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【発明の名称】 シ−ル構造
【発明者】 【氏名】加島 光博

【氏名】原 定昭

【氏名】神田 政秀

【要約】 【課題】掻き出しによる油漏れを解消し、さらに摺動部が無潤滑状態となりフリクションが増大し、異常摩耗することを防止する。

【解決手段】リングシールに作用する圧力を、ヒール部の支持面積よりリップ部の受圧面積を小さくすることで低減し、ヒール部の摺動面側への変形を防ぐ。すなわち、摺動部材2と、摺動部材を摺動可能に収装する支持部材1と、摺動部材2と支持部材1との間に介装されたシールリング5とを備え、前記シールリング5は、作動油の圧力が作用するリップ部10と、作用圧力を支持するヒール部11とから形成されるシール構造において、前記リップ部10の内周と外周の間の環状の受圧面積が、前記ヒール部11の内周と外周の間の環状の支持面積よりも小さい構成とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 摺動部材と、摺動部材を摺動可能に支持する支持部材と、摺動部材と支持部材との間に介装されたシールリングとを備えたシール構造において、前記シールリングは収納凹部に収装され、作動油の圧力が作用するリップ部と、シールリングに作用する圧力を前記収納凹部の壁面で支持するヒール部とを有し、前記リップ部の内周と外周の間の環状の受圧面積を前記ヒール部の内周と外周の間の環状の支持面積よりも小さくしたことを特徴とするシ−ル構造。
【請求項2】 前記シールリングが支持部材に介装されたことを特徴とする請求項1記載のシ−ル構造。
【請求項3】 前記シールリングが摺動部材に介装されたことを特徴とする請求項1記載のシ−ル構造。
【請求項4】 前記シールリングのヒール部がシールリングの摺動面と反対方向に向かってリップ部より離れるテーパ面で構成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載のシ−ル構造。
【請求項5】 前記収納凹部にシールリングのヒール部を保持する保持部材を介装し、これらの当接面の間に作動油の圧力が作用していないとき、ヒール部の摺接面と反対方向に向かうほど大きくなる隙間を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかひとつに記載のシ−ル構造。
【請求項6】 前記シールリングのリップ部とヒール部との間を結ぶ中間部の外周にはテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1から5の発明のいずれかひとつに記載のシ−ル構造。
【請求項7】 前記中間部のテーパ面とシールリングを介装する収納凹部の内周部の間の作動油をヒール部へと導く作動油抜き溝を設けたことを特徴とする請求項6に記載のシ−ル構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シ−ル構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、油圧シリンダなどの軸受部のシ−ル構造としては、実開平4−138160号に記載された、シールリングのヒール部のはみ出し防止のためバックアップリングを装着したものや、特公平6−100202号に記載のシールリングに作用する圧力を軽減するためアンロード弁(バッファリング)を設けたものがある。
【0003】しかしながら、このような従来のシ−ル構造にあっては、たとえば実開平4−138160号に記載されたものでは、シールリングの嵌め込み溝が内外径とも平行で、シールリングの軸方向の受圧面積は内外リップ径全面であり、よってヒール部の支持面積は前記受圧面積とほぼ同じとなっている。
【0004】このため高圧時にはヒール部の面圧が高くなり、摺動面へのはみ出し変形及び摺動面に対する面圧勾配が大きいため、作動油膜の掻き取り性が大きく、掻き出しによる油漏れが生じるという問題があった。
【0005】さらに、高圧になるほど、作動油膜の掻き取り性が強くなる構成となっているため、摺動部が無潤滑状態となりフリクションが増大し、さらには摩擦熱が発生し、摺動部の熱変質を引き起こし、異常摩耗するという問題が考えられる。
