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【発明の名称】 メカニカルシール
【発明者】 【氏名】福井 壽夫

【要約】 【課題】密封すべき流体がガスである無潤滑状態においても、静止密封環と回転密封環との相対回転摺接部分の発熱や摩耗粉の噛み込みによる摩耗を可及的に防止し得て、シール寿命を大幅に向上させることができるメカニカルシールを提供する。

【解決手段】回転密封環5の密封端面7を、これに同心状の環状凹溝15を形成することによって、環状凹溝15より内径側の第1密封端面部分7aと外径側の第2密封端面部分7bとに分割された形状となすと共に、環状凹溝15の外径側周壁を構成する密封環部分5bに、その外周側領域Aと環状凹溝15内とを連通する貫通孔17を形成する。第1密封端面部分7aは、第2密封端面部分7bより径方向幅を大きく設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸に設けられた回転密封環の密封端面とシールケースに設けられた静止密封環の密封端面との相対回転摺接作用によりシールするように構成されたメカニカルシールにおいて、一方の密封環の密封端面を、これに同心状の環状凹溝を形成することによって、環状凹溝より内径側の第1密封端面部分と外径側の第2密封端面部分とに分割された形状となすと共に、環状凹溝の外径側周壁を構成する密封環部分に、その外周側領域と環状凹溝内とを連通する貫通孔を形成してあることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】 前記環状凹溝が回転密封環に形成されており、複数の貫通孔が回転密封環の周方向に並列して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載するメカニカルシール。
【請求項3】 第1密封端面部分が、第2密封端面部分より径方向幅を大きくしたものであることを特徴とする、請求項2に記載するメカニカルシール。
【請求項4】 バランス比を臨界バランス比以上としてあることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載するメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転軸に設けられた回転密封環の密封端面とシールケースに設けられた静止密封環の密封端面との相対回転摺接作用によりシールするように構成された端面接触形のメカニカルシールに関するものであり、ガスシールやタンデムシール,ダブルシールの二次シール等としても好適に使用することができるメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の端面接触形のメカニカルシールは、漏れを許容する非接触形のメカニカルシールと異なって、漏れを可及的に阻止できる利点がある反面、次のような欠点を有している。
【0003】すなわち、被密封流体が液体である場合には密封端面間に被密封液による潤滑膜が形成されるが、ガスシールやタンデム,ダブルシールの二次シールとして使用する場合のように被密封流体がガスであるときには、かかる潤滑膜が形成されず、密封端面が無潤滑状態で相対回転摺接するため、密封端面が発熱し易く、シール寿命が短い。
【0004】そこで、本発明者は、先に、一方の密封端面を、これに同心状の環状凹溝を形成することにより、環状凹溝より内径側の第1密封端面部分と外径側の第2密封端面部分とに分割した端面接触形のメカニカルシール(以下「従来シール」という)を開発した。
【0005】かかる従来シールによれば、被密封流体がガスである無潤滑状態においても、一方の密封端面が第1及び第2密封端面部分に分割されていることから、つまり相手密封端面との接触部分である発熱部分が環状凹溝を挟む2つの部分に分離されているから、当該発熱部分における冷却効率が高められて、密封端面の発熱による寿命低下を可及的に防止することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来シールにあっても、密封端面の接触による摩耗粉が環状凹溝内に溜まって密封端面間に噛み込み、密封端面が所謂アブレッシブ摩耗する虞れがあり、シール寿命をさほど向上させることができない。
