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【発明の名称】 ソレノイドバルブ
【発明者】 【氏名】木下 靖朗

【要約】 【課題】ソレノイドの非通電時に、強い加速度が印加された場合でも、スプール及びソレノイドのプランジャに振動が発生することがなく、出力油圧が誤出力されるおそれを防止することができるソレノイドバルブを提供する。

【解決手段】バルブハウジング11の中心にスプール孔12を形成するとともに、バルブハウジング11の周面にスプール孔12と連通する複数のポート13,14a,14b,15a〜15dを形成する。スプール孔12内には、ポート13,14a,14b,15a〜15dを開閉するためのスプール16を移動可能に嵌挿する。バルブハウジング11の一端にはスプール16を原位置に移動付勢するためのスプリング19を配設する。バルブハウジング11の他端にはスプール16を原位置から移動させるためのソレノイド20を連設する。バルブハウジング11内には、ソレノイド20の非通電時に油圧が供給されて、スプール16をスプリング19の付勢方向と同方向に押圧するための油圧室18を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バルブハウジングの中心にスプール孔を形成するとともに、バルブハウジングの周面にはスプール孔に連通する複数のポートを形成し、スプール孔内にはポートを開閉するためのスプールを移動可能に嵌挿し、バルブハウジングの一端にはスプールを原位置に移動付勢するためのスプリングを配設するとともに、バルブハウジングの他端にはスプールを原位置から移動させるためのソレノイドを連設したソレノイドバルブにおいて、前記バルブハウジング内には、ソレノイドの非通電時に油圧が供給されて、スプールをスプリングの付勢方向と同方向に押圧するための油圧室を形成したソレノイドバルブ。
【請求項2】 前記油圧室はバルブハウジングの一端に形成され、その油圧室内にスプリングが配設されている請求項1に記載のソレノイドバルブ。
【請求項3】 前記スプールには、ソレノイドの非通電時のみに油圧室へ油圧を供給するための供給路を形成した請求項1または請求項2に記載のソレノイドバルブ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車における自動変速機や可変バルブタイミング機構等の油圧制御用バルブに使用されるソレノイドバルブに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のソレノイドバルブとしては、例えば特開平8−28739号公報に示すような構成のものが知られている。この従来構成においては、バルブハウジングの中心にスプール孔が形成されるとともに、バルブハウジングの周面にスプール孔と連通する複数のポートが形成されている。スプール孔内には、ポートを開閉するためのスプールが移動可能に嵌挿されている。
【0003】また、バルブハウジングの一端にはスプリングが配設され、このスプリングによりスプールが原位置に移動付勢されている。バルブハウジングの他端にはソレノイドが連設され、このソレノイドへの通電によりスプールがスプリングの付勢力に抗して原位置から移動されて、ポートが開閉される。さらに、バルブハウジングのソレノイド側端部にはストッパが配設され、ソレノイドの非通電時に、スプールがこのストッパとの接触によって、原位置に規制保持されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この従来のソレノイドバルブにおいては、ソレノイドの非通電時に、スプリングの付勢力のみにより、スプールの移動が規制されるようになっている。このため、ソレノイドの非通電時に、ソレノイドバルブに強い加速度が印加されると、スプール及びソレノイドのプランジャに振動が発生して、出力油圧が誤出力されるという問題があった。
【0005】このような問題に対処するため、スプリングとして付勢力の強いものを使用することも考えられる。しかしながら、スプリングの付勢力を強くした場合、ソレノイドの通電時に、そのスプリングの付勢力に抗してスプールを移動させなくてはならないため、大型のソレノイドを設ける必要があるとともに、消費電力が大きくなるという新たな問題が生じる。
【0006】この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、ソレノイドの非通電時に、強い加速度が印加された場合でも、スプール及びソレノイドのプランジャに振動が発生することがなく、出力油圧が誤出力されるおそれを防止することができるソレノイドバルブを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、バルブハウジングの中心にスプール孔を形成するとともに、バルブハウジングの周面にはスプール孔に連通する複数のポートを形成し、スプール孔内にはポートを開閉するためのスプールを移動可能に嵌挿し、バルブハウジングの一端にはスプールを原位置に移動付勢するためのスプリングを配設するとともに、バルブハウジングの他端にはスプールを原位置から移動させるためのソレノイドを連設したソレノイドバルブにおいて、前記バルブハウジング内には、ソレノイドの非通電時に油圧が供給されて、スプールをスプリングの付勢方向と同方向に押圧するための油圧室を形成したものである。
【0008】従って、ソレノイドの非通電時には、油圧室に油圧が供給されて、スプールが油圧室の油圧力とスプリングの付勢力との協働により、原位置に規制保持されている。よって、ソレノイドバルブに強い加速度が印加された場合でも、スプール及びソレノイドのプランジャに振動が発生することがなく、出力油圧が誤出力されるおそれを防止することができる。
