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【発明の名称】 弁体用電磁駆動装置の駆動方法
【発明者】 【氏名】今西 敏博

【要約】 【課題】ステップ状の駆動電圧を電磁コイルに印加すると、自己誘導起電力のために駆動電流が減少し、可動子の作動が遅れることがある。

【解決手段】鉄心1に巻回された電磁コイルCLに駆動電圧Vdを印加した際に発生する電磁力を鉄心1内の空間に位置する可動子Pに作用させ、可動子Pを固定した駆動軸DSを駆動して内燃機関の弁体を駆動するものであって、ステップ状に駆動電圧Vdを電磁コイルCLに印加し、電磁コイルCLに自己誘導起電力が生じるタイミングで駆動電圧Vdが高くなるように設定された電圧値の補正電圧Vcを駆動電圧Vdに重畳する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】鉄心に巻回された電磁コイルに駆動電圧を印加した際に発生する電磁力を鉄心内の空間に位置する可動子に作用させ、可動子を固定した駆動軸を駆動して内燃機関の弁体を駆動する内燃機関の弁体用電磁駆動装置の駆動方法であって、ステップ状に駆動電圧を電磁コイルに印加し、電磁コイルに自己誘導起電力が生じるタイミングで駆動電圧が高くなるように設定された電圧値の補正電圧を駆動電圧に重畳することを特徴とする弁体用電磁駆動装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の吸気弁や排気弁を駆動する弁体用電磁駆動装置の駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、内燃機関の弁体である吸気弁や排気弁を電磁コイルの発する電磁力を用いて駆動する弁体用電磁駆動装置が知られている。このような弁体電磁駆動装置は、例えば特開平9−222005号公報に記載のもののように、上下に離間した状態で分割された鉄心にそれぞれ電磁コイルを巻回し、鉄心の中央部に弁体を駆動する駆動軸を往復動可能に支持し、駆動軸に固定された可動子に電磁コイルにより生じた電磁力を加えて、弁体を駆動するように構成されている。鉄心は、上側の鉄心が下側の鉄心に対して浮いた状態になるので、環状のケースにより、所定の位置関係に保持されている。
【0003】このような弁体用電磁駆動装置は、電磁コイルにステップ状に駆動電圧を印加し、急激に可動子を作動させた後、弁体を所定の開成あるいは閉成位置に保持するために、駆動電圧より低い保持電圧に駆動電圧の電圧値を降下させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、一般的に、電磁コイルに電圧を印加すると、発生した磁束の変化により印加された電圧により流れる電流を妨げるように自己誘導起電力が電磁コイル内に発生する。このため、電磁コイルに流れる電流が自己誘導起電力の発生と同時に減衰し、可動子を作動させる電磁力が低下する。したがって、電磁力の低下により、自己誘導起電力が生じたタイミングで可動子の動きがそれまでの動きに比べて緩慢になる。この結果、弁体の駆動が遅れ、弁体が適切に開閉されないといった不具合を生じた。
【0005】本発明は、このような不具合を解消することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係る電磁駆動装置の駆動方法は、電磁コイルに印加する駆動電圧は、自己誘導起電力が発生するタイミングで、自己誘導起電力を打ち消すに十分な電流が電磁コイルに流れるように設定された電圧値の補正電圧を駆動電圧に重畳する構成とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、鉄心に巻回された電磁コイルに駆動電圧を印加した際に発生する電磁力を鉄心内の空間に位置する可動子に作用させ、可動子を固定した駆動軸を駆動して内燃機関の弁体を駆動する内燃機関の弁体用電磁駆動装置の駆動方法であって、ステップ状に駆動電圧を電磁コイルに印加し、電磁コイルに自己誘導起電力が生じるタイミングで駆動電圧が高くなるように設定された電圧値の補正電圧を駆動電圧に重畳することを特徴とする弁体用電磁駆動装置の駆動方法である。
