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【発明の名称】 密封装置
【発明者】 【氏名】渡辺 勝

【氏名】真武 哲也

【要約】 【課題】密封装置の嵌め合い部におけるシール性を高める。

【解決手段】密封装置の嵌め合い部は、補強環5と補強環5に接合配置されるゴム状弾性体部6を備える。この補強環5は、軸孔2aに直接的に嵌合する大径部5c(第1の部分)と、大径部5cから径方向曲折部5dを介して軸孔2aから離間し、ゴム状弾性体部6が接合配置される小径部5e(第2の部分)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 環状隙間を形成する2対向面のいずれか一方の面に嵌合固定される嵌め合い部と、この嵌め合い部に支持され他方の面に対して摺動当接するシール部と、を備える密封装置において、前記嵌め合い部は、一方の面に対向する周壁面部を有する補強環と該補強環に接合配置されるゴム状弾性体部を有し、前記補強環の周壁面部は、前記一方の面に直接的に嵌合する第1の部分と、該第1の部分から径方向曲折部を介して前記一方の面から離間した第2の部分とを有し、前記ゴム状弾性体部は、前記第2の部分に一方の面とのしめ代を持たせて接合配置されることを特徴とする密封装置。
【請求項2】 前記補強環の周壁面部の第1の部分は、前記一方の面に対してしめ代を持たせて嵌合されることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】 環状隙間を形成する2対向面のいずれか一方の面に嵌合固定される嵌め合い部と、この嵌め合い部に支持され他方の面に対して摺動当接するシール部と、を備える密封装置において、前記嵌め合い部は、一方の面に対向する周壁面部を有する補強環と該補強環に接合配置されるゴム状弾性体部を有し、前記補強環の周壁面部は、前記一方の面に近接した第1の部分と、該第1の部分から径方向曲折部を介して前記一方の面から離間した第2の部分とを有し、前記ゴム状弾性体部は、前記補強環の第1及び第2の部分に一方の面とのしめ代を持たせて接合配置されることを特徴とする密封装置。
【請求項4】 前記ゴム状弾性体部の補強環の第1の部分及び第2の部分は異なる径方向寸法を有し、嵌合固定された際の2対向面のいずれか一方の面と補強環の間における圧縮率をほぼ等しく設定されることを特徴とする請求項3に記載の密封装置。
【請求項5】 前記補強環の周壁面部における第2の部分は、第1の部分よりも密封流体側に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は密封装置に関し、嵌め合い部のシール性向上を図る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、密封流体(作動油等)が作用する装置の駆動力伝達部等において、図5の断面構成説明図に示されるように、例えばハウジング101の軸孔101a内周面と該軸孔101aに挿通される軸102の外周面102aとの間の環状隙間103からの密封流体の漏れを防止するために密封装置100が備えられている。
【0003】密封装置100は、環状形状を呈しており、外周側の軸方向部105aと軸方向部105aの一端(反密封流体側O)より内側に折れ曲がった径方向部105bを有する断面略L字状の補強環105と、補強環105の周囲を覆うように一体的に形成されたゴム状弾性体からなる嵌め合い部106及びシール部107と、シール部107の密封流体側Mからの圧力を受けた際の変形を防止する樹脂材料によるバックアップリング108を備えている。
【0004】シール部107は、リップ先端部107aの外側に環状凹部107bを備え、リップ先端部107aに緊迫力を与えるためのスプリング環109が嵌めこまれている。
【0005】そして、ハウジング101の軸孔101aに対し嵌め合い部106を嵌合させ、止め部材110の端面110aに補強環105の径方向部105bが突き当たるまで押し込み、固定している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、密封装置100のハウジング101の軸孔101aに対する嵌合は、すべてゴム状弾性体による嵌め合い部106によっているので、図6に示されるように止め部材110の端面110aとの間に隙間G’が大きい場合に、嵌め合い部106の密封流体側Mの端部が受ける圧力(矢印A101)によって嵌め合い部106が変形(矢印A102)して、軸孔101aに対する外周面圧の保持及び上昇を望むことは困難であり、嵌め合い部106のシール性を低下させる虞があった。
