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【発明の名称】 電磁弁
【発明者】 【氏名】澤田 健治

【要約】 【課題】電磁弁のプランジャの往復動に伴う衝撃音を抑制すると共に金属摩耗粉の発生を防止する。

【解決手段】吸引子(2) のプランジャ(3) と対向する部位には筒状の凹部(21)又は柱状の凸部を、プランジャの吸引子と対向する部位には柱状の凸部(31)又は筒状の凹部を形成し、凹部内にエアギャップを介して凸部を遊嵌する一方、励磁コイル(10)には通電開始時に所望の変化率で立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率で立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生する電流発生回路を接続する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スリーブ後端側に吸引子を、スリーブ先端側に弁座を設け、吸引子と弁座との間のスリーブ内にプランジャを往復動自在に収容し、励磁コイルへの通電時に吸引子の磁着力によってプランジャを吸引してプランジャ先端の弁体を弁座から離間させる一方、励磁コイルへの非通電時にコイルばねの付勢力によってプランジャを弁座に向けて復動させ、弁体を弁座に着座させるようにした電磁弁において、上記吸引子のプランジャと対向する部位には筒状の凹部が形成され、上記プランジャの吸引子と対向する部位には上記凹部内に両者の間にエアギャップを介して遊嵌される柱状の凸部が形成される一方、上記励磁コイルには通電開始時に所望の変化率でもって立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率でもって立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生する電流発生回路が接続されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】 スリーブ後端側に吸引子を、スリーブ先端側に弁座を設け、吸引子と弁座との間のスリーブ内にプランジャを往復動自在に収容し、励磁コイルへの通電時に吸引子の磁着力によってプランジャを吸引してプランジャ先端の弁体を弁座から離間させる一方、励磁コイルへの非通電時にコイルばねの付勢力によってプランジャを弁座に向けて復動させ、弁体を弁座に着座させるようにした電磁弁において、上記吸引子のプランジャと対向する部位には柱状の凸部が形成され、上記プランジャの吸引子と対向する部位には上記凸部の外側に両者の間にエアギャップを介して遊嵌される筒状の凹部が形成される一方、上記励磁コイルには通電開始時に所望の変化率でもって立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率でもって立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生する電流発生回路が接続されていることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】 上記電流発生回路が通電開始時の電流の立ち上がり部分及び通電停止時の電流の立ち下がり部分の電流波形を被制御体に応じて最適な波形に制御しうるようになした請求項1又は2記載の電磁弁。
【請求項4】 上記電流発生回路が上記励磁コイルと並列に接続され、キャパシタとレジスタとの直列回路を含む請求項1又は2記載の電磁弁。
【請求項5】 上記キャパシタが上記励磁コイル又はそのハウシングに一体的に取付けられている請求項4記載の電磁弁。
【請求項6】 上記電流発生回路が、電源の正極側をアノードとしたダイオードとレジスタとの直列回路と、電源の正極側をカソードとしたダイオードとレジスタとの直列回路を並列接続し、これをキャパシタに直列接続して構成されている請求項1又は2記載の電磁弁。
【請求項7】 上記励磁コイルが2分割され、一方の励磁コイル半部が電源の正極に接続され,他方の励磁コイル半部が電源負極側に接続されている一方、上記電流発生回路が、上記両励磁コイル半部間に上記一方の励磁コイル半部側をアノードとするダイオードを直列接続し、該ダイオードのアノードと電源の負極間にキャパシタを接続して構成されている請求項1又は2記載の電磁弁。
