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【発明の名称】 軸受ユニットの軸封装置
【発明者】 【氏名】細谷 眞幸

【氏名】小西 和昭

【氏名】矢部 俊一

【要約】 【課題】潤滑剤の定期的な補給を必要とせず、しかも確実に回転軸をシールすることが可能で、かつ、余剰な潤滑剤の漏れ出しの後の飛散により、周辺環境や製品等を汚染しない軸受ユニットの軸封装置を提供する。

【解決手段】ハウジング13の軸側端面部のシール溝30には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。初期状態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法は軸10の外径寸法にほぼ等しい。潤滑剤含有ポリマ部材40の少なくとも一方の端面がそれに対応するシール溝30の端面に接触している。潤滑剤含有ポリマ部材40はハウジング13の外部から粉塵や水の飛沫が軸受ユニット内部へ侵入するのを防止するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸に外嵌された軸受と、該軸受を収容するハウジングとを備える軸受ユニットの軸封装置において、前記軸が前記ハウジングを貫通する前記ハウジングの端面部の少なくとも一方に設けられた環状のシール溝と、前記軸に外嵌するように該シール溝に設けられたリング状の潤滑剤含有ポリマ部材とを備え、前記潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法は前記軸の外径寸法にほぼ等しく、前記潤滑剤含有ポリマ部材の両端面又は外周の少なくとも一部と前記シール溝の内側面とが接触していることを特徴とする軸受ユニットの軸封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軸受ユニットの軸封装置に関し、特に鉄鋼設備等に使用されるプランマブロック等の転がり軸受ユニットの軸封装置に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼設備等に使用される従来の軸受ユニットの軸封装置、例えばオイルシール等は、その摺動部(リップ部)に潤滑剤を塗布する必要があり。そのため、鉄鋼生産現場では、オイルシールのリップ部へ潤滑剤を定期的に補充する作業が通常行われ、そのための経費を必要とする。さらに、オイルシールのリップ部から漏れ出た余剰な潤滑剤が軸の回転に伴って飛散し、周辺環境や製品である圧延板等を汚染するという問題も発生している。そこで、図13に示されるような軸封装置が考案されている。
【0003】図13の軸封装置101は、一対の芯金102,103の嵌合つば109,110相互を嵌合一体化し、該芯金102,103の本体部分107,108の内周縁にシール部材104,105を装着している。各シール部材104,105のリップ部は柔軟性があり、使用時は適当に撓んで軸111の外径面に押圧される。その押圧力を強くするために、一方のシール部材105のリップ部の外周面にクリップ115が嵌められている。シール部材105は上記芯金102,103の本体部分107,108の対向間隙に潤滑剤含有ポリマ、いわゆるプラスチックグリース106を充填した構成となっている。
【0004】これは、オイルシール内に潤滑剤含有ポリマを内蔵し、そこから継続的に滲み出る潤滑剤をシール部材104,105のリップ部に導いてその潤滑に用いようというものである。それにより、定期的な潤滑剤の補給作業を省略できるだけでなく、滲み出す潤滑剤の量がわずかであるため、前述のような装置周辺の汚染の問題を解決することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本図の様式のものでは、内蔵された潤滑剤含有ポリマからの潤滑剤の滲み出し量が微量であるため、容易にはシール部材104,105のリップ部に潤滑剤が到達しないか、あるいは滲み出し量が充分でも、潤滑剤含有ポリマの内周部を伝って流れて、内周部の最下部に溜まるだけで、やはりリップ部には到達しないという欠点がある。
【0006】そこで、本発明は、潤滑剤の定期的な補給を必要とせず、しかも確実に回転軸をシールすることが可能で、かつ、余剰な潤滑剤の漏れ出しの後の飛散により、周辺環境や製品等を汚染するということのない軸受ユニットの軸封装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の軸封装置は、軸に外嵌された軸受と、該軸受を収容するハウジングとを備える軸受ユニットの軸封装置において、前記軸が前記ハウジングを貫通する前記ハウジングの端面部の少なくとも一方に設けられた環状のシール溝と、前記軸に外嵌するように該シール溝に設けられたリング状の潤滑剤含有ポリマ部材とを備え、前記潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法は前記軸の外径寸法にほぼ等しく、前記潤滑剤含有ポリマ部材の両端面又は外周の少なくとも一部と前記シール溝の内側面とが接触していることを特徴とする。
【0008】請求項1記載の軸封装置によれば、初期状態では、潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法にほぼひとしく、潤滑剤含有ポリマ部材は内周が軸と密着しているか又は潤滑剤含有ポリマ部材が軸に連れ回りしていると共に、潤滑剤含有ポリマ部材の両端面又は外周の少なくとも一部がシール溝の内側面に接触している。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材と相手部材とが接触している面がシール面として機能し、外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防止することができる。