【0007】本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、被密封流体が液体である場合には勿論、ガスである場合においても、相対回転摺接する密封端面の発熱や摩耗粉の噛み込みを効果的に防止して、シール寿命の大幅な向上を実現することができる端面接触形のメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、回転軸に設けられた回転密封環の密封端面とシールケースに設けられた静止密封環の密封端面との相対回転摺接作用によりシールするように構成されたメカニカルシールにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、一方の密封環の密封端面を、これに同心状の環状凹溝を形成することによって、環状凹溝より内径側の第1密封端面部分と外径側の第2密封端面部分とに分割された形状となすと共に、環状凹溝の外径側周壁を構成する密封環部分に、その外周側領域と環状凹溝内とを連通する貫通孔を形成しておくことを提案するものである。
【0009】かかる構成によれば、一方の密封端面が環状凹溝を挟む2つの部分に分割されていることから、従来シールと同様に、密封端面の接触部分における発熱が可及的に防止される。しかも、密封端面の接触によって発生する摩耗粉は、それが環状凹溝に侵入しても、貫通孔から環状凹溝外に速やかに排出されて、密封端面間に噛み込む虞れはない。
【0010】なお、第2密封端面部分にその全幅に亘って延びる切欠部を設けて、第2密封端面部分と相手密封端面との間に上記外周側領域と環状凹溝内とを連通する通路が形成されるようにしておいても、環状凹溝内の摩耗粉を排出させることが可能である。しかし、このような通路は、相対運動する第2密封端面部分と相手密封端面との間に形成されるものであるため、摩耗粉が、当該通路を通過する間において、切欠部から第1密封端面部分と相手密封端面との間へと噛み込まれる虞れがある。すなわち、従来シールと同様に、摩耗粉の噛み込みにより摩耗(アブレッシブ摩耗)の進行が早くなり、長寿命化を実現することができない。
【0011】また、本発明のメカニカルシールにあっては、環状凹溝からの摩耗粉排出をより効果的に行わしめるために、貫通孔は複数設けておくことが好ましく、更に密封端面を分割するための環状凹溝は回転密封環に形成することが好ましい。環状凹溝を回転密封環に形成した場合、環状凹溝からの摩耗粉排出が遠心力により促進されるからである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて具体的に説明する。
【0013】図1及び図2は第1の実施の形態を示しており、この実施の形態における本発明に係るメカニカルシール1は、シールケース2に設けられた静止密封環3と回転軸4に設けられた回転密封環5との対向端面たる密封端面6,7の相対回転摺接作用により、機内領域である被密封流体領域Aと機外領域である大気領域Bとをシールするように構成されている。なお、以下の説明において、前後とは図1における左右を意味するものとする。
【0014】静止密封環3は、図1に示す如く、シールケース2の内周部に内嵌固定されている。シールケース2の内周部と静止密封環3の外周部との間は、Oリング8により二次シールされている。静止密封環3の前端部には、シールケース2に突設したドライブピン2aが係合する凹部3aが形成されており、両者2a,3aの係合作用により、シールケース2に対する静止密封環3の相対回転が阻止されている。静止密封環3の後端面である密封端面(以下「静止側密封端面」という)6は、その軸線に直交する円環状の平滑平面に形成されている。
【0015】回転軸4は、図1に示す如く、軸本体4aとこれに嵌合固定したスリーブ4bとで構成されており、シールケース2及び静止密封環3を同心状に貫通している。