【請求項8】 電源の正極側をカソード、負極側をアノードとするダオードが上記励磁コイルと並列に接続されている請求項4ないし7のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項9】 上記キャパシタが電解コンデンサである請求項4ないし8のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項10】 上記キャパシタが2重槽コンデンサである請求項4ないし8のいずれかに記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は電磁弁に関し、例えばプランジャ先端に球形弁体を備えた電磁弁において静音性と動作信頼性を向上するようにした電磁弁に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、冷媒回路の回路切換等には電磁弁がよく用いられているが、かかる電磁弁には開弁ストロークが比較的大きな構造のものが採用される。即ち、この種の電磁弁ではスリーブにプランジャが往復動自在に収容されるとともに、励磁コイルが外装されており、該励磁コイルへの通電によって吸引子を励磁し、プランジャを吸着させてプランジャ先端の球形弁体を弁座から離脱させる一方、励磁コイルへの通電の遮断によって吸引子を消磁し、プランジャをコイルばねの付勢力によって復動させてプランジャ先端の球形弁体を弁座に着座させことにより、弁作用を行わせるようになっている。
【0003】また、吸引子はスリーブの後端部に嵌合され、TIG溶接等の手段で固着封止されており、吸引子の上端部には励磁コイルを覆うハウジングがねじによって固定されている。スリーブの先端側には弁座を有する弁座基部が嵌合され、ろう付け等の手段で固定封止され、該弁座基部には冷媒の流入口と流出口を構成するパイプが取付けられている。吸引子の先端面及びプランジャの後端面には各々凹部が対向して形成され、両凹部の間にコイルばねが縮設されてプランジャを付勢するようになっている。
【0004】以上のように構成された従来の電磁弁において、スリーブ外側に固定した励磁コイルに通電すると、プランジャがコイルばねのばね力に抗して吸引され、球形弁体が弁座から離脱して流通路が開放される一方、電磁コイルへの通電を遮断すると、プランジャがコイルばねのばね力によって付勢され、球形弁体が弁座に着座して流通路を閉鎖するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の電磁弁では励磁コイルへの通電時にはプランジャと吸引子とが衝合し、遮断時にはプランジャ先端の球形弁体と弁座が衝合するが、プランジャ、吸引子及び球形弁体は一般的に金属材料で構成されているので、衝合の際には不快な衝撃騒音を発生する。また、プランジャ及び吸引子の材質はフェライト系ステンレスを含む鉄系であるので、衝合の際に摩耗粉が生じやすく、これがプランジャや吸引子に磁着されて作動不良の原因となるという問題があった。
【0006】本発明の目的は上記の問題点を解消し、プランジャと吸引子間及び弁体と弁座間に発生する衝撃騒音を抑制するとともに、金属摩耗粉の発生を防止するようにした電磁弁を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明に係る電磁弁は、スリーブ後端側に吸引子を、スリーブ先端側に弁座を設け、吸引子と弁座との間のスリーブ内にプランジャを往復動自在に収容し、励磁コイルへの通電時に吸引子の磁着力によってプランジャを吸引してプランジャ先端の弁体を弁座から離間させる一方、励磁コイルへの非通電時にコイルばねの付勢力によってプランジャを弁座に向けて復動させ、弁体を弁座に着座させるようにした電磁弁において、上記吸引子のプランジャと対向する部位には筒状の凹部が形成され、上記プランジャの吸引子と対向する部位には上記凹部内に両者の間にエアギャップを介して遊嵌される柱状の凸部が形成される一方、上記励磁コイルには通電開始時に所望の変化率で立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率で立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生する電流発生回路が接続されていることを特徴とする。
【0008】また、本発明に係る電磁弁は、スリーブ後端側に吸引子を、スリーブ先端側に弁座を設け、吸引子と弁座との間のスリーブ内にプランジャを往復動自在に収容し、励磁コイルへの通電時に吸引子の磁着力によってプランジャを吸引してプランジャ先端の弁体を弁座から離間させる一方、励磁コイルへの非通電時にコイルばねの付勢力によってプランジャを弁座に向けて復動させ、弁体を弁座に着座させるようにした電磁弁において、上記吸引子のプランジャと対向する部位には柱状の凸部が形成され、上記プランジャの吸引子と対向する部位には上記凸部の外側に両者の間にエアギャップを介して遊嵌される筒状の凹部が形成される一方、上記励磁コイルには通電開始時に所望の変化率で立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率で立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生する電流発生回路が接続されていることを特徴とする。
