| 【発明の名称】 |
シールリングの製造方法及びシールリング |
| 【発明者】 |
【氏名】田辺 靖章
|
| 【要約】 |
【課題】形状復帰特性の高いシールリングの製造方法を明らかにして組立作業性の向上及びシール性の向上を図る。
【解決手段】目指すべき仕様の外径寸法Lより小さい外径寸法L1の円筒状の素材S1を、螺旋状に切削してコイル状の素材S2とし、コイル状の素材S2の内径側にシャフト3を挿入して目指すべき仕様の外径寸法Lとし、シャフト3が挿入されたコイル状の素材S2の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法の円筒状の素材を、前記目指すべき仕様の幅寸法に対応したピッチで螺旋状に切削してコイル状とし、上記コイル状の素材の外径寸法が前記目指すべき仕様の外径寸法となるように拡径し、上記拡径されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断し、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法となるシールリングを得るシールリングの製造方法。 【請求項2】 目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法の円筒状の素材を、前記目指すべき仕様の幅寸法に対応したピッチで螺旋状に切削してコイル状とし、上記コイル状の素材の外径寸法が前記目指すべき仕様の外径寸法となるように、該コイル状の素材の内径側にシャフトを挿入し、上記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断し、上記コイル状の素材の内径側に挿入されたシャフトを抜くことにより、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法となるシールリングを得るシールリングの製造方法。 【請求項3】 前記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断する際に、該素材の全長にわたり軸方向に切断することを特徴とする請求項2に記載のシールリングの製造方法。 【請求項4】 前記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断する際に、軸方向または軸心からの放射方向に対する傾斜面で切断することを特徴とする請求項2に記載のシールリングの製造方法。 【請求項5】 前記円筒状の素材は、四フッ化エチレン樹脂をベースポリマーとした樹脂であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシールリングの製造方法。 【請求項6】 前記請求項1乃至5のいずれか1項のシールリングの製造方法により製造され、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法となるシールリング。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、拡径された後に軸の外周環状溝等に装着されるシールリングの製造方法及びシールリングに関し、装着時の拡張に対する戻り性を向上させる技術に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、油圧や空気圧によりシステムを作動させる様々な産業機器(例えばシリンダアクチュエータ等が該当する)において、高圧力の流体に対する密封性を向上するために、シリンダ内部で往復移動するピストンの周囲に嵌合するシールリングが多用されている。 【0003】特に、樹脂材料によるシールリングは、ゴム状の弾性材料のものに比べて、材料の特性上からもたらされる優れた特性を備えており、すなわち一例としては、形状が安定していることから耐圧特性を高めることが可能である、また温度特性により広い温度範囲で使用することが可能である、また低摩擦係数により摺動抵抗を低減することが可能である、等の優れた点があげられる。 【0004】また一方、合成樹脂材料は弾性材料と比べて弾性比例限界が低く、応力を加えるとある一定の限度で変形してしまい、力を除いても元の形状に戻らない形状変形(歪み)を発生させてしまう場合がある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】このような樹脂材料のシールリングを相手部品(主に軸に溝が設けられている場合が多い)に装着する場合に、例えば図3で示されるように、切れ目がない環状のシールリング103を軸101の摺動外周面101aに設けられた外周環状溝101bに嵌め込む場合に、シールリング103の内径寸法が、序々に外径寸法が大きくなる斜面を備えた治具104により、一旦少なくとも軸101の摺動外周面101aまで拡径された後に外周環状溝101bに嵌め込まれる。 