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【発明の名称】 シール構造
【発明者】 【氏名】安藤 清

【要約】 【課題】応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことが可能なシール構造を提供する。

【解決手段】キャノピーシール構造を溶接で接合すると、溶接継手部6は、δだけ横収縮する。これによって、キャノピーシール構造に曲げ応力σbが付加される。この曲げ応力σbは、キャノピーシール構造の板厚tに比例し、半径の2乗に反比例する。また、溶接継手部6には、内圧によるフープ応力(円周応力)σH がかかる。このフープ応力σHは半径rに比例し、板厚tに反比例する。ここで、全体の応力σは、σ=σb +σH であり、板厚t及び半径rを適切に選ぶことにより、全体の応力σを最小にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、その断面形状が半径rの円形又はその一部の形であり、上記溶接継手の横収縮量がδで、ヤング率がEである場合に、内圧がpであるとき、上記板厚tが【数1】

であることを特徴とするシール構造。
【請求項2】 上記溶接継手の横収縮量δと半径rとの比は、降伏応力がσ0.2 であるとき、【数2】

であるように形成したことを特徴とする請求項1に記載のシール構造。
【請求項3】 溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、その断面形状が幅寸法よりも高さ寸法の方が長い略長円形であることを特徴とするシール構造。
【請求項4】 溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、上記溶接継手の溶接線に直交する方向の断面形状が波形であることを特徴とするシール構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧力容器上部のCRDMキャノピーシール構造に関するものである。なお、圧力容器とは、例えば原子炉の燃料等の炉心を収容し、液体または気体の一次冷却材を入れる容器をいい、一般に水冷却炉では金属製、ガス冷却炉ではコンクリート製である。また、CRDMとは、制御棒駆動機構(装置)(Controlled Rod Driving Mechanism)をいう。
【0002】
【従来の技術】原子炉の圧力容器上部には、図1に示すように、例えば原子炉水位計ハウジング、制御棒駆動装置ハウジングが設けられる。この近傍では、図2に示すように、円筒構造1と円筒構造2とが台形ねじ部5ではめ合わされ(ねじ込み構造)、その後、キャノピーシール部3で溶接接合(溶接継手)される。プラント起動時(昇温昇圧時)には、このキャノピーシール部3の内部に一次系水13(一次冷却材)が浸入し、キャノピーシール部3の内部の圧縮空気と平衡状態になるが、この時の一次系水13の漏れを完全に防止するために、キャノピーシール構造を設けている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking)は、残留応力や外部の引張応力を受けた材料に、その材料にとって特定の組合せ環境下で、割れの発生と進行が生じる電気化学的現象である。すなわち、この現象は、環境と材料と応力の三者が特定の条件を満足するときに発生する。また、この現象は、引張応力下で発生し、圧縮応力下では生じない。キャノピーシール部3には、数百度の高温水で、内圧p(図2参照)がかかる。キャノピーシール構造の応力腐食割れの防止のために、環境(水質管理)、材料(構造材料の化学成分管理)、応力(内圧応力、溶接残留応力等の管理)の3つを総合的に評価管理している。応力腐食割れは、上記の3つの条件が揃わないと発生せず、圧縮応力条件では生じない。また、引張応力でも低く抑えられれば、発生を遅らせたり、全く発生させないようにすることができる。上記の3つの条件のうち、いずれか一つ改善すれば良いが、環境、材料を変えられない場合又は変わらない場合には、応力の低減が課題となる。
【0004】例えば、構造材としてステンレス鋼を用いた場合において、塩化物(塩素イオン)を含む環境では、応力腐食割れを発生し易い。溶接熱影響部などで、摂氏500〜800度(℃)の温度に保持された部位は、結晶粒界に炭化物が生成し、隣接域にCr(クロム)欠乏層ができ、酸性環境で粒界腐食を起こし易くなる。しかも、溶接残留応力、加工残留応力、負荷応力などがあると、一層応力腐食割れが発生し易くなる。材料的には、P(リン)、Mo(モリブデン)などの含有量を下げて応力腐食割れ感受性を下げる工夫がなされ、また、環境的にもCl-1(塩素イオン)イオン濃度や溶存酸素濃度などの低減の工夫がなされる。このようなキャノピーシール構造では、溶接で接合され、応力除去焼鈍も難しく、溶接引張り残留応力や熱収縮に伴う組立引張残留応力が残り易い。また、内部の圧縮空気による内圧応力も加わり、材料の降伏応力近くになる場合がある。こうした状況のもとで、応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことが可能なシール構造の提供が期待されている。本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことが可能なシール構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、断面形状が、円形又はその一部の形であるキャノピーシール構造において、内圧pが負荷され、溶接継手の横収縮量がδである場合、応力最小化のための最適板厚として、半径rとヤング率Eの板厚tとの関係が【数3】