【0009】本発明の特徴の1つは吸引子に筒状の凹部又は柱状の凸部を、プランジャに柱状の凸部又は筒状の凹部を形成し、これを吸引子の筒状の凹部又は柱状の凸部にエアギャップを介して遊嵌させる一方、通電開始時に所望の変化率で立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率で立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を励磁コイルに通電するようにした点にある。これにより、プランジャ往動及び復動の終期において励磁コイルに流れる急激な電流変化が漸減され、プランジャの往動及び復動が緩やかになる結果、弁体と弁座、及びプランジャと吸引子の衝合が抑制でき、衝撃騒音の発生を低減して静音性をアップできるとともに、金属摩耗粉の発生を軽減して動作信頼性を大幅に向上できることとなる。
【0010】電流発生回路は通電開始時に所望の変化率でもって立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率でもって立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を発生できれば、どのような構成でもよい。
【0011】例えば、励磁コイルと並列に接続され、キャパシタとレジスタとの直列回路を含んで構成することができる。かかる構成の場合、励磁コイルに通電した時にキャパシタに流入する電流を電源の大きさに応じた大きさに制限でき、又励磁コイルの電流を遮断した時の放電電流の時定数を適宜選択して電流の立ち下がり部分の電流変化を選択できる。また、実質的にキャパシタを追加するだけなので、比較的小さなスペースに収容できる。即ち、キャパシタを励磁コイル又はそのハウシングに一体的に取付けるようにすると、従来の制御回路に変更を加えずに、静音性及び動作信頼性の高い電磁弁を提供できる。
【0012】また、電流発生回路は、電源の正極側をアノードとしたダイオードとレジスタとの直列回路と、電源の正極側をカソードとしたダイオードとレジスタとの直列回路を並列接続し、これをキャパシタに直列接続して構成されることもできる。かかる構成の場合も励磁コイルに通電した時にキャパシタに流入する電流を電源の大きさに応じた大きさに制限でき、又励磁コイルの電流を遮断した時の放電電流の時定数を適宜選択して電流の立ち下がり部分の電流変化を選択できる。
【0013】さらに、励磁コイルを2分割し、一方の励磁コイル半部を電源の正極に接続し、他方の励磁コイル半部を電源負極側に接続する一方、 電流発生回路を、両励磁コイル半部間に上記一方の励磁コイル半部側をアノードとするダイオードを直列接続し、該ダイオードのアノードと電源の負極間にキャパシタを接続して構成することもできる。これにより、レジスタを励磁コイルが有する抵抗に置換してレジスタを省略できる。
【0014】また、電源の正極側をカソード、負極側をアノードとするダオードを励磁コイルと並列に接続すると、励磁コイルへの通電を遮断した際に発生する逆起電力をダイオードに還流させ、キャパシタを破壊するおそれのある大きな電圧が生じないようすることができる。
【0015】電流発生回路は上記の構成例に限定されず、他の構成でもよく、例えばマイクロコンピュータやシーケンサによって構成してもよく、その場合には通電開始時の電流の立ち上がり部分及び通電停止時の電流の立ち下がり部分の電流波形を被制御体に応じて最適な波形に制御しうる機能を有するのが好ましい。また、キャパシタが電解コンデンサでもよく、2重槽コンデンサを用いることもできる。
【0016】
【作用及び発明の効果】本発明によれば、筒状の凹部又は柱状の凸部を備えた吸引子と、柱状の凸部又は筒状の凹部を備えたプランジャを組み合せ、励磁コイルには通電開始時に所望の変化率でもって立ち上がって所定電流値に収束しかつ通電停止時に所望の変化率でもって立ち下がって電流値零に収束するような波形の電流を流すようにしたので、励磁コイルの通電時には吸引子の吸引力とスプリングのばね力を均衡させることもでき、又電流の立ち上がりを制御しない場合でもプランジャと吸引子が実質的に衝合しないようにできる。また、励磁コイルへの通電遮断時には励磁コイルに流れる電流が漸減してばね部材のばね力に起因するプランジャの加速を抑制し、プランジャ先端の弁体と弁座とを緩やかに衝合させることができる。
