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【発明の名称】 ガスケット材及びその製造方法
【発明者】 【氏名】豊澤 真一

【氏名】西室 陽一

【氏名】町田 邦郎

【要約】 【課題】電子機器本体にガス除去のための機構を設けることなく、磁気ディスク等を汚染するガスが、電子機器使用時に発生しないガスケットを提供すること。

【解決手段】カバー体又は枠体にガスケットが取り付けられ、該カバー体又は該枠体と該ガスケットとが一体化されたガスケットを形成するガスケット材において、所定の形状に賦形する前に含有ガスを除去する処理がなされたガスケット材である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カバー体又は枠体にガスケットが取り付けられ、該カバー体又は該枠体と該ガスケットとが一体化されたガスケットを形成するガスケット材において、所定の形状に賦形する前に含有ガスを除去する処理がなされたことを特徴とするガスケット材。
【請求項2】 ガスを除去する処理が熱処理である請求項1記載のガスケット材。
【請求項3】 ガスを除去する処理が真空乾燥処理である請求項1記載のガスケット材。
【請求項4】 ガスを除去する処理が熱処理と真空乾燥処理とを同時に行う処理である請求項1記載のガスケット材。
【請求項5】 ガスの除去率が50%以上である請求項1〜4のいずれかに記載のガスケット材。
【請求項6】 熱処理により含有ガスを除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスケット材の製造方法。
【請求項7】 真空乾燥処理により含有ガスを除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスケット材の製造方法。
【請求項8】 熱処理と真空乾燥処理とを同時に行う処理により含有ガスを除去することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスケット材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽量機器、例えばコンピュータのハードディスク装置等におけるカバー体と本体との接合面を密封するガスケットを形成するガスケット材及びその製造方法に関する。本発明のガスケット材は、電子機器の使用時にガスケットからガスが発生するのを防止したものであり、自動化ライン等におけるロボット内に設置されるコンピュータのハードディスク装置等の水や空気からの完全な密封技術に適用できる。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の発達はめざましく、これら電子機器は半導体を利用した集積回路を用い、しかも基板上にプリント配線されたものであって、小型化、軽量化が図られている。これらの電子機器類は水分や塵埃を嫌うものであり、したがって、これらの集積回路を内蔵する箱状の本体とカバー体の接合面を密封するガスケットにおける密封性能は、電子機器の性能及び耐久性にとって重要な要素となっている。
【0003】このため、通常は、これらの集積回路等を内蔵する箱体と蓋体との接合面にガスケットを挟持し、取付ボルト等により締結して密封一体化することがなされており、ガスケット材として高密度のウレタンフォーム材が使用されていた。このウレタンフォーム材は薄いシート状に発泡ポリウレタンを加工したものであり、このシートに粘着テープを貼り、所望形状に打ち抜いて使用されることが多い。また、ステンレス鋼や合成樹脂からなる枠体を金型にインサートした後にエラストマーを射出成形することにより製造される、枠体の両面にエラストマーが固着したガスケットも提案されている(特開平8−283698号公報)。しかしながら、ウレタンフォーム材からなるガスケットもエラストマーからなるガスケットも、実際の使用時に電子機器本体内の温度が40〜50℃に上昇すると、磁気ディスクを汚染させるガスを発生させるものが多く、発生したガスがハードディスク装置などのディスク上に堆積し、ハードティスク装置における読み取り不能を発生させることがある。上記ガスの発生は、ガスケットを形成するガスケット材中に含まれる低分子量成分や、ガスケット製造中に外部からガスケット材中に混入する低分子量成分に起因するものであると考えられる。このような不都合を解消するために、発生したガスを吸着させる機構を設けたり(特開平6−302178号公報)、磁気ディスク汚染ガスの外部からの侵入に対しては、磁気ディスク装置本体に開けた呼吸孔にガス吸着剤を設けることにより対処している(特開平6−36548号公報)。