【0006】従って、このように外周環状溝101bに嵌着されたシールリング103aは合成樹脂材料であることから比例限界を超えて拡径した場合に、ゴム状弾性材料のように完全に元の形状には復帰せず拡径した状態のままとなり、軸101とその相手側部材であるハウジング102を組み立てる際に、シールリング103aとハウジング102の挿入側の端面102aとが干渉してしまい、シールリング103aがかみ込むという問題が発生することがあった。 【0007】また、シールリングが切れ目を備えたものであっても、元の形状から一旦拡げて軸の溝に装着した場合には、切れ目の部分の開口寸法が復帰せずに大きい状態で留まってしまう場合がある。 【0008】そこで、シールリングの装着前に予め小さく癖付けを行なったり、出願人による特願平8−190024号に記載されたシールリングの素材焼成時の条件により拡張後の戻り性を向上させる技術を適用することも考えられるが、癖付けによりシールリングが変形して外周面に偏摩耗を発生させる要因となったり、拡張後の戻り性を向上させる技術においても装着条件によっては十分な効果が発揮されない場合もあった。 【0009】さらには、拡径した状態のシールリングを外周から押えながら無理やり外周環状溝101bに嵌め込んでも変形等により本来具備している良好なシール性、寿命等が損なわれることも考えられる。 【0010】従って、組立工程においては、機能不良を未然に防止するために十分な注意と管理を伴う作業が必要とされていた。 【0011】本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、形状復帰特性の高いシールリングの製造方法を明らかにして組立作業性の向上及びシール性の向上を図ること、及びこの製造方法によるシールリングを提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明のシールリングの製造方法にあっては、目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法の円筒状の素材を、前記目指すべき仕様の幅寸法に対応したピッチで螺旋状に切削してコイル状とし、上記コイル状の素材の外径寸法が前記目指すべき仕様の外径寸法となるように拡径し、上記拡径されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断し、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法となるシールリングを得る。 【0013】目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法の円筒状の素材を、前記目指すべき仕様の幅寸法に対応したピッチで螺旋状に切削してコイル状とし、上記コイル状の素材の外径寸法が前記目指すべき仕様の外径寸法となるように、該コイル状の素材の内径側にシャフトを挿入し、上記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断し、上記コイル状の素材の内径側に挿入されたシャフトを抜くことにより、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法となるシールリングを得る。 【0014】また、前記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断する際に、該素材の全長にわたり軸方向に切断することを特徴とすることも好適である。 【0015】また、前記シャフトが挿入されたコイル状の素材の少なくとも円周上の一箇所に切込みが入るように切断する際に、軸方向または軸心からの放射方向に対する傾斜面で切断することも好適である。 【0016】前記円筒状の素材は、四フッ化エチレン樹脂をベースポリマーとした樹脂であることも好適である。 【0017】シールリングにおいて、上記記載のシールリングの製造方法により製造され、切断端部が軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法より小さい外径寸法とする。 【0018】 【発明の実施の形態】以下に本発明によるシールリングの製造方法を説明する。この実施の形態においては、円筒形状の素材として、4フッ化エチレン樹脂をベースポリマーとした樹脂を使用したものとして説明する。 【0019】尚、素材の材質としてはこれに限定されるものではなく、その他の適度な弾性(例えば、コイル状とした状態で20%程度拡径した後、もとの径寸法に復帰する程度の弾性)を有する樹脂材料等を用いることも可能である。 【0020】一般に4フッ化エチレン樹脂等のフッ素系樹脂材料は、材料の溶融粘度がきわめて高く、一般の射出成形や押し出し成形などによる成形加工(いわゆるモールド成形)による製造は困難である。 