【0006】また特公平6−100202号に記載のバッファリングとシールリングとを組み合わせた構成では、バッファリングは作動油膜を確保するため完全に密閉する構造となってはおらず、たとえば油圧シリンダの伸縮作動のいずれの場合でもロッド側油室が高圧となる流量再生回路においては、シールリングとバッファリング間の圧力が畜圧され、長時間にわたり負荷圧力が作動する状態では、シールリングへの高圧作用を防止できないという問題が考えられる。
【0007】本発明は、これらの問題を解決するシ−ル構造を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、摺動部材と、摺動部材を摺動可能に支持する支持部材と、摺動部材と支持部材との間に介装されたシールリングとを備えたシール構造において、前記シールリングは収納凹部に収装され、作動油の圧力が作用するリップ部と、シールリングに作用する圧力を前記収納凹部の側壁面で支持するヒール部とを持ち、前記リップ部の内周と外周の間の環状の受圧面積を前記ヒール部の内周と外周の間の環状の支持面積よりも小さくした。
【0009】第2の発明は、第1の発明において、前記シールリングが支持部材に介装される構成とした。
【0010】第3の発明は、第1の発明において、前記シールリングが摺動部材に介装される構成とした。
【0011】第4の発明は、第1から3のいずれかひとつの発明において、前記シールリングのヒール部がシールリングの摺動面と反対方向に向かってリップ部より離れるテーパ面で構成される構成とした。
【0012】第5の発明は、第1から4のいずれかひとつの発明において、前記収納凹部にシールリングのヒール部と、ヒール部を保持する保持部材を介装し、これらの当接面の間に作動油の圧力が作用していないとき、ヒール部の摺接面と反対方向に向かうほど大きくなる隙間を設ける構成とした。
【0013】第6の発明は、第1から5のいずれか一つの発明において、前記シールリングのリップ部とヒール部との間を結ぶ中間部の外周にはテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1から5の発明のいずれかひとつに記載のシ−ル構造。
【0014】第7の発明は、第6の発明において、前記中間部のテーパ面とシールリングを介装する収納凹部の内周部の間の作動油をヒール部へと導く作動油抜き溝を設けたことを特徴とする請求項6に記載のシ−ル構造。
【0015】
【発明の作用および効果】第1から3の発明では、リップ部に作動油圧が作用する場合に、リップ部の受圧面積をヒール部の支持面積より小さくしたので、シールリングを変形させようとする推力は小さくなる。しかもヒール部の支持面積はリップ部の受圧面積より大きいことから、ヒール部に生じる面圧は低減される。このためヒール部の摺動面へのはみ出し現象を防止でき、油漏れに対する耐久信頼性を向上することができる。さらに、ヒール部の面圧を一定比率で低減できるので、高圧作用時のヒール部の摺動面への接触を抑止し、フリクションを低減させられる。また、ヒール部の面圧を小さくしたので、シールリングの使用限界圧力をより高圧化することができ、バッファリング等の減圧機構を廃止することも可能となる。したがって、シールの摺動方向の寸法が短縮し、シール構造全体を小型化することができる。
【0016】シールリングの形状が対称形状でないので、シールリング組み付け時に組み付け間違いを防止し、確実に密封性を保証することができるという効果も期待できる。
【0017】第4の発明では、前記シールリングのヒール部がシールリングの摺動面と反対方向に向かってリップ部より離れるテーパ面で構成されるので、高圧作用時のシールの変形力を溝底方向に逃がし、支持面の面圧分布をさらに均等化し、摺動面へのヒール部のはみ出し、食い付きを防止することができる。
【0018】第5の発明では、前記収納凹部にシールリングのヒール部と、ヒール部を保持する保持部材を介装し、これらの当接面の間に作動油の圧力が作用していないとき、ヒール部の摺接面と反対方向に向かうほど大きくなる隙間を設けたので、シールの変形が確実に反摺動面方向に向かい、摺動部材側への変形を抑止するため、摺動部材に対する面圧・面圧勾配が作用圧力の影響を受けにくく、きわめて安定したシール機能を実現することが可能となる。