【0016】回転密封環5は、図1に示す如く、静止密封環3の後方に配して、回転軸4のスリーブ4bに軸線方向摺動自在に嵌合保持されている。回転密封環5とスリーブ4bとの嵌合部分はOリング12により二次シールされている。回転密封環5とスリーブ4bに嵌合固定した保持環13との間にはスプリング14が介装されていて、回転密封環5を、その前端面たる密封端面(以下「回転側密封端面」という)7を静止側密封端面6へと押圧接触させるべく、前方へと押圧附勢している。回転密封環5の外周部には、保持環13に螺着したドライプピン13aに係合する凹部5cが形成されており、両者5c,13aの係合作用により、回転密封環5の軸線方向移動を許容しつつ回転軸4に対する回転密封環5の相対回転を阻止している。
【0017】而して、回転側密封端面7は、図1及び図2に示す如く、これに同心状の環状凹溝15を形成することによって、環状凹溝15より内径側の第1密封端面部分7aと外径側の第2密封端面部分7bとに分割された形状となされている。すなわち、回転密封環5の前端部を、環状凹溝15の内径側周壁を構成する第1環状突部5aとその外径側周壁を構成する第2環状突部5bとからなる二重筒構造をなすものとして、第1及び第2環状突部5a,5bの先端面(前端面)を夫々第1及び第2密封端面部分7a,7bに構成してある。両密封端面部分7a,7bは、静止側密封端面6に同心状態で接触しうる円環状の平滑面に形成されている。なお、静止密封環3はセラミックスや超硬合金等の硬質材で構成されるが、回転密封環5は静止密封環3より比較的軟質の材料(カーボン等)で構成されている。
【0018】また、環状凹溝15の外径側周壁を構成する密封環部分つまり第2環状突部5bには、図1及び図2に示す如く、その外周側領域である被密封流体領域Aとその内周側領域である環状凹溝15内とを連通する複数の貫通孔17…が形成されている。この例では、図2に示す如く、8個の貫通孔17…が回転密封環5の周方向に等間隔を隔てた並列状態で形成されている。各貫通孔17は、図1に示す如く、その外径側開口端が内径側開口端より若干後方に位置するような傾斜形態、つまり貫通孔17からの摩耗粉排出が密封端面6,7から離れる方向に行われるような形態で形成されている。なお、各貫通孔17は、後述する如く環状凹溝15内の摩耗粉を排出しうるに必要十分な大きさのものであればよく、必要以上に大きなものとしておく必要はない。また、各貫通孔の形状も任意であり、この例では、各貫通孔17における密封端面7を正面からみた場合の形状(以下「正面視形状」という)を、図2に示す如く、回転密封環5の回転中心を通過する直径線上に位置して当該直径線と平行するような形状としているが、上記直径線と交差するような正面視形状としておいてもよい。例えば、図3に示す如く、交差方向を逆にする第1貫通孔17´と第2貫通孔17´´とを周方向に交互に配置するようにしてもよい。すなわち、各第1貫通孔17´は、回転密封環5の外周側に向かって接線方向に略沿った状態で当該密封環5の回転方向Rに延びるものであり、各第2貫通孔17´´は、逆に、回転密封環5の外周側に向かって接線方向に略沿った状態で回転方向Rと逆方向に延びるものである。さらに、これらの貫通孔17,17´,17´´が一定の規則性を保って周方向に交互に配置されるようにすることも可能である。また貫通孔17…の数も、上記摩耗粉の排出を良好に行いうることを条件として適宜に設定され、必要以上に多数の貫通孔17,17´,17´´…を設けておく必要はない。
【0019】また、当該メカニカルシール1によるシール機能は、後述する如く、実質的に、静止側密封端面6と第1密封端面部分7aとの相対回転摺接作用によって発揮されるが、かかるシール機能がより良好に発揮されるように、この例では、第1密封端面部分7aの径方向幅Hは第2密封端面部分7bの径方向幅hより所定量大きく設定されており、第1密封端面部分7aの内外径等によって決定されるバランス比は臨界バランス比以上に設定されている。臨界バランス比とは、密封端面6,7間を開こうとする開力(密封環3,5間に作用する被密封流体の圧力によるもの)と閉じようとする閉力(回転密封環5の背面(後端面)に作用する被密封流体の圧力(背圧)及びスプリング圧により回転密封環5を静止密封環3へと押圧する力)とがバランスするときのバランス比をいう。
