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【発明の名称】 スラリ―充填用逆止弁
【発明者】 【氏名】▲柄▼崎 和孝

【氏名】植本 勝則

【要約】 【課題】弁が詰まることがなくスラリーをスムーズに注入することができ、かつ礫などがあってもそれによって逆止作用が損なわれることのない、新規な逆止弁を提供する。

【解決手段】スラリーを充填する袋状布製型枠4内に挿入された圧入管15に排出口16を形成し、その圧入管15の外側に前記排出口16を覆うように十分に大径の可撓性の袋体17を遊嵌し、当該袋体17における前記圧入管15の排出口16から十分に離れた位置に吐出口18を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スラリーを充填する袋状布製型枠(4)内に挿入された圧入管(15)に排出口(16)を形成し、その圧入管(15)の外側に前記排出口(16)を覆うように十分に大径の可撓性の袋体(17)を遊嵌し、当該袋体(17)における前記圧入管(15)の排出口(16)から十分に離れた位置に吐出口(18)を形成したことを特徴とする、スラリー充填用逆止弁【請求項2】 前記袋体(17)が布製であることを特徴とする、請求項1に記載のスラリー充填用逆止弁
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木・建築の分野において、袋状布製型枠内にモルタルなどのスラリーを充填する際に、当該スラリーの逆流を阻止するための逆止弁に関するものである。
【0002】土木や建築の分野においては、構築物を地盤に対して強固に固定するために、構築物と地盤との間をモルタルなどの自硬性のスラリーを充填して固めることが行われており、そのスラリーをより緻密に充填するために、その充填箇所に袋状の布製型枠を配置し、当該布製型枠内にスラリーを圧入して充填することが行われている。
【0003】図5はかかる固定構造の一例としての、建築物などの構造物を地盤に定着させるためのアンカーを示すものであって、地盤に穿設された孔1に鋼棒2を挿入し、その孔1と鋼棒2との間にモルタル3を注入すると共に、鋼棒2の先端部に嵌合された筒状布製型枠4内にモルタル5を高圧で圧入したものである。
【0004】この構造においては、筒状布製型枠4内にモルタル5を圧入することにより、当該筒状布製型枠4の外側のモルタル3にも圧力がかかって地盤の隙間に浸透し、地盤との密着力が向上すると共に、筒状布製型枠4内のモルタル5は、その圧力によって水分が筒状布製型枠4を透して絞り出され、鋼棒2の周囲に極めて緻密なモルタルが形成される。従って鋼棒2に構造物6を固定することにより、当該構造物6を地盤に対して強固に固定することができるのである。
【0005】また図6は固定構造の他の例を示すものであって、トンネルを構築する際に、掘削されたトンネルの内面に沿って形成されたセグメント7と、トンネル内面の地山8との間を裏込めする構造である。
【0006】すなわちセグメント7の外側に筒状布製型枠4を配置し、当該筒状布製型枠4内にモルタル10を圧入することにより、モルタル10内の水分が筒状布製型枠4の布目の間から浸出して筒状布製型枠4内に緻密なモルタルが形成され、且つ圧入圧力によってモルタルは筒状布製型枠4を介してセグメント7及び地山8に密着し、強固な裏込めが形成されるのである。
【0007】ところでこれらの工法においては、外部から筒状布製型枠4内にモルタル5,10を高圧で圧入し、その圧力をかけた状態のままでモルタル5,10を硬化させる必要があり、その圧入口に逆止弁を設ける必要がある。
【0008】モルタルなどのスラリー状の流体は、一般の気体や液体の場合と異り、粒状物と水との混合流体であり、さらに大きな礫などをも含むため、圧入に際してはこれらをスムーズに通過させると共に、圧入終了後には有効に逆流を阻止し得るものであることが要求されるのである。
【0009】
【従来の技術】従来この種のスラリー充填用の逆止弁としては、図7に示されるものが知られている。このものは図7(a)に示すように、圧入管11にスラリーの流れの方向(図面において下方)にのみ撓み得る羽根12を取り付け、スラリーの圧入時には鎖線で示すように下方に撓んでスラリーの流れを許容し、圧入終了後にはスラリーの圧力によって実線で示すように水平方向に揺動し、圧入管11を閉塞して逆流を阻止するものである。
