| 【発明の名称】 |
スタッフィングボックスリング |
| 【発明者】 |
【氏名】ジャン パオロ フォンタナ
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| 【要約】 |
【課題】除去及び密封作用効率を向上可能な、クロスヘッドを備える二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスリングを提供する。
【解決手段】ピストンロッド(3)を介してクロスヘッドに連結されたピストンを往復動可能に収容するシリンダを備える二行程大型ディーゼルエンジンのスタッフィングボックス(1)に用いるスタッフィングボックスリング(10,11,12)であり、同スタッフィングボックス(1)はエアレシーバ室(4)からクランクシャフト領域(5)に至るピストンロッド(3)の動作路として作用する。動作状態にてピストンロッド(3)に沿って摺動するスタッフィングボックスリング(10,11,12)の動作面(30)に、硬い耐摩耗コーティング(20)が施されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピストンロッド(3)を介してクロスヘッドに連結されたピストンを往復動可能に収容するシリンダを備える二行程大型ディーゼルエンジンのスタッフィングボックス(1)に用いるスタッフィングボックスリング(10,11,12)において、同スタッフィングボックス(1)はエアレシーバ室(4)からクランクシャフト領域(5)に至るピストンロッド(3)の往復動路として作用し、同スタッフィングボックスリング(10,11,12)は、動作状態にてピストンロッド(3)に沿って摺動するスタッフィングボックスリング(10,11,12)の動作面(30)に、硬い耐摩耗コーティング(20)が施されていることを特徴とするスタッフィングボックスリング。 【請求項2】 コーティング(20)はクロムコーティング又はクロムセラミックコーティングであることを特徴とする請求項1に記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項3】 動作面(30)はガルバーニ電気的にコーティングされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項4】 コーティング(20)は噴霧法、プラズマ法、又はレーザー照射法、特にレーザークラッデングによって動作面(30)に施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項5】 少なくとも2つのリングセグメント(101)を備え、同リングセグメント(101)は互いに協働して1つのリング(10,11,12)を成すように周方向に隣接して配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項6】 2つのリングセグメント(101)を備えることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項7】 ピストンロッド(3)の径の最大7パーセント、特に最大5パーセントの経方向幅(B)を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項8】 スタッフィングボックスリング(10,11,12)の周縁部を包囲すると共に、同スタッフィングボックスリング(10,11,12)をピストンロッド(3)に対して押圧する1つのバネ(6)を備えることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のスタッフィングボックスリング。 【請求項9】 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つのスタッフィングボックスリング(10,11,12)を備えることを特徴とする二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックス。 【請求項10】 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の少なくとも1つのスタッフィングボックスリング(10,11,12)、又は請求項9に記載のスタッフィングボックス(1)を備えることを特徴とする二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、二行程大型ディーゼルエンジンのスタッフィングボックスに用いられるスタッフィングボックスリングに関する。 