【0019】第6の発明では、前記シールリングのリップ部とヒール部との間を結ぶ中間部にはテーパ面が形成されている構成としたので、リップ部の圧力がそのままヒール部の支持面に作用することなく、テーパ面に沿うように圧力分布も分散し、ヒール部ではヒール部の支持面全面にわたりさらに均一な圧力分布とすることができる。
【0020】第7の発明では、前記テーパ面とシールリングを介装する収納凹部の内周部との間の作動油をヒール側へ導く作動油抜き溝を設けたので、リップ部に作用する高圧がテーパ面に漏れても作動油抜き溝を用いて大気圧のヒール部側へ排出することができ、テーパ面が高圧が作用するリップ部の受圧面積に加味されることを防止することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】図1から図3に示すように、液圧シリンダ20のピストンロッド2がシリンダヘッド1の摺動孔21を摺動自由に貫通し、この貫通部には軸受部30が形成され、この軸受部30には軸受4と、シールリング5が配置され、さらに最も外側に位置してダストシール8が備えられる。シールリング5は摺動孔21に形成した環状溝25に収装される。
【0023】このシールリング5は、液圧シリンダ20のロッド側油室35の作動油の圧力を直接的に受けるリップ部10と、リップ部10に作用する圧力をシリンダヘッド1の環状溝25で受けるヒール部11と、これらリップ部10とヒール部11を結ぶ中間部12から構成される。リップ部10は内周リップ10aと外周リップ10bとに大別され、リップ部10の外周リップ10bの外径がヒール部11の外径よりも小さく形成されるとともに、中間部12の外径はリップ部側からヒール部側に向けて徐々に拡大するテーパ面12aで形成されている。
【0024】そしてこのシールリング5を収納するシリンダヘッド1の環状溝25も、シールリング5の外形に対応した溝断面を持ち、リップ部10の外周リップ10bの外周に接するリップ底壁25a、中間部12の外周のテーパ面12aに接する傾斜壁部25b、ヒール部11の支持面11aに接するヒール壁25c、リップ部10とともに作動油の圧力を受けるリップ縦壁25dの壁からなり、リップ部10に作用する圧力が直接的にヒール部11および中間部12に作用しないように(すなわち作動油がヒール部11および中間部12に漏れないように)、リップ部10の嵌合リップ10bの外周が環状溝25のリップ底壁25aの内面に一定の締代を持って密着するようになっている。
【0025】換言するとリップ部10の受圧面積Amは、シールリング組み付け時のリップ部10の外周とピストンロッド2と摺動する内周との間の環状域となり、これに対してヒール部11の外周と内周との間の環状域がヒール部11の支持面積Asとなり、これらの関係は、Am<Asとなる。
【0026】なお、図3にも示すように、シールリング5の自由状態では、リップ部10の内周側のリップ10aがピストンロッド2に所定の圧力で接触するように内径側に締代分縮径して形成され、外周側の外周リップ10bの外周は外径側に締代分拡径して形成され、環状溝25に内面密着する。
【0027】以上のように構成され、次に作用につき説明する。
【0028】図4に示す従来のものはシールリング50の嵌め込み溝が内外径とも平行であり、シールリング50のリップ部55の受圧面積Apが大きく、ヒール部56の支持面積Asとほぼ同じとなっている。よってリップ部55に作用する圧力に起因する推力は大きくなり、ヒール部56の面圧も大きくなる。従ってヒール部56はつぶされて変形しようとするが、外径側はシリンダヘッド1によって拘束されており、変形はピストンロッド2側へ集中することになる。これによって、ヒール部56の一部がピストンロッド2に強く接触し、フリクション増加等の問題を引き起こすことになる。
【0029】これに対して、図5に示す本発明の形状のものは、リップ部10の受圧面積Amを小さくしたので、シールリング5に作用する推力を抑え、ヒール部11の面圧を低下することができる。これにより、シールリング5の変形を小さくすることが可能であり、ヒール部11のヒール部角部11iがピストンロッド2に向けてのはみ出しを極力防止することができ、フリクションの低減による異常摩耗や作動油の掻き出しによる油漏れを防止することができる。