【0007】また、長期の使用では、嵌め合い部106の「へたり」等により、シール性は低下するが、外周面圧の上昇が期待できないため、長期間の安定したシール性の維持は困難である。
【0008】また、軸102の偏心動(回転時の軸心ズレ及び往復動時の撓みや揺動)が発生した場合、バックアップリング108及びシール部107を介して偏心動が嵌め合い部106に伝達され、嵌め合い部106のシール性を低下させる虞があった。
【0009】本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、密封装置の嵌め合い部におけるシール性を高めることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明にあっては、環状隙間を形成する2対向面のいずれか一方の面に嵌合固定される嵌め合い部と、この嵌め合い部に支持され他方の面に対して摺動当接するシール部と、を備える密封装置において、前記嵌め合い部は、一方の面に対向する周壁面部を有する補強環と該補強環に接合配置されるゴム状弾性体部を有し、前記補強環の周壁面部は、前記一方の面に直接的に嵌合する第1の部分と、該第1の部分から径方向曲折部を介して前記一方の面から離間した第2の部分とを有し、前記ゴム状弾性体部は、前記第2の部分に一方の面とのしめ代を持たせて接合配置されることを特徴とする。
【0011】これによって、嵌め合い部は一方の面に対し、補強環の第1の部分によって強固に固定されると共に、第2の部分に接合配置されたゴム状弾性体部の変形が抑制され、安定したシール性が得られる。
【0012】ゴム状弾性体部は、密封流体により軸方向の圧力を受けた際に径方向曲折部で圧縮されることにより、一方の面に対する接触面圧が高まり、より一層のシール性を得ることができる。
【0013】また、前記補強環の周壁面部の第1の部分は、前記一方の面に対してしめ代を持たせて嵌合されることも好適である。
【0014】これによると、長期間にわたり密封装置を一方の面に対して確実に固定することが可能となる。
【0015】また、環状隙間を形成する2対向面のいずれか一方の面に嵌合固定される嵌め合い部と、この嵌め合い部に支持され他方の面に対して摺動当接するシール部と、を備える密封装置において、前記嵌め合い部は、一方の面に対向する周壁面部を有する補強環と該補強環に接合配置されるゴム状弾性体部を有し、前記補強環の周壁面部は、前記一方の面に近接した第1の部分と、該第1の部分から径方向曲折部を介して前記一方の面から離間した第2の部分とを有し、前記ゴム状弾性体部は、前記補強環の第1及び第2の部分に一方の面とのしめ代を持たせて接合配置されることを特徴とする。
【0016】この構成によると、一方の面に嵌合固定される嵌め合い部はゴム状弾性体部による接触が行なわれる。また、補強環の第1の部分に配置されたゴム状弾性体部よって強固に固定されると共に、補強環の第2の部分に配置されたゴム状弾性体部は、密封流体により軸方向の圧力を受けた際に径方向曲折部で圧縮されることにより、一方の面に対する接触面圧が高まり、より一層のシール性を得ることができる。
【0017】前記ゴム状弾性体部の補強環の第1の部分及び第2の部分は異なる径方向寸法を有し、嵌合固定された際の2対向面のいずれか一方の面と補強環の間における圧縮率をほぼ等しく設定されることも好適である。
【0018】これにより、嵌め合い部において軸方向に均一な接触面圧を発生することができ、密封装置の取り付け/離脱力を安定させることができる。
【0019】密封装置の外周側を嵌め合い部とした構成では、補強環の第1の部分におけるゴム状弾性体部の径方向寸法を第2の部分のそれよりも小さく設定することで、ゴム状弾性体部の補強環の第1の部分及び第2の部分の圧縮率をほぼ等しく設定することが可能である。
【0020】前記補強環の周壁面部における第2の部分は、第1の部分よりも密封流体側に配置されることを特徴とする。
【0021】これにより、補強環の第2の部分のゴム状弾性体部に密封流体の圧力を加えることができ、第1の部分の側へと変形移動するゴム状弾性体部によって接触面圧を上昇させることができ、シール性が向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1は本発明を適用した第1の実施の形態における密封装置1の構成を説明する図である。密封装置1は、2対向面としてのハウジング2の軸孔2aと軸3の外周面3aの間の環状隙間4をシールするものであり、この実施の形態では軸孔2aに嵌めこまれている。
【0023】密封装置1は、環状形状を呈しており、外周側の周壁面部としての軸方向部5aと軸方向部5aの一端(反密封流体側O)より内側に折れ曲がった径方向部5bを有する断面略L字状の補強環5を備えている。