【0002】 【従来の技術】例えば船舶の主駆動機関に用いられる、長手方向に排気される二行程大型ディーゼルエンジンは、一般的には複数のシリンダを備えており、それぞれのシリンダ内には、1つのピストンが往復動可能に配置されている。各ピストンは、エンジンハウジング内の摺動路にて動作可能に支承されたクロスヘッドに、ピストンロッドを介して連結されている。クロスヘッドは、もう一方の端部において、スラストロッドを介してエンジンのクランクシャフトに連結されている。ピストンロッドをシリンダに挿通するために、スタッフィングボックスが備えられている。スタッフィングボックスは、一般に、ピストンロッドの長手方向軸線に対して交互に配置されると共にスタッフィングボックスパッキングを成す複数のスタッフィングボックスリングを有する。 【0003】異なる型のスタッフィングボックスリングは、機能に応じて識別される。スタッフィングボックスのシリンダ側端部には、1つ以上のブラッシュオフリングが設けられている。ブラッシュオフリングの主機能は、燃焼残留物あるいはピストンロッドからの摩耗又は摩滅粒子等の汚染物がクランクシャフト領域に侵入しないように、これらの汚染物を除去することである。ブラッシュオフリングに続いて、1つ以上の密封リングが備えられている。密封リングの主機能は、排気又は吸気がピストンロッドに沿ってエアレシーバから逃げないように、下側ピストン領域又はエアレシーバ室をクランクシャフト領域に対して密封することである。密封リングに続いて、ピストンロッドに沿ってレシーバ室に至る、過剰な、即ち、ピストンロッドの潤滑に必要な量を上回る潤滑油流入を回避するために、1つ以上の潤滑油ブラッシュオフリングが設けられている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】通常、大型ディーゼルエンジンに用いられる周知のスタッフィングボックスリングは、非鉄系金属又はネズミ鋳造材料により形成される。スタッフィングボックスリングは、例えば1つ以上のリップを備え、その経方向内側に位置する境界面は、動作状態においてピストンロッドに沿って摺動する動作面を形成する。二行程大型ディーゼルエンジンに作用する力が大きいこと、それによりピストンロッド径が例えば30センチメートル以上の大径になること、及び動作によって摩耗が起きることから、この型のエンジンのスタッフィングボックスリングは、それに応じた大量の材料を用いて高強度に製造する必要がある。その結果、周知のスタッフィングボックスリングは、非常に高い曲げ抵抗を有するため、非常に限られた形状適合性しか備えていない。このため、現在、少なくとも新品の状態ではリングがピストンロッドの周縁部のほぼ全体に接触するように、スタッフィングボックスリングは、3つのリングセグメントから形成される。リングセグメントは、周方向にセグメントを包囲する1つのバネにより一体に保持され、ピストンロッドに対する付勢力を付与される。 【0005】摩耗に関して、二行程大型ディーゼルエンジンに用いられる周知のスタッフィングボックスリングには不利な点がある。即ち、摩滅、摩耗又はその他の汚染に由来するピストンロッドに付着する硬い粒子は、ピストンロッドがスタッフィングボックスリングを通過して動作する際にスタッフィングボックスリングの動作面に圧入される。これにより望ましくない摩滅作用が生じ、同作用は、特にピストンロッド、また、スタッフィングボックスリングにおいても、非常に大規模な摩耗につながる。 【0006】スタッフィングボックスリングの除去作用及び密封作用の効率において決定的な要因は、比表面圧、即ちリングのリップ又は動作面がピストンロッドに押圧される際の圧力である。しかしながら、特に二行程大型ディーゼルエンジンにおいては、ピストンロッド及びスタッフィングボックスリングにおいて対を成す材料間のスカッフィングにつながるため、比表面圧は過剰に大きくてはならない。比表面圧が比較的低い場合は、除去及び密封作用効率を低下させる。更に、リングセグメントは非常に硬いため、ピストンロッドの周縁部において、スタッフィングボックスリングは非均一な接触状態にある。 【0007】このような除去及び密封効率の低下は、特に、より早いピストン動作速度及びより高い排気圧で動作する現在の二行程大型ディーゼルエンジンでは、非常に不利である。従って、例えば、ピストンロッドからレシーバ室に流入する潤滑油のかなりの量が損失する。 【0008】前述のような先行技術を鑑みて、本発明の目的は、除去及び密封作用効率を向上させることが可能な、クロスヘッドを備える二行程大型ディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスリングを提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するスタッフィングボックスリングは、各独立クレームに記載された特徴を有する。 