【0030】また一方で、リップ部10に作用する圧力を増大することも可能であり、これによって従来、シールリング5への圧力を制限するために設けられていたバッファリング等の減圧部材を廃止することも可能である。
【0031】さらに、中間部12の外形をリップ部10からヒール部11に向けて徐々に拡大するテーパ面12aで形成したので、リップ部10の圧力分布がそのままヒール部11の支持面11aに作用することなく、テーパ面12aに沿うように圧力分布も分散し、ヒール部11ではヒール部11の支持面11a全面にわたり圧力を分散分布とすることができる。よって、ヒール部11に作用する圧力はリップ部10の作用圧力に対して、その面積比で小さくすることができる。
【0032】図6に第2の実施形態を示す。これはシールリング5の背面にバックアップリング6を配置し、シールリング5のヒール部11の支持面11aと、支持面11aに対面するバックアップリング6の当接面6aをテーパ面としたものである。
【0033】ヒール部11の支持面11aを外径部ほどリップ部10より遠くになるようにテーパ面に形成し、作動油圧力が作用したときのシールリング5の変形を溝底方向に逃がすことにより、支持面11aの面圧分布をさらに均一にすることができ、ヒール部11の角部11iのピストンロッド方向へのはみ出し、食い付きをより一層効果的に防止し、かつヒール部11内径側の角部11iの異常面圧及び面圧勾配の発生を防止できる。
【0034】なお本実施形態では環状溝25の加工性を考慮し、テーパ面(当接面6a)をバックアップリング6を用いて形成するようにしたが、環状溝25に直接テーパ面を形成してもよいことは言うまでもない。
【0035】図7に第3の実施形態を示す。これは第2の実施形態に示すシールリングにおいて、シールリング5のテーパ状のヒール部11と、ヒール部11を保持するバックアップリング6との間に、作動油の圧力が作用していないとき、ヒール部11の外径方向に向かうほど大きくなる隙間13を形成するように、ヒール部11の支持面11aと、その支持面11aと対面するバックアップリング6の当接面6aのテーパ角を互いに異なって設定している。
【0036】この場合には、第3の実施形態より一層シールリング5の変形を溝底方向に導くことができ、ピストンロッド2に対する面圧・面圧勾配がヒール部11の作用圧力の影響を受けにくく、きわめて安定したシール機能を実現することが可能となる。
【0037】さらに図8に第4の実施形態を示し、これは前記シールリング5の外周部と環状溝25の内周部との間の作動油を大気圧のヒール部11へ排出する作動油抜き溝14を設けたものである。
【0038】これは仮に中間部12に作動油が侵入した場合には中間部のテーパ面12aもリップ部10の受圧面積として加味されるため、受圧面積と支持面積がほぼ同一となり、リップ部10の受圧面積を小さくした効果がなくなるのを防止するものである。
【0039】このような構成とすることで、シールリング5の中間部12と環状溝25の傾斜壁部25bとの間に残留した作動油が作動油抜き溝14より大気圧のヒール部11側へと排出されるので、作動油が中間部12のテーパ面12aを加圧し、受圧面積が増大するのを防止することができる。
【0040】図9に第5の実施形態を示す。これは支持部材であるシリンダチューブ34に対して摺動するピストン32にシールリング5を設けたものであり、シールリング5の基本的な構成は第1の実施形態と同様である。
【0041】この場合には、高圧がより多く作用する側の油室にリップ部10が対面するようにシールリング5を配置する。あるいはピストン等の両方向に高圧が作用する場合さらに逆向きに2個のシールを配置することは当然である。
【出願人】 【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
【出願日】 平成11年2月18日(1999.2.18)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2000−240806(P2000−240806A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−39839