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【発明の名称】 シリンダ装置
【発明者】 【氏名】猪瀬 恭夫

【氏名】町田 博美

【要約】 【課題】Oリングによりバックアップされたロッドシールとピストンロッドとの接触面圧分布を理想的な状態に維持し、耐久信頼性の向上を図る。

【解決手段】シリンダ内のピストンから延ばしたピストンロッド3を案内するロッドガイド7の環状溝9にロッドシール10とOリング11とからなる二重シール12を配置したシリンダ装置において、前記環状溝9のシリンダ外側のシール受面26に、ロッドシール10とOリング11との間に部分的に介在する第1の環状突起32を設けると共に、該環状溝9のシリンダ内室側のシール受面37にOリング11の軸方向移動を規制する第2の環状突起39を設け、第1の環状突起32によりロッドシール18が強い力でピストンロッド3に押付けられるのを防止し、かつ第2の環状突起37によりロッドシール18に対するOリング11の弾発付勢位置を一定にして接触面圧が局部的に過大になるのを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油液が封入されたシリンダ内に摺動可能にピストンを嵌装し、該ピストンに一端部が連結されたピストンロッドの他端部を前記シリンダの開口端部に装着したロッドガイドを挿通してシリンダ外まで延ばし、前記ロッドガイドの内周に設けられた環状溝内に、前記ピストンロッドに摺接するロッドシールと該ロッドシールを前記ピストンロッド側へ弾発付勢するOリングとからなる二重シールを配置し、かつ前記環状溝を形成するシリンダ外側のシール受面に、前記Oリングと前記ロッドシールとの間に挿入されて、該Oリングから該ロッドシールに加えられる付勢力の一部を受止める環状突起を設けたシリンダ装置において、前記環状溝を形成するシリンダ内室側のシール受面に、前記Oリングに当接し、該Oリングの、シリンダ内室側への移動を規制する第2の環状突起を設けたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】 第2の環状突起が、周回り方向に断続していることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車高調整用の油圧シリンダ、衝撃吸収用の油圧緩衝器などのシリンダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、車高調整用の油圧シリンダは、図5および図6に示すように、油液が封入されたシリンダ1内に摺動可能にピストン2を嵌装し、このピストン2に一端部が連結されたピストンロッド3の他端部を前記シリンダ1の開口端部に装着した後述のシールブロック4を液密に挿通してシリンダ1外まで延ばし、シリンダ1を有底の外筒5内に納めて、両者の間を前記シールブロック4により閉じてドレン室(環状室)6として構成している。シールブロック4は、ここではシリンダ1および外筒5に嵌合されたロッドガイド7と、外筒5に螺合され前記ロッドガイド7を上から押えるロックリング8とからなっており、そのロッドガイド7の内周に設けた環状溝9内には、ピストンロッド3に摺接するロッドシール10と該ロッドシール10をピストンロッド3側へ弾発付勢(バックアップ)するOリング11とからなる二重シール12が配置され、また、そのロックリング8内にはオイルシール13が配置されている。
【0003】上記ピストンロッド3には、通常シリンダ1内の上下室を連通する油通路14とこの油通路14内の油液の流動を制御して減衰力を発生させるディスクバルブ15とが設けられたピストン2が連結されている。一方、ピストンロッド3には油通路16が設けられ、この油通路16には油圧源17、ばね要素としてのアキュムレータ18および減衰要素としての減衰力調整弁19を備えた給排油手段20が管継手21を介して接続されている。なお、22は、シリンダ1の外方位置でピストンロッド3に嵌合固定された保護カバーである。このような油圧シリンダにおいては、給排油手段20からピストンロッド3の油通路16を通じてシリンダ1内に油液を給排することによりピストンロッド3の伸長長さが変化し、また、ピストンロッド3の伸縮に伴ってディスクバルブ15が作動することにより減衰力が発生し、さらに減衰力調整弁19によってその減衰力が調整されるようになる。
【0004】ここで、上記二重シール12を構成するロッドシール10は、摺動特性を重視して摺動性能に優れた材料、例えばフッ素系樹脂から形成されており、これとピストンロッド3との間からは、わずかの油漏れが生じるようになっている。そして、シリンダ内室23側から漏れ出た油液は、二重シール12とオイルシール13との間に形成された油溜室24に一旦溜った後、ロッドガイド7に設けた油通路25を通じて前記ドレン室6へ逃がされ、これによりシリンダ内室23と油溜室24との間には適当な差圧が発生し、Oリング11からロッドシール10に適度な弾発付勢力が加えられて所望のシール性が確保されるようになっている。