【0010】従って、本発明は、ピストンロッドによりクロスヘッドに連結されたピストンを往復動可能に収容したシリンダを備える二行程大型ディーゼルエンジンにおいて、エアレシーバ室からクランクシャフト領域までのピストンロッドの動作路を画定するスタッフィングボックスに用いられるスタッフィングボックスリングを提供する。動作状態でピストンロッドに沿って摺動するスタッフィングボックスリング動作面には、硬い耐摩耗コーティングが施されている。 【0011】動作面をコーティングすることによって、スタッフィングボックスリング動作面がピストンロッドに対して押圧される際の比表面圧は、動作面及びピストンロッド間のスカッフィングを引き起こすことなく、顕著に増加する。表面圧増加によって、スタッフィングボックスリングの除去及び密封作用効率は、それぞれ顕著に改善される。このことにより潤滑油漏れが減少するため、潤滑油消費量は有利に減少する。また、スタッフィングボックス内への汚染物の侵入も減少することから、ピストンロッド及びスタッフィングボックスリングの摩耗も減少し、この結果、ピストンロッド及びスタッフィングボックスリング両者の耐用期間が長くなる。 【0012】汚染物除去効率を向上させること及び硬いコーティングを施すことにより、更に、スタッフィングボックスリングの動作面への、好ましくない粒子付着を回避することができ、その結果、摩耗損傷は生じなくなる。このことからもまた、ピストンロッド及びスタッフィングボックスリングの摩耗を低減させることができる。 【0013】クロムコーティング及びクロムセラミックコーティングは非常に高い硬度及び耐摩耗性を有することから、動作面にこれらの型のコーティングを施すことは、特に好ましい。現在ピストンロッドにおいて通常用いられている材料と対を成す材料としては、例えば、硬化鋼、クロム及びクロムセラミックが非常に優れた動作又は摺動特性を有しており、スカッフィングも非常に少ない。 【0014】製造上の理由から、スタッフィングボックスリングの動作面はガルバーニ電気的に(galvanisch)コーティングすることが好ましく、ガルバーニ電気的に硬クロム処理することは特に好ましい。 【0015】また、噴霧法、プラズマ法、又はレーザー照射法、特にレーザークラッディングにより動作面にコーティングを施すことが可能である。本発明のスタッフィングボックスリングは、セグメント分割して設計することが好ましい。即ち、同リングは少なくとも2つのリングセグメントから成り、それらリングセグメントは互いに協働して1つのリングを構成するように周方向に隣接して配置される。このようなセグメント分割設計により、ピストンロッドに対するスタッフィングボックスリングの良好な接触が最大限可能になり、その結果、スタッフィングボックスリングの密封及び除去作用に望ましい影響を及ぼす。摩耗の低下、及び本発明のスタッフィングボックスリングが動作する際の比表面圧が顕著に増加することにより、周知のスタッフィングボックスリングと比較して、本発明のスタッフィングボックスリングの経方向幅及び/又は軸線方向高さを小さく設計することが可能である。この結果、耐曲げ硬さが低下し、従って、形状適合性が向上する。従って、スタッフィングボックスリングはより適切に配置され、その周縁部において、ピストンロッドに対してより均一に接触する。このことによって、除去及び密封作用はそれぞれ有利に改善される。耐用期間後期においてピストンロッドに摩耗が生じた場合でも、改善された除去及び密封作用は、長期に及び実質的に一定に維持される。 【0016】形状適合性が向上することから、ピストンロッドに対するスタッフィングボックスリングの接触状態に望ましくない影響を与えることなく、スタッフィングボックスリングを2つのリングセグメントのみから構成する実施形態が可能である。2つのリングセグメントのみを設ける方法を採用することによって、隣接するリングセグメント間のバットジョイント数、即ちロック数が減少し、それによりスタッフィングボックスリングの除去及び密封作用のそれぞれに対して望ましい影響が与えられることから、同方法は特に好ましい。 【0017】好適な一実施の形態において、ピストンロッドに対するスタッフィングボックスリングの形状適合性を向上させ、高く均一な比表面圧を実現するために、スタッフィングボックスリングの経方向幅は、ピストンロッド経の最大7パーセント、特に、最大5パーセントの寸法になる。 【0018】ピストンロッドに対してスタッフィングボックスリングを押圧し、セグメント分割された実施形態において複数のリングセグメントを一体保持するために、スタッフィングリングの周縁部を包囲すると共にピストンロッドに対してスタッフィングボックスリングを押圧するバネを備えることが好ましい。 