【0017】その結果、衝撃騒音を小さくすることができ、又緩やかな衝合のために金属摩耗粉の発生を抑制でき、プランジャ又は吸引子の残留磁気による鉄系金属粉の吸着が生じ難く、信頼性の高い製品を提供できる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて説明する。図1は本発明に係る電磁弁の好ましい実施形態の構造例を示す図、図2は上記実施形態におけるキャパシタ内蔵部分の構造例を示す図、図3は上記実施形態における電流発生回路の構成例を示す図、図4は電流発生回路の他の構成例を示す図、図5は電流発生回路の更に他の構成例を示す図、図6は従来の電磁弁の構造例を示す図、図7は本発明が適用される電磁弁の構造例を示す図、図8は従来の電磁弁における励磁コイルに電流を通電し遮断するための回路図、図9は電磁弁の励磁コイルに流れる電流を変化させて、プランジャの吸引力とばね力の関係を見るための回路図、図10は電流の時間変化とプランジャのリフト量との関係を説明するための図、図11は従来構造の電磁弁におけるプランジャの吸引力とばね力の関係を表す図、図12は本発明構造の電磁弁におけるプランジャの吸引力とばね力の関係を表す図、図13は通電・遮断時の過渡電流波形とプランジャの動作特性との関係を示す図である。
【0018】まず、本発明の理解を容易にすべく、従来のこの種の電磁弁の構造を説明する。図6において、電磁弁100は弁組立て体(以下、弁ASSYという)19の回りにハウジング11でカバーした励磁コイル10を配置し、カバー11をねじ12によって弁ASSY19の吸引子2に固定して構成されている。
【0019】弁ASSY19では筒状をなすスリーブ1の上半部に吸引子2が挿入されてTIG溶接等の手段によって固定され、吸引子2の先端面には凹部21が形成されている。スリーブ1の下半部にはプランジャ3が往復動自在に挿入され、プランジャ3の後端面には凹部31が吸引子2の凹部21と対向して形成され、吸引子2とプランジャ3との間にはその凹部21、31内に収容してコイルばね(ばね部材)5が縮設され、又プランジャ3の先端部には球形弁体4が回動自在に取付けられている。
【0020】また、スリーブ1の下端には弁座基部6の筒状部分が嵌合され、ろう付け等の手段によって固定され、弁座基部6の底部には球形弁体4と協同して弁機構を構成する弁座7が形成され、又弁座基部6にはその筒状部分に冷媒の流入口をなす冷媒流入パイプ8が、底部の弁座7の下方に冷媒の流出口をなす冷媒流出パイプ9が各々ろう付け等の手段によって固定されている。
【0021】以上のような電磁弁において、励磁コイル10に通電すると、吸引子2、プランジャ3及びハウジング11が磁気回路を構成し、矢印Aに示されるように磁束が発生する。磁束が発生すると、吸引子2が励磁されて、吸引子2とプランジャ3との間に吸引力が発生し、プランジャ3はコイルばね5のばね力に抗して吸引子2に吸引されて衝合し、弁座7に着座していた球形弁体4は弁座7から離間し、冷媒が流入パイプ8から流出パイプ9に流れる。この時、吸引子2とプランジャ3が共に鉄系の金属であるので、大きな衝撃騒音を発生すると共に、衝合部位で金属摩耗粉が発生することとなる。
【0022】次いで、励磁コイル10への通電を遮断すると、磁束が消失し、従って吸引力が消失するので、プランジャ3はコイルばね5のばね力によって付勢されて弁座7に向けて復動し、球形弁体4が弁座7に着座し、冷媒の流通は遮断される。この時、球形弁体4と弁座7が共に金属材料で構成されているので、大きな衝撃騒音を発生するとともに、衝合部位で金属摩耗粉が発生することとなる。
【0023】次に、従来構造の電磁弁の挙動を詳細に説明する。従来構造では吸引子2とプランジャ3の双方の対向する端面が平面状に構成されており(以下、平面型という)、リフトが大きくなるにつれて吸引力が増加する。かかる構造ではリフト量が増加するにつれて吸引子2とプランジャ3両端面間のギャップが縮小して磁束密度が増加するので、吸引力が増大して両端面が当接したところで、リフトが規制される。この構造は最大リフトの位置で確実な吸引力を保証したい場合に選択される機構であるが、一方で当接した状態で磁束密度が最大になっているので、吸引子2及びプランジャ3に大きな残留磁気が残留し、電流を遮断して励磁コイル10に流れる電流が相当小さくならないと、プランジャ3が吸引子2から離間しない。
