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【発明の名称】 高圧雰囲気での排液コックの使用方法
【発明者】 【氏名】石田 裕行

【要約】 【課題】液体を充満した容器の内外に等しい高圧を印加する際に、この容器に市販の排液コックを取り付けて支障なく使用できるようにすることにある。

【解決手段】容器2の壁の一部をダイアフラム3で構成して高圧雰囲気中でも内外の圧力差を零にできる構造とし、充填した絶縁油5を排出する排液コック4の排出孔12に阻止プラグ16をねじ込み、排液コック4を開の状態にしてから容器2に絶縁油5を充満させた後、この容器2を海底に沈める。または、容器2の壁の一部をダイアフラム3で構成して高圧雰囲気中でも内外の圧力差を零にできる構造とし、充填した絶縁油5を排出する排液コック4の排出孔12に阻止プラグ16をねじ込み、この容器2に絶縁油5を充満させてから前記排液コック4を開の状態にした後、この容器2を海底に沈める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】容器の壁の一部分の移動によりこの容器の外部圧力と内部圧力との差を零にする可撓性隔壁と、この容器の内部液体を排出する排液コックと、を備えている容器の前記排液コックの排出側に内部液体の流出を阻止する阻止プラグをねじ込み、前記排液コックを開の状態にし、当該容器に液体を充満させ、その後に当該容器を高圧雰囲気中に設置することを特徴とする高圧雰囲気での排液コックの使用方法。
【請求項2】容器の壁の一部分の移動によりこの容器の外部圧力と内部圧力との差を零にする可撓性隔壁と、この容器の内部液体を排出する排液コックと、を備えている容器の前記排液コックの排出側に内部液体の流出を阻止する阻止プラグをねじ込み、当該容器に液体を充満させ、前記排液コックを開の状態にし、その後に当該容器を高圧雰囲気中に設置することを特徴とする高圧雰囲気での排液コックの使用方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、液体を充満した容器の内外に等しい高圧を印加したときに、この容器に取り付けた排液コックが破損するのを防止する高圧雰囲気での排液コックの使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】海洋開発などのために、最近では海底での作業が多くなってきているが、水深が深くなるのに従って作業の困難性が増大する。例えば水深 300メートルでの圧力は地上での大気圧の約30倍になるから、この海底で作業するための諸設備にも各種の工夫が必要になってくる。そこで水深 300メートルの海底に電源設備を設置する場合を例にして以下に説明する。
【0003】電源設備は変圧器,開閉器,半導体素子を使用した電力変換器等と、これら各機器間を接続する電気配線などで構成しているが、従来はこれらを一括して水深300メートルの高圧に耐える耐圧容器に収納し、これを海底に沈めていた。耐圧容器の内容積が小い場合は、圧力が高くても当該耐圧容器の肉厚は薄くてもよいが、電源設備を収納するような大容積の耐圧容器では、その肉厚を厚くしなければならないから、加工に手間がかかり高価になる欠点がある。ところで前述した変圧器や導体,一部の開閉器,半導体素子などの機器は高い圧力に曝されても動作や寿命に支障は無く、ごく一部の機器,例えば電解コンデンサなどが高圧力に耐えられないだけである。そこでこれらの高圧に耐えられる機器は絶縁油を満たした容器に収納し、この容器を海底に設置する際に、その設置場所の水圧が絶縁油にも印加される構造にすれば、この容器の外部圧力と内部圧力とは同じになるから、耐圧容器を使用しなくても良いことになる。
【0004】図4は海底に沈める容器の一般的な構造の断面を示した構造断面図であって、容器2の内部には前述した電気機器(図示せず)を収納した後、内部には絶縁油5を充填する。この容器2の側壁には、当該容器2の内外圧力差に対応して左右に移動することができる可撓性隔壁としてのダイアフラム3(またはベローズであってもよい)が取り付けられており、容器2の底部には充填した絶縁油5を排出したり、絶縁油5の下方に溜まったスラッジやドレーンを抜き取るための排液コック4を備えている。
【0005】この容器2を海底に沈めるには、先ず地上で排液コック4を閉にした状態で容器2の内部に絶縁油5を充満させる。容器2の内部に充満した絶縁油5の圧力のために、ダイアフラム3はその張力と平衡する位置まで左方向へ移動する。次いでこの容器2を海底に沈めると、水深に対応した圧力がダイアフラム3を介して内部の絶縁油5に加わってその体積を収縮させるから、絶縁油5の圧力と外部の水圧とがバランスする位置までダイアフラム3は右方向へ移動する。それ故この容器2を海底に沈めると、容器2の内外圧力差は零になる。よって容器2を耐圧構造にする必要が無くなる。
【0006】図5は排液コックが閉状態のときを断面で図示した構造断面図である。この図5において、容器2の底部に取り付けた排液コック4は、排液コック本体11(右上がりの斜線でハッチングした部分)と、この排液コック本体11の内部で回転することにより液体を排出または阻止できるコック弁13(右下がりの斜線でハッチングした部分)とが主要構成部品であって、排液コック本体11の下側には雌ねじが加工されている排出孔12がある。またコック弁13には弁孔14と回転軸15(右下がりの斜線でハッチングした部分)とを備えており、この回転軸15の回転に従ってコック弁13も回転する。図5ではコック弁13に設けた弁孔14が図示の状態にあるので、コック弁13が容器2内の絶縁油5(縦線でハッチングした部分)がこのコック弁13よりも下方へ流出するのを阻止している。
