| 【発明の名称】 |
ピストンリング |
| 【発明者】 |
【氏名】一杉英司
【氏名】金光圭一
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| 【要約】 |
【課題】常温時においても全周当り抜けが無く、熱負荷時においても合口部の面圧上昇が生じないピストンリングの提供。
【解決手段】ピストンリング1は、略円形状をなし、図示せぬシリンダに対し摺動する外周面3と、図示せぬピストンに対向する内周面4と、略円形状を半径方向に分断する1つの合口部2とを備える。内周面4側において、合口部2の端面を始端とする所定の周長部分に亘り、内周面4の一部をなす切欠部4aが形成されており、所定周長部分における半径方向の厚さが、所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さa1に比較して小さくなっている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】略円形状をなし、シリンダに対し摺動する外周面と、ピストンに対向する内周面と、該略円形状を半径方向に分断する1つの合口部とを備えるピストンリングであって、該内周面側において、該合口部の端面を始端とする所定の周長部分に亘り、該内周面の一部をなす切欠部が形成されており、該所定周長部分における半径方向の厚さが、該所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さに比較して小さくなっていることを特徴とするピストンリング。 【請求項2】該切欠部は、第1面と第2面とを有し、該第1面は、該合口部端面と接し、平面又は該外周面と中心軸を同じくする略円弧面をなし、該外周面と該第1面との間で規定される半径方向の厚さは、該所定周長部分以外の部分における半径方向の厚さの0.7倍乃至0.8倍であり、該外周面の中心軸で規定される中心角15°乃至20°の範囲に亘って形成され、該第2面は、該第1面が該合口部端面と接する部分と反対側端にて該第1面に接する任意の曲面をなしていることを特徴とする請求項1記載のピストンリング。 【請求項3】該切欠部は該合口部端面に向かって徐々に該外周面に近づく平面状をなし、該合口部端面における半径方向厚さが、該所定周長部分以外の部分における半径方向の厚さの0.5倍乃至0.6倍であり、該所定周長部分は該外周面の中心軸で規定される中心角20°乃至30°の範囲に亘り形成されていることを特徴とする請求項1記載のピストンリング。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明はピストンリングに関し、特にローポイントピストンリングに関する。 【0002】 【従来の技術】ピストンリングはその面圧分布により、合口部近傍の面圧が他の部分と比較して高いハイポイントピストンリングと、合口部近傍の面圧が他の部分と比較して低いローポイントピストンリングの2つに大別される。両者はその使用環境、用途によって使い分けられるが、合口部近傍の摩耗が激しい高出力ディーゼル機関等においてはローポイントピストンリングを用いる傾向がある。従来は、ピストンリングのシリンダボアに対する接触面圧分布が自由時の周方向形状によって変化する性質を利用して、均一断面形状で、周方向形状を変化させることにより、所望の面圧分布を呈するピストンリングが製造されていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、機関運転時には以下のようにピストンリングが熱変形するため、ピストンリングとシリンダとの接触状態が常温時と比較して変化し、これによって面圧分布も大きく変化する。この変化により、機関実動時のピストンリングの面圧分布は、合口端部の面圧が上昇し、ローポイントピストンリングであってもハイポイントピストンリングと同様の面圧分布に移行する傾向を持つ。 【0004】まず、シリンダとピストンリングとの温度差による熱膨張差から、見かけ上シリンダ径よりもピストンリング径の方が大きくなる変形を生じる。又、シリンダとピストンとの温度差によってピストンリング外内周温度差が生じ(全負荷時で60℃乃至70℃)、内周面と外周面との熱膨張差から、曲率が小さくなる変形を生じる。これらの作用によって見かけ上ボア径より大きい呼び径のピストンリングが挿入された場合と同様の効果を生じる。即ち、合口端部の面圧が上昇し、合口端部の脇の部位でシリンダボアとは接しなくなるいわゆる当り抜けが生じやすくなる。 【0005】更に、ブローバイガスの吹き抜けによる加熱から合口部付近は他の部分より温度上昇し(約30℃乃至50℃)、合口部付近が他の部分に比較して大きく熱膨張し、曲率が小さくなる変形を生じる。この作用によって合口端部の面圧が極端に大きくなるような面圧分布となる。又、この作用が極端に強いと合口端部の脇の部位で当り抜けが生じる。 【0006】又、上記のような熱負荷によるピストンリング全体の膨張やピストンリング内外周側温度差から生じる熱応力等によって、周方向形状が大きく変化するため、シリンダボアとの接触状態が変化し、特に合口部では温度が上昇するほど面圧が上昇する。従って、潤滑的にきわめて厳しい条件で機関運転が行われた場合などには、合口部は特に極端な摩耗状態を示し、時にはピストンリング外周面に形成されたPVD被膜のクラック、剥離等の障害を発生させる。 