【0019】本発明のスタッフィングボックスリングによって、周知のスタッフィングボックスと比較して、顕著に向上した除去及び密封作用を有する、二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスが提供される。この型のスタッフィングボックスでは、1つ以上、好ましくは全てのスタッフィングボックスリングが本発明に基づき設計される。効率が向上し、リング及びピストンロッド両者において摩耗が低減することから、本発明のスタッフィングボックスを備える大型ディーゼルエンジンは、長期間に及び改善された動作性を維持する。特に、スタッフィングボックスリングの弾性によって、ピストンロッド又はスタッフィングボックスリングにおいて摩耗が生じた際であっても、良好な除去及び密封作用が維持され得る。 【0020】潤滑油及び汚染物に対する除去及び密封作用の効率向上によって、周知のスタッフィンボックスと比較して、スタッフィングボックスリングの数を減少させることが可能である。このことは、スタッフィングボックスが全体的に小型化できるという長所を有し、従って、大型ディーゼルエンジンの高さ自体も低くできる。更に、リング数を減らすことは、コストの面でも有利である。 【0021】本発明の更なる長所は、従属クレームに記載されている。 【0022】 【発明の実施の形態】本発明において、二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンのスタッフィングボックスに用いられるスタッフィングボックスリングが提供される。例えば船舶の主駆動機関に用いられる、この型のエンジンは、周知のように複数のシリンダを備えており、それぞれのシリンダ内には、1つのピストンが往復動可能に配置されている。各ピストンは、ピストンロッド3(図1)の一端を介してクロスヘッドに連結されており、ピストンロッド3の他端はスラストロッドを介してクランクシャフトに連結されている。クロスヘッドは、摺動路にて線形動作可能に支承されている。摺動路は、通常使用位置に対してシリンダの下方に位置するエンジンハウジングのクランクシャフト領域5にて固定されている。スタッフィングボックスは、ピストンロッドをクランクシャフト領域5からエアレシーバ領域4まで延びさせるために機能する。 【0023】図1は、長手方向に排気される二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスの一実施の形態を示す断面図である。同スタッフィングボックスは、その全体を符号1をもって示す。スタッフィングボックス1は、エンジンハウジング(図示せず)に対して固定されると共にピストンロッド3を包囲するハウジング2を有する。複数のスタッフィングボックスリング10,11,12は、周知の方法によってハウジング2内でピストンロッド3の長手方向軸線Aに対して交互に配置され、各リング10,11,12はピストンロッド3を包囲すると共に動作状態においてピストンロッド3に沿って摺動する。図1にて頂部に位置すると共にエアレシーバ室4に対向するスタッフィングボックス1の端部に配置されている2つのスタッフィングボックスリング10は、例えば燃焼残留物もしくは摩耗又は摩滅に由来するピストンロッド3の粒子等の汚染物の除去を主機能とするブラッシュオフリング10として作用する。ブラッシュオフリング10に隣接して、排気又は吸気がシリンダーからピストンロッド3に沿って逃げることのないように、エアレシーバ室4をフランクシャフト領域5に対して密封することを主機能とする複数(本実施形態では4個)の密封リング11が配置されている。密封リング11に隣接して、ピストンロッド3に沿いエアレシーバに至る過剰な潤滑油流入、即ち潤滑に必要な量を上回る流入を回避するために、複数(本実施形態では10個)の潤滑油ブラッシュオフリング12が設けられている。クランクシャフト領域5に対向するスタッフィングボックス1の他端には、クランクシャフト領域5からエアレシーバ室4への潤滑油流入を防止する1つのブラッシュオフリング10が配置されている。 【0024】各スタッフィングボックスリング10,11,12は、少なくとも1つのバネ6によってピストンロッド3に対して経方向内側に作用する付勢力を付与される。バネ6は各スタッフィングボックスリング10,11,12の周縁部を包囲すると共に、スタッフィングボックスリングの型に応じて異なり得る比表面圧をもって、ピストンロッド3に対して押圧される。 【0025】図2〜図4に、図1で最上部に位置すると共に本発明の一実施の形態として設計されたブラッシュオフリング10を詳細に示す。図2は、長手方向軸線Aの方向から見た、ブラッシュオフリング10を示す平面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿って見たブラッシュオフリング10を示す断面図である。