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【発明の名称】 緊急遮断弁
【発明者】 【氏名】戸崎 和男

【要約】 【課題】吸気管の使用を省略することにより、弁室の長手方向の寸法を短縮して、弁室の小型化を図ることで、弁室の土木構築費を削減するとともに、吸気管のコスト相当分を削減して、全体の建設費用を低く抑え、さらに、スペース上の制約を緩和して、設置不能な状態を回避することができる緊急遮断弁を提供する。

【解決手段】弁箱1における弁体2の下流側に補修弁70Aを介して吸気手段80が弁箱1の内部に連通して設けられ、従来必要とされていた吸気管8Aの使用を省略し、弁室70の長手方向の寸法L2を短縮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 異常事態の発生時に弁閉して通水を遮断する弁体が弁箱の内部に収容された緊急遮断弁において、前記弁箱における前記弁体の下流側に該弁体の弁閉直後に吸気して、弁箱より下流側に接続されている配水管の通水を可能にする吸気手段が設けられていることを特徴とする緊急遮断弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば地震発生時などに配水管を緊急遮断する緊急遮断弁に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、地震によって配水管が破損した異常事態の発生時において、通水を自力により遮断する機能を備えた自力式緊急遮断弁として、図4に示すものが知られている。この図において、1は弁箱、2は弁体、3は弁棒を示し、弁箱1の両端開口部に配水管4A,4Bが接続され、図示のような弁体2の弁開時において、矢印Fで示すように、配水管4Aから配水管4Bの方向に水が通過する。一方、弁棒3に固着された弁体2が弁棒3とともにその軸線回りに約90度回動することにより、流路の閉じ状態を得ることができる。この種の緊急遮断弁は、流速検知機構10、係脱機構20、回動機構30、トルク発生源40およびリンク機構50を備えている。
【0003】流速検知機構10は、通過水流Fの流速を検知して、流速が設定値に到達した時点で作動するように構成されている。すなわち、図4ないし図7に示すように、弁箱1内に突出するフロ−センサ11、弁箱1の上位に水密に取付けられたフ−ド12内で水平かつ回転自在に支持された軸13、フ−ド12の外部において軸13の端部に固着されたセンサレバ−14、センサレバ−14における支点部14Aの一端部に固着されたバランスウエイト15、センサレバ−14におけるバランスウエイト15の反対側に位置して矢印方向の摺動および位置決め可能に取付けられたセンサウエイト16を備えており、フロ−センサ11の上端部は軸13に固着されている。
【0004】係脱機構20は、図4ないし図7に示すように、鉛直方向の丸棒上のロッド21と、このロッド21の下端部に連結されて連動するベルクランク状のラッチレバ−22を備えている。ロッド21の上端部は、ピン23を介して揺動自在にセンサレバ−14におけるバランスウエイト15の反対側に連結され、下端部はラッチレバ−22の一方側延出部22Aの先端部に連結されている。ラッチレバ−22は、ピン22Bに回転自在に支持されており、他方側延出部22Dの先端部に係合爪22dが設けられている。
【0005】回動機構30は、図4、図5、図8、図9および図10に示すように、ラッチ31、ウエイト32、ストライカ−33を備えている。ラッチ31は軸34の一端部に固着され、軸34はシリンダベ−ス5の上部に設けた軸受6,6によって水平かつ回転自在に支持されている。これにより、ラッチ31が軸34とともに回転した場合に、先端爪部31Aのえがく回転軌跡R上で、前記ラッチレバ−22の係合爪22dに係脱可能に対応することになる。ウエイト32は、斜め上方にのびるレバ−35を介して軸34の他端部に固着されている。ストライカ−33は、斜め下方向にのびて互いに対向する左右1対のア−ム部33A,33Aと、これらア−ム部33A,33Aの下端部を橋絡連結した水平方向のストライキングピン33Bを備えたU字状に形成され、ア−ム部33A,33Aの上端部が、軸受6,6の間で軸34に固着されている。