【0007】一方、熱負荷時の面圧を考慮して冷間時に合口部が極端に低面圧となるよう設計すると、製造上合口部の当り抜けが生じやすい(不良率が高い)。このため、量産に適さない。又、高負荷運転時に等圧面分布となるよう、合口部を意図的に非接触とし、熱負荷作用時に接触するように考慮されたピストンリングもあるが、始動時やアイドリング時のオイル上がりが問題となり、製造上の管理も困難であり、これも量産に適さない。更に、これらのピストンリングでは、合口部の当り抜けにより、燃焼ガスが圧力リングでシールされずクランクケースへ逃げるといういわゆるブローバイが生じ、潤滑油の劣化や、生ガスの排出による公害等の問題が生じていた。 【0008】従って、従来のような周方向形状を調整しただけのローポイントピストンリングでは、当り抜けが生じないよう考慮して設計すれば摩耗対策には十分ではなく、合口端部の面圧上昇を抑制しようとすると当り抜けを生じてしまっていた。特に機関運転によって顕著な摩耗を生じるピストンリング合口部付近の設計は非常に困難であった。 【0009】そこで本発明は、常温時においても全周当り抜けが無く、熱負荷時においても合口部の面圧上昇が生じないピストンリングを提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、略円形状をなし、シリンダに対し摺動する外周面と、ピストンに対向する内周面と、該略円形状を半径方向に分断する1つの合口部とを備えるピストンリングであって、該内周面側において、該合口部の端面を始端とする所定の周長部分に亘り、該内周面の一部をなす切欠部が形成されており、該所定周長部分における半径方向の厚さが、該所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さに比較して小さくなっているピストンリングを提供している。 【0011】ここで、該切欠部は、第1面と第2面とを有し、該第1面は、該合口部端面と接し、平面又は該外周面と中心軸を同じくする略円弧面をなし、該外周面と該第1面との間で規定される半径方向の厚さは、該所定周長部分以外の部分における半径方向の厚さの0.7倍乃至0.8倍であり、該外周面の中心軸で規定される中心角15°乃至20°(好ましい角度は約15°である)の範囲に亘って形成され、該第2面は、該第1面が該合口部端面と接する部分と反対側端にて該第1面に接する任意の曲面をなしているのが好ましい。 【0012】又、該切欠部は該合口部端面に向かって徐々に該外周面に近づく平面状をなし、該合口部端面における半径方向厚さが、該所定周長部分以外の部分における半径方向の厚さの0.5倍乃至0.6倍であり、該所定周長部分は該外周面の中心軸で規定される中心角20°乃至30°(好ましい角度は約20°である)の範囲に亘り形成されていてもよい。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態によるピストンリングについて図1に基づき説明する。 【0014】図1に示すピストンリング1は、スチール製の略円形状をなし、図示せぬシリンダに対し摺動する外周面3と、図示せぬピストンに対向する内周面4と、略円形状を半径方向に分断する1つの合口部2とを有する。 【0015】外周面3と内周面4との距離(ピストンリング半径方向の厚さ寸法)がa1であるが、内周面4側において、合口部2の端面を始端とする所定の周長部分に亘り、内周面4の一部をなす切欠部4a、A−B−Cが形成されており、該所定周長部分における半径方向の厚さが、所定周長部分以外の部分の半径方向の厚さに比較して小さく形成されている。 【0016】具体的には、切欠部4aは、第1面A−Bと第2面B−Cとを有する。第1面A−Bは、合口部2の端面と接し、外周面3と中心軸を同じくする略円弧面をなし、外周面3と該第1面との間で規定される半径方向の厚さは、所定周長部分以外の部分における半径方向の厚さa1の0.7倍乃至0.8倍である。ここで、厚さが0.7倍未満では合口端部の面圧が機関運転時に低下しすぎるので、潤滑油消費量に対して問題となる。又、リング下面部のガスシール性が低下する。一方、厚さが0.8倍を越えると、曲げ剛性低減が十分でなく、機関運転時に面圧上昇が発生する。第1面A−B形成部分の厚さ寸法をピストンリング1全体の厚さ寸法より20%乃至30%減少させることにより、断面2次モーメントを約1/2とすることができ、半径方向曲げ剛性も約1/2となる。半径方向曲げ剛性を約1/2に減少させることによって合口端部の面圧が均一断面形状のピストンリングの約1/2となり、機関運転時には局所的摩耗、PVD皮膜のクラック、剥離等に対して優位となる。 【0017】又、第1面A−Bは、外周面3の中心軸Oで規定される中心角15°乃至20°(本実施の形態では15°)の範囲に亘って形成されている。ここで、中心角が15°未満では半径方向曲げ剛性低減幅が十分でなく、機関運転時に面圧上昇が発生する。一方、中心角が20°を越えると、合口端部の面圧が機関運転時に低下しすぎるので、潤滑油消費量に対し問題となる。 【0018】第2面B−Cは、第1面A−Bが合口部2の端面と接する部分とは反対側の端にて第1面A−Bに接する任意の曲面である。 【0019】又、図面には示さないが、図に示された合口面に対向するもう一方の合口面からも、同様の切欠部4aが形成される。 【0020】本発明の第2の実施の形態によるピストンリングについて図2に基づき説明する。 