【0009】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のソレノイドバルブにおいて、前記油圧室がバルブハウジングの一端に形成され、その油圧室内にスプリングが配設されているものである。
【0010】従って、バルブハウジングの構造を複雑にすることなく、その一端に油圧室を容易に形成することができるとともに、その油圧室を利用してスプリングを簡単に収容配置することができる。
【0011】請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のソレノイドバルブにおいて、前記スプールには、ソレノイドの非通電時のみに油圧室へ油圧を供給するための供給路を形成したものである。
【0012】従って、油圧室への油圧の供給路を簡単に形成することができるとともに、ソレノイドの通電時には、油圧室への油圧の供給を停止して、スプールを抵抗なく容易に移動させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、この発明の一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、バルブハウジング11の中心にはスプール孔12が長手方向に延設されている。バルブハウジング11の周面には、1つの入力ポート13と、2つの出力ポート14a,14bと、4つの排出ポート15a,15b,15c,15dとが長手方向に間隔をおいて形成され、それらの内端がスプール孔12に連通されている。スプール孔12にはスプール16が移動可能に嵌挿され、このスプール16の移動によって、各ポート13,14a,14b,15a〜15dが開閉される。
【0014】前記入力ポート13には図示しない油圧供給源が接続され、その油圧供給源から入力ポート13を介してスプール孔12に油圧が供給される。出力ポート14a,14bには図示しない油圧作動部がそれぞれ接続され、各出力ポート14a,14bから出力される油圧により、これらの油圧作動部が作動される。排出ポート15a〜15dは図示しない変速機のミッションケースやエンジンのオイルパン等の油溜に開放されている。
【0015】前記バルブハウジング11の一端にはキャップ17が回転調節可能に螺合され、このキャップ17により、バルブハウジング11の一端内部に油圧室18が形成されている。油圧室18内において、スプール16とキャップ17との間にはスプリング19が介装され、このスプリング19により、スプール16が図1に示す原位置に向かって移動付勢されている。
【0016】前記バルブハウジング11の他端にはソレノイド20が連設されている。このソレノイド20はケーシング21を備え、そのケーシング21内にはコイル22が配設されている。ケーシング21の中心にはロッド23が一対のベアリング24を介して長手方向へ移動可能に支持され、その一端部23aがスプール16の対向端部に接合されている。ロッド23の中央部にはプランジャ25が嵌着され、コイル22の内側に対応配置されている。
【0017】そして、ソレノイド20のコイル22に対する非通電時には、スプリング19の付勢力により、スプール16及びソレノイド20のロッド23が図1の右方に移動されて、ロッド23の他端部23bがケーシング21の内面に当接されている。これにより、スプール16が同図に示す原位置に規制保持されて、一方の出力ポート14aが入力ポート13に接続開放された状態にあり、入力ポート13からの油圧が出力ボート14aに接続された油圧作動部に供給されて、その油圧作動部が作動される。
【0018】これに対して、ソレノイド20のコイル22に通電されたときには、プランジャ25を介してロッド23が図1の左方に吸引移動され、スプール16がスプリング19の付勢力に抗して同方向に移動される。これにより、スプール16が図2に示す切替位置に配置されて、他方の出力ポート14bが入力ポート13に接続開放され、入力ポート13からの油圧が出力ボート14bに接続された油圧作動部に供給されて、その油圧作動部が作動される。
【0019】前記スプール16の中心には油圧供給路26が形成され、その一端部26aがスプール16の外周面に開口されるとともに、他端部26bがスプール16の端面に開口されている。そして、ソレノイド20のコイル22に対する非通電時には、油圧供給路26の一端部26aが入力ポート13に接続開放されて、入力ポート13からの油圧が油圧供給路26を介して油圧室18内に供給される。これにより、スプール16が油圧室18の油圧力とスプリング19の付勢力との協働作用で、図1に示す原位置に押し付けられて、スプール16及びソレノイド20のロッド23の移動が規制される。従って、このソレノイド20の非通電状態で、ソレノイドバルブに強い加速度が印加された場合でも、スプール16及びソレノイド20のロッド23やプランジャ25に振動が発生することがない。
【0020】一方、ソレノイド20のコイル22に通電されたときには、図2に示すように、スプール16の原位置から切替位置への移動に伴って、油圧供給路26の一端部26aが閉塞される。これにより、入力ポート13から油圧室18内への油圧の供給が停止され、スプール16に対する原位置側への押圧力が開放される。従って、このソレノイド20の通電時には、スプール16が大きな抗力を受けることなく、原位置から切替位置に移動される。