しかしながら、ガスケットからのガスの発生は長期間にわたり、電子機器の使用に際しては常にガスの発生が伴うという不都合を避けることができず、また、上記ガス吸着機構では発生したガスを速やかに除去することが困難であり、かつ長期間使用すると、ガスの除去効果が小さくなってくるという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、電子機器本体にガス除去のための機構を設けることなく、磁気ディスク等を汚染するガスが、電子機器使用時に発生しないガスケットを形成しうるガスケット材を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガスケットを形成するガスケット材を所定の形状に賦形する前に、該ガスケット材に含有されるガスを除去する処理を行うことにより、電子機器の使用中にガスケットからガスが発生せず、その目的を達成しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は、カバー体又は枠体にガスケットが取り付けられ、該カバー体又は該枠体と該ガスケットとが一体化されたガスケットを形成するガスケット材において、所定の形状に賦形する前に含有ガスを除去する処理がなされたことを特徴とするガスケット材を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明においては、ガスケットを形成するガスケット材を処理することにより、ガスケット材に含有されるガスを除去する。ガスの除去は様々な方法で行うことができるが、好ましくは、熱処理、真空乾燥処理又は熱処理と真空乾燥処理とを同時に行う処理により行うことができる。ガスケット材がペレット状である場合、熱処理は、温度40〜160℃で0.5〜120時間時間の条件で行うことができ、50〜150℃で2〜48時間の条件で行うことが特に好ましい。同様の場合、真空乾燥処理は、50〜0.01kPaで0.5〜120時間の条件で行うことができ、10〜0.1kPaで1〜96時間の条件が特に好ましい。また、熱処理と真空乾燥処理とを併用してもよく、この場合の処理条件は上記と同様とすることができる。このような処理により、ガスケット材中に含まれるガスを50%以上の除去率で除去することができ、この除去率は70%以上であることが特に好ましい。また、このような処理により、ガスケット材中に含まれるガス濃度を1000ppm以下とすることが好ましく、100ppm以下とすることが特に好ましい。
【0007】上記ガスケット材としては、ブチルゴムやEPDMゴム等の加硫ゴム、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系,オレフィン系,ウレタン系,エステル系等の熱可塑性エラストマーを用いることができ、特にビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの少なくとも一つからなる共重合体の熱可塑性エラストマーを含有するものが好ましく用いられる。より具体的には、例えば、■ ポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体、■ ポリブタジエンとポリスチレンとのブロック共重合体、及びポリイソプレンとポリスチレンとのブロック共重合体、あるいは、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンのトリブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンのトリブロック共重合(SEPS)など、中でも、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体又はスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、などを挙げることができる。これらのエラストマーは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ガスケット材としては、製造に際して加硫等の時間を必要としない点から、熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0008】本発明のガスケット材は、カバー体や枠体に賦形することにより、ガスケット付カバーや枠付ガスケットとして用いられる。カバー体や枠体を形成する材料としては特に限定されるものではなく、金属板、熱可塑性樹脂などを用いることができる。金属板としては、特に制限はなく、例えば冷延鋼板,亜鉛めっき鋼板,アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板,アルミニウム合金板,マグネシウム板,マグネシウム合金板などの中から、カバー体の用途に応じて適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の点から、無電解ニッケルめっき処理を施した金属板が好適である。この無電解ニッケルめっき処理方法としては、従来金属素材に適用されている公知の方法、例えば硫酸ニッケル,次亜リン酸ナトリウム,乳酸,プロピオン酸などを適当な割合で含有するpH4.0〜5.0程度で、かつ温度85〜95℃程度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴中に、金属板を浸漬する方法などを用いることができる。用いられる金属板の厚さは、カバー体や枠体の用途に応じて適宜選定されるが、カバー体は通常0.3〜1.0mm、好ましくは0.4〜0.6mmの範囲である。また、枠体の場合は通常0.1〜0.5mm、好ましくは0.15〜0.3mmの範囲である。