【0021】図2に示すピストンリング10は、第1の実施形態のピストンリング1とは切欠部14aの形状が異なる。切欠部14aは合口部12の端面に向かって徐々に外周面13に近づく平面A’−B’をなしている。即ち、B’におけるリング半径方向の厚さはa1であるが、合口部12の端面上に存在するA’に向かってリング半径方向の厚さが徐々に減少し、A’では0.5乃至0.6a1となる。又、平面A’−B’は、外周面13の中心軸O’で規定される中心角20°乃至30°(本実施の形態では20°)の範囲に亘り形成されている。ここで、中心角が20°未満では半径方向曲げ剛性低減幅が十分でなく、機関運転時に面圧上昇が発生する。一方、中心角が30°を越えると、合口端部の面圧が機関運転時に低下しすぎるので潤滑油消費量に対し問題となる。 【0022】このピストンリング10も、第1の実施の形態のピストンリング1と同様に、曲げ剛性を約1/2に減少させることができ、合口端部の面圧が均一断面形状のピストンリングの約1/2となることから、機関運転時には局所的摩耗、PVD皮膜のクラック、剥離等に対して優位となる。 【0023】尚、図面には示さないが、図に示された合口面に対向するもう一方の合口面からも、同様の切欠部14aが形成される。 【0024】図3に示す面圧分布測定装置によって本発明の第1の実施の形態によるピストンリングの面圧分布と従来例のピストンリングの面圧分布とを測定し、比較した。尚、測定に際しては、軸方向厚さ及び外周面形状、半径方向厚さa1が同一のものを用いた。 【0025】図3に示すように、シリンダ101の一部を切欠いて、シリンダ101の切欠部101a(最薄部)に歪みゲージ102を貼り、本発明のピストンリング1又は従来例のピストンリングの接触加重による歪みを面圧として測定した。ピストンリングを保持するピストン103の上下にヒーター104を取り付けてピストンリングを加熱する一方で、シリンダ101の外周には冷却水を流してシリンダ101の冷却を行い、ピストン103からシリンダ101まで実機運転時に近い温度勾配を分布させた。 【0026】図4は、縦軸が面圧、横軸が合口部からの周方向角度を示す。図4から明らかなように、従来例のような一様な断面形状のピストンリングでは冷間時には合口部が低面圧でも、熱負荷の作用が働くと合口端部付近の面圧が急激に上昇した。又、この傾向は、温度を上げると更に強まった。 【0027】これに対して本発明のピストンリング1では、図5から明らかなように、冷間時に合口部の面圧は従来例のピストンリングの面圧より低く、曲げ剛性の低下による面圧低減が実現していた。熱負荷を与えた時には面圧上昇が見られたが、従来のピストンリングのような合口端部が極端に突出したような面圧上昇はみられず、等面圧的な分布となった。又、冷間時においても合口端部における面圧は0とはならず、当り抜けが生じないことがわかる。 【0028】尚、本実験においては冷間時における合口部近辺以外の部分の面圧が約1.5kgf/cm2程度のピストンリングを試作し、実験を行ったが、この数値はその用途に応じて様々に設定しうることは言うまでもない。 【0029】本発明によるピストンリングは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、第1の実施の形態における切欠部4aの一部を構成する第1面A−Bは、外周面3と中心軸を同じくする略円弧面をなしているが、上述した厚さの範囲にある限り円弧面に代えて平面としてもよい。又、第2面B−Cは、曲面でなくとも、平面であってもよい。ただし、第2面B−Cは、平面であるよりも曲面である方が製造が容易である。更に、本発明のピストンリングは、スチール製、鋳鉄製、いずれにおいても製造可能で、所望の効果を得ることができる。 【0030】 【発明の効果】本発明のピストンリングによれば、合口端部の高面圧を抑制するために、合口部近傍のピストンリング半径方向の厚さ寸法a1を20%乃至30%程度小さくし、曲げ剛性を約1/2に減少させている。これにより、合口端部の面圧を均一断面形状のピストンリングの約1/2とすることができる。従って、冷間時においても全周当り抜けが無く、熱負荷時においても合口部の面圧上昇が生じない。冷間時においても全周当り抜けがないことから、機関運転初期においても所望のシール性を発揮し、ブローバイを防止することができる。又、熱負荷時においても合口部の面圧上昇が生じないことから、合口部の極端な摩耗を防止すると同時に、特にピストンリング外周面にPVD皮膜を施した場合には、膜のクラック、剥離等の障害を阻止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】390022806 【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年10月19日(1998.10.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100094983 【弁理士】 【氏名又は名称】北澤 一浩 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−120866(P2000−120866A) |
| 【公開日】 |
平成12年4月28日(2000.4.28) |
| 【出願番号】 |
特願平10−296595 |
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