【0020】以上のように構成されたメカニカルシール1にあっては、静止側密封端面6と回転側密封端面7との相対回転摺接作用により、被密封流体領域Aと大気領域Bとが遮蔽シールされる。このとき、回転側密封端面7が環状凹溝15を挟んで同心状に並列する第1密封端面部分7aと第2密封端面部分7bとに分割されていることから、密封端面6,7の接触部分が効果的に冷却されることになり、被密封流体がガスである無潤滑状態においても、密封端面6,7の接触による発熱が可及的に防止される。そして、第2密封端面部分7bが形成される第2環状突部5bには貫通孔17…が形成されていて、環状凹溝15内には被密封流体が侵入することから、上記したシール機能は、実質的に、第1環状突部5aの前端面である第1密封端面部分7aと静止側密封端面6との相対回転摺接部分において発揮されることになる。かかる第1密封端面部分7aと静止側密封端面6との相対回転摺接作用によるシール機能は、第1密封端面部分7aの径方向幅H及び当該メカニカルシール1のバランス比を上記の如く設定しておくことにより、より良好に発揮される。
【0021】また、静止側密封端面6と第1及び第2密封端面部分7a,7bとの接触により発生した摩耗粉が環状凹溝15に侵入するが、かかる摩耗粉は貫通孔17…から速やかに環状凹溝15外に排出されて、静止側密封端面6と第1又は第2密封端面部分7a,7bとの相対回転摺接部分に噛み込まれるようなことがない。特に、上記したメカニカルシール1では、環状凹溝15が回転密封環5に形成されていることから、環状凹溝15からの摩耗粉排出が遠心力によって促進され、各貫通孔17が上記した如き傾斜形態をなしていることとも相俟って、より速やかな摩耗粉排出が行われる。したがって、密封端面6,7の摩耗が少なく、上記した如く密封端面6,7の発熱が効果的に防止されることとも相俟って、長寿命化を実現することができる。なお、図3に示す如き第1及び第2貫通孔17´,17´´を周方向に交互に配設するようにした場合においては、第1貫通孔17´から環状凹溝15を経て第2貫通孔17´´(回転密封環5の回転方向Rと逆方向において当該第1貫通孔17´に隣接する第2貫通孔17´´)を通過する空気流が生じることから、この空気流の作用によって環状凹溝15からの摩耗粉排出が効果的に行われる。
【0022】図4〜図6は第2の実施の形態を示したもので、この実施の形態における本発明に係るメカニカルシールは、タンデムシールの二次シールとして使用されている。なお、以下の説明において、前後とは図4における左右を意味するものとする。
【0023】すなわち、図4に示すタンデムシールは、シールケース23とこれを洞貫する回転軸24との間に前後並列状に配置した2組のメカニカルシール21,22により、両シール21,22間に形成されたパージ流体領域Eを介して、機内領域たる被密封流体領域Cと機外領域たる大気領域Dとをシールするように構成されたものである。なお、回転軸24は、軸本体24aとこれに嵌合固定されたスリーブ24bとからなる。
【0024】機内側のメカニカルシール21は、一次シールとして機能する端面接触形のメカニカルシールである。すなわち、このメカニカルシール21は、図4に示す如く、回転軸24のスリーブ24bに、Oリング30及びドライブピン31を介して、固定保持された回転密封環25と、シールケース23に、Oリング32及びドライブピン33を介して、軸線方向摺動可能に且つ相対回転不能に保持された静止密封環26と、静止密封環26を回転密封環25へと押圧附勢するスプリング27とを具備するものであり、両密封環25,26の対向端面たる密封端面28,29の相対回転摺接作用により、被密封流体領域Cとパージ流体領域Eとをシール(一次シール)するように構成された公知のものである。なお、パージ流体領域Eには、シールケース23に設けた供給孔23aから適宜のパージ流体が供給されるようになっている。パージ流体領域Eの圧力は、被密封流体の性状等のシール条件に応じて設定され、被密封流体領域Cより高圧又は低圧に保持される。パージ流体としては、被密封流体領域C又は大気領域Dに漏洩しても支障のないガスが使用されるが、一般には、被密封流体と不活性であり且つ無害な窒素ガス等が使用される。また、両密封環25,26の相対回転摺接部分に対しては、シールケース23に設けた噴出孔23bからフラッシング液が噴射されるようになっている。
