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【発明の名称】 縦型液体シール装置
【発明者】 【氏名】武石 淑之

【氏名】今本 善美

【要約】 【課題】被密封液体中に微粒子が含まれる場合あるいは被密封液体が界面活性剤を含有する非フッ素系溶媒と水との混合液の場合であっても、長期間にわたって磁性流体を劣化させることのない、磁性流体シールを用いた縦型回転機械の液体シール装置を提供する。

【解決手段】縦型回転機械のシャフトとハウジングとの間に存在させた被密封液体の外部への漏洩を防止するために、シャフトとハウジングとの間に磁性流体シールを充填せしめた装置において、磁性流体シールと被密封液体との間に被密封液体よりも比重の大きい緩衝液体を介在させた縦型液体シール装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 縦型回転機械のシャフトとハウジングとの間に存在させた被密封液体の外部への漏洩を防止するために、シャフトとハウジングとの間に磁性流体シールを充填せしめた装置において、磁性流体シールと被密封液体との間に被密封液体よりも比重の大きい緩衝液体を介在せしめたことを特徴とする縦型液体シール装置。
【請求項2】 被密封液体が平均粒径約100μm以下の粒子を分散させた粒子分散液である特許請求の範囲1記載の縦型液体シール装置。
【請求項3】 被密封液体が界面活性剤を含有する非フッ素系溶媒と水または電解質水溶液との混合液である請求項1記載の縦型液体シール装置。
【請求項4】 緩衝液体がパーフルオロポリエーテル系油である請求項1、2または3記載の縦型液体シール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、縦型液体シール装置に関する。更に詳しくは、縦型回転機械のシャフトとハウジングとの間に存在させた被密封液体の外部への漏洩を防止するために、シャフトとハウジングとの間に磁性流体シールを充填せしめた縦型液体シール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】シャフトが貫通しているハウジング内に被密封液体を存在させた縦型回転機械においては、被密封液体が外部に漏洩するのを防止するために、一般にOリング、オイルシール、メカニカルシール等が用いられている。しかしながら、これらの各シールは固体同志の摺接によってシール機能を発揮するものであるため、摩擦損失が大きくなるばかりではなく、摺接部の摩耗によるシール機能の低下のため、長期間の使用に耐えられないなどの問題を有している。
【0003】こうした問題を解決するために、図2に示されるような構造の縦型液体シール装置が従来から用いられている。この図において、符号1は縦型回転機械のシャフト、2は縦型回転機械のハウジングであり、そして3は被密封液体である。ここで、磁気回路は、一対の環状ポールピース4、このポールピース4によって挟持された環状磁石5およびシャフト1によって構成される。ポールピース4は、外周面がハウジング2の内周面に固定され、その内周面はシャフト1の外周面との間に、微小な環状隙間が形成されるように対向配置されており、磁気回路中に形成された隙間に磁性流体6を充填することによって、ポールピース4の内周面とシャフト1の外周面との間を密閉し、ハウジング内に存在している被密封液体3の漏洩を防止する構造となっている。
【0004】被密封液体としては、鉱油、合成油、フッ素化油、水等が用いられ、一方磁性流体の基油としては、鉱油、合成油、フッ素化油等が用いられ、このような構成によって液体をシールする場合には、被密封液体と磁性流体の基油とが互いに混り合わない組合せとなるように、磁性流体の基油を選定する必要がある。即ち、これらが混り合う組合せで用いられると、シャフトの回転によって被密封液体と磁性流体とが強制的に攪拌、混合されたとき、磁性流体の基油が被密封液体中に抽出されたり、逆に被密封液体が磁性流体中に取り込まれたりするため、磁性流体が著しく劣化し、シール機能が損われるようになる。
【0005】ところで、被密封液体中に切粉、塵埃等の粒子あるいはER流体の如き機能性流体に使用されている機能性粒子(ER粒子)等が含まれている場合(以下、これらを粒子分散液と称する)には、上記の如き方法を用いても磁性流体が短期間の内に劣化するおそれがあり、その結果シール性能が損われることを本発明者等は見出した。例えば、被密封液体がシリコーン油にシリカゲル粒子を分散させたER流体である場合、磁性流体の基油としてシリコーン油と混り合わないフッ素化油を用いても、ER流体中に分散している微粒子が磁性流体中に侵入し、磁性流体を劣化(ゲル化)させることが確認された。
【0006】ER流体をシールする方法としては、被密封液体と磁性流体との界面にOリング等の機械的(接触式)シールを補助的に設けるもの(特開平9-242882号公報)やその界面近傍に微粒子が凝集するのを妨げるような動圧を発生させる手段を設けたもの(同4-219529号公報)等が提案されている。しかしながら、これら従来のいかなる方法を用いても、粒子分散液と磁性流体とが接触する限り、磁性流体中への粒子の侵入は避けられず、シール寿命を多少延長させる効果はみられても、それには自ら限界がみられた。