【0024】図7は吸引子2に円柱状の凸部21を形成し、プランジャ3には円筒状の凹部31を形成し、円柱状の凸部21に円周方向のエアギャップを介して遊嵌するようにした本発明が適用される構造(以下、円筒型構造という)を示す。図7と図6の構造例はいずれも励磁コイル10の通電・遮断に応動して吸引・離間の往復動をすることについては同じであるが、プランジャ3の移動距離、即ちリフトに対する吸引力の傾向に違いがある。
【0025】即ち、円筒型の構造では、リフト量が増加すると、凸部21と凹部31の対向面積が増加して磁束密度が減少し、従って磁束密度の減少に応じてプランジャ3の吸引力が減少する。球形弁体4は確実に離間する一方で、リフト量が増加するにつれてプランジャ3の吸引力が急速に減少するので、プランジャ3と吸引子2が衝合する前に、プランジャ3に働く吸引力とコイルばね5のばね力が釣り合うばね定数を選定することにより、プランジャ3と吸引子2の衝合を回避することができる。他方、通電開始時に磁束密度が十分に大きくなるように電流波形を選択することによってプランジャ3の先端に保持した球形弁体4を着座状態から確実に離間させる吸引力を保証できる。
【0026】図10は図8に示す回路によって励磁コイルに通電・遮断したとき、励磁コイル10に流れる電流の状態及び電流変化に応じたリフト量の変化を示す。励磁コイル10への通電時は励磁コイル10のインダクタンスによる時定数に従って電流が漸増し、遮断時はスイッチ32のアークの影響もあるが実質的には急減する。電流増加時には平面型の電磁弁では電流がB1で示す位置で、円筒型の構造ではB2で示す位置で各々、ばね力に打ち勝つ吸引力になる一方、電流減少時には平面型の構造ではC1て示す位置で、円筒型の構造ではC2で示す位置で各々、ばね力が吸引力に打ち勝つようなコイルばね5のばね定数及び吸引子2とプランジャ3間のエアギャップ等を適宜に設定することができる。
【0027】他方、リフト量を見ると、平面型の構造では通電すると、励磁電流による吸引力がばね力を越えた位置B1から移動を開始し、リフトの増加に伴って吸引力が増すので、曲線D1で示す特性となり、電流を遮断するとばね力が残留磁束の影響を含む吸引力を越えた位置C1でばね力によって加速されて曲線E1で示す特性となる。円筒型の構造ではリフト量の小さい位置で吸引力が大きく、リフト量の増加に伴って吸引力が減るので、曲線D2で示す特性となり、遮断すると残留磁気が小さいこともあって、遮断後の比較的早い時点で復動を開始して曲線E2で示す特性のようになる。
【0028】図10の非通電領域において、平面型の構造ではプランジャは例えば減衰電流による吸引力が約1ミリ秒で実質的に消滅した時点で、ばね力によって加速されて約5ミリ秒でリフト零、即ち球形弁体4が弁座7に当接して衝撃騒音を発生することになる。円筒型の構造ではプランジャは復動開始が早いので、減衰電流による吸引力の影響を受けるが、それでも衝撃騒音を発生するのに十分な速さで球形弁体4が弁座7に当接する。
【0029】本発明は円筒型の電磁弁構造において励磁コイル10に流れる電流によって生じる吸引力がばね力と一致した時点でプランジャ3が移動開始することに着目して、特に電流遮断時の復動開始の現象観察によってなされたものである。図9は実質的に回路時定数の影響を受けないように電流を緩やかに増減するための回路で、31は電源、32はスイッチ、33は可変抵抗である。
【0030】図11及び図12は図9に示す回路で電流を増減し、平面型の構造及び円筒型の構造について、リフト量とプランジャ3の吸引力及びコイルばね5のばね力の関係を得たものである。図11は平面型構造のプランジャの例を示す。図において、F1はコイルばね5のばね力、G11はプランジャ3が吸引子2に吸引されるような電流に対する吸引力、G13はプランジャ3が吸引子2から離間するような電流に対する吸引力を示す。離間時の吸引力G13はばね力F1より相当下にあるが、これは残留磁気の影響である。最大リフトXの位置で電流を減らしてゆくと、プランジャ3が復動を開始するが、プランジャ3が一度移動を始めると、ばね力が常に吸引力を上回るので、そのままリフト零の点に到達する。
【0031】図12は円筒型構造のプランジャの例を示す。図において、F2はコイルばね5のばね力、G21は製品設計値の最大電流に対する吸引力、G22はG21より小さい電流に対する吸引力、G23はG22よりさらに小さい電流に対する吸引力を示す。最大リフト量X1の点で電流を減らしてゆくと、ばね力と一致する吸引力になった位置でプランジャ3が復動を開始するが、電流をそのまま維持すると、プランジャ3は停止したままである。この状態から電流を緩やかに低減すると、プランジャ3も緩やかに移動する。残留磁気は少ないので、無視し、特性G21に対する電流から特性G22に対する電流に減少すると、プランジャ3はX2の位置に移動し、特性G23に対する電流に減少すると、プランジャ3はX3の位置にくる。