【0010】また他の形式の逆止弁として、図8に示されるものも知られている。このものは圧入管11に流路を閉塞する弁板12を設け、図8(a)に示すようにその弁板12をばね13により閉弁方向に付勢したものであって、スラリーの圧入時には図8(b)で示すように弁板12がばね13の弾力に抗して下方に偏倚して開弁し、圧入終了後にはスラリーの圧力で再度図8(a)に示すように圧入管11を閉塞し、逆流を阻止するものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこれらの逆止弁では、スラリーの圧入を適切に制御することができない。スラリーに大きい礫14などが含まれているとき、図7(b)に示すように礫14が羽根12に引っ掛かり、圧入管11を閉塞することができず、逆流を阻止することができないことがある。また図8のものにおいても同様の問題が生じることがある。
【0012】また当初は羽根12や弁板12が圧入管11を閉塞する方向に付勢されているため、スラリーを圧入するためにはこれを下方に撓ませる必要があり、スラリーの初期の圧入圧力を大きいものとすることが必要である。
【0013】初期の圧力が不十分であると、スラリー中の水分のみが羽根12や弁板12の隙間から先に流出してしまい、その後部に固形分が滞留して弁が詰まった状態となることがある。モルタルなどのスラリーはチキソトロピー性が大きく、しかも部分的に水分が失われるため、静止状態では急速に流動性を失う。そのため一旦流動が止まると流動性が失われてスラリーの注入が不可能となり、その後圧力を高めても流動を復活することが困難となるのである。
【0014】またこれらの逆止弁は圧入管11の途中に設けられることが多いが、その逆止弁は構造的に方向性があり、取り付け方向を逆にすると逆止の効果が生じないのみならず、モルタルを注入することが不可能となる。
【0015】本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、弁が詰まることがなくスラリーをスムーズに注入することができ、かつ礫などがあってもそれによって逆止作用が損なわれることのない、新規な逆止弁を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】而して本発明は、スラリーを充填する袋状布製型枠内に挿入された圧入管に排出口を形成し、その圧入管の外側に前記排出口を覆うように十分に大径の可撓性の袋体を遊嵌し、当該袋体における前記圧入管の排出口から十分に離れた位置に吐出口を形成したことを特徴とするものである。本発明においては、前記袋体が布製であることが好ましい。
【0017】本発明における圧入管は、鋼管やプラスチック管などの剛直な管を使用するのが適当であるが、ゴムホースなどの柔軟なものを使用することもでき、また厚手の筒状織物に水密処理を施したものを使用することも可能である。
【0018】また本発明における袋体は、柔軟なゴム又はプラスチックのシートを袋状に成形したものを使用することもできるが、布を縫製したものを使用するのが好ましい。この場合、少なくとも前記圧入管よりも柔軟なものを使用するべきである。またその袋体の径は、当該袋体とその内部の圧入管との間にスラリーの流路が形成され得る程度の大きさとするべきであり、具体的には圧入管の1.5〜3倍程度の径とするのが好ましい。
【0019】排出口及び吐出口の大きさは、スラリーをスムーズに圧入するために、圧入管の断面積と同等又はそれ以上の大きさのものとするのが好ましい。また排出口と吐出口との距離は、その両者の間の袋体部分が外圧によって圧入管の外面に圧接され、吐出口から排出口に至る逆流流路を遮断し得る程度の距離とするべきである。具体的には、袋体の径と同等以上とするのが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、前記図5のアンカー装置に適用した本発明のスラリー充填用逆止弁の一形態を示すものである。
【0021】15は筒状布製型枠4内にモルタル5などのスラリーを圧入する圧入管であって、図5における鋼棒2と同様の荷重負担部材を兼ねており、その先端は閉塞され、先端部側面に排出口16が穿設されている。
【0022】17は可撓性の袋体であって、圧入管15よりも十分に大きい径を有しており、前記排出口16を覆うように圧入管15の外側に遊嵌されている。当該袋体17は、緻密な織物を使用するのが好ましい。