【0024】そして、補強環5の軸方向部5aは、反密封流体側Oに軸孔2aに嵌合する第1の部分としての大径部5c、大径部5cから径方向曲折部5dを介して軸孔2aから離間した第2の部分としての小径部5eから構成されている。
【0025】補強環5の小径部5eには、ゴム状弾性体部6が一体的に接合配置されており、大径部5cと小径部5eのゴム状弾性体部6が嵌め合い部として機能するような構成となっている。
【0026】大径部5cと小径部5eのゴム状弾性体部6は、軸孔2aに対してしめ代を持たせた寸法に設定されている。
【0027】また密封装置1は、補強環5にゴム状弾性体によるシール部7が一体的に接合配置され、シール部7の密封流体側Mからの圧力を受けた際の変形を防止する樹脂材料によるバックアップリング8を備えている。
【0028】シール部7は、リップ先端部7aの外側に環状凹部7bを備え、リップ先端部7aに緊迫力を与えるためのスプリング環9が嵌めこまれている。
【0029】そして、ハウジング2の軸孔2aに対し嵌め合い部である大径部5cと小径部5eのゴム状弾性体部6を嵌合させ、止め部材10の端面10aに補強環5の径方向部5bが突き当たるまで押し込み、嵌合固定している。
【0030】このような構成の密封装置1によると、嵌め合い部はハウジング2の軸孔2aに対し、補強環5の大径部5cによって強固に固定されると共に、小径部5eのゴム状弾性体部6の変形が抑制され、安定したシール性が得られる。
【0031】ゴム状弾性体部6は、図2のように密封流体側Mから矢印A1のような圧力(主として軸方向に作用する)を受けた際に、ゴム状弾性体部6の反密封流体側Oの端部が径方向曲折部5dで圧縮されることにより(矢印A2)、軸孔2aに対する接触面圧が高まり、従って、圧力を受けた際に密封装置1の嵌め合い部におけるシール性をより一層向上させることができる。
【0032】また、この軸孔2aに対する接触面圧を高める効果は、長期使用の後にゴム状弾性体部6の「へたり」等によるしめ代の低下した場合においても期待することが可能であり、長期間にわたり安定したシール性を維持することができる。
【0033】また、軸3の偏心による振動や衝撃等がシール部7及び密封装置1全体に作用しても、補強環5の大径部5cによって軸孔2aに対し強固に固定されているので、ゴム状弾性体部6の変形が抑制され、外乱のある使用条件の下でも安定したシール性が得られる。
【0034】また、補強環5の大径部5cの軸孔2aに対するしめ代により、長期間にわたり密封装置を確実に固定することが可能となる。
【0035】(実施の形態2)図3は本発明を適用した第2の実施の形態における密封装置21の構成を説明する図である。密封装置21は、第1の実施の形態の密封装置1と同様に2対向面としてのハウジング2の軸孔2aと軸3の外周面3aの間の環状隙間4をシールするものであり、この実施の形態では軸孔2aに嵌めこまれている。
【0036】密封装置21は、環状形状を呈しており、外周側の周壁面部としての軸方向部5aと軸方向部5aの一端(反密封流体側O)より内側に折れ曲がった径方向部5bを有する断面略L字状の補強環5を備えている。
【0037】そして、補強環5の軸方向部5aは、反密封流体側Oに軸孔2aに嵌合する第1の部分としての大径部5c、大径部5cから径方向曲折部5dを介して軸孔2aから離間した第2の部分としての小径部5eから構成されている。
【0038】補強環5の軸方向部5aには、大径部5cの外側にゴム状弾性体部6a及び小径部5eの外側にゴム状弾性体部6bが一体的に接合配置されており、ゴム状弾性体部6a,6bがハウジング2の軸孔2aに嵌合固定される嵌め合い部として機能するような構成となっている。
【0039】また、ゴム状弾性体部6a,6bは、軸孔2aに対してしめ代を持たせた寸法に設定されている。
【0040】また密封装置21は、補強環5にゴム状弾性体によるシール部7が一体的に接合配置されると共に、シール部7の密封流体側Mからの圧力を受けた際の変形を防止する樹脂材料によるバックアップリング8を備えている。
【0041】シール部7は、リップ先端部7aの外側に環状凹部7bを備え、リップ先端部7aに緊迫力を与えるためのスプリング環9が嵌めこまれている。
【0042】そして、ハウジング2の軸孔2aに対しゴム状弾性体部6a,6bを嵌合させ、止め部材10の端面10aに補強環5の径方向部5bが突き当たるまで押し込み、嵌合固定している。
【0043】このような構成の密封装置1によると、嵌め合い部はハウジング2の軸孔2aに対し、ゴム状弾性体部による接触が行なわれるので、軸孔2aの損傷を防止することができる。