図4は、図2の線IV−IVに沿って見たブラッシュオフリング10の断面図である。図4には、理解の便宜上ピストンロッド3が示されている。 【0026】ブラッシュオフリング10は、周方向において互いに隣接して配置される実質的に同一の2つのリングセグメント101を備える。経方向に延びる間隙として形成されたバットジョイント即ちロック102は、リングセグメント101の互いに対向する各端部の間に配置されている。各リングセグメント101は、その内側部において経方向内側に延びる少なくとも2つの突出リップ103を備えている。各突出リップ103は、リングセグメント101全体に沿って同セグメント101の周方向に延び、ピストンロッド3の長手方向軸線Aとして定義される軸線方向に対して、互いに離間して配置されている。各リップ103において経方向内側に位置すると共に、高さH1及び高さH2をそれぞれ有する2つの境界面は、動作状態においてピストンロッド3に沿って摺動するブラッシュオフリング10の動作面30を形成する。従って、動作面30は、軸線方向高さH=H1+H2を有する。 【0027】各リングセグメント101の外側部には、各バネ6(図1参照)を収容するために設けられた周方向に延びる2つの溝105が備えられている。軸線方向に対して、各溝105は、同溝105に収容された各バネ6によりブラッシュオフリング10に対してほぼリップ103の高さにおいて付勢力が付与されるように配置されている。 【0028】本発明において、スタッフィングボックスリング10の動作面30には、硬い耐摩耗コーティング20が施されている。コーティング20は、少なくとも800HV1のヴィッカース硬さを備え、スタッフィングボックスリングを形成するための基礎材料よりも低い摩耗性を有すると共に、ピストンロッド3を形成する材料に対して非常に良好な動作性を示す材料により形成されている。二行程大型ディーゼルエンジンに現在通常用いられている主に硬化されたピストンロッドにおいて、クロム及びクロムセラミックは、動作面30のコーティング20の特に適切な材料であることが実証されている。クロムは好ましくは電気分解により塗布され、例えば、動作面30はガルバーニ電気的に硬クロム処理を施される。このことの有用性は、コーティング20の厚みが少なくとも0.3ミリメートルである場合について実証されている。本実施の形態において、コーティング20の厚みは0.3〜0.7ミリメートルである。 【0029】コーティング20は、ピストンロッド3において良好な動作性を示す硬い耐摩耗材料から形成され得る。例えば、ステライト、トリバロイ(Tribaloy)、ニッケルリン(Nickelphosphor)又はこれらに同等の材料が適している。用いる材料に応じて、コーティング20の塗布方法として、電気分解法以外に、噴霧法、プラズマ法又はレーザー照射法、特にレーザークラッディング等、その他の方法が適する。 【0030】ブラッシュオフリング10の基礎材料としては、特に二行程大型ディーゼルエンジンのスタッフィングボックスリングに通常用いられる全材料、例えば、ネズミ鋳鉄、鋼、及び、例えば加鉛青銅、銅−アルミニウム合金、銅−鉛合金、及び銅−錫合金等の非鉄系金属材料が適している。 【0031】ブラッシュオフリング10又は同リング10のリングセグメント101が基礎材料により形成された後、動作面30に対してコーティング20が施される。硬い耐摩耗コーティング20によって、本発明のスタッフィングボックスリング10は著しく好ましい耐摩耗性を備え、従って周知のスタッフィングボックスリングよりも長期に及ぶ耐用期間を有する。更に、動作面30への硬い粒子の付着を回避することが可能であり摩滅が生じないことから、ピストンロッド3における摩耗現象もまた顕著に低減する。また、コーティング20により、ブラッシュオフリング10は、動作面30とピストンロッド3との間にスカッフィングを生じさせることなく、ピストンロッド3に対して著しく増加した比表面圧をもって押圧され得る。比表面圧の増加は、動作面30の総高さHを(周知のブラッシュオフリングと比較して)減少させること及び/又はブラッシュオフリング10の溝105に収容するバネ6の力を増強することによって成される。本実施の形態では、ブラッシュオフリング10は、少なくとも30N/cm2の比表面圧をもってピストンロッド3に押圧される。このことによって、ブラッシュオフリング10の除去作用は著しく改善する。 【0032】特に、摩耗が顕著に低減することにより、ブラッシュオフリング10は、周知のリングと比較して著しく小さい経方向幅Bをもって設計可能である。ブラッシュオフリング10の経方向幅は、好ましくは、ピストンロッド3の径の最大7パーセント、特に好ましくは最大5パーセントである。