【0021】また、このソレノイド20の通電に伴って、スプール16が原位置から移動を開始する際には、油圧室18が内部に残留した油圧によりダンパ室として作用する。従って、スプール16が移動開始に際して振動することはなく、図3に示すように、ソレノイド20への通電に応答して、出力ポート14bから滑らかな出力油圧が出力され始める。ちなみに、油圧室18を備えていない従来構成では、スプール16が移動開始時に振動して、同図に示すように、出力油圧に脈動が発生するおそれがあった。
【0022】さらに、このソレノイドバルブでは、前記のようにソレノイド20に対する非通電時及び通電開始時のいずれにおいても、バルブハウジング11内のスプール16及びソレノイド20のロッド23やプランジャ25に振動を生じることはない。このため、スプール16及びロッド23の摺動部分に、その振動に伴って摩擦が発生するおそれはなく、耐久性が向上する。
【0023】前記の実施形態によって期待できる効果について、以下に記載する。
(1)この実施形態のソレノイドバルブにおいては、バルブハウジング11の中心にスプール孔12が形成されるとともに、バルブハウジング11の周面にはスプール孔12と連通する複数のポート13,14a,14b,15a〜15dが形成されている。スプール孔12内には、ポート13,14a,14b,15a〜15dを開閉するためのスプール16が移動可能に嵌挿されている。また、バルブハウジング11の一端にはスプール16を原位置に移動付勢するためのスプリング19が配設され、バルブハウジング11の他端にはスプール16を原位置から移動させるためのソレノイド20が連設されている。そして、バルブハウジング11内には、ソレノイド20の非通電時に油圧が供給されて、スプール16をスプリング19の付勢方向と同方向に押圧するための油圧室18が形成されている。このため、ソレノイド20の非通電時には、油圧室18に油圧が供給されて、スプール16が油圧室18の油圧力とスプリング19の付勢力との協働により、原位置に規制保持されている。よって、ソレノイドバルブに強い加速度が印加された場合でも、スプール16及びソレノイド20のロッド23やプランジャ25に振動が発生することがなく、出力油圧が誤出力されるおそれを防止することができる。
【0024】(2)この実施形態のソレノイドバルブにおいては、油圧室18がバルブハウジング11の一端に形成され、その油圧室18内にスプリング19が配設されている。このため、バルブハウジング11の構造を複雑にすることなく、その一端に油圧室18を容易に形成することができるとともに、その油圧室18を利用してスプリング19を簡単に収容配置することができる。
【0025】(3)この実施形態のソレノイドバルブにおいては、ソレノイド20の非通電時のみに油圧室18へ油圧を供給するための供給路26が、スプール16に形成されている。このため、油圧室18への油圧の供給路26を簡単に形成することができるとともに、ソレノイド20の通電時には、油圧室18への油圧の供給を停止して、スプール16を抵抗なく容易に移動させることができる。
【0026】(4)この実施形態のソレノイドバルブにおいては、ソレノイド20の通電に伴ってスプール16が原位置から移動を開始する際には、油圧室18が内部に残留した油圧によりダンパ室として作用する。このため、スプール16が移動開始に際して振動することはなく、ソレノイド20への通電に応答して、出力ポート14bから滑らかな出力油圧を出力させることができる。
【0027】(5)この実施形態のソレノイドバルブにおいては、ソレノイド20に対する非通電時及び通電開始時のいずれにおいても、バルブハウジング11内のスプール16及びソレノイド20のロッド23やプランジャ25に振動を生じることはない。このため、スプール16及びロッド23の摺動部分に、その振動に伴って摩擦が発生するおそれはなく、その耐久性を向上させることができる。
【0028】なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 油圧室18をバルブハウジング11内の異なった位置に形成し、スプリング19を油圧室18と異なった部分に配設すること。
【0029】・ 油圧供給路26をバルブハウジング11等に形成し、スプール16の移動に伴って開閉されるように構成すること。
・ この発明を、入力ポートと出力ポートとの間の開閉構成が異なったソレノイドバルブに具体化すること。
【0030】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、ソレノイドの非通電時には、油圧室に油圧が供給されて、スプールが油圧室の油圧力とスプリングの付勢力との協働により、原位置に規制保持される。よって、ソレノイドバルブに強い加速度が印加された場合でも、スプール及びソレノイドのプランジャに振動が発生することがなく、出力油圧が誤出力されるおそれを防止することができる。
【0031】請求項2に記載の発明によれば、バルブハウジングの構造を複雑にすることなく、その一端に油圧室を容易に形成することができるとともに、その油圧室を利用してスプリングを簡単に収容配置することができる。
【0032】請求項3に記載の発明によれば、油圧室への油圧の供給路を簡単に形成することができるとともに、ソレノイドの通電時には、油圧室への油圧の供給を停止して、スプールを抵抗なく容易に移動させることができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成10年10月14日(1998.10.14)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開2000−120908(P2000−120908A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−292059