【0044】補強環の大径部5cに配置されたゴム状弾性体部6aは、大径部5cの外側で径方向の厚みが少ないので、軸孔2aに対して変形が抑えられ、強固に固定される。
【0045】補強環5の小径部5eに配置されたゴム状弾性体部6bは、密封流体により軸方向の圧力を受けた際に大気側Oへ移動して径方向曲折部5d及び大径部5cで圧縮されることにより、軸孔2aに対する接触面圧が高まり、より一層のシール性を得ることができる。
【0046】また、この軸孔2aに対する接触面圧を高める効果は、長期使用の後にゴム状弾性体部6a,6bの「へたり」等によるしめ代の低下した場合においても期待することが可能であり、長期間にわたり安定したシール性を維持することができる。
【0047】(実施の形態3)図4(a),(b)は本発明を適用した第3の実施の形態における密封装置31の構成を説明する図である。
【0048】密封装置31において、第2の実施の形態の密封装置21と同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0049】この実施の形態において、特徴的な構成としては、ゴム状弾性体部6a’,6bが軸孔2aに嵌合した際の接触面圧をほぼ等しくするために、ゴム状弾性体部6a’の外径寸法をゴム状弾性体部6bの外径寸法よりも小さく設定している。第2及び第3の実施の形態では、嵌め合い部の軸方向全領域にわたりゴム状弾性体部を備えることにより、従来技術と同様の密封装置の嵌合/離脱力を得ることが可能であるが、第2の実施の形態のように、ゴム状弾性体部の外径寸法を軸方向で同じに設定すると、大径部5cに対応するゴム状弾性体部6aのゴム圧縮率が高まり、嵌合挿入抵抗の増加やムシレ発生の懸念があるので、第3の実施の形態ではゴム状弾性体部6a’の外径寸法を若干小さく設定してある。
【0050】このような構成により、嵌め合い部の接触面圧形状を図4(a)に示されたものとすることが可能となる。すなわち、密封流体によるゴム状弾性体部に対する加圧力がない場合には、点線で示されるような接触面圧形状が得られ、密封流体による加圧力が加わった場合には、実線で示されるような接触面圧形状が得られる。
【0051】その他の作用・効果は第2の実施の形態と同じである。
【0052】
【発明の効果】上記に説明されたように、本発明を適用した密封装置によると、密封装置の嵌め合い部におけるシール性を高めることができる。
【0053】即ち、嵌め合い部は一方の面に対し、補強環の第1の部分によって強固に固定されると共に、第2の部分に接合配置されたゴム状弾性体部の変形が抑制され、安定したシール性が得られる。
【0054】ゴム状弾性体部は、軸方向の圧力を受けた際に径方向曲折部で圧縮されることにより、一方の面に対する接触面圧が高まり、より一層のシール性を得ることができる。
【0055】補強環の周壁面部の第1の部分のしめ代により、長期間にわたり密封装置を一方の面に対して確実に固定することが可能となる。
【0056】補強環の第1の部分と第2の部分にゴム状弾性体部を配置したものでは、一方の面に嵌合固定される嵌め合い部はゴム状弾性体部による接触が行なわれる。また、補強環の第1の部分に配置されたゴム状弾性体部よって強固に固定されると共に、補強環の第2の部分に配置されたゴム状弾性体部は、密封流体により軸方向の圧力を受けた際に径方向曲折部で圧縮されることにより、一方の面に対する接触面圧が高まり、より一層のシール性を得ることができる。
【0057】ゴム状弾性体部の補強環の第1の部分及び第2の部分は異なる径方向寸法を有し、嵌合固定された際の2対向面のいずれか一方の面と補強環の間における圧縮率をほぼ等しく設定することにより、嵌め合い部において軸方向に均一な接触面圧を発生することができ、密封装置の取り付け/離脱力を安定させることができる。
【0058】補強環の周壁面部における第2の部分は、第1の部分よりも密封流体側に配置されることにより、補強環の第2の部分のゴム状弾性体部に密封流体の圧力を加えることができ、第1の部分の側へと変形移動するゴム状弾性体部によって接触面圧を上昇させることができ、シール性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000004385
【氏名又は名称】エヌオーケー株式会社
【出願日】 平成10年9月9日(1998.9.9)
【代理人】 【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信 (外1名)
【公開番号】 特開2000−88110(P2000−88110A)
【公開日】 平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願番号】 特願平10−272577