【0006】トルク発生源40は、図4に示すように、レバ−41を介して弁棒3の一端部に取付けられたウエイト42によって構成されている。リンク機構50は、図4、図8、図10および図11に示すように、第1リンク51、第2リンク52、レバ−53を備えている。第1リンク51の先端部は水平方向のピン54を介して固定部材55に回転自在に支持され、後端部は水平方向のピン56を介して第2リンク52の先端部に関節結合されているとともに、第2リンク52の後先端部が水平方向のピン57を介してレバ−53の上端部に回転自在に連結されている。また、第1リンク51を上下方向に貫通してボルト・ナットによってなる位置決め部材58が取付けられ、この位置決め部材58の下端がストッパ−58Aに当接することにより、リンク機構50の思案点Cの下方側(一方側)への作動が限度内に規制される。前記レバ−53は、弁棒3の他端部に固着されており、その下端部に水平方向のピン59を介して油圧シリンダ7におけるピストンロッド7Aの先端部が連結されている。さらに、レバ−53の下端部に突子53Aが突設されているとともに、その後方に開度指針53Bを設けてある。なお、前記油圧シリンダ7は、図9に示すように、水平方向のトラニオン8を介してシリンダベ−ス5およびこのシリンダベ−ス5の一側開口を着脱可能に閉塞しているトラニオンカバ−5Aに揺動自在に支持されている。なお、図5において、17は上部ストッパ、18は下部ストッパを示し、それぞれはセンサレバ−14におけるバランスウエイト14の近傍に対応して設けられている。また、図8において、9A,9Bはリミットスイッチ、9Cは開度目盛板、9Dはストッパを示し、リミットスイッチ9A,9Bは、レバ−53が弁棒3とともに回転した場合に、突子53Aのえがく回転軌跡R上に対応して設けられ、開度目盛板9Cは開度指針53Bに対応して設けられている。
【0007】このように構成された緊急遮断弁において、図5に示す通過水流Fの流速が設定値未満の領域では、流速検知機構10のバランスウエイト15とセンサウエイト16の重量比およびレバ−比により、センサレバ−14が上部ストッパ17に当接した実線で示す右下がりの姿勢に保持され、フロ−センサ11は実線で示す位置にある。したがって、係脱機構20におけるラッチレバ−22も実線で示す第1位置に保持され、その係合爪22dは回動機構30におけるラッチ31の爪部31Aに係合し、図4の弁体2を略水平姿勢の弁開状態に保持している。
【0008】地震の発生等によって、緊急遮断弁の下流側配管4Bが破損し、図5に示す通過水流Fの流速が設定値以上になると、フロ−センサ11は仮想線で示す位置まで回動し、センサレバ−14は仮想線で示すように下部ストッパ18に当接した右上がりの姿勢に保持される。これにより、係脱機構20のロッド21は引上げられ、ラッチレバ−22を仮想線で示す第2位置まで時計回りに回動させて、係合爪22dを回動機構30におけるラッチ31の爪部31Aから退避させる。ラッチレバ−22の係合爪22dとラッチ31の爪部31Aとの係合が解除されると、図8において、実線で示す位置に保持されている回動機構30のウエイト32の自重により、レバ−35および軸34(図9参照)が仮想線で示す位置まで回動するとともに、ストライカ33も破線で示す位置から仮想線で示す位置に回動する。
【0009】前記ストライカ33の回動によって、図10に示すストライキングピン33Bがリンク機構50における第1リンク51の後端部と第2リンク52の先端部との関節結合部の下面に衝突して上方に押上げる。これにより、ピン56がリンク機構50の思案点C1を越えて上方側(他方側)に移動する。その瞬間、図4のトルク発生源40におけるウエイト42の自重による閉トルクでレバ−41および弁棒3を矢印B方向に回動させて、弁体2を弁閉方向に回動させる。弁体2が弁閉方向に回動し始めると、通過水流Fの動圧が弁体2に負荷されて閉弁方向の水力トルクが発生する。一方、レバ−53がウエイト42の自重により回動される前段状態、つまり図8の実線で示す位置にあって、突子53Aがリミットスイッチ9Aに当接している状態では、油圧シリンダ7の前室内の高圧油は還流通路(図示省略)を通ってオイルタンク(図示せず)に還流されている。