【0009】潤滑剤含有ポリマ部材は、その表面から潤滑剤を滲み出す機能があり、滲み出した潤滑剤の量に応じて内径及び外径寸法が縮径する性質をもつので、回転継続後、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより、当初軸と密着しているか軸に対して摺動している潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法より小さくなったとき、潤滑剤含有ポリマ部材と軸とは締まり嵌めの状態になる。そのときから、潤滑剤含有ポリマ部材は軸と一体となって回転し、その後は、潤滑剤含有ポリマ部材の両端面又は外周の少なくとも一部がシール溝の内側面に摺動したまま潤滑剤含有ポリマ部材の回転が維持されるか、又は摺動面の摺動抵抗のため潤滑剤含有ポリマ部材が軸に対して遅れ回りする。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材と相手部材との接触面がシール面となって、初期状態同様、外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防ぐことができる。
【0010】換言すれば、初期状態、即ち潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法と軸の外径寸法とが等しい状態と、回転継続後、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより、潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法より小さくなり、潤滑剤含有ポリマ部材と軸とが締まり嵌めになった状態の2状態が存在するが、シール面の状態こそ変化するもののシール面となる部位に変化はなく、いずれの状態においても外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防ぐことができる。
【0011】さらに、潤滑剤含有ポリマ部材の摺動面から潤滑剤が継続的に滲み出て、摺動面を良好に潤滑するため、相手部材との摩擦で潤滑剤含有ポリマ部材が磨耗することなく相手部材との間に隙間ができるのを防止して、そこから粉塵や水の飛沫が侵入するのを防止することができる。潤滑剤は潤滑剤含有ポリマ部材から長期にわたって継続的に滲み出るため、定期的に潤滑剤を補給する必要はない。加えて、その滲み出し量はわずかであり、潤滑に対して必要最小限であるため、軸の回転に伴って飛散して周辺環境や製品等を汚染することがない。
【0012】上記軸封装置において、好ましくは、シール溝内に軸方向断面が略コの字型をしたゴムカバーリングが嵌められており、潤滑剤含有ポリマ部材がゴムカバーリングの内周溝に収納されているのがよい。これにより、潤滑剤含有ポリマ部材が、直接ハウジングの端面部と摺動することがなくなり、摺動するのはゴムカバーリングであるため、潤滑剤含有ポリマ部材が磨耗する懸念が少なくなる。
【0013】以下、本発明の軸受ユニットにおける潤滑剤含有ポリマの組成について詳細に説明する。
【0014】潤滑剤含有ポリマはポリオレフィン系樹脂にパラフィン系鉱油やグリース等の潤滑剤が含有されたもので、樹脂に潤滑剤を混ぜて調整した原料を、樹脂の融点以上に加熱して可塑化し、その後冷却することで固形状にしたものであったり、又はグリースを含有した状態で硬化したポリウレタンゴムであったり、又はポリエステル系エラストマー樹脂にエステル油やそれを基油とするグリース等の潤滑剤が含有されたもので、樹脂に潤滑剤を混ぜて調整した原料を、樹脂の融点以上に加熱して可塑化し、その後冷却することで固形状にしたものであったりする。その組成比は、全重量に対して樹脂やゴムが10〜50重量%、潤滑剤90〜50%であるが、樹脂やゴムの組成比が少なくなるほど構造部品としての強度が低下するため、本発明の場合は、組成比としては樹脂やゴム20〜50重量%、潤滑剤80〜50%程度が望ましい。潤滑剤としては、他にパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、エーテル油、エステル油等が用いられる。
【0015】
【本発明の実施の形態】以下、本発明に係る軸受ユニットの軸封装置の実施の形態を詳述する。
(第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態に係る軸封装置を有する軸受ユニットは図1に示される構成を有している。ここに、図1は本発明の第1の実施の形態に係る軸封装置を有する軸受ユニットの構成を示している。本図は、固定軸端側の軸受ユニットを示しており、自由端側の軸受ユニットも同様の構成である。
【0016】第1の実施の形態に係る軸受ユニットはプランマブロックであり、図1において、軸10はその端部が縮径されて縮径部11,11aが形成されており、縮径部11には自動調心転がり軸受12が取り付けられている。軸受12は、ハウジング13に収容されており、縮径部11に外嵌された内輪14と、ハウジング13の内周部に内嵌された外輪15と、内輪14の外周面上及び外輪15の内周面上の各軌道溝を転動する2列のころ16と、ころ16の一体型保持器17とから主として構成されている。
【0017】また、外輪15の内周面に当接して上記各軌道溝の間にリング状の潤滑剤含有ポリマ部材20が内嵌されている。潤滑剤含有ポリマ部材20はころ16の外輪軌道面案内も行うように両端面がころ16にそれぞれ接する。
【0018】ハウジング13の軸側端面部のシール溝30には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。初期状態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法は軸10の外径寸法にほぼ等しい。潤滑剤含有ポリマ部材40の少なくとも一方の端面がそれに対応するシール溝30の端面と接触している。潤滑剤含有ポリマ部材40はハウジング13の外部から粉塵や水の飛沫が軸受ユニット内部へ侵入するのを防止するものである。
【0019】また、同様に、ハウジング13の軸端側端面部のシール溝31には、当該軸端端面部と軸10の間のシールを確保するために、潤滑剤含有ポリマ部材40と同様の構成及び機能を有するリング状の潤滑剤含有ポリマ部材41が縮径部11aに外嵌するように設けられている。潤滑剤含有ポリマ部材41はシール溝40の少なくとも一方の端面に接触している。