カバー体や枠体を形成する熱可塑性樹脂としては、例えばアクリロトニトリルスチレン(AS)樹脂,アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂,ポリスチレン,シンジオタクティックポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、アクリル系樹脂、ポリアセタール,ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーには、補強材として、ガラス繊維,カーボン繊維等の無機繊維、マイカ,タルク等の無機フィラー、チタン酸カリウム等のウィスカーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0009】カバー体や枠体とガスケットとの一体化は、ガスケットを形成する材料が熱可塑性エラストマーである場合、ガスケットを射出成形法でカバー体又は枠体へ賦形することによりなされる。また、カバー体や枠体の材料が熱可塑性樹脂であり、ガスケット材が熱可塑性エラストマーである場合、該熱可塑性樹脂と該熱可塑性エラストマーとの接合によりなされ、具体的には、二色成形法やインサート成形法などの方法によりなされる。二色成形法においてはまず、カバー体や枠体を形成する熱可塑性樹脂を専用の射出成形機により、金型内に溶融射出成形し、次いでこの熱可塑性樹脂成形物が固化後に、ガスケットを形成する、熱可塑性樹脂との融着性に優れた熱可塑性エラストマーを専用の射出成形機により溶融射出成形して、該熱可塑性樹脂成形物の一部に熱可塑性エラストマー層を形成することにより、熱可塑性樹脂とその表面に形成された熱可塑性エラストマー層とが一体的に複合化されたガスケットが得られる。このような二色成形法は、生産効率が高く、ガスケット付カバーや枠付ガスケットを低コストで作製することができる。一方インサート成形法においては、予め熱可塑性樹脂を用いて、公知の各種成形法により、所定形状のカバー体又は枠体を作製し、このカバー体又は枠体を金型内に載置する。次いで、これに、熱可塑性エラストマーを射出成形機により溶融射出成形して、該カバー体の一部に熱可塑性エラストマー層を形成することにより、カバー体又は枠体とその一部に形成された熱可塑性エラストマーとが一体的に複合化されたガスケット付カバー又は枠付ガスケットが得られる。
【0010】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1図1は本発明のガスケット材を用いて製造された枠付ガスケットをシール面側から見た斜視図である。図1において、1は枠体、2はガスケットである。この枠付ガスケットの寸法は100mm×70mmである。この枠付ガスケットは以下のようにして作製した。枠体1は、無電解ニッケルめっきを施した厚さ0.15mmのステンレス鋼で作製した。ガスケット2を形成する熱可塑性エラストマーは、数平均分子量10万でスチレン量が30重量%のSEPSを100重量部と、40℃における動粘度が380mm2 /secのパラフィン系オイル〔出光興産(株)製,商品名:ダイアナプロセスオイルPW380,数平均分子量750〕80重量部と、ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製,ノバティックPP・BC05B)16重量部とを二軸押し出し機にて200℃にて混練することにより調製した。この熱可塑性エラストマーのJIS−A硬度は46度であった。上記混練により得られたストランドをペレット状にカットし、これをステンレス鋼製の容器に厚さ3cm程入れ、80℃のオーブン中で8時間加熱処理した。射出成形機として日精樹脂工業(株)社製のPS60E5ASE機を用い、上記ペレットから厚さ1mmのシートを得た。このシートを1mm×40mmの大きさにカットし、これをガラス容器内で以下の条件で加熱して、発生するガス量を測定した。
加熱条件:110℃、15分間捕集方法:GLサイエンス社製のサーマルデソープションコールドトラップを用いて、トラップ温度−130℃、パージガスHe(流量10ミリリットル/分)にて捕集した。
測定方法:トラップ部を130℃に急速加熱し、GC−MSにて測定した。検出器はポストアクセラレーションディテクターを付属した二次電子増倍管及び原子発光検出器を用いた。
測定の結果、発生したガスはマスクロマトグラムから、飽和炭化水素を主成分てするものであることがわかった。また、上記加熱処理を施さない試料について同様の測定を行ったところ、上記加熱処理によってガス発生量が、未処理の場合の約1/8に低減したことが認められた。成形機として日精樹脂工業(株)社製のTH30R2VSE機を用い、上記枠体を金型内配置し、これに金型温度50℃、樹脂温度230℃の条件で、上記ガスケット用熱可塑性エラストマーを溶融射出成形することにより、枠体とガスケットとが一体化された枠付ガスケットを作製した。このようにして作製した枠付ガスケットをコンピュータのハードディスク装置において用いたところ、発生したガスが原因と考えられる故障は、長期間にわたって発生しなかった。
【0011】
【発明の効果】本発明のガスケット材を用いて製造したガスケットは、磁気ディスク等を汚染させるガスが、電子機器使用時に発生しないものである。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成11年2月25日(1999.2.25)
【代理人】 【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
【公開番号】 特開2000−240803(P2000−240803A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−48400