したがって、前記レバ−53の回動により、油圧シリンダ7のピストンロッド7Aが前進するとともに、油圧シリンダ7は、図9のトラニオン軸8を回動中心に図8の右上がり(前上がり)に傾動する。このような油圧シリンダ7の作動によって、前記ウエイト42の自重による閉トルクと、通過水流Fの動圧による水力トルクによる図4の弁体2の弁閉速度を調整して、ウォ−タハンマ現象の発生を防止しながら、弁体2を略垂直姿勢の弁閉状態にして、上流側の配水管4Aから下流側の配水管4Bへの通水を遮断する。この弁閉状態は、弁棒3とともにレバ−53が図10の実線で示す位置からストッパ9Dに当接する仮想線で示す位置まで回動して停止することによって保持される。また、レバ−53がストッパ9Dに当接する仮想線で示す位置まで回動して停止することにより、突子53Aがリミットスイッチ9Bに当接して、油圧シリンダ7の後室内の高圧油は還流通路(図示省略)を通ってオイルタンク(図示せず)に還流されている。
【0010】このように、従来の緊急遮断弁では、地震によって配水管4Bが破損した緊急時において通水を自力により遮断することができる。一方、図12に示すように、緊急遮断弁は、コンクリート製の地中埋設型弁室70内に設置されるとともに、弁室70内で弁箱1の下流側に吸気手段80を設けた吸気管80Aと伸縮管90が直列に接続される。
【0011】吸気手段80は、たとえば空気弁によって構成され、緊急遮断弁の弁体2が弁開している通水時には、内部のフロートおよび弁(図示省略)が上昇して弁閉し、吸気管80Aへの吸気を遮断している。緊急遮断弁の弁体2が弁閉して通水を遮断された異常事態発生時には、前記図示されていないフロートおよび弁が下降して吸気管80A内に吸気し、伸縮管90の下流側に接続されている配水管4Bの通水を可能にしている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来の緊急遮断弁では、弁箱1の下流側に吸気管80Aを接続し、この吸気管80Aに空気弁によってなる吸気手段80を設けているため、弁室70の長手方向の寸法Lが吸気管80Aの長手方向の寸法L1分だけ長くなり、弁室70が大型化される。このため、弁室70の土木構築費が高くなるとともに、吸気管80Aのコストが加算されるので、全体の建設費用が高くなる問題点を有している。また、大きい設置スペースが必要であるため、場合によっては、スペース上の制約により、設置不能な状態を招くおそれもある。
【0013】そこで、本発明は、吸気管の使用を省略することにより、弁室の長手方向の寸法を短縮して、弁室の小型化を図ることで、弁室の土木構築費を削減するとともに、吸気管のコスト相当分を削減して、全体の建設費用を低く抑え、さらに、スペース上の制約を緩和して、設置不能な状態を回避することができる緊急遮断弁を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係る緊急遮断弁は、異常事態の発生時に弁閉して通水を遮断する弁体が弁箱の内部に収容された緊急遮断弁において、前記弁箱における前記弁体の下流側に該弁体の弁閉直後に吸気して、弁箱より下流側に接続されている配水管の通水を可能にする吸気手段が設けられていることを特徴としている。
【0015】本発明によれば、弁箱における弁体の下流側に吸気手段を設けているので、吸気管の使用を省略できる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明を適用した自力式緊急遮断弁の弁箱を示す縦断面図である。なお、本発明の特徴は、吸気手段を弁箱に設けた点にあり、その他の構造は、前記従来の自力式緊急遮断弁と変わらないので、本発明の特徴部分のみについて説明する。図1において、弁箱1における弁体2の下流側に補修弁70Aを介して吸気手段80が弁箱1の内部に連通して設けられている。