【0023】袋体17の先端は圧入管15に対して固定されており、後端は排出口16から十分に離れた位置において開放されて、吐出口18を形成している。そしてその吐出口18における排出口16の反対側の位置を、木ねじ19などにより固定している。
【0024】4は筒状布製型枠であって、前記圧入管15の先端部に袋体17を覆うように遊嵌されており、その両端は締め付けリング20などにより圧入管15に締め付けて固定されている。
【0025】この構造においては、圧入管15を通じてスラリーを注入すると、当該スラリーは圧入管15から排出口16を経て袋体17内に入り、さらに吐出口18から吐出されて筒状布製型枠4内に圧入されて筒状布製型枠4を満たす。この状態が図1(a)に示されている。
【0026】圧入終了後スラリーの注入圧力を除くと、筒状布製型枠4内に圧入されたスラリーはその圧力により排出口16から圧入管15に逆流しようとするが、図1(b)に示すように袋体17が収縮して排出口16を閉塞し、スラリーの逆流を阻止するのである。
【0027】また吐出口18の一部を木ねじ19などで圧入管15に固定しておくことにより、スラリーの逆流によって袋体17が排出口16から圧入管15内に引き込まれるのを防止することができる。
【0028】図2は、図1の形態の変形例であって、袋体17の両端が筒状布製型枠4と共に、締め付けリング20で圧入管15に対して締め付け固定されており、その袋体17における圧入管15の排出口16から十分に離れた位置に、吐出口18が穿設されている。
【0029】圧入管15からスラリーを注入すると、当該スラリーは図2(a)に示すように排出口16から袋体17内に注入され、当該袋体17内を通って吐出口18から吐出され、筒状布製型枠4内を満たす。
【0030】そしてスラリーの圧入が終了して圧入管15の圧力を除くと、筒状布製型枠4内の圧力により袋体17内のスラリーが排出口16から圧入管15内に逆流すると共に、袋体17は圧入管15の表面に圧接せしめられ、吐出口18から排出口16に至る流路が消失すると共に、袋体17が排出口16を閉塞してそれ以上のスラリーの逆流を阻止する。
【0031】図3は、前記図6に示されるトンネル工事におけるセグメントの裏込めに適用した、本発明のスラリー充填用逆止弁の一形態を示すものである。
【0032】圧入管15は先端が開いて排出口16を形成しており、当該圧入管15の先端部を覆うように袋体17が遊嵌され、当該袋体17の外側を筒状布製型枠4が覆っており、その筒状布製型枠4及び袋体17の口部は締め付けリング20などにより、圧入管15に締め付け固定されている。
【0033】この例においては、圧入管15からスラリーを注入すると、図3(a)に示すようにスラリーは排出口16から袋体17内に注入され、当該袋体17内を流れて吐出口18から吐出され、筒状布製型枠4内に圧入されてその筒状布製型枠4を満たす。
【0034】そしてスラリーの圧入が終了して圧入管15の圧力を除くと、筒状布製型枠4内の圧力により袋体17内のスラリーが排出口16から圧入管15内に逆流すると共に、袋体17は外圧によって圧入管15の表面に圧接せしめられ、吐出口18から排出口16に至る流路が消失すると共に、排出口16は袋体17で閉塞されてそれ以上のスラリーの逆流を阻止する。
【0035】図4はセグメントの裏込めに適用した本発明の逆止弁の他の形態を示すものである。圧入管15はその先端が開放されて排出口16を形成しており、当該圧入管15の先端部に袋体17が被せられ、その袋体17の側面には排出口16から十分に離れた位置に吐出口18が穿設されている。
【0036】そしてその圧入管15の先端部及びそこに被せられた袋体17は、筒状布製型枠4の端末部に形成された挿入孔21から挿入され、袋体17の後部は筒状布製型枠4の挿入孔21と共に縫合されて閉塞されている。
【0037】而してこの例において、圧入管15からスラリーを注入すると、スラリーは先端の排出口16から袋体17内に注入され、当該袋体17内を流れて吐出口18から吐出されて筒状布製型枠4内に流入し、その筒状布製型枠4を膨らませてその中に充填される。
【0038】スラリーの圧入が終了して圧入管15の圧力を除くと、筒状布製型枠4内の圧力により袋体17が押し潰され、その袋体17内のスラリーが排出口16から圧入管15内に逆流すると共に、袋体17は外圧によって圧入管15の表面に圧接せしめられ、吐出口18から排出口16に至る流路が消失すると共に、排出口16は袋体17で閉塞されてスラリーの逆流を阻止する。
