16、第一弁体押え18、第一弁座29を含む弁箱部24、28などは硬質プラスチック材料で成形され、第一弁体14はシール製等の観点からゴム材料で成形されている。上記硬質プラスチック材料としては、耐ガソリン性に優れたポリアセタール(POM)やポリアミド等の極性プラスチック材料を用い、ゴム材料としては、耐ガソリン性に優れたフッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)等を用いていた。
【0009】上記の如く、フュエルキャップ12においては、タンク内圧/外圧の差(正圧・負圧)によりコイルばね20、26のばね力に抗して第一・第二弁体14、16の開弁性を確保するため、従来、第一弁体14の当接面に二硫化モリブデン(MoS2 )粉末からなる粘着防止層(通常、打粉層)32を形成して対応していた。しかし、MoS2 は比較的高価であり、その膜厚増大および性能向上にも限界があった。そして、環境規制に対応するためにも、安価で信頼性の高い弁構造が望まれていた。
【0010】本発明は、上記にかんがみて、更なる信頼性と低コスト性を備えた弁構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、弁体と弁座部との間に粘着現象が発生する原因は、熱、ガソリン蒸気等と接触によりゴム成形部(弁体)34からブリードしてきた低重合度成分、タッキファイア等の低分子量成分(粘着成分)36が、粘着防止層(打紛層)32を形成する二硫化モリブデン粒子33の間を通り抜けて、ゴム成形部(第一当接面)34とプラスチック成形部(第二当接面)38との間で、縦方向で連続する粘着成分36の連続層が形成されるためであると仮定して(図3参照)、上記課題を解決するために鋭意開発に努力をした結果、下記構成の弁構造に想到した。
【0012】弁体と弁座とを備え、一方の当接面(第一当接面)がゴム成形部とされ、他方の当接面(第二当接面)がプラスチック成形部とされ、第一当接面に層状構造無機微粒子からなる粘着防止層が形成されている弁構造において、粘着防止層が単層構造無機微粒子とサンドイッチ構造無機微粒子の混合物で形成され、サンドイッチ構造無機微粒子の外側層がゴム成形部からブリードする粘着成分を吸着する特性を有していることを特徴とする。
【0013】粘着防止層を形成する単層構造無機微粒子とサンドイッチ構造無機微粒子との組み合わせは、二硫化モリブデンとフィロケイ酸塩の組み合わせが、耐久性の見地から望ましい。
【0014】当該フィロケイ酸塩としては、タルクが雲母(マイカ)等の他のフィロケイ酸塩に比して低分子量成分である粘着成分に対する吸着能が高くて望ましい。
【0015】さらに、二硫化モリブデンとタルクの重量混合比は、前者/後者=0.3/9.7〜8/2の範囲が、粘着防止層の耐久性および粘着成分ブロック性のバランスから望ましい。
【0016】
【実施の態様】以下、本発明の一実施態様を図例に基づいて説明する。
【0017】前述例と同様、ゴム製の第一弁体14の下面に、層状構造無機微粒子からなる粘着防止層32が形成されている(図2参照)。ここで、ゴム材料としては、フッ素ゴム(FKM)、フロロシリコンゴム、NBR系ゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム等を挙げることができる。ここで、層状構造無機微粒子は、一般に滑性を有し、固体潤滑剤として使用されているものが多い。
【0018】そして、本実施形態では、粘着防止層32が単層構造無機微粒子(以下「単層無機微粒子」という。)33とサンドイッチ構造無機微粒子(以下「三層無機微粒子」という。)40の混合物で形成され、三層無機微粒子40の外側層40aがゴム成形部34からブリードする粘着成分を吸着する特性を有している。
【0019】ここで、単層無機微粒子としては、固体潤滑剤のうち単層構造のもの、たとえば、二硫化モリブデン(MoS2 )、二硫化タングステン(WS2 )、グラファイト(黒鉛)(C)、窒化ホウ素(BN)等を使用可能である。これらのうち二硫化モリブデンが、ゴム表面との密着性の見地から望ましい。この単層無機微粒子の粒径(「マイクロトラック法」による:以下同じ。)は、通常4〜11μm、望ましくは6〜9μmとする。
【0020】また、三層無機微粒子としては、固体潤滑剤のうち三層構造のもの、タルク、マイカ(雲母)、ギョウガン石、パイロフィライト等のフィロケイ酸塩のものを好適に使用可能である。これらのうち、粘着成分吸着能が雲母等に比しての高いタルクが望ましい。この三層無機微粒子の粒径は、上記単層無機微粒子の粒径と同様とする。
【0021】タルク(Mg6 [Si820](OH)4 )は、ブルーサイト層(Mg(OH)2 )をSiO4 四面体層で挟んだ三層構造をなすもので(志田正二等編「化学辞典」(1981)森北出版)、ブルーサイト層とSiO4 四面体層とは、酸素を共有して強固に結合されているが、SiO4 四面体層間の結合力(ファン・デル・ワールス力)は、弱いため簡単に層間剥離を起こす。また、SiO4 四面体層表面は、親油性を有しているため粘着成分を吸着する。
