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【発明の名称】 ディスク型電磁弁の製造方法
【発明者】 【氏名】飯野 賢一

【氏名】古谷 雄二

【要約】 【課題】磁気特性(磁性特性および非磁性特性)の安定性の確保し、漏れ磁束を小さくして磁性特性を改善し、電磁コイル3の吸引力の増加および応答性の改善、および製造コストの低減を可能としたディスク型電磁弁の製造方法を提供すること。

【解決手段】磁性体から構成したコア部21について、カバー4との溶接を行う部分(内側磁性体部22、外側磁性体部23)と、つぎに組み付ける部分(上側磁性体部24)とに分割すること、カバー4との溶接を行ったのちに熱処理(カバー4の固溶化処理および磁性体部22、23の焼き鈍し)を行うことに着目し、コア部21を、内側磁性体部22と、外側磁性体部23と、上側磁性体部24とに分割し、内側磁性体部22と外側磁性体部23との間に非磁性体から構成したカバー4を組み立てて溶接したのちに、熱処理することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性体から構成したコア部と、このコア部のコイル収容部に設けた電磁コイルと、非磁性体から構成するとともに前記コア部に溶接して前記コイル収容部を閉鎖可能とするカバーと、前記電磁コイルが吸引可能なディスク型アーマチュアと、を設けたディスク型電磁弁の製造方法であって、前記コア部を、内側磁性体部と、外側磁性体部と、上側磁性体部と、に分割するとともに、この内側磁性体部とこの外側磁性体部との間に前記カバーを組み立てて溶接したのちに、熱処理することを特徴とするディスク型電磁弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はディスク型電磁弁の製造方法にかかるもので、とくに燃料噴射用インジェクタその他のアクチュエータなどとして用いられるディスク型電磁弁の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から内燃機関における燃料噴射インジェクタ用のアクチュエータとしては、一般的にソレノイドバルブ(電磁弁)が用いられてきている。最近では、インジェクタとして、シリンダー内に燃料を直接噴射する筒内直接噴射用に高圧燃料が噴射可能であることが要求され、したがって、吸引力を大きく設定することができるディスク型電磁弁が用いられる場合がある。たとえば、特開平8−49624号などがある。
【0003】図4および図5にもとづき、従来のディスク型電磁弁1について概説する。図4は、ディスク型電磁弁1の要部断面図であって、ディスク型電磁弁1は、バルブハウジング2と、電磁コイル3と、カバー4と、ディスク型アーマチュア5と、バルブスプリング6と、を有する。
【0004】バルブハウジング2は、磁性体から構成したコア部7と、下方バルブハウジング8と、からこれを形成する。コア部7は、燃料供給パイプ9を上方バルブハウジング10に圧入して一体構成としたものである。コア部7では、燃料供給パイプ9と上方バルブハウジング10との間に開口形成した、ディスク型アーマチュア5側からその環状のコイル収容部11に電磁コイル3を収容する。
【0005】電磁コイル3は、その励磁によりディスク型アーマチュア5を吸引可能で、ディスク型アーマチュア5の先端部(図中下方側)に固定したニードル弁(図示せず)をリフトさせ、噴孔(図示せず)から燃料を噴射可能とする。
【0006】カバー4は、非磁性体からリング状にこれを構成するとともに、レーザービームなどによる溶接によりコア部7にこれを固定してコイル収容部11を閉鎖可能とし、電磁コイル3側に燃料が侵入しないように油密性を確保するとともに、磁束の漏れを防止している。なお、このカバー4の代わりにOリングなどを用いると高圧噴射では油密性の確保が困難であるとともに、コストが増加する。
【0007】図5は、ディスク型電磁弁1の製造方法の概略を示すフローチャート図であって、燃料供給パイプ9を上方バルブハウジング10に圧入したコア部7をまず「粗加工」ののち、「磁性焼き鈍し」(熱処理)した上で「精密加工」する。またカバー4についても「粗加工」ののち「固溶化処理」(熱処理)した上で「精密加工」しておき、これらの部品を組み立てて、上述のように溶接したのち、面出しなどの「仕上げ加工」を行い、ディスク型アーマチュア5、バルブスプリング6および下方バルブハウジング8などを組み付ける。