【0005】しかし、上記した従来一般の油圧シリンダでは、シリンダ内室23と油溜室24との間の差圧がある値以上に上昇すると、図7に示すように該差圧[ΔP]によってOリング11が、環状溝9を形成するシリンダ外側(油溜室24側)のシール受面26に強く押圧され、この結果、Oリング11の弾発付勢力が著しく増大してロッドシール10がピストンロッド3に強い力で押付けられ、ロッドシール10の摩擦抵抗が増大してピストンロッド3の円滑な作動が阻害されるばかりか、ロッドシール10が摩耗し易くなる、という問題があった。
【0006】そこで、特開平10−54436号公報に記載のシリンダ装置では、図8に示すように、ロッドガイド7を本体30と蓋体31とからなる分割構成として、その蓋体31に設定したシリンダ外側(油溜室24側)のシール受面26に環状突起32を設け、この環状突起32をロッドシール10に形成した環状の切欠33内に位置させるようにしている。このようなシール構造とすることにより、Oリング11に大きな差圧[ΔP]がかかって、ロッドシール10に大きな弾発付勢力が加わるような場合は、前記環状突起32がその付勢力の一部を受止め、これによりロッドシール10がピストンロッド3に強く押付けられることはなくなる。しかも、ロッドシール10とピストンロッド3との接触面圧分布は、図8に付記するように、シリンダ内室23側の接触圧力勾配Aが油溜室24側の接触圧力勾配Bよりも大きい(A>B)理想的な状態となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の油圧シリンダにおいては、シリンダ内室23からの油漏れが多くなると上記した差圧[ΔP]が逆転する現象が起こり、このような逆転差圧[−ΔP]が発生すると、図9に示すように、環状溝9内のOリング11に下方への押下げ力が働く。しかしながら、上記公報に記載の油圧シリンダでは、Oリング11が環状溝9内で自由に軸方向移動できるようになっているため、前記逆転差圧[−ΔP]がある値以上に大きくなると、Oリング11がシリンダ内室23側へ移動してロッドシール10を弾発付勢する位置が変化し、この結果、ロッドシール10とピストンロッド3との接触面圧分布が、同じく図9に付記するように、シリンダ内室23側の接触限界点S付近で著しく高く(Pmax )なり、前記逆転差圧[−ΔP]の定常的な発生によってロッドシール10に偏摩耗が生じる虞れがあった。
【0008】本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ロッドシールとピストンロッドとの接触面圧分布を常に理想的な状態に維持し、もってピストンロッドの円滑な作動とシール性との安定維持、並びにロッドシールの耐久性の向上に大きく寄与するシリンダ装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、油液が封入されたシリンダ内に摺動可能にピストンを嵌装し、該ピストンに一端部が連結されたピストンロッドの他端部を前記シリンダの開口端部に装着したロッドガイドを挿通してシリンダ外まで延ばし、前記ロッドガイドの内周に設けられた環状溝内に、前記ピストンロッドに摺接するロッドシールと該ロッドシールを前記ピストンロッド側へ弾発付勢するOリングとからなる二重シールを配置し、かつ前記環状溝を形成するシリンダ外側のシール受面に、前記Oリングと前記ロッドシールとの間に挿入されて、該Oリングから該ロッドシールに加えられる付勢力の一部を受止める環状突起を設けたシリンダ装置において、前記環状溝を形成するシリンダ内室側のシール受面に、前記Oリングに当接し、該Oリングの、シリンダ内室側への移動を規制する第2の環状突起を設けるようにしたことを特徴とする。
【0010】このように構成したシリンダ装置においては、シリンダ内室とシリンダ外側との間に大きな逆転差圧が発生してOリングに押下げ力が作用しても、第2の環状突起によってOリングの、シリンダ内室側への移動が規制されているので、ロッドシールを弾発付勢するOリングの位置はほとんど変化せず、ピストンロッドとロッドシールとの接触面圧が局部的に過大となることはない。しかも、通常の差圧でOリングがシリンダ外側のシール受面に強く押付けられるような場合は、該シリンダ外側のシール受面に設けた環状突起がOリングの付勢力の一部を分担し、ピストンロッドとロッドシールとの接触面圧分布は、常に理想の状態に維持される。
【0011】本発明において、上記第2の環状突起は、周回り方向に連続しても、あるいは断続してもよいものである。周回り方向に断続する場合は、該突起の相互間隙を通じて環状溝内に油液が行きわたるので、Oリングの端面に一様に差圧がかかり、接触面圧分布がより理想の状態となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0013】図1〜3は、本発明の実施の形態としての油圧シリンダを示したものである。なお、本油圧シリンダは車高調整用のもので、その基本構造は、前出図5および6に示したものと同じであるので、こゝでは要部のみを示しかつ同一部分には同一符号を付すこととする。本実施の形態において、シリンダ1内のピストン2から延ばされたピストンロッド3を摺動案内するロッドガイド7は、前出図8に関連して説明したように本体30と蓋体31とからなっている。本体30は、段付き形状となっており、その小径部分をシール部材35を介してシリンダ1に、その大径部分をシール部材36を介して外筒5にそれぞれ嵌合させることにより、シリンダ内室23およびドレン室6の開口端を液密に塞いでいる。