【0025】機外側のメカニカルシール22は、二次シールとして機能する本発明に係るメカニカルシールであり、上記した一次シール21の前位に配置されている。すなわち、このメカニカルシール22は、図4及び図5に示す如く、回転軸24に設けられた回転密封環36とシールケース23に設けられた静止密封環37との対向端面たる密封端面38,39の相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域であるパージ流体領域Eと当該摺接部分の内周側領域である大気領域Dとをシールするように構成されている。
【0026】回転密封環36は、図4及び図5に示す如く、回転軸24のスリーブ24bに固定保持されている。すなわち、回転密封環36は、スリーブ24bに嵌合固定した保持環40に、Oリング41により二次シールされた状態で且つドライブピン42により相対回転を阻止された状態で嵌合保持されている。回転密封環36の前端面たる密封端面(以下「回転側密封端面」という)38は、回転軸24と同心をなし且つその軸線に直交する円環状の平滑面に形成されている。回転密封環36は、前記メカニカルシール1における静止密封環3と同様に、超硬合金又はセラミックス等の硬質材で構成されている。
【0027】静止密封環37は、図4及び図5に示す如く、回転密封環36の前位においてこれに対向した状態で、シールケース23に軸線方向摺動可能に保持されている。すなわち、シールケース23には、内外筒部43a,43bとその前端部間を連結する環状壁部43cとからなる二重筒構造の保持環43が設けられており、環状壁部43cには外筒部43bの内周面に沿って後方へと延びるドライブピン44が取り付けられている。そして、静止密封環37は、保持環43の内外筒部43a,43b間の空間に、保持環43の内筒部43aとの間に介在させたOリング43dにより二次シールされた状態で、軸線方向摺動可能に嵌合保持されている。また、静止密封環37は、その外周部に形成した凹部37cをドライブピン44に係合させることにより、軸線方向移動を許容しつつシールケース23に対する相対回転を阻止されている。なお、静止密封環37は、上記メカニカルシール1における回転密封環5と同様に、回転密封環36より比較的軟質の材料(カーボン等)で構成されている。
【0028】また、静止密封環37と保持環43の環状壁部43cとの間にはスプリング45が介装されていて、静止密封環37を、その後端面たる密封端面(以下「静止側密封端面」という)39を回転側密封端面38へと押圧接触させるべく、後方へと押圧附勢している。
【0029】而して、静止側密封端面39は、図4〜図6に示す如く、これに同心状の環状凹溝46を形成することによって、環状凹溝46より内径側の第1密封端面部分39aと外径側の第2密封端面部分39bとに分割された形状となされている。すなわち、静止密封環37の後端部を、環状凹溝46の内径側周壁を構成する第1環状突部37aとその外径側周壁を構成する第2環状突部37bとからなる二重筒構造をなすものとして、第1及び第2環状突部37a,37bの先端面(後端面)を夫々第1及び第2密封端面部分39a,39bに構成してある。両密封端面部分39a,39bは、回転側密封端面38に同心状態で接触しうる円環状の平滑面に形成されている。
【0030】また、環状凹溝46の外径側周壁を構成する密封環部分つまり第2環状突部37bには、図4〜図6に示す如く、その外周側領域であるパージ流体領域Eとその内周側領域である環状凹溝46内とを連通する複数の貫通孔47…が形成されている。この例では、図6に示す如く、8個の貫通孔47…が静止密封環37の周方向に等間隔を隔てた並列状態で形成されている。各貫通孔47は、図5に示す如く、その外径側開口端が内径側開口端より若干前方に位置するような傾斜形態で形成されている。なお、各貫通孔47の大きさ及び数は任意であり、摩耗粉の発生量等のシール条件に応じて適宜に設定される。また、この例では、各貫通孔47の正面視形状を図2に示すものと同様としてあるが、図3に示すもののような傾斜方向を異にする貫通孔の組み合わせとなるようにしてもよく、貫通孔の正面視形状等を任意に設定できることは第1の実施の形態におけると同様である。
【0031】また、この例では、第1の実施の形態におけると同様に、第1密封端面部分39aの径方向幅Hは第2密封端面部分39bの径方向幅hより所定量大きく設定されており、第1密封端面部分39aの内外径等によって決定されるバランス比は臨界バランス比以上に設定されている。