【0008】このような構成のものであれば、補正電圧を重畳した駆動電圧を電磁コイルに印加することにより、自己誘導起電力により電磁コイルに流れる電流が減衰するのが防止される。すなわち、駆動電圧は、ステップ状に電磁コイルに印加された後、自己誘導起電力が生じるタイミングにおいて補正電圧の設定された電圧値だけ高くなるので、電磁コイルに流れる駆動電流はこの時点で増加し、自己誘導起電力で減少する電流を補償することになる。したがって、補正電圧を重畳した駆動電圧を電磁コイルに印加することにより、自己誘導起電力が発生しなかった状態と等価な電磁力が発生するため、可動子の作動は遅延しない。この結果、所期の性能で可動子を作動させることが可能になり、駆動軸及び弁体を的確に駆動することが可能になる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。図1に示す弁体用電磁駆動装置すなわち電磁アクチュエータ100は、内燃機関たる自動車用のエンジンの弁体である吸気弁2及び排気弁(図示しない)を駆動するもので、シリンダヘッド4に取り付けられるものである。電磁アクチュエータ100は、鉄心1と、その鉄心1に巻回される2個の電磁コイルCLと、鉄心1内の空間を往復作動する駆動軸DSと、その駆動軸DSに固定される可動子Pと、駆動軸DSを吸気弁2あるいは排気弁が開成する方向に付勢するコイルスプリングCSと、駆動軸DSを支持する支持部材Bと、コイルスプリングCSの付勢力を調整するネジ部材ABとを具備している。
【0010】鉄心1は、駆動軸DSを引き上げるための電磁コイルCLが巻回され、かつコイルスプリングCSが内蔵される上鉄心部材11と、駆動軸DSを引き下げるための電磁コイルCLが巻回され、かつ支持部材Bが内蔵される下鉄心部材12と、上鉄心部材11と下鉄心部材12との間に介在させる中間鉄心部材113とからなる。上鉄心部材11と下鉄心部材12とは、同一形状をしており、その中央部10aが貫通孔10bを有して筒状に突出しているとともに、この中央部10aから電磁コイルCLの巻回厚みに略等しい寸法離れた位置に中央部10aと同一高さの脚部10cが形成してある。中央部10aの上端部分は、テーパ形状をしており、後述する可動子Pとの空隙が最小限になるように形成してある。上鉄心部材11の中央部10aの内部には、コイルスプリンングCSが内蔵される。上鉄心部材11と中間鉄心部材13と下鉄心部材12とは、それぞれの四隅部分に設けられる結合ピン16により一体となるように、電磁コイルCL巻回後結合される。中間鉄心部材13により、可動子Pの可動範囲となる鉄心1の内部空間が形成される。
【0011】駆動軸DSは、軽量化をはかるために、内部が空洞になっている。可動子Pは、駆動軸DSの上端部にボルト・ナットにより固定されるもので、中央部10aの幅寸法と略同一の外形寸法に形成してある。すなわち、可動子Pは、平板の左右端部に断面台形状の板体を一体に設けた形状で、中央部10aの上端部分に合致するように形成してある。
【0012】支持部材Bは、取付用のフランジBaと、フランジBaの中心に駆動軸DSが貫通するブッシュBbを内蔵する筒体Bcとが一体に設けられてなる。ブッシュBbの内径は、駆動軸DSの外径と略同一である。ネジ部材ABは、その中央部にコイルスプリングCSの上端位置を調整するためのオネジ部材ABaと、このオネジ部材ABaが螺合するメネジ部材ABbとからなる。このオネジ部材ABaを締め込むことにより、コイルスプリングCSの上端が下方に移動し、逆に緩めることにより、コイルスプリングCSの上端が上方に移動し、コイルスプリングCSの弾性力を調整できるようになっている。
【0013】このような構成において、この電磁アクチュエータ100は、それぞれの電磁コイルCLに駆動電圧Vdが印加されない場合は、可動子Pに電磁力が作用せず、鉄心1の内部空間の中央位置で釣り合って静止する。この状態では、吸気弁2及び排気弁は、全閉と全開との中間位置で開成しており、上側の電磁コイルCLに駆動電圧Vdが印加されると、コイルスプリングCSの付勢力に抗し、かつ吸気弁2及び排気弁を全閉方向に付勢する弁体コイルスプリングVSに付勢されて可動子Pが上側に引き上げられ、駆動軸DSが上側に移動して吸気弁2及び排気弁が全閉となる。一方、上側の電磁コイルCLを断電し、下側の電磁コイルCLに通電すると、コイルスプリングCSに付勢され、弁体コイルスプリングVSの付勢力に抗して可動子Pは下側に引き下げられ、駆動軸DSが吸気弁2及び排気弁を押し下げて開成させる。