【0008】上記「磁性焼き鈍し」は、コア部7を所定温度(たとえば850℃)に加熱後徐冷して、コア部7の製作加工時の加工ひずみ(応力)の除去を行うものであり、「固溶化処理」は、カバー4を所定温度(たとえば1050℃)に加熱後急冷して、カバー4の製作加工時の着磁を除去するものである。コア部7およびカバー4などの油密性を確保する必要がある部分については、熱処理(磁性焼き鈍し、固溶化処理)のあとにその熱歪みの影響を受けるために、熱処理のあとにこれを精密加工する必要があるが、この精密加工の工程においても加工歪みにより磁性および非磁性は若干悪化することは避けられない。
【0009】しかして、高圧燃料下での油密性を確保するために、レーザービーム出力を上げてコア部7とカバー4との溶接強度を増加させると、この溶接工程において溶接温度が一般的には鉄の融点1536℃をこえるため、コア部7およびカバー4に過大な熱負荷が作用し、コア部7の磁性特性およびカバー4の非磁性特性が悪化してしまうという不具合が発生する。具体的には、磁束漏れや磁性特性の悪化により、電磁コイル3の吸引力の低下および応答性の悪化などが起こるなどの問題がある。なお、特性の悪化している電磁弁は、通常これを廃棄せざるを得ず、製造の歩留まりも悪いという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、磁気特性(磁性特性および非磁性特性)の安定性の確保を可能としたディスク型電磁弁の製造方法を提供することを課題とする。
【0011】また本発明は、漏れ磁束を小さくし、また磁性特性を改善することにより、電磁コイルの吸引力の増加および応答性の改善を可能としたディスク型電磁弁の製造方法を提供することを課題とする。
【0012】また本発明は、部品加工工程の削減により、製造コストの低減を可能としたディスク型電磁弁の製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、磁性体からなるコア部について、非磁性体からなるカバーとの溶接を行う部分と、そののちに組み付ける部分とに分割すること、コア部とカバーとの溶接を行ったのちに、カバーの固溶化処理およびコア部の焼き鈍しなどの熱処理を行うこと、および固溶化処理の加熱温度の方が焼き鈍しの加熱温度より高温であるため、カバーとコア部とを一体化した状態でカバーの固溶化処理ののちにコア部の焼き鈍し処理を行っても互いへの熱影響は無視できることなどに着目したもので、磁性体から構成したコア部と、このコア部のコイル収容部に設けた電磁コイルと、非磁性体から構成するとともに上記コア部に溶接して上記コイル収容部を閉鎖可能とするカバーと、上記電磁コイルが吸引可能なディスク型アーマチュアと、を設けたディスク型電磁弁の製造方法であって、上記コア部を、内側磁性体部(燃料供給パイプ)と、外側磁性体部(バルブハウジング)と、上側磁性体部と、に分割するとともに、この内側磁性体部とこの外側磁性体部との間に上記カバーを組み立てて溶接したのちに、熱処理することを特徴とするディスク型電磁弁の製造方法である。
【0014】上記熱処理はこれを、上記カバーの固溶化処理、および上記内側磁性体部および上記外側磁性体部の焼き鈍しとすることができる。
【0015】上記熱処理ののちに上記電磁コイルおよび上記上側磁性体部を組み立てることができる。
【0016】本発明によるディスク型電磁弁の製造方法においては、コア部(内側磁性体部および外側磁性体部)とカバーとを組み立て、溶接したのちに、それぞれの熱処理、具体的には、カバーの固溶化処理およびコア部の焼き鈍し処理を行うようにしたので、またコア部の焼き鈍し処理温度は、カバーの固溶化処理の熱処理温度より低いので、それぞれへの熱影響はなく、加工時および溶接時のカバーおよびコア部への熱負荷による悪影響を是正してそれぞれの磁性特性を向上させることができる。
【0017】さらに、熱処理後の加工工程を省略することができるので、製作コストの削減を図ることもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】つぎに本発明によるディスク型電磁弁の製造方法を図1ないし図3にもとづき説明する。ただし、図4および図5と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。図1は、当該ディスク型電磁弁20の要部断面図であって、ディスク型電磁弁20においては、前記ディスク型電磁弁1(図4)のコア部7に相当するコア部21を、前記燃料供給パイプ9(図4)に相当する内側磁性体部22、外側磁性体部23、および上側磁性体部24に分割してある。すなわち、構成部品として、前記燃料供給パイプ9(図4)に相当する内側磁性体部22に加えて、前記コア部7の上方バルブハウジング10を外側磁性体部23と、上側磁性体部24と、に分割した形態である。このコア部21と前記下方バルブハウジング8とにより、バルブハウジング25を構成する。
