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【発明の名称】 カーボン製ピストンリング
【発明者】 【氏名】和田 稔

【氏名】太田 幸次郎

【要約】 【課題】固着現象がない優れた摺動特性を有するカーボン製ピストンリングを提供する。

【解決手段】開気孔率が15%以下のカーボン基材に樹脂を含浸させてなるカーボン材からなるカーボン製ピストンリング。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開気孔率が15%以下のカーボン基材に樹脂を含浸させてなるカーボン材からなるカーボン製ピストンリング。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーボン製ピストンリングに関し、さらに詳しくはアルミ製シリンダーパイプとカーボン製ピストンリングを備えた引戸クローザ用エアー式制動装置に好適なカーボン製ピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】上吊り式引戸をばね等の力で自動的に閉める引戸クローザの場合、扉をソフトに閉めるためにエアー式の制動装置が設けられている。一般にこのエアー式制動装置は、アルミ製シリンダーパイプ中をカーボン製ピストンリングを付けたパイプが摺動し、アルミ製シリンダーパイプ中の空気を圧縮することにより制動力を発生させている。ところが、長期間使用せずに放置されると、一部のカーボン製ピストンリングとアルミ製シリンダーが固着し動作しなくなるという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、固着現象がない優れた摺動特性を有するカーボン製ピストンリングを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の現状に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、湿度の多いところではカーボン製ピストンリングとアルミ製シリンダーの内面で結露した水滴によって電池作用による腐食が発生する場合があり、この腐食が進展するとカーボン製ピストンリングとアルミ製シリンダが固着し動作しなくなることを見いだし、さらに開気孔率が15%以下のカーボン基材に樹脂を含浸させてなるカーボン材からなるカーボン製ピストンリングを用いるとアルミ製シリンダが固着しなくなることを見いだした。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は開気孔率が15%以下のカーボン基材に樹脂を含浸させてなるカーボン材からなるカーボン製ピストンリングに関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明に用いるカーボン基材としては、一般的なカーボン摺動材として軸受けやシールなどに用いられるものが好ましい。すなわち、コークス粉、黒鉛粉、カーボンブラックなどの骨材にコールタール、タールピッチなどの結合材を加え、加熱混練・粉砕・成形・焼成したカーボン基材を用いることができる。骨材と結合材の使用割合に特に制限はないが、結合材は骨材100重量部に対して、60〜120重量部使用することが好ましい。
【0007】ただし、本発明に用いるカーボン基材の開気孔率は15%以下であることが必要で、13%以下であることが好ましい。開気孔率が15%よりも多いカーボン基材では、1回の樹脂含浸で気孔を塞ぐことが困難となる。また、開気孔率が15%よりも大きくなると気孔径も大きくなり、樹脂含浸後の硬化時に樹脂が収縮してしまうと、気孔が残ってしまう。このため、水分が気孔に侵入し、腐食物質が形成されシリンダー固着が起こる。
【0008】本発明に用いられるカーボン基材を製造するにあたり、加熱混練は一般に双腕型ニーダーなどを用いて、骨材、結合材等の各材料を好ましくは180〜300℃で加熱混練することにより行うことができる。
【0009】粉砕は加熱混練で得られたものを各種粉砕機を用いて、好ましくは平均粒径10〜30μmになるように粉砕することにより行われる。成形は、粉砕により得られた粉体を、金型などに詰め、油圧プレスなどにより、好ましくは800〜1200kg/cm2の圧力でブロック形状にすることにより行われる。焼成は、還元雰囲気下で好ましくは800〜1200℃に昇温することにより行われる。ここで、昇温時間は、300〜500時間が好ましい。還元雰囲気下で昇温する方法としては、成形体のまわりに炭素粉を詰める方法などがある。
【0010】カーボン基材の開気孔率を15%以下とするのは結合材の配合量を適宜調節することにより行われる。
【0011】このようにして得られたカーボン基材に樹脂を含浸するが、樹脂の含浸量は、カーボン基材に対して3重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。上限は特にないが、カーボン基材の構造上、一般に20重量%以下となる。
【0012】樹脂の種類は特に制限はなく、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、キシレン樹脂、ポリカルボジイミド樹脂等を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂等を挙げることができる。また、これら樹脂の混合物を用いることもできる。好ましい樹脂としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】熱硬化性樹脂の種類に応じて、硬化剤が用いられる。硬化剤としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフロロ酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。硬化剤を用いる場合は、熱硬化性樹脂に応じて0.001〜20重量%使用することが好ましい。
【0014】カーボン基材への樹脂の含浸方法に特に制限はなく、圧力容器中にカーボン基材と樹脂を入れて加圧し含浸する方法や、カーボン基材に刷毛等を用いて樹脂を塗布し含浸させる方法を用いることができる。
【0015】樹脂は溶液状態で含浸するので、樹脂が液状でない場合や粘度が高い場合は、溶媒に溶解して含浸に使用される。溶媒に特に制限はなく、メタノール等のアルコール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒などを使用することができる。溶媒の使用量に特に制限はなく、例えば、固形分換算で5〜95重量%の範囲で調整することが可能である。
【0016】樹脂を含浸させるカーボン基材の形状に特に制限はなく、成形によって得られたカーボンブラックのままでもよいが、十分な含浸をさせるためには、ピストンリングとして必要な外径を有する丸棒状、リング状、ピストンリングそのものの形状などに機械加工した状態で含浸させることが好ましい。
【0017】なお、樹脂を塗布して含浸させる場合は、ピストンリングの全表面に塗布することが好ましい。
【0018】本発明におけるピストンリングの形状に特に制限はないが、一般に円形のリング形状、円筒状等の形状を有する。
【0019】大きさも特に制限はなく、例えば、引戸クローザ等のエアー式制動装置に用いられる場合、外径10〜50mm、長さ10〜50mm、肉厚1〜5mmの円筒状のものが挙げられる。
【0020】図1に、本発明のカーボン製ピストンリングを装着した引戸クローザのエアー式制動装置のシリンダの一例の部分断面図を示す。図1において、ピストンリング1は、Oリング2及びストップワッシャー3により、内側のアルミパイプ4に固定され、外側のアルミパイプ5との間で摺動する。本発明のカーボン製のピストンリングを用いれば、ピストンリング1とアルミパイプ5が固着することなく、良好な摺動状態を持続することが可能である。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】実施例1平均粒径15μmのピッチコークス粉40重量部と平均粒径12μmの自家製黒鉛粉末60重量部に対して、タールピッチを60重量部、80重量部、100重量部及び140重量部の4通りの配合で加えて、双腕型ニーダーで180〜200℃にて混練した後放冷した。これら4種類の混練物をそれぞれ粉砕して20μmの成形粉を得た。
【0023】この成形粉を油圧プレスにて成形圧力1トン/cm2で成形し得られた成形品を還元雰囲気下1000℃に450時間で昇温し焼成を行い、表1の特性のカーボン基材を得た。
【0024】なお、曲げ強さは、厚さ10mm、幅10mm、長さ50mmの直方体の試験片についてJCAS(炭素協会規格)−10−1968に準拠して測定し、硬さはショア硬度計で測定した。
【0025】開気孔率は、大気中と水中での重量より求めた見掛けの体積と、減圧雰囲気中でカーボン基材の気孔内を水で置換した際の水中重量より求めた真の体積から、次式のようにして求めた。
【0026】
【数1】