このことには、材料の所要量が減少するという利点に加えて、ブラッシュオフリング10が実質的に増加した弾性及びピストンロッド3に対する高い形状適合性を備え、それによって除去作用が向上するという利点がある。また、ブラッシュオフリング10の弾性によって、2つのリングセグメント101のみからブラッシュオフリング10を製造することが可能になる。このことによって、ロック102の数が減少し、除去効率に望ましい効果が及ぶ。より高い弾性を有することは、動作面30の周縁部においてより一定の押圧が達成されることから更に有利であり、その一定の押圧は動作により摩耗が生じた際にも保持される。 【0033】しかしながら、本発明のスタッフィングボックスリング10,11,12は3つ以上のリングセグメントから構成されてもよいことは明らかである。以上、図2〜図4を参照して、本発明のスタッフィングボックスリングの実施形態を説明したが、同説明は、密封リング11、潤滑油ブラッシュオフリング12又は二行程大型ディーゼルエンジンのスタッフィングボックスにおけるその他の型のスタッフィングボックスリングにも同様に当てはまる。 【0034】図5は、本発明のスタッフィングボックスリングとして設計された密封リング11の一実施形態を、図4と同様の部分にて示す断面図である。図5で用いられる符号については前述の通りである。密封リング11において、経方向内側に位置する境界面全体は、コーティング20を施した動作面30を形成する。向上した密封作用を備えることによって、密封リング11は、特に、高い排気圧又は吸気圧において動作する大型ディーゼルエンジンに適する。 【0035】図6は、本発明のスタッフィングボックスリングとして設計された潤滑油ブラッシュオフリング12の一実施形態を、図4と同様の部分にて示す断面図である。図6で用いられる符号については前述の通りである。潤滑油ブラッシュオフリング12には、ブラッシュオフリング10と同様に、2つのリップ123が設けられ、同リップ123の経方向内側に位置する境界面は互いに協働して、コーティング20を施した動作面30を形成する。 【0036】図1に示す二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックス1において、全てのスタッフィングボックスリング10,11,12を本発明に基づき設計することができる。しかしながら、スタッフィングボックスリングのうちの1つ又はいくつかのみに、動作面30へのコーティング20を施したスタッフィングボックス1の各実施形態も考えられる。 【0037】以上、説明したように、本発明によって、硬い耐摩耗コーティング20を施された動作面30を備える、二行程大型クロスヘッドディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスリング10,11,12が提供される。このような構成により、より高い比表面圧が達成される。本発明のスタッフィングボックスリングは、周知のリングと比較して顕著に向上した除去及び密封作用を備え、このことによって、ピストンロッド及びスタッフィングボックスの摩耗及び潤滑油消費量は著しく低減する。 【0038】 【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明により、除去及び密封作用効率を向上させることが可能な、クロスヘッドを備える二行程大型ディーゼルエンジンに用いられるスタッフィングボックスリングを提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】592109961 【氏名又は名称】ヴェルトジィレ エヌエスデー シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト 【氏名又は名称原語表記】Waertsilae NSD Schweiz AG
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| 【出願日】 |
平成12年3月27日(2000.3.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068755 【弁理士】 【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−291807(P2000−291807A) |
| 【公開日】 |
平成12年10月20日(2000.10.20) |
| 【出願番号】 |
特願2000−85888(P2000−85888) |
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