【0007】また、被密封液体が種々の化合物の合成工程や高分子物質の重合工程などに用いられる非フッ素系溶媒、例えばn-ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、クロロホルム、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等と水との混合液である場合には、これをシール可能な磁性流体の基油は、非フッ素系溶媒と水との双方に不溶性のフッ素化油に限定されることになる。このような被密封液体と磁性流体との組合せでは、磁性流体シールで十分に密封可能であるが、被密封液体中に界面活性剤が含まれる場合には、シール性能が低下する場合がみられることを本発明者らは見出した。
【0008】この原因は、被密封液体中に含まれる界面活性剤が磁性流体を構成する磁性微粒子表面に移行し、磁性流体中に被密封液体が混入して磁性流体を劣化させることにある。このような現象により、界面活性剤を含む非フッ素系溶媒と水との混合液を磁性流体で直接密封しようとすると、被密封液体の磁性流体中への侵入が発生してシール性能の低下が避けられないことになる。
【0009】更に、被密封液体と磁性流体シールとの間に、遮蔽体および被密封液体と磁性流体の双方に混り合わない液体を介在させた液体シール装置というのも提案されている(実公昭62-31740号公報)。しかしながら、この液体シール装置は、遮蔽体として設けられるラビリンスシール、非金属製多孔質体や弾性部材を用いた接触シールまたは動圧シールは、前述の如く液体中に分散している粒子を完全には排除することができず、使用条件によっては逆に遮蔽体が粒子にかみ込み、粒子分散液と緩衝液体とが強制混合されるおそれがある。緩衝液体中に粒子分散液が取り込まれるということは、磁性流体シールに粒子分散液が接することを意味し、これはシール破壊を発生させる原因ともなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、被密封液体中に微粒子が含まれる場合あるいは被密封液体が界面活性剤を含有する非フッ素系溶媒と水との混合液の場合であっても、長期間にわたって磁性流体を劣化させることのない、磁性流体シールを用いた縦型回転機械の液体シール装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、縦型回転機械のシャフトとハウジングとの間に存在させた被密封液体の外部への漏洩を防止するために、シャフトとハウジングとの間に磁性流体シールを充填せしめた装置において、磁性流体シールと被密封液体との間に被密封液体よりも比重の大きい緩衝液体を介在させた縦型液体シール装置によって達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る縦型液体シール装置の一態様の中心線縦断面図であり、図2と同一個所には同じ符号が付されており、磁性流体シールと被密封液体との間に緩衝液体7を介在せしめている。ここに介在せしめる緩衝液体としては、当然被密封液体とは混り合わず、それよりも比重の大きいものでなければならず、また粘度が約50mPa・s以上、好ましくは約90〜1700mPa・s程度のものが用いられる。
【0013】かかる緩衝液体としては、それに接する被密封液体および磁性流体シールの基油の種類によっても異なるが、例えばパーフルオロポリエーテル系油、環状パーフルオロエーテル、パーフルオロアルキル等が用いられる。これらの内、最も好ましい緩衝液体であるパーフルオロポリエーテル油としては、例えば特開平1-265049号公報、同1-265048号公報、同1-131233号公報、同1-131232号公報、特開昭63-233088号公報、同63-137922号公報、同61-87727号公報、同61-87726号公報などに記載されたものが用いられる。実際には、市販品であるNOKクリューバー製品BARRIERTAシリーズ、アウシモント製品FOMBLINシリーズ、ダイキン製品デムナムシリーズ等が用いられる。
【0014】緩衝液体層の軸方向の厚みは、使用条件によって適宜設定されるが、一般にはハウジング内径(直径)の約25%以上あるいはハウジングとシャフトとの間隙の約50%以上であることが好ましい。上記した緩衝液の粘度および軸方向の厚みがこのように規定されるのは、軸回転に伴う被密封液体の粘性によってワイゼンベルク効果が発現し、被密封液体が緩衝液体側に膨らんで、シール部迄到達するのを防ぐためである。勿論、軸回転が低速である場合には、ワイゼンベルク効果が殆んど発生しないため、緩衝液体層の厚みを薄くすることができる。
【0015】被密封液体が粒子分散液であって、分散粒子がシリカ等のガラス質である場合、粒子の比重は約2.6程度であり、これよりも比重の大きな液体は殆んど存在しないため、緩衝液体を選択することができない。