【0032】以上のように構成されたタンデムシールにあっては、被密封流体領域Cと大気領域Dとの間を一次シール21及び二次シール22により段階的にシールすることから、被密封流体の大気領域Dへの漏れをより確実に防止することができ、被密封流体が液体アンモニア等の揮発性流体や低沸点性の流体である場合にも良好にシールすることができる。そして、本発明に係るメカニカルシール22によれば、回転側密封端面38と静止側密封端面39との相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の発熱や摩耗を可及的に防止しつつ、パージ流体領域Eと大気領域Dとを良好にシール(二次シール)することができる。
【0033】すなわち、静止側密封端面39が環状凹溝46を挟んで同心状に並列する第1密封端面部分39aと第2密封端面部分39bとに分割されていることから、密封端面38,39の接触部分が効果的に冷却されることになり、無潤滑のドライ条件下においても密封端面38,39の接触による発熱が可及的に防止される。そして、第2密封端面部分39bが形成される第2環状突部37bには貫通孔47…が形成されていて、環状凹溝46内には被密封流体が侵入することから、上記したシール機能は、実質的に、第1環状突部37aの先端面である第1密封端面部分39aと回転側密封端面38との相対回転摺接部分において発揮されることになる。かかる第1密封端面部分39aと回転側密封端面38との相対回転摺接作用によるシール機能は、第1密封端面部分39aの径方向幅H及び当該メカニカルシール1のバランス比を上記の如く設定しておくことにより、より良好に発揮される。
【0034】また、回転側密封端面38と第1及び第2密封端面部分39a,39bとの接触により発生した摩耗粉が環状凹溝46に侵入するが、かかる摩耗粉は貫通孔47…から速やかに環状凹溝46外に排出されて、回転側密封端面38と第1又は第2密封端面部分39a,39bとの相対回転摺接部分に噛み込まれるようなことがなく、所謂アブレッシブ摩耗の発生が可及的に防止される。したがって、密封端面38,39の摩耗が少なく、上記した如く密封端面38,39の発熱が効果的に防止されることとも相俟って、シール寿命を大幅に向上させることができる。
【0035】なお、本発明の構成は上記した各実施の形態に限定されるものでなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。例えば、第1密封端面部分7a,39aの径方向幅Hは、シール条件によっては、第2密封端面部分7b,39bの径方向幅hと同一又は小さく設定しておいてもよい。また、密封端面を分割するための環状凹溝は、環状凹溝の加工等を考慮して、加工容易な材料(カーボン等の軟質材)で構成される密封環に形成しておくことが好ましいが、両密封環が同等の加工性を有する材料で構成されている場合、何れの密封環を選択してもよい。また、本発明は、静止密封環3,37と回転密封環5,36との相対回転摺接部分の外周側が大気領域等の非密封流体領域となるようなメカニカルシールについても適用することができる。
【0036】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるように、本発明のメカニカルシールによれば、密封すべき流体がガスである無潤滑状態においても、静止密封環と回転密封環との相対回転摺接部分の発熱や摩耗粉の噛み込みによる摩耗を可及的に防止し得て、シール寿命を大幅に向上させることができる。したがって、本発明のメカニカルシールは、特に、ドライ条件下において被密封流体の漏れを確実に防止する必要のあるガスシールやタンデム,ダブルシールの二次シール等として好適に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
【出願日】 平成11年2月22日(1999.2.22)
【代理人】 【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
【公開番号】 特開2000−240807(P2000−240807A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−43964