【0022】単層無機微粒子と三層無機微粒子の重量混合比は、組み合わせにより異なるが、二硫化モリブデンとタルクとの組み合わせの場合、前者/後者=0.3/9.7〜8/2、望ましくは0.6/9.4〜6.5/3.5、より望ましくは2/8〜4/6とする。二硫化モリブデンが過少では、耐久性に問題が発生し易く(タルクはゴム表面との密着性が低いため、二硫化モリブデンを補う必要がある。)、タルクが過少では粘着成分がプラスチック成形部に到達するのをブロックするのに十分な吸着能を得られず、本発明の効果を奏し難くなる。
【0023】そして、粘着防止層32の形成の態様は、通常、打粉による。そして、打粉方法としては、タンブリング(タンブラーに非処理品と粉(無機微粒子)を入れて回転させる方法)、バーニッシング(セーム皮、柔らかい布等で粉を刷り込む方法)等があるが、タンブリングが、品質安定等の見地から望ましい。なお、タンブリングにより打粉を行なうときは、たとえば、被処理品/無機微粒子≒16/1の重量比でタンブラーにチャージ後、タンブラー回転数20〜60rpm.約20〜30min 運転して打粉を行なう。
【0024】なお、第一弁体は全体がゴム成形部とされている必要は必ずしもなく、少なくとも当接面のみがゴム成形部であってもよい。
【0025】
【発明の作用・効果】本発明の弁構造は、上記の如く、ゴム成形部表面に形成される粘着防止層が、単層無機微粒子と三層無機微粒子の混合物で形成され、三層無機微粒子の外側層がゴム成形部からブリードする粘着成分を吸着する特性を有している構成により、低コストで開弁の信頼性を増すことが可能となる。
【0026】その理由は、下記の如くであると推定される(図4参照)。
【0027】弁閉時(荷重付加時)にはゴム成形部(第一当接面)34から低分子量成分(粘着成分)がブリードしてき、従来と同様、二硫化モリブデン(単層無機微粒子)33の間を抜けようとするが、外側層40aが粘着成分を吸着する特性を有しているタルク(三層無機微粒子)が混合され、該無機微粒子の外側層40aに粘着成分36が吸着する。
【0028】そして、弁開時(荷重開放時)には、タルク40に粘着成分が吸着されていても、それは外側層40aのみで、中間層40bの部位では側面も含めて遮断されるため、ゴム成形部(第一当接面)34とプラスチック成形部(第二当接面)38との間に粘着成分36の縦方向連続層が実質的に形成されない。すなわち、図4に示す如く、粘着成分も層状に形成され、従来の如く粘着成分の縦方向連続層が形成されるようなことはない。したがって、弁粘着現象の発生が抑制され、開弁応答性が良好となる。
【0029】粘着成分吸着能をほとんど有しない無機微粒子と粘着成分吸着能を有する単層構造の無機微粒子を併用することも考えられるが、最終的には、縦方向に第一当接面と第二当接面とをつなぐ連続層が形成されるため、本発明に比して弁体付着防止効果は小さくなる。
【0030】なお、MoS2 とタルク等の非ガラス系絶縁物バインダーとを配合せしめた粉体からなる潤滑剤に関する技術が特開平4−304298号公報に開示されいるが、本発明の発明性に影響を与えるものではない。
【0031】すなわち、適用技術分野が「温間塑性加工用」の潤滑剤であり、本発明のような「弁構造」と粘着防止剤とは、全く相違するとともに、混合態様も、一方の大きな粒子に他方の小さな粒子を担持させる態様であり、本発明のような略同径ないし近似径の粒子相互の単純混合とは全く別異である。
【0032】
【試験例】尚、図1に示す弁構造において、第一弁体14をFKMで成形し第二弁体16および弁箱部24、28をPOMで成形したものについて、表1に示す各層状無機微粒子(混合物)を弁体/層状微粒子(重量比)=16/1でタンブラーにチャージ後、20min 間タンブリングして、第一弁体14を打粉した。該各第一弁体14をフュエルキャップに組み付けて、正・負圧時の開弁圧ピーク値を、耐熱性試験後(70℃熱雰囲気×288h)及び耐燃料油性試験後(40℃ガソリンベーパ×72h→70℃熱雰囲気×240h)についてそれぞれ測定した。そして、各開弁圧上昇値について、MoS2 のみの場合における値を100として表1に指数表示をする。ここで「開弁圧上昇値」とは、開弁圧ピーク値から設定開弁圧(ばね力で設定された)を引いた値(差)のことであり、開弁圧上昇値=0とは、弁体の弁座に対する粘着が全くないことを意味する。
【0033】なお、MoS2 /タルク(重量比)=1/9〜5/5の範囲における開弁圧上昇値(正圧時、負圧時とも)と、MoS2 /タルク(重量比)=3/7の場合における開弁圧上昇値との間には実質的な差がなかった。
【0034】また、弁仕様は、第一弁座(正圧用)径19mm、第二弁座(負圧用)径10mmである。
【0035】これらの結果から、MoS2 単独(比較例)より、粘着成分吸着能を有する層状無機微粒子を配合させたもの(実施例1・2)が、開弁圧上昇値を小さくできることが分かる。
【0036】
【表1】

【出願人】 【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
【出願日】 平成11年3月31日(1999.3.31)
【代理人】 【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫 (外1名)
【公開番号】 特開2000−240834(P2000−240834A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−91075