【0016】このような場合、パーフルオロポリエーテル系油とこの油に溶解しない液体に粒子を分散させた粒子分散液とを強制混合すると、パーフルオロポリエーテル系油側に取り込ました粒子には必ずこの油に溶解しない液体が付着しており、更にこのとき平均粒径100μm以下であって比重が3.0以下の粒子が比重1.5以下の液体中に分散している場合には、パーフルオロポリエーテル系油よりも見掛け比重の大きな液滴が発生しないことが見出された。
【0017】つまり、粒子分散液の見掛け比重がパーフルオロポリエーテル系油よりも小さい場合には、緩衝液体としてパーフルオロポリエーテル系油を使用することにより、パーフルオロポリエーテル系油よりも比重の大きな粒子が分散した粒子分散液であっても、粒子がパーフルオロポリエーテル系油中に沈降することなく、シール可能となる。
【0018】また、被密封液体が界面活性剤を含有する非フッ素系溶媒と水または電解質水溶液(塩化ナトリウム、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、アミノ酸等の水溶液)の場合にあっても、被密封液体中の界面活性剤が磁性微粒子表面に移行して、磁性流体を劣化させるような事態が有効に防止される。
【0019】
【発明の効果】被密封液体中に微粒子が含まれる場合あるいは被密封液体が界面活性剤を含有する非フッ素系溶媒と水との混合液の場合であっても、長期間にわたって磁性流体を劣化させることのない、磁性流体シールを用いた縦型回転機械の液体シール装置が、本発明によって提供される。
【0020】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】実施例1図1に示された縦型液体シール装置において、シャフトとして10mm径のものが、ハウジングとして内径(直径)50mmのものが、また被密封液体としてシリコーン油(信越化学製品KF96-100;比重0.965)に20重量%のシリカゲル(和光純薬製品ワコーゲルLC-5H;比重2.6、平均粒径5μm)を攪拌混合した分散液(見掛け比重約1.1)が用いられた。更に、緩衝液体としては、パーフルオロポリエーテル油(NOKクリューバー製品BARRIERTA J25;比重1.88、粘度120mPa・s)が層厚み15mmになるように注入され、また磁性流体としては、合成油(ドデシルベンゼン)を基油として調製した飽和磁化300Gのものが用いられた。
【0022】上記構成の縦型液体シール装置のシャフトを、回転数100rpmの条件下で回転させ、シール状態を観察した。その結果、3000時間経過後においてもシール状態に変化はなく、良好なシール状態を長期間にわたって維持することが可能であった。
【0023】比較例1実施例1において、緩衝液体を用いないと、45時間後にシール破壊が発生し、被密封液体がシール部より流出した。
【0024】実施例2実施例1において、被密封液体をパラフィン(関東化学製品;比重0.88)に20重量%の窒化ホウ素粉末(昭和電工製品ショウビーエヌ UHP-1;比重2.27、平均粒径7〜10μm)を攪拌混合した分散液(見掛け比重約1.0)に変更し、同様の回転試験を行った。その結果、3000時間経過後においてもシール状態に変化はなく、良好なシール状態を長期間にわたって維持することが可能であった。
【0025】実施例3実施例1において、被密封液体を蒸留水にケロシン(関東化学製品)10重量%およびポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(東京化成製品)5重量%を攪拌混合した混合液(見掛け比重約1)に変更し、同様の回転試験を行った。その結果、3000時間経過後においてもシール状態に変化はなく、良好なシール状態を長期間にわたって維持することが可能であった。
【0026】比較例2実施例3において、緩衝液体を用いないと、20時間後にシール破壊が発生し、被密封液体がシール部より流出した。
【0027】実施例4実施例1において、被密封液体を蒸留水にパラフィン(関東化学製品)15重量%およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(同社製品)5重量%を攪拌混合した混合液(見掛け比重約1)に変更し、同様の回転試験を行った。その結果、3000時間経過後においてもシール状態に変化はなく、良好なシール状態を長期間にわたって維持することが可能であった。
【出願人】 【識別番号】000004385
【氏名又は名称】エヌオーケー株式会社
【出願日】 平成11年2月19日(1999.2.19)
【代理人】 【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
【公開番号】 特開2000−240810(P2000−240810A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−40746