【0020】上記潤滑剤含有ポリマ部材20の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)5wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、ポリエチレンワックス(ワックスに分類される)5wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなる。
【0021】上記潤滑剤含有ポリマ部材40,41の潤滑剤含有ポリマの組成は、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類される)10wt%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類される)20wt%、及びパラフィン系鉱油70wt%からなる。
【0022】上記第1の実施の形態においては、シール溝30及び潤滑剤含有ポリマ部材40、シール溝31及び潤滑剤含有ポリマ部材41が軸封装置を構成する。
【0023】以下、ハウジング13の軸側端面部のものに注目して上記軸封装置の作用を説明する。
【0024】初期状態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法は軸10の外径寸法にほぼ等しく、潤滑剤含有ポリマ部材40と軸10は摺動しており、潤滑剤ポリマ部材40は静止しているか又は軸10と連れ回りしている。潤滑剤含有ポリマ部材40は、静止している場合はその端面が静止シール溝30の少なくとも一方の端面と静止密着しており、連れ回りしている場合は上記端面同士は摺動している。
【0025】いずれの場合も、潤滑剤含有ポリマ部材40の相手部材との接触面はシール面として機能し、ハウジング13の外部から粉塵や水の飛沫が軸受ユニット内部へ侵入するのを防止している。その後、軸10の回転が継続されて、潤滑剤含有ポリマ部材40から潤滑剤が滲み出すと、その量に応じて潤滑剤含有ポリマ部材40の内径・外径寸法は縮径し、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法は軸10の外径寸法より小さくなり、潤滑剤含有ポリマ部材40と軸10とが締まり嵌めの状態になる。
【0026】すると、潤滑剤含有ポリマ部材40は、軸10と一体回転するか、又は端面間の摺動抵抗から軸10に対して遅れ回りするようになる。一体回転している際の軸10と潤滑剤含有ポリマ部材40とは静止密着しており、一方、遅れ回りしている際の軸10と潤滑剤含有ポリマ部材40とは摺動状態にあって、いずれの場合も、端面同士は常に摺動状態にある。従って、この回転継続後の潤滑剤含有ポリマ部材40の縮径時の場合も初期状態と同様に、潤滑剤含有ポリマ部材40と相手部材との接触面はシール面を形成しており、ハウジング13の外部から粉塵や水の飛沫の軸受ユニット内部へ侵入するのを防止している。
【0027】潤滑剤含有ポリマ部材40の摺動面からは潤滑剤が継続的に滲み出て、相手部材との摺動面を良好に潤滑するので、摺動による摩擦で潤滑剤含有ポリマ部材40が磨耗して摺動面同士の間に隙間ができるのを防止し、その結果、隙間からから粉塵や水の飛沫等の異物が侵入するのを防止することができる。
【0028】なお、ハウジング13の軸端側端面部の軸封装置の作用も上記と同様である。
(第2の実施の形態)本発明の第2の実施の形態に係る軸封装置は図2に示される構成を有している。ここに、図2(a)は本発明の第2の実施の形態に係る軸封装置の構成を示しており、図2(b)は本発明の第2の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0029】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第1の実施の形態の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第1の実施の形態と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0030】まず、図2(a)を参照しながら、本実施の形態に係る軸封装置の構成について述べる。
【0031】ハウジング13の軸側端面部のシール溝30には、軸方向断面がコの字型をしたゴムカバーリング50が弾性圧縮的に嵌合されており、このゴムカバーリング50の内周溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング状の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。初期状態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法は軸10の外径寸法にほぼ等しい。潤滑剤含有ポリマ部材40の少なくとも一方の端面がそれに対応するゴムカバーリング50の内部端面と接触している。
【0032】次に、本実施の形態に係る軸封装置の作用、効果について説明する。上述の構成により、初期状態においては、潤滑剤含有ポリマ部材40と軸10は摺動しており、潤滑剤含有ポリマ部材40は、その端面がゴムカバーリング50の端面に対して静止密着しているか又は摺動している。回転継続後、潤滑含有ポリマ部材40からの潤滑剤の滲み出しにより、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径は縮径し、軸10に対して締まり嵌めとなる。その時には、潤滑剤含有ポリマ部材40と軸10とは一体的に回転し、潤滑剤含有ポリマリング40はその端面がゴムカバーリング50の内側端面に対して摺動している。
【0033】回転が継続するに従って、上記の2状態が存在するが、いずれの場合も潤滑剤含有ポリマ部材40と相手部材との接触面はシール面を形成し、ハウジング13の外部からの粉塵や水の飛沫等の異物の侵入を防止することができる。