【0017】吸気手段80は、弁体2の弁閉直後に吸気して下流側の配水管4Bの通水を可能にするためのもので、たとえば、図2に示す空気弁によってなる。吸気手段80を構成している空気弁は、弁箱81と、弁箱81の内部に収容されたフロ−ト82と、このフロ−ト82に被冠されてフロ−ト82とともにフロートガイド83を案内に昇降する弁体84を備えており、この弁体84の外周縁部上端に弁体シ−ト84Aが形成されている。弁箱81の上端部に第1弁孔85Aが設けられ、下端部に第2弁孔85Bが設けられている。また、フロートガイド83の周壁上端部に複数個の切欠83A,83Aが設けられている。さらに、フロートガイド83の上端部下面に弁箱側シ−ト86が弁体シ−ト84Aに対向して設けられている。したがって、図3のように、弁室70内に自力式緊急遮断弁を設置し、伸縮管90および配水管4A,4Bの配管が完了した通水前の初期の状態では、フロ−ト82および弁体84は、自重により仮想線で示す弁開位置に下降して第1弁孔85Aを開放する。このため、弁箱1への充水時、弁箱1内の空気は、第2弁孔85B→弁箱81とフロートガイド83の間の隙間87→フロートガイド83の切欠83A→第1弁孔85A→の経路で急速に排気される。また、弁箱1への充水によって弁箱81内に水が流入するのに伴って、フロ−ト82に浮力が発生し、フロ−ト82および弁体84がフロートガイド83を案内に浮上して、実線で示す弁閉位置まで上昇し、弁体84の弁体シ−ト84Aが弁箱側シ−ト86に密着して第1弁孔85Aを閉塞して止水する。
【0018】また、この種の空気弁では、複数のステー、ボルトおよび蝶ナットなどによってなる締結機構100を使用して、弁箱81の上部にカバー101を装着し、このカバー101により第1弁孔85Aを覆うことで、フロートガイド83および弁箱81の内部にゴミなどの異物が侵入するのを防止するとともに、弁箱1への充水時において第1弁孔85Aが弁体84により閉塞される前段で第1弁孔85Aから噴出する水が上方へ高く飛散するのを防止している。
【0019】一方、異常事態の発生によって、自力式緊急遮断弁の弁体2が図1のように弁閉して通水が遮断されると、弁箱1における弁体2の下流側が負圧になり、図2の弁体84とフロート82が仮想線で示す位置まで下降して、第1弁孔85Aが開放される。これにより、補修弁70Aを介して弁箱1における弁体2の下流側に吸気がなされ、伸縮管9および下流側配水管4Bの通水を可能にする。
【0020】このように、弁箱1における弁体2の下流側に吸気手段80を設けているので、従来必要とされていた吸気管80Aの使用を省略できる。このため、図3の弁室70の長手方向の寸法L2を図12の弁室70の長手方向の寸法Lと比較して吸気管80Aの長手方向の寸法L1相当分短縮することができる。これにより、弁室70の小型化を図り、弁室70の土木構築費を削減するとともに、吸気管80Aのコスト相当分を削減して、全体の建設費用を低く抑え、さらに、スペース上の制約を緩和して、設置不能な状態を回避することができる。
【0021】前記実施の形態では、緊急遮断弁として自力式緊急遮断弁を使用して説明しているが、震度、流速(流量)、水位などの異常信号の受信により自力で緊急遮断するように構成した信号式緊急遮断弁であってもよい。また、吸気手段80を構成している空気弁は、前記実施の形態で説明した空気弁のみに限らず、他の構造の空気弁を採用してもよい。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、弁箱における弁体の下流側に吸気手段を設けているので、従来必要とされていた吸気管の使用を省略できる。このため、弁室の長手方向の寸法を従来の弁室の長手方向の寸法と比較して吸気管の長手方向の寸法相当分短縮することができる。これにより、弁室の小型化を図り、弁室の土木構築費を削減するとともに、吸気管のコスト相当分を削減して、全体の建設費用を低く抑え、さらに、スペース上の制約を緩和して、設置不能な状態を回避することができる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年2月22日(1999.2.22)
【代理人】 【識別番号】100072338
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 孝一 (外1名)
【公開番号】 特開2000−240832(P2000−240832A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−43521