【0019】内側磁性体部22は、電磁コイル3の内周側に位置している。外側磁性体部23は、電磁コイル3の外周側であって、内側磁性体部22との間に電磁コイル3およびカバー4を配置する。上側磁性体部24は、電磁コイル3の図中上側(ディスク型アーマチュア5とは反対側の上流側)に位置して、前記コイル収容部11(図4)に相当するコイル収容部26を上側に開口形成可能とする。
【0020】こうしたコア部21の分割構成を前提とし、ディスク型電磁弁20の製造方法を図2にもとづき説明する。図2は、ディスク型電磁弁20の製造方法の概略を示すフローチャート図であり、内側磁性体部22および外側磁性体部23を「精密加工」し、カバー4を「精密加工」し、「組み立て・溶接」する。この溶接により内側磁性体部22、外側磁性体部23およびカバー4を一体にするとともに、コイル収容部26を形成する。ついで、「熱処理」を行う。具体的には、カバー4の「固溶化処理」、つぎに内側磁性体部22および外側磁性体部23の「磁性焼き鈍し」を行う。
【0021】図3は、この熱処理の工程を示すグラフである。まずカバー4部分の固溶化処理を行う。処理温度1000〜1200℃、好ましくは1010〜1150℃で、処理時間0.5〜2時間、好ましくは1〜2時間行ったのち、水などにより急冷を行う。この固溶化処理では急冷するため、内側磁性体部22および外側磁性体部23部分への影響はないと考えられる。ついで、内側磁性体部22および外側磁性体部23部分の磁性焼き鈍しを行う。処理温度800〜900℃、好ましくは850℃で、処理時間1〜2時間、好ましくは1.5時間行ったのち、空冷により徐冷を行う。この磁性焼き鈍しでは、その処理温度が固溶化処理より低いため、カバー4部分への影響はないと考えられる。
【0022】かくすることにより、加工および溶接による熱負荷にともなう磁性特性への悪影響をカバー4、内側磁性体部22および外側磁性体部23ともに除去してそれぞれの磁性特性(カバー4の非磁性特性、内側磁性体部22および外側磁性体部23の磁性特性)を安定化させることができる。
【0023】一方、上側磁性体部24については「精密加工」ののち、単独で「磁性焼き鈍し」を行い、上述のように熱処理済みのカバー4、内側磁性体部22および外側磁性体部23のコイル収容部26に図中上方から電磁コイル3を組み付けたのち、上側磁性体部24を「組み立て」(圧入し)、最後に面出しなどの「仕上げ加工」を行う。
【0024】かくして、本発明では、レーザー溶接などによる溶接工程と、非磁性体であるカバー4の固溶化処理との順序を変えることにより、とくに、固溶化したカバー4の溶接による特性変化を避けるようにしたので、従来の溶接による熱負荷に起因する磁性特性の悪化を回避して、安定したかつ良好な磁性特性を得ることができる。また、従来のディスク型電磁弁1(図4)では、熱処理の後に熱歪みの影響を受けるために、油密性を確保する部分(コア部7およびカバー4)などは熱処理のあとに精密加工を行う必要があったが、本発明では組み立てたのちに熱処理を行うので、この精密加工の工程を削除可能である。なお、上側磁性体部24については、それほど精度が必要ないので、磁性焼き鈍しののちの精密加工はこれを削除可能である。さらに従来の方法では、特性の悪化している電磁弁は通常これを廃棄せざるを得なかったが、本発明においては、コア部(内側磁性体部22、外側磁性体部23)およびカバー4について精密加工および溶接は終了しているので、再度の熱処理により磁性特性を改善することも可能である。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、カバー(非磁性体部)、内側磁性体部および外側磁性体部の組み立てののち熱処理を行うようにしたので、安定した磁性特性を得ることができ、高圧噴射に適したディスク型電磁弁とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000003333
【氏名又は名称】株式会社ゼクセル
【出願日】 平成10年7月28日(1998.7.28)
【代理人】 【識別番号】100079360
【弁理士】
【氏名又は名称】池澤 寛
【公開番号】 特開2000−46224(P2000−46224A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−226569