【0014】駆動電圧Vdは、基本的には、可動子Pが最大変位となるまで印加される第1電圧値と、最大変位した位置で可動子Pを保持しておく第1電圧値より低い第2電圧値とからなる。このような基本形に対して、駆動電圧Vdは、図2に示すように、所定電圧値を有してステップ状に電磁コイルCLに印加するもので、自己誘導起電力が発生するタイミングで、自己誘導起電力を打ち消すように、時間の経過とともに一旦増加してその後減少する電圧値の補正電圧Vcが非直線的に重畳されている。すなわち、例えば吸気弁2を閉成する場合には、上鉄心部材11の電磁コイルCLに駆動電圧Vdを印加する。これにより、図3に示すように、上鉄心部材11の中央部10a、脚部10c、中間鉄心部材13及び可動子P内に、連続する磁界Gが生じる。駆動電圧Vdは印加直後に瞬間的に所定電圧値まで上昇し、その後、自己誘導起電力が発生するタイミングまでその所定電圧値に保持する。つまり、駆動電圧Vdを印加すると、磁束が変化することにより自己誘導起電力が生じるが、自己誘導起電力が発生するタイミングとなると、駆動電圧Vdは、予測される自己誘導起電力に対応する補正電圧Vcを重畳するために設定された電圧値だけ高くなる。自己誘導起電力の予測及びその発生タイミングは、電磁コイルCLの諸元、例えば自己インピーダンス等により行う。そして、予測した自己誘導起電力の値に基づいて、補正電圧Vcの電圧値を設定する。図2において、点線で示すものは、自己誘導起電力により駆動電圧Vdが低下した状態である。同様に、駆動電流Idの低下及び可動子Pの遅れをそれぞれ、図2中に点線で示す。
【0015】このように、補正電圧Vcが重畳した駆動電圧Vdが電磁コイルCLに印加されると、それまでと同一速度で増加する補正電流Icが電磁コイルCLに流れる。すなわち、重畳された補正電圧Vcが、所定電圧値より高い電圧値であるので、電磁コイルCLには、より多くの駆動電流Idが流れることになる。この一方で、自己誘導起電力により駆動電流Idが減少する方向に電流が流れるので、駆動電流Idは相殺される。このため、駆動電流Idは、補正電圧Vcが重畳された状態の駆動電圧Vdが印加された際に対応して流れる電流ほど多くは流れない。したがって、駆動電流Idが増加しすぎて、可動子Pの挙動が不安定になることがなく、駆動電流Idは、自己誘導起電力が発生する前と同じ状態で流れ続け、可動子Pは遅延なく引き上げられる。
【0016】したがって、電磁コイルCLを流れる駆動電流Idが、自己誘導起電力発生時に投入される補正電圧Vcにより適正に補正されるので、可動子Pが、遅延することなく、駆動開始から所期の速度で引き上げられる。したがって、駆動軸DSは、自己誘導起電力の影響を受けることなく、駆動電圧Vdの印加直後から完全に引き上げられるまで、その引き上げ途中において作動が遅延することなく円滑に作動するものである。
【0017】なお、本発明は以上に説明した実施例に限定されるものではない。その他、各部の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0018】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、駆動電圧は、ステップ状に電磁コイルに印加された後、自己誘導起電力が生じるタイミングにおいて補正電圧の設定された電圧値だけ高くなるので、電磁コイルに流れる駆動電流はこの時点で増加し、自己誘導起電力で減少する電流を補償することになり、したがって補正電圧を重畳した駆動電圧を電磁コイルに印加することにより、自己誘導起電力により電磁コイルに流れる電流が減衰するのを防止することができる。また、補正電圧を重畳した駆動電圧を電磁コイルに印加することにより、自己誘導起電力が発生しなかった状態と等価な電磁力が発生するため、可動子の作動は遅延せず、この結果、所期の性能で可動子を作動させることができ、駆動軸及び弁体を的確に駆動することができる。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【出願日】 平成10年12月8日(1998.12.8)
【代理人】 【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
【公開番号】 特開2000−170949(P2000−170949A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−348507