となるように設定した。
【0006】更に、この場合において、最小化した応力の絶対値を小さくするために、溶接継手の横収縮量δと半径rの関係を、【数4】

となるように設定した。
【0007】また、本発明は、キャノピーシール構造において、接合面に直交する方向の長さがa、接合面上の長さがbであるとき、その断面が、a<bである長円形とすることも含む。
【0008】また、本発明は、キャノピーシール構造において、接合面に直交する方向の断面が波形であることも含む。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るシール構造の実施の形態について図面に基づいて説明する。圧力容器上部構造等に用いられるキャノピーシール構造について、第1の実施形態を図3及び図4に、第2の実施形態を図5に、第3の実施形態を図6にそれぞれ示す。なお、キャノピーシール部3の構造は、基本的には従来のものと同じであり(図1及び図2参照)、その説明は省略する。
【0010】まず、第1の実施形態について図3及び図4を用いて説明する。キャノピーシール部3を溶接で接合すると、溶接継手部6(図3参照)は、δだけ横収縮する。これによって、キャノピーシール部3(図3参照)に曲げ応力σb が付加される。この曲げ応力σb は、図4に示すように、キャノピーシール部の板厚t(図3参照)に比例し、また、半径r(図3参照)の2乗に反比例する。また、溶接継手部6には、内圧によるフープ応力(円周応力)σH がかかる。このフープ応力σH は、円周方向に作用する膜応力であり、図4に示すように、板厚tに反比例し、また、半径rに比例する。ここで、全体の応力σは、 σ=σb +σH ・・・(式1)
であり(図4参照)、板厚t及び半径rを適切に選ぶことにより、全体の応力σすなわち曲げ応力σb とフープ応力σH との和を最小にすることができる。
【0011】以下、板厚t及び半径rの最適値について計算式を用いて具体的に説明する。フープ応力σH は、内圧をp(図3参照)とすると、 σH =p×r/t ・・・(式2)
である。
【0012】変位(溶接継手部の横収縮量)δと力Fとの関係は、熱収縮に対するコンプライアンスをcとすると、 δ=F×c ・・・(式3)
である。ここで、コンプライアンスcは、 c=π×r3 /(4×E×I) ・・・(式4)
である。なお、Eはヤング率(縦弾性係数)で、Iは断面二次モーメントである。断面矩形の断面二次モーメントIは、幅をBとすると、 I=B×t3 /12 ・・・(式5)
であり、その断面係数Zは、 Z=I/(t/2)
=B×t2 /6 ・・・(式6)
である。溶接継手部6に伴うキャノピーシール構造付根部の曲げ応力σb は、曲げモーメントをMとすると、上記式3ないし式6を用いて、 σb=M/Z =6×F×r/(B×t2
=2×t×δ×E/(π×r2 ) ・・・(式7)
となる。
【0013】したがって、全体の応力(組合せ応力)σは、上記式1、式2及び式7を用いて、【数5】

・・・(式8)
となる。すなわち、フープ応力σH は、板厚tに逆比例する一方、曲げ応力σbは、板厚tに正比例する。全体の応力σが最小となる板厚(最適板厚)tmin は、dσ/dt=0として、【数6】

・・・(式9)
となる。そこで、例えば誤差範囲をプラスマイナス10パーセント(%)として、この誤差範囲内に収めるように板厚tmin を設定すれば良い。すなわち、半径rに対する最適板厚tmin に対して、ここでは±10パーセント(%)の誤差範囲内であれば、所期の目的が達成可能である。よって、応力が最小となる板厚tmin は、【数7】

・・・(式10)
で表される。ここで、誤差範囲を10パーセント以内としたのは、半径rに対する板厚の選定に余裕をもたせること、またこの程度にすれば最小応力の増大は3パーセント(%)程度で済むことによる。
【0014】上述したように、キャノピーシール部3の最大曲げ応力σb は、上述したとおり、 σb =2×t×δ×E/(π×r2 ) ・・・(式7)
である。この曲げ応力σb は、付根7(図3参照)に生じる。すなわち、付根7近傍の肉厚を若干厚くすれば、その内側が最大応力となる。また、上述したように、内圧pによるフープ応力σH が全域に作用し、このフープ応力σH は、 σH =p×r/t ・・・(式2)
である。したがって、全体の応力σは、【数8】