【0039】
【作用】本発明においては、圧入管15からスラリーを注入することにより、当該スラリーは排出口16から袋体17内に流入し、当該袋体17を膨らませる。そして排出口16と吐出口18とが十分に離れているため、排出口16から流入したスラリーは袋体17内を流れて、吐出口18から筒状布製型枠4内に吐出される。このとき袋体17は圧入管15よりも十分に大径であり、また排出口16及び吐出口18は単なる透孔であるので、スラリーが筒状布製型枠4内に注入されるについて大きな抵抗となる要素はない。
【0040】而してスラリーは袋体17を経由して筒状布製型枠4内に注入され、その筒状布製型枠4を膨らませると共にその内部を満たし、圧入管15からの注入圧力によって加圧されて圧入される。
【0041】筒状布製型枠4内にスラリーが圧入されると、スラリー中の水分は筒状布製型枠4の布目から滲出し、筒状布製型枠4内に高圧で且つ固形分に富んだ緻密なスラリーが残ることとなる。
【0042】ここで圧入管15からのスラリーの圧入を停止し、圧入管15内の圧力が低下すると、袋体17内のスラリーは一部が排出口16から圧入管15内に逆流し、袋体17は筒状布製型枠4内の外圧によって押し潰され、圧入管15の表面に押し付けられる。
【0043】そのため袋体17内の空間が縮小し、吐出口18から排出口16に至る流路が消失すると共に、逆流するスラリーによって袋体17は排出口16に引き付けられ、排出口16は閉塞される。
【0044】スラリーが礫などを含んでいる場合においても、袋体17は柔軟であるため外圧によって圧入管15に密着することができ、間に礫などが挟まった状態でもそれらを包みこんで密着するので、それらの礫などが排出口16を閉塞する障害となることはない。
【0045】なお袋体17の形状によっては、筒状布製型枠4内の圧力によって排出口16から圧入管15内に引き込まれてしまう恐れがあるので、その様な場合には図1に示すように、袋体17を圧入管15に対して木ねじ19などで固定しておくのが好ましい。また袋体17を固定しても、その袋体17の一部が排出口16から圧入管15内に引き込まれることがあるが、吐出口18の縁まで引き込まれることがない限り、差し支えない。
【0046】而して、このようにして排出口16が袋体17で閉塞され、スラリーの逆流が停止すると、スラリーは筒状布製型枠4内に高い圧力を保持したままで急速に流動性を失う。そのため薄い袋体17の壁面で十分にスラリーの圧力を支え、逆流を阻止することができるので、早期に圧入管15をスラリーの注入手段から取り外すことができる。
【0047】而して筒状布製型枠4内のスラリーは逆流することなく圧力を維持し、自らの自硬性によって硬化する。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、圧入管15から注入されたスラリーは、排出口16から袋体17内を経て吐出口18から筒状布製型枠4内に注入され、その間にスラリーの流通を阻害するものがないので、特に高圧を必要とせず、スムーズに注入することができる。また注入の過程で水分のみが先に送られて固形分と分離するようなことがなく、また礫などを含むスラリーであっても、それらの礫をも含めてスムーズに注入することができる。
【0049】筒状布製型枠4内にスラリーを注入し、加圧した後圧入管15内の圧力を除くと、筒状布製型枠4内の圧力によって袋体17が圧入管15に圧接せしめられ、排出口16が閉塞されるので、スラリーが逆流することがなく、筒状布製型枠4内の圧力が維持される。またこのとき、柔軟な袋体17が圧入管15に圧接することにより逆流流路が閉塞されるので、礫などが介在しても逆止機能が阻害されることはない。
【出願人】 【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
【出願日】 平成10年12月28日(1998.12.28)
【代理人】 【識別番号】100082027
【弁理士】
【氏名又は名称】竹安 英雄
【公開番号】 特開2000−193110(P2000−193110A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−371874