【0007】図6は排液コックが開状態のときを断面で図示した構造断面図であって、回転軸15を図5から90度回転させた状態を図示している。回転軸15を90度回転させるとコック弁13も90度回転し、弁孔14が上方の容器2内部と下方の排出孔12とを連結するから、容器2内部の絶縁油5を排出孔12から排出することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】容器2へ絶縁油5を充填する際には、先ず排液コック4を閉じて図5に図示の状態にする。絶縁油5を満たせば、この容器2を海底に沈めた後に地上へ引き揚げるまでの期間は、この排液コック4は閉じた状態を継続するのは勿論である。ところで、地上で排液コック4を閉じたときに、弁孔14の空間部分には大気圧の空気が閉じ込められることになる。容器2を海底に沈めると、排出孔12には高圧の海水が充満するから、排出孔12と弁孔14との間の圧力差は極めて大きい。また、絶縁油5の圧力は前述したように海水の圧力と同じであるから、容器2内部と弁孔14との間にも大きな圧力差を生じる。通常の排液コック4はこのような高圧に耐えられる構造にはなっていないから破損する恐れがある。海底で排液コック4が破損して絶縁油5が流出すれば、内蔵している電気機器は絶縁不良になり運転できなくなる大事故に発展する恐れがある。
【0009】図7は阻止プラグを付加した排液コックを閉状態にしたときの断面を図示した構造断面図であるが、この図7は既述の図5に図示の排出孔12に加工されている雌ねじを利用し、これに阻止プラグ16をねじ込んでいるのが異なる点であって、これ以外は図5と同じである。この阻止プラグ16(右下がりの斜線でハッチングした部分)は地上でねじ込むから、このときに阻止プラグ16とコック弁13との空間に大気圧の空気が閉じ込められてしまう。よって容器2を海底に沈めたときに、図5で既述の場合と同様に大きな圧力差を生じてしまう。
【0010】このような不都合を解消するためには、高い圧力に耐えることができる排液コック4を別途に製作して使用しなければならない。従って市販品に比べて高価であるし、入手が簡単にできない不都合がある。そこでこの発明の目的は、液体を充満した容器の内外に等しい高圧を印加する際に、この容器に市販の排液コックを取り付けて支障なく使用できるようにすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、この発明の高圧雰囲気での排液コックの使用方法は、容器の壁の一部を可撓性隔壁にして高圧雰囲気中でも内外の圧力差を零にしている容器の内部液体を排出する排液コックの排出孔に阻止プラグをねじ込み、前記排液コックを開の状態にしてから容器に液体を充満させた後、この容器を高圧雰囲気中に設置するものとする。
【0012】または、容器の壁の一部を可撓性隔壁にして高圧雰囲気中でも内外の圧力差を零にしている容器の内部液体を排出する排液コックの排出孔に阻止プラグをねじ込み、この容器に液体を充満させてから前記排液コックを開の状態にした後、この容器を高圧雰囲気中に設置するものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1実施例を表したフローチャートである。このフローチャートに示しているように、排液コック4の排出孔12に阻止プラグ16をねじ込む(処理21)。これにより排液コック4を開にしても内部の絶縁油5が流出できない状態になる。次いで排液コック4を開(処理22)にした後、容器2に絶縁油5を充填(処理23)する。これによりこの絶縁油5は弁孔14を通って阻止プラグ16まで達する。すなわち排液コック4のあらゆる部分に絶縁油5が充満し、大気圧の空気が残存しないようになる。そこで当該容器2を海底に沈める(処理24)と、絶縁油5の圧力は水圧と等しいから、容器2のあらゆる部分の内部圧力が外部圧力と同じ値になる。
【0014】図2は本発明の第2実施例を表したフローチャートであるが、図2のフローチャートは、排液コック4を開(処理22)にする操作と容器2に絶縁油5を充填(処理23)する操作の順序が、図1で既述の第1実施例とは逆になっているだけであり、これ以外は図1の第1実施例とおなじであるから、第2実施例のフローチャートの説明は省略する。
【0015】図3は図1または図2にフローチャートに記載の状態の排液コックの断面を表した構造断面図であって、排出孔部分に阻止プラグ16をねじ込み、且つコック弁13を開位置まで回転させた状態を表している。このとき絶縁油5(縦線でハッチングした部分)は排液コック4のあらゆる部分に充満して空気が残存していないから、容器2を海底に沈めても圧力差は生じない。
【0016】
【発明の効果】液体を充満した容器には、この液体を排出するために排液コックを取付けるが、従来の排液コックはその内部に大気圧の空気が残存しているために、この容器の内側と外側とに同じ値の高圧を印加すると、この高圧と大気圧の空気との間に大きな圧力差を生じ、この圧力差が原因で排液コックが破損して内部の液体が流出してしまうなどの不都合があった。本発明では排液コックの排出孔に加工されている雌ねじを利用して、ここに阻止プラグをねじ込んだ後排液コックを開いてから当該容器に液体を充填する。排液コックを開くことで当該排液コックのあらゆる部分に液体が充満するから、この容器に高圧を印加しても内外に圧力差を生じることは無い。従って市販の排液コックに阻止プラグを追加するのみで破損を未然に防止できる効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
【出願日】 平成10年10月21日(1998.10.21)
【代理人】 【識別番号】100088339
【弁理士】
【氏名又は名称】篠部 正治
【公開番号】 特開2000−120891(P2000−120891A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−299202