・・・(式11)
のときに最小となる。また、この時の最小応力σmin は、【数9】

・・・(式12)
となる。すなわち、 δ/r=π×σmin2/(2×E×p) ・・・(式13)
となる。よって、溶接継手部6の横収縮量δに対して半径rを大きくしていけば、最小応力σmin を降伏応力σ0.2 より十分小さく設定することが可能である。ここで、降伏応力σ0.2 は、はっきりした降伏値を示さない金属材料においても用いることのできるいわゆる0.2%耐力のことであり、もとの長さの0.2パーセント(%)の永久伸びを生ずる時の応力値を示す。
【0015】次に、第2の実施形態について図5を用いて説明する。本実施形態では、図5に示すように、接合面に対して接合面上の方向に長いだ円形又はそれに相当する断面形状(a<b)にすることにより、溶接継手部9の横収縮によって生じる曲げ応力σb を小さくし、内圧によるフープ応力σH と合わせた応力σを小さくした構造を採用している。なお、接合面上の長さbは、長さaと直交している。ここで、接合面は、図5のA−Bを指す。この曲げ応力σb は、板厚tが小さいと小さくなり、長さa、bが大きいと小さくなる。一方、内圧によるフープ応力σH は、長さa、bが大きいと大きくなり、板厚tが小さいと大きくなる。したがって、板厚tと長さa、bを適切に選ぶことにより、全体の応力σは最小にできる。
【0016】接合面上の長さbが、それと直交する方向の長さaに比べて大きくとると、溶接継手部9の横収縮変形に対してコンプライアンスcを大きくできるので、付根8の曲げ応力σb を小さくすることができる。一方、内圧によるフープ応力σH は、断面形状が円形からずれてくるので、膜応力σHmだけでなく、付加曲げ応力σHbも生じるが、通常曲げ応力σb が大きいので、全体の応力σ(=σb +σHm+σHb)を最小にするためにb>aとすると、その効果は大きい。なお、図5に示すように、円筒構造1及び円筒構造2の各付根8の位置は、同一である。
【0017】次に、第3の実施形態について図6を用いて説明する。本実施形態では、図6に示すように、接合面に対して直交する方向に波形構造として溶接し、溶接継手部11の横収縮によって生じる曲げ応力σb を小さくし、内圧によるフープ応力σH と合わせた応力σを小さくした構造を採用している。すなわち、接合面に対して直交する方向に、波形構造A−B−Cにすることにより、この方向のコンプライアンスcを大きくし、また、C−Dの曲げコンプライアンスcも加えることによって、溶接継手部11の横収縮量δを楽に吸収できる構造にしている。
【0018】接合面に対して直交する方向に波形構造A−B−Cにすることにより、この方向のコンプライアンスcを大きくし、また、C−Dの曲げコンプライアンスcも加えることによって、溶接継手部11の横収縮量δを楽に吸収し、曲げ応力σbを小さくすることができる。一方、内圧によるフープ応力σH も生じるが、一番大きい値となる曲げ応力σb を小さくすることができるので、全体応力σ(=σb +σH )を小さく抑えることができる。曲げ応力σb は、板厚tを小さくすると小さくなり、フープ応力σH は、板厚tを小さくすると大きくなる。したがって、最適な板厚tを選ぶことができる。また、全体の応力σも、第1の実施形態と同様、溶接継手部の横収縮量δに対して半径r、寸法L(図6参照)を大きくとれば、降伏応力に対して十分に小さく設定することができる。なお、本実施形態では、1つの谷を有する波形としたものを例示したが、2つ以上の谷を有するものでも良い。また、溶接接合個所は、山、谷のいずれでも良いが、加工性の面からは、本実施形態のように構成するのが好ましい。
【0019】
【発明の効果】本発明は、溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、その断面形状が半径rの円形又はその一部の形であり、上記溶接継手の横収縮量がδで、ヤング率がEである場合に、内圧がpであるとき、上記板厚tが【数10】

であるので、応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことができ、耐久性を向上させることができる。
【0020】また、上記溶接継手の横収縮量δと半径rとの比は、降伏応力がσ0.2 であるとき、【数11】

であるように形成すると、さらに応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことができ、耐久性をより一層向上させることができる。
【0021】本発明は、溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、その断面形状が幅寸法よりも高さ寸法の方が長い略長円形であるので、応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことができ、耐久性を向上させることができる。
【0022】本発明は、溶接継手で接合した板厚tのシール構造において、上記溶接継手の溶接線に直交する方向の断面形状が波形であるので、応力腐食割れ感受性を小さく又はなくすことができ、耐久性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年10月9日(1998.10.9)
【代理人】 【識別番号】100060069
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚男 (外2名)
【公開番号】 特開2000−120873(P2000−120873A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−287177