次に、このカーボン基材を機械加工して外径30mmの丸棒を6本得た。このうちの5本については、バルブのついた圧力容器に入れ、容器内を減圧状態にした後、バルブをあけて、フェノール樹脂(住友デュレズ社製スミライトレジンPR50273)を目的とする樹脂含浸量に従ってメタノールで希釈した含浸液(メタノール量が10重量%)を圧力容器内へ注入し、樹脂を含浸させた。その後、250℃に15時間で昇温して硬化させ、表1に示す樹脂含浸量のカーボン材を得た。
【0027】
【表1】

表1の試料の一部を内径24mm、長さ25mmに加工し、各3ヶのカーボン製ピストンリングに製作し、アルミ製シリンダー内にセットしたものを湿度80%で温度40℃と15℃の繰り返しを100回行い固着状態を調べた。その結果、試料2から試料4は固着は見られず良好な摺動性を示し、実用上極めて有用なものである。なお、試料1はカーボン基材の開気孔率が15%を超えるものを用いた、試料5は試料3の樹脂含浸しないものを用いた場合である。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、アルミ製シリンダとの固着現象がない優れた摺動特性を有するカーボン製ピストンリングを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成工業株式会社
【出願日】 平成10年10月9日(1998.10.9)
【代理人】 【識別番号】100086494
【弁理士】
【氏名又は名称】穂高 哲夫
【公開番号】 特開2000−120871(P2000−120871A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−287712