【0034】第1の実施の形態では、例えば、ハウジング13が金属製である場合、ハウジング13の軸側端面部と潤滑剤含有ポリマ部材40との摺動面で潤滑剤含有ポリマ部材40の磨耗が発生する心配があるが、ハウジング13の軸側端面部と潤滑剤含有ポリマ部材40との間にゴムカバーリング50を介在させたことにより、潤滑剤含有ポリマ部材40が、直接、ハウジング13の軸側端面部と摺動することがなくなり、摺動するのは弾性体であるゴムカバーリング50であるため、潤滑剤含有ポリマ部材40が磨耗する懸念が少なくなる。もちろんこの場合も、潤滑剤含有ポリマ部材40とゴムカバーリング50との摺動面からは、継続的に潤滑剤が滲み出して摺動面を潤滑するため、潤滑剤含有ポリマ部材40とゴムカバーリング50双方とも磨耗して摺動面間に隙間ができるのを防止することができ、その結果、シール性能が低下するのを防止することができる。ゴムカバーリング50は、弾性圧縮的にハウジング13の軸端側端面部のシール溝30に嵌合しているため、潤滑剤含有ポリマ部材40との摺動によりトルクを受けても、ハウジング13の中で回転することはない。
【0035】また、第1の実施の形態に対する他の有利な点としては、図2(b)に示すように、例えば、ハウジング50に形成されたシール溝30の断面が台形で両端面が傾斜している場合でも、その傾斜に合わせた外側端面を持つゴムカバーリング50を用意することによって、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径・外径寸法の縮径によるシール溝30の両内側端面との間に隙間ができるのを防止して、確実にシール性能を発揮することができる軸封装置を提供することができる。
【0036】ゴムカバーリング50の材料は、ゴム以外に、エラストマー等を使用することができる。
(第3の実施の形態)本発明の第3の実施の形態に係る軸封装置は図3に示される構成を有している。ここに、図3は本発明の第3の実施の形態に係る軸封装置の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0037】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0038】まず、本実施の形態に係る軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。異なる点は、ゴムカバーリング50の内側端面が梨地状に荒らしてある点である。その面粗度は10Sから500S程度である。
【0039】次に、本実施の形態に係る軸封装置の作用効果について説明する。第2の実施の形態の場合は、潤滑剤含有ポリマ部材40はその端面がゴムカバーリング50の内側端面に対して摺動するが、ゴムカバーリング50の内側端面が充分平滑で相互の摺動面間に薄い潤滑剤膜が存在すると、ゴムカバーリング50の内側端面と潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とが吸着される現象が発生し、ゴムカバーリング50は回転している潤滑剤含有ポリマ部材40からトルクを受けるようになり、その結果、ハウジング13の軸側端面部のシール溝30の中でゴムカバーリング50が回転し易くなる。これにより、ゴムカバーリング50とハウジング13の溝の内壁とが擦れ合い、ゴムカバーリング50が磨耗する。そこで、ゴムカバーリング50が内側端面を梨地状に荒らすことにより、梨地面の効果で、ゴムカバーリング50の内側端面と潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とが吸着するのを防止して、ゴムカバーリング50が回転することを防止することができる。
(第4の実施の形態)本発明の第4の実施の形態に係る軸封装置は図4に示される構成を有している。ここに、図4は本発明の第4の実施の形態に係る軸封装置の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0040】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0041】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれとと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態のそれに加えて、ゴムカバーリング50の各端面部に長手軸方向に貫通する孔51が1ヶ所以上に設けられている。孔51の直径は、0.1から10mmが適当である。孔51の個数は一方の端面部上に8個以上、円周上等角度位置にあるのが望ましい。
【0042】次に、本軸封装置の作用効果について説明する。第2の実施の形態の軸封装置の場合は、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とゴムカバーリング50の内側端面が摺動するが、ゴムカバーリング50の内側端面が充分平滑で、相互の摺動面間に薄い潤滑剤膜が存在すると、ゴムカバーリング50の内側端面と潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とが吸着される現象が発生する。これにより、ゴムカバーリング50が回転している潤滑剤ポリマ部材40からトルクを受けるようになり、ハウジング13の軸端側端面部のシール溝30の中でゴムカバーリング50が回転し易くなり、その結果、ゴムカバーリング50とハウジング13のシール溝の内壁とが擦れ合って、ゴムカバーリング50が磨耗してしまう。そこで、ゴムカバーリング50の端面部に長手軸方向の孔51を設けると、孔51を介して空気が通り、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面上のその孔51に対応する位置にあった薄い潤滑剤膜が切れて、その部分は、相互の端面同士が吸着しなくなり。ゴムカバーリング50が回転することを防止することができる。