【0014】一方、蓋体31は、外筒5に螺合させた前記ロックリング8により本体30に対して押圧固定されており、この組付状態において、本体30と蓋体31との間には、前記二重シール12を収納するための環状溝9が形成されている。したがって、本実施の形態では、この環状溝9を形成するシリンダ外側(油溜室24側)のシール受面26が前記蓋体31に、同じく環状溝9を形成するシリンダ内室23側のシール受面37が前記本体30にそれぞれ設定されることになる。なお、本体30の内周にはブッシュ38が嵌合されており、ピストンロッド3は、直接的にはこのブッシュ38により摺動案内されるようになっている。また、本体30と蓋体31とには、前記油溜室24に溜った油液をドレン室6に戻すための一連の油通路25が形成されている。
【0015】上記環状溝9を形成するシリンダ外側のシール受面26には、前記環状突起(以下、これを第1の環状突起という)32が設けられ、この第1の環状突起32は、二重シール12を構成するロッドシール10に形成された前記環状の切欠33に挿入されている。しかして、前記環状溝9を形成するシリンダ内室23側のシール受面37には、同じく二重シール12を構成するOリング11の一端に当接し、該Oリング11の、シリンダ内室23側への移動を規制する第2の環状突起39が設けられている。なお、この第2の環状突起39は周回り方向に連続する形態で設けられている。
【0016】本実施の形態においては、Oリング11に大きな差圧[ΔP]がかかって、ロッドシール10に大きな付勢力が加わるような場合(前出図8参照)には、油溜室24側のシール受面26に設けた第1の環状突起32がその付勢力の一部を受止め、これにより、ロッドシール10がピストンロッド3に強く押付けられることはなくなって、ピストンロッド3の摺動は安定する。しかも、ロッドシール10とピストンロッド3との接触面圧分布は、図1に付記するように、シリンダ内室23側の接触圧力勾配Aが油溜室24側の接触圧力勾配Bよりも大きい(A>B)理想的な状態となり、シリンダ内室23から油溜室24への油漏れもわずかとなる。
【0017】一方、シリンダ内室23と相対に油溜室24内の油圧が高まって、両者の間に大きな逆転差圧[−ΔP]が発生するような場合(前出図9参照)は、第2の環状突起39がOリング11の、シリンダ内室23側への移動を規制しているので、ロッドシール10を弾発付勢するOリング11の位置はほとんど変化せず、したがって、前出図9に付記したようにシリンダ内室23側の接触限界点S付近で著しく接触面圧が高く(Pmax )なることはない。すなわち、ピストンロッド3とロッドシール10との接触面圧分布は、上記した通常の差圧[ΔP]が発生する時と同様に理想的な状態を維持し、ロッドシール10に偏摩耗が発生することがなくなる。
【0018】ここで、上記第2の環状突起39は、図4に示すように周回り方向に断続する形態で設けるようにしてもよいものである。この場合は、第2の環状突起39を構成する各突片40の相互間隙41が油液の流路として提供され、該突起39を間にした、ピストンロッド3と反対側の室9a(図1)にも油液が十分に回り、Oリング11の端面に一様に差圧がかかって接触面圧分布はより理想の状態となる。
【0019】なお、油圧緩衝器においても、上記したロッドシール10とOリング11とからなる二重シール12を採用することが多くなっており、本発明は、このような二重シール12を採用した油圧緩衝器も対象として含む。ただし、この場合は、上記シリンダ1の周りの環状室6はリザーバとして提供される。
【0020】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明に係るシリンダ装置によれば、シールブロックの環状溝を形成する二つのシール受面にOリングの付勢力の一部を分担する環状突起とOリングの、シリンダ内室側への移動を規制する第2の突起とを設けたので、常に理想的な接触面圧分布が得られ、ピストンロッドの円滑な作動とシール性との安定維持並びにロッドシールの耐久性の向上を達成できる。
【出願人】 【識別番号】000003056
【氏名又は名称】トキコ株式会社
【出願日】 平成10年12月28日(1998.12.28)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫 (外3名)
【公開番号】 特開2000−193094(P2000−193094A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−377717