【0032】上記の観察結果から、平面型構造のプランジャは電流値を制御することによって特定のリフト位置に保持することができないが、円筒型構造のプランジャでは電流値を制御することによって任意のリフト位置に保持できることが分かった。
【0033】図13は励磁コイル10に流れる電流が増減する状態を示し、Hは励磁コイル10が有するインダクタンスの時定数に従う通電時の特性、Iは非通電時の特性、Jは本発明で得られる時定数の大きな非通電時の特性を示す。復動時におけるプランジャ3はこの特性曲線に従って緩やかに移動するので、弁体4と弁座7との間の衝合が実質的に問題にならない程度に減少することになる。
【0034】図1ないし図3は本発明に係る電磁弁の好ましい実施形態を示す。図1及び図2において図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。励磁コイル10のハウジング11には動作抑制部29が固定されている。この動作抑制部29ではケース21内に印刷回路基板22、キャパシタ23、レジスタ24及びダイオード25が内蔵され、励磁コイル10に流れる電流の時定数を大きくしてプランジャ3の動作速度を抑制するようになっている。
【0035】ケース21には取付穴211が形成され、該取付穴211に取付ねじ27を挿通してハウジング11に螺合することによってケース21はハウジング11に固定されている。ケース21には端子281を備えた雄型コネクタ28が設けられ、励磁コイル10に設けられた雌型コネクタ13と結合して電気回路を構成している。14は電源又は制御装置に接続するリード線である。
【0036】本例では動作抑制部29をハウジング11に固定するようにしたが、励磁コイル10と一体的に成形してもよく、又円筒形に構成して励磁コイル10とタンデムに固定してもよい。電磁弁として一体的に構成する方法は種々考えられるが、従来の電磁弁と同様に、リード線14が電源又は制御装置に接続されるだけで独立した電磁弁として機能する構成であれば何でもよい。
【0037】図3は動作抑制部29の具体的な実施回路を示す。本例ではキャパシタ23とレジスタ24との直列回路が励磁コイル10と並列に接続され、上記直列回路にはサージ吸収用ダイオード25が並列に接続らされ、該ダイオード25はスイッチ32を開成した際にコイル10に誘起される逆起電力を還流し、キャパシタ23に逆電圧がかかるのを防止するようになっている。キャパシタ23は比較的容量の大きい電解コンデンサや2重槽コンデンサ等が適宜に選択される。
【0038】スイッチ32を閉成すると、電源31の電圧が印加され、レジスタ24を介してキャパシタ23に図13の特性Kで示すように充電電流が流れる一方、コイル10に特性Hで示すように電流が流れ、吸引子2とプランジャ3間に吸引力が作用してプランジャ3は最大リフト量Xの位置に至る。次いで、スイッチ32を開成すると、キャパシタ23に蓄電された電流が、キャパシタ23の容量、レジスタ24の抵抗及びコイル10のインダクタンスで決まる時定数に従って放電される。プランジャ3はこの放電電流の緩やかな時間変化に応動して復動するので、リフト零で球形弁体4が弁座7に着座した際、静かにかつ円滑に着座し、衝撃騒音が緩和される。
【0039】図4は動作抑制部29の回路の変形例を示す。本例ではキャパシタ23に充電する電流と放電する電流に差を与えるようになっている。即ち、充電時は電源31の容量を勘案してダイオード251とレジスタ241を介してキャパシタ23に流れる充電電流を制限するようにする一方、放電時はレジスタ242を適宜に選択することによって充電時とは異なる時定数にできるようにしている。
【0040】図5は動作抑制部29の回路の他の変形例を示す。本例ではレジスタ241、242をコイル10が有する抵抗に置換するようにしている。即ち、充電時はコイル101がキャパシタ23の充電電流を制限し、コイル電流はコイル101が決める時定数でもって立ち上がって所定の電流値に収束し、放電時はコイル102が放電電流の時定数を決めるようにしている。
【出願人】 【識別番号】597035610
【氏名又は名称】株式会社デービー精工
【出願日】 平成10年12月25日(1998.12.25)
【代理人】 【識別番号】100071434
【弁理士】
【氏名又は名称】手島 孝美
【公開番号】 特開2000−193126(P2000−193126A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−376735