(第5の実施の形態)本発明の第5の実施の形態に係る軸封装置は図5に示される構成を有している。ここに、図5は本発明の第5の実施の形態に係る軸封装置の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0043】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0044】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置と同様、ハウジング13の軸側端面部のシール溝30には、軸方向断面がコの字型をしたゴムカバーリング50が弾性圧縮的に嵌合されており、また、このゴムカバーリング50の内周溝には、当該軸側端面部と軸10の間のシールを確保するために、リング上の潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10に外嵌するように設けられている。潤滑剤含有ポリマ部材40は、その厚みがゴムカバーリング50の内側端面間の距離よりも小さく設定されている。さらに、潤滑剤含有ポリマ部材40は、その両端面が対応するゴムカバーリング50の内側端面とは接しないように配置されており、その隙間60は潤滑剤含有ポリマ部材40の第1の端面から外周へ、そして第2の端面へとつながるラビリンス形状を呈している。ラビリンス状の隙間には、潤滑剤含有ポリマ部材40から滲みでた潤滑剤が充満している。この隙間は0.1から1mm程度である。
【0045】次に、本軸封装置の作用効果について説明する。初期状態では、潤滑剤含有ポリマ部材40は、ゴムカバーリング50に対して静止又は回転しているが、ラビリンス状の隙間60は維持されており、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周を通って粉塵や水の飛沫等の異物が軸受ユニット内部に侵入することはない。回転が継続し、潤滑剤が滲み出て潤滑剤含有ポリマ部材40が縮径すると、潤滑剤含有ポリマ部材40は軸10と一体的に回転する。この時は、初期状態同様、ラビリンス状の隙間60が維持されるだけでなく、ラビリンス形状の隙間60に上記潤滑剤が充満するため、初期状態に較べて、さらにシール性の高い軸封装置が提供されることになる。潤滑剤含有ポリマ部材40が軸10と一体的に回転する際には、潤滑剤含有ポリマ部材40は、他の部材と摺動しないため第2の実施の形態の軸封装置よりも軸10のトルクを低くすることができる。
(第6の実施の形態)本発明の第6の実施の形態に係る軸封装置は図6に示される構成を有している。ここに、図6(a)は本発明の第6の実施の形態に係る軸封装置の構成を示し、図6(b)は本発明の第6の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示し、図6(c)は本発明の第6の実施の形態に係る軸封装置の他の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0046】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0047】まず、本実施の形態に係る軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の両端面に潤滑剤含有ポリマ部材40の内周面と同心円状に突起41が複数設けられている。突起41の頂部は平面で、対応するゴムカバーリング50の内側端面と接している。図6(a)の例では、潤滑剤含有ポリマ部材40の一端面に3つの突起41が設けられており、両方の端面で計6つの突起41が設けられている。潤滑剤含有ポリマ部材40が回転する際には、これらの突起41とゴムカバーリング50の内側端面とが摺動する。
【0048】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。初期状態において、潤滑剤含有ポリマ部材40の突起41の頂部の平面(端面部)とゴムカバーリング50の内側端面とは静止密着しているか又は摺動している。回転が継続され、潤滑剤が滲み出て潤滑剤含有ポリマ部材40の内径が縮径すると、潤滑剤含有ポリマ部材40と軸10とが締まり嵌めの状態となり、突起41とゴムカバーリング50の内側端面とは摺動するようになる。粉塵や水の飛沫等の軸受ユニット内部への侵入経路を考えると、突起41とゴムカバーリング50の内側端面との接触面と空間とが多重に存在することになり、それは、すなわち、ラビリンス形状の隙間を呈することに他ならない。つまり、第2実施の形態の軸封装置の効果に対して、突起41によるラビリンスの効果が加わるため、よりシール性能を向上させることができる。また、突起41は、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面に設ける代わりに、同様の突起51をゴムカバーリング50の内側端面に設けてもよい(図6(b))。また、先の2例を複合させたものでもよい(図6(c))。
(第7の実施の形態)本発明の第7の実施の形態に係る軸封装置は図7に示される構成を有している。ここに、図7(a)は本発明の第7の実施の形態に係る軸封装置の構成を示し、図7(b)は本発明の第7の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0049】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0050】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部に周溝が設けられている、その周溝に対応する位置においてゴムカバーリング50の内周部に周突起52が設けられている。図7(a)の軸封装置では、周溝、周突起52とも3個ずつ設けられている。周突起52の凸部が周溝の凹部に入り込むように配置されており、互いに一定の隙間を保ったまま接触はしていない、隙間の大きさは0.1から1mm程度である。
【0051】次に、同軸封装置の作用効果については説明する。潤滑剤含有ポリマ部材40の回転静止に関わらず、粉塵や水の飛沫等の異物の機械内部への侵入経路をたどると、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部分では、凹凸が交互に繰り返されるラビリンス状の隙間を呈している。従って、第2の実施の形態に、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部分のラビリンス形状の隙間が加わったものとなり、より強固なシール性能をもつ軸封装置を提供することができる。
【0052】また、図7(a)の軸封装置のように、潤滑剤含有ポリマ部材40が、そのその少なくとも一方の端面がゴムカバーリング50の内側端面と接しているもの以外に、第5の実施の形態のあるように、端面同士が接触せずにラビリンス形状の隙間を形成してもよい(図7(b))。その場合の隙間は0.1から1mm程度が妥当である。
(第8の実施の形態)本発明の第8の実施の形態に係る軸封装置は図8に示される構成を有している。ここに、図8(a)は本発明の第8の実施の形態に係る軸封装置の構成を示し、図8(b)は潤滑剤含有ポリマ部材40が縮径した場合の図8(a)の軸封装置を示し、図8(c)は本発明の第8の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0053】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0054】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の内周部の一部に軸10と摺動するリップ42が設けられている。また、リップ42を除く内周部は、リップ42と同軸的にかつ円筒状に成形されており、その内径寸法は軸10の外径よりも大きく設計されている。
【0055】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。初期状態では、リップ42と軸10とは摺動しており、リップ42の効果によってシール機能を発揮する。リップ42から潤滑剤が滲みでるため、摺動によってリップ42が磨耗するということはない。その後、回転が継続されて潤滑剤が滲み出た結果、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法が縮径し、前述の潤滑剤含有ポリマ部材40の内周部の円筒状部の内径寸法が軸10の外径より小さくなって締まり嵌めの状態になり、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とゴムカバーリング50の内側端面とが摺動してシール面となる(図8(b))。この構成によれば、初期状態では、リップ42でシール機能を発揮しているため、第2の実施の形態の軸封装置と比較して、初期状態におけるシール性が向上する。軸10と締まり嵌めとなる潤滑剤含有ポリマ部材40の内周部の一部は円筒状に成形されているため、締まり嵌めとなった後、潤滑剤含有ポリマ部40が軸10に対して斜めに取り付いた状態で一体化するのを防止することができる。また、リップ42の個数は1個以上であり、複数個取り付けることにより、より高いシール性能を保つということも考えられる(図8(c))。
(第9の実施の形態)本発明の第9の実施の形態に係る軸封装置は図9に示される構成を有している。ここに、図9(a)は本発明の第9の実施の形態に係る軸封装置の構成を示し、図9(b)は本発明の第9の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示し、図9(a)は本発明の第9の実施の形態に係る軸封装置の他の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0056】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0057】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部にリップが形成されており、ゴムカバーリング50の内周面と弾性的に接触している。リップ43は、潤滑剤含有ポリマ部材40の各端面を超えて長手軸方向にせり出している。従って、潤滑剤含有ポリマ部材40は、その端面がゴムカバーリング50の内側端面と接していない。リップ43の個数は1つ以上であり、本実施の形態では、2つである(図9(a))。
【0058】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。初期状態では、軸10は潤滑剤含有ポリマ部材40の内周と摺動してシール面を形成している。回転が継続し、潤滑剤が滲み出て、潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法が軸10の外径寸法より小さくなり締まり嵌めの状態になると、潤滑剤含有ポリマ部材40は軸10と一体的に回転するようになる。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部に設けられたリップ43とゴムカバーリング50の内周面とが摺動するようになり、そこが、新たにシール面となる。潤滑剤含有ポリマ部材40は回転が継続すると、その外径寸法も縮径するが、縮径量に対して充分にリップ43のたわみ代を設けてあるので、リップ43がゴムカバーリング50の内周面から離れてシールが破れるということはない。またリップ43の先端は、潤滑剤含有ポリマ部材40の各端面を超えて長手軸方向に突出している必要はなく、潤滑剤含有ポリマ部材40の厚み寸法以内にリップ43の幅を収めることも可能である(図9(b))。この場合、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とゴムカバーリング50の内側端面とを接触させることが可能となり、その端面間をもシール面とすることができる。すなわち、第2の実施の形態の軸封装置に対して、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部にリップ43によるシールを付加したものとなる。リップは、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部に成形されるだけでなく、反対に、リップ52としてゴムカバーリング50の内周部に設けてもよい(図9(c))。この場合、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周面は円筒状となる。リップが潤滑剤含有ポリマ部材40側に成形されていても、ゴムカバーリング50側に成形されていても、そのシール性能上の効果は変わらない。
(第10の実施の形態)本発明の第10の実施の形態に係る軸封装置は図10に示される構成を有している。ここに、図10(a)は本発明の第10の実施の形態に係る軸封装置の構成を示し、図10(b)は本発明の第10の実施の形態に係る軸封装置の変形例の構成を示し、図10(c)は本発明の第10の実施の形態に係る軸封装置の他の変形例の構成を示し、図10(d)は本発明の第10の実施の形態に係る軸封装置のさらに他の変形例の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0059】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0060】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の各端面に内周面と同軸的にリップ44が形成されており、対応するゴムカバーリング50の内側端面と弾性的に接触している。図10(a)の軸封装置では、潤滑剤含有ポリマ部材40の両端面にリップ44がそれぞれ1つずつ形成されている。1つは半径方向外側に配向しており、他の1つは半径方向内側に配向している。リップ44は、潤滑剤含有ポリマ部材40の片方の端面だけに形成されていてもよい(図10(b))。この場合、反対の端面側は、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とゴムカバーリング50の内側端面とが直接接触することになる。リップ44は1つ以上あればよく、潤滑剤含有ポリマ部材40の片方の端面に複数枚のリップが形成されていてもよい。
【0061】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。初期状態では、軸10は潤滑剤含有ポリマ部材40の内周面と摺動してシール面を形成している。回転が継続し、潤滑剤が滲み出て潤滑剤含有ポリマ部材40の内径寸法が軸10の外径寸法より小さくなて締まり嵌めの状態になると、潤滑剤含有ポリマ部材40は、軸10と一体的に回転するようになる。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面に設けられているリップ44とそれに対応するゴムカバーリング50の内側端面とが摺動し、新たなシール面を形成する。リップ44からは潤滑剤が滲み出すため、リップ44が摺動で磨耗してリップ44とゴムカバーリング50の内側端面との間に隙間ができるのを防止することができる。第2の実施の形態の軸封装置と比較してリップ44でシールを行うので、よりシール性能を向上させることができる。
【0062】リップは潤滑剤含有ポリマ部材40の端面部分に成形されるだけではなく、反対にリップ53としてゴムカバーリング50の内側端面に設けることも可能である(図10(c))。この場合、潤滑剤含有ポリマ部材40の各端面は平面となる。リップが潤滑剤含有ポリマ部材40側に成形されていても、ゴムカバーリング50側に成形されていてもそのシール性能上の効果は変わらない。他には、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面とゴムカバーリング50の内側端面との双方に、同時にリップ44,53を設けて、さらに、シール性能を高めてもよい(図10(d))。
(第11の実施の形態)本発明の第11の実施の形態に係る軸封装置は図11に示される構成を有している。ここに、図11は本発明の第11の実施の形態に係る軸封装置の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0063】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第7の実施の形態及び第10の実施の形態の軸封装置の改良であるので、両実施の形態の軸封装置との違いについてのみ説明し、両実施の形態の実施の形態と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0064】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、両実施の形態のそれらと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第7の実施の形態の軸封装置と同様、潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部には周溝が設けてあり、その凹部に対応するゴムカバーリング50の内周部には周突起52が設けてあり、両者の凹凸は一定の隙間を持って配置されている。隙間の寸法は0.1から1mm程度である。さらには、第10の実施の形態の軸封装置と同様、ゴムカバーリング50の内側両端面には、ゴムカバーリング50の内周面と同軸的にリップ53が形成され、潤滑剤含有ポリマ部材40の各端面と弾性的に接触している。リップ53は、第10の実施の形態の軸封装置でも述べた通り、片側の端面だけに形成されてもよく、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面だけに形成されてもよく、また、潤滑剤含有ポリマ部材40とゴムカバーリング50との双方に形成されてもよい。
【0065】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。作用効果は、第7の実施の形態の作用効果と第10の実施の形態のそれとを加えたものである。即ち、粉塵や水の飛沫等の異物の軸受ユニット内部への侵入経路に関して潤滑剤含有ポリマ部材40の回転静止に関わらず潤滑剤含有ポリマ部材40の外周部では凹凸が交互に繰り返されるラビリンス状の隙間を呈しているため、異物が侵入しにくい。それに加えて、潤滑剤含有ポリマ部材40の端面には、ゴムカバーリング50の内側端面に形成されたリップ53が弾性的に接触しているため、より一層異物が侵入しにくくなっている。この構成により、よりシール性能を向上させることができる。
(第12の実施の形態)本発明の第12の実施の形態に係る軸封装置は図12に示される構成を有している。ここに、図12は本発明の第12の実施の形態に係る軸封装置の構成を示す。本図は、ハウジング13の軸側端面部の軸封装置の断面を示しており、同軸端側端面部の軸封装置の断面も同様である。
【0066】本実施の形態は、第1図の軸受ユニットに取り付けられると共に、第2の実施の形態の軸封装置の改良であるので、その違いについてのみ説明し、第2の実施の形態の軸封装置と共通する構成、作用、効果等は省略する。
【0067】まず、本実施の形態の軸封装置の構成については、第2の実施の形態のそれと基本的に同じである。本実施の形態の軸封装置は、第2の実施の形態の軸封装置に加えて、ゴムカバーリング50の外周部に外周溝(図示せず)が設けられている。その外周溝から、ゴムカバーリング50の内周に向かって貫通する潤滑剤補給用孔54が円周上等角度間隔で4つ設けられている。そのため、ゴムカバーリング50が水平軸まわりにどのような角度位置に配置されていても、4つの潤滑剤補給用孔の内少なくとも1つは水平軸よりも上方にあり、しかも上を向いて開口していることになる。ゴムカバーリング50は、ハウジング13の軸側端面部のシール溝30に嵌合しているが、ゴムカバーリング50の外周溝の最上位置から上方に向けて潤滑剤補給口70が設けられている。ゴムカバーリング50に開けられた潤滑剤補給用孔54は円周上等角度位置に少なくとも4つ設けられていればよく、個数がそれ以上である方がより望ましい。潤滑剤補給口70から直接、潤滑剤を注入してもよく、又は潤滑剤補給口70にオイラーを接続するような方法でもよい。
【0068】次に、同軸封装置の作用効果について説明する。潤滑剤補給口70から潤滑剤を注入すると、潤滑剤は潤滑剤補給口70を通って、ゴムカバーリング50の外周に到達する。その後、潤滑剤はゴムカバーリング50の外周溝を経由して移動し、上方を向いている最初の潤滑剤補給用孔54に到達する。次に、潤滑剤は潤滑剤補給用孔54を通って、ゴムカバーリング50の外周側から内周側へと移動し、最後に潤滑剤含有ポリマ部材40に付着し、潤滑剤含有ポリマ部材40に潤滑剤を補給する。潤滑剤含有ポリマ部材40は、潤滑剤の補給を受けることによって、滲み出して消費した潤滑剤を、またその内部に貯えることができる。つまり、この構成によれば、潤滑剤の補給なしに運転続行可能な潤滑剤含有ポリマ部材40に潤滑剤を補給することによって、さらに寿命を延長することができる。
【0069】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、請求項1記載の軸封装置によれば、初期状態では、潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法にほぼ等しく、潤滑剤含有ポリマ部材は内周が軸と密着しているか又は潤滑剤含有ポリマ部材が軸に連れ回りしていると共に、潤滑剤含有ポリマ部材の両端面及び外周の少なくとも一部がシール溝の内側面に接触している。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材と相手部材とが接触している面がシール面として機能し、外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防止することができる。
【0070】潤滑剤含有ポリマ部材は、その表面から潤滑剤を滲み出す機能があり、滲み出した潤滑剤の量に応じて内径及び外径寸法が縮径する性質をもつので、回転継続後、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより、当初軸と密着しているか軸に対して摺動している潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法より小さくなったとき、潤滑剤含有ポリマ部材と軸とは締まり嵌めの状態になる。そのときから、潤滑剤含有ポリマ部材は軸と一体となって回転し、その後は、潤滑剤含有ポリマ部材の両端面又は外周の少なくとも一部がシール溝の内側面に摺動したまま潤滑剤含有ポリマ部材の回転が維持されるか、又は摺動面の摺動抵抗のため潤滑剤含有ポリマ部材が軸に対して遅れ回りする。その結果、潤滑剤含有ポリマ部材と相手部材との接触面がシール面となって、初期状態同様、外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防ぐことができる。
【0071】換言すれば、初期状態、即ち潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法と軸の外径寸法とが等しい状態と、回転継続後、潤滑剤含有ポリマ部材からの潤滑剤の滲み出しにより、潤滑剤含有ポリマ部材の内径寸法が軸の外径寸法より小さくなり、潤滑剤含有ポリマ部材と軸とが締まり嵌めになった状態の2状態が存在するが、シール面の状態こそ変化するもののシール面となる部位に変化はなく、いずれの状態においても外部からの粉塵や水の飛沫の侵入を防ぐことができる。
【0072】さらに、潤滑剤含有ポリマ部材の摺動面から潤滑剤が継続的に滲み出て、摺動面を良好に潤滑するため、相手部材との摩擦で潤滑剤含有ポリマ部材が磨耗しても相手部材との間に隙間ができるのを防止して、そこから粉塵や水の飛沫が侵入するのを防止することができる。潤滑剤は潤滑剤含有ポリマ部材から長期にわたって継続的に滲み出るため、定期的に潤滑剤を補給する必要はない。加えて、その滲み出し量はわずかであり、潤滑に対して必要最小限であるため、軸の回転に伴って飛散して周辺環境や製品等を汚染することがない。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成10年10月20日(1998.10.20)
【代理人】 【識別番号】100081880
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 敏彦
【公開番号】 特開2000−120876(P2000−120876A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−298105