【0021】従って、基材となる粉末状態の4フッ化エチレン樹脂を押型のキャビディ内に保持して圧縮予備成形し、これを融点以上の温度で加熱燒成しその後冷却することにより素材とする粉末成形法が採用されている。 【0022】図1(a)〜(d)は本発明によるシールリング1(図1(d))の製造方法を順番に図示したものであり、以下図を参照して製造方法を説明する。 【0023】図1(a)には、シールリング1を形成するための素材である上記のような粉末成形法による円筒状の素材S1が示されている(素材自体の製造方法を限定するものではない。)。この円筒状の素材S1は、シールリング1の目指すべき仕様の外径寸法がL(図1(d)の右側の状態のシールリング1)である場合、外径寸法Lよりも小さい外径寸法L1を有している。また肉厚はシールリング1の目指すべき仕様の厚み寸法Hとほぼ等しく成形されている。 【0024】この円筒状の素材S1を、シールリング1の目指すべき仕様の幅寸法Wに対応したピッチP1(幅寸法Wに切削代を加えた幅)で螺旋状に切削し、図1(b)のコイル状の素材S2とする。 【0025】螺旋状に切削する方法としては、例えば円筒状の素材S1を旋盤のチャックに固定し、カッター2(バイト)を回転速度に合わせ切削ピッチがP1となる速度で軸方向に移動させる方法が採用可能である。 【0026】次に、図1(c)に示されるように、コイル状の素材S2の外径寸法がシールリング1の目指すべき仕様の外径寸法Lとほぼ同じとなるように拡径するために、内径側にシャフト3を挿入する。 【0027】シャフト3は、コイル状の素材S2の挿入を容易とするために先端側にテーパ部を設けている。さらに不図示ではあるが、挿入されたコイル状の素材S2をより確実に固定するために、シャフト3の根本側にフランジ部を設け、かつ先端側にコイル状の素材S2をフランジ部との間で軸方向に圧縮するナット部材を螺合させるネジ溝等を設けることも適宜に可能である。 【0028】そして、シャフト3を挿入されたコイル状の素材S2の円周上に切込みが入るように切断する。尚、拡径されたコイル状の素材S2を切断する際の切削代を考慮する場合には、目指すべき仕様の外径寸法Lと完全に同一とならない場合もある。 【0029】図1(c)においては、ディスク状カッター4を回転させながら軸方向に移動させてコイル状の素材S2の全長にわたり一度に切断しており生産効率良く製造されている。尚、この実施の形態のシールリング1の切断端部1aの端面はほぼストレートカットとなっている。 【0030】その後、コイル状の素材S2の内径側に挿入されたシャフト3を抜くことにより、切断端部1aが軸方向に重なった状態で目指すべき仕様の外径寸法Lより小さい外径寸法L1(円筒状の素材S1の外径寸法)となるシールリング1を得る。 【0031】このような製造方法により得られたシールリング1は、軸の外周表面に形成された外周溝に嵌合される場合において、シールリング1そのものがバネのような特性を示し、一旦拡径された後に外周溝に落ち込み、目指すべき仕様の外径寸法Lより小さい外径寸法L1となろうとするので、拡張後の戻り性が向上し形状復帰特性を高めることが可能となる。 【0032】従って、外周溝に嵌合した状態で外側へのはみ出しが抑制され、ハウジングとの組立の際のシールリングの干渉やかみ込み防止を図り、組立性が向上する。 【0033】また、もともと外径寸法が小さな曲率で均一に設定されているので、シールリングの装着前に予め小さく癖付けを行なうものとは異なり、いびつな変形はなく、癖付けによる偏摩耗の発生を抑え、本来シールリングが具備している良好なシール性、寿命等を十分に発揮させることが可能となる。 【0034】図2は、シールリング1の切断端部1aの端面を軸方向または軸心からの放射方向に対する傾斜面で切断し、いわゆるバイアスカットとする切断方法を示している。 【0035】図2(a)は、軸心からの放射方向に対する傾斜面で切断する方法を示している。この場合には、ディスク状カッター4を放射方向に対して所定角度に傾斜させるだけで良い。 【0036】図2(b)は、軸方向に対する傾斜面で切断する方法を示している。この場合には、ディスク状カッター4を軸方向に対して所定角度に傾斜させると共に、ディスク状カッター4の移動に応じてシャフト3を回転させ、図示されるような切削経路CL1を取るようにする。 【0037】さらに、端面を階段状等の異形に形成する必要がある場合には、階段状等の形状としたカッターをそれぞれのシールリングに対して押し当てて一個ずつ切り離すことにより製造することも可能である。 【0038】尚、コイル状の素材S2の外径寸法を拡径する方法としては、内径側にシャフトを挿入する以外に、コイル状の素材S2を巻き戻す方向にねじることで外径寸法を拡径し、円筒治具の内周面にコイル状の素材S2の外周面を押し当てることでも可能である。 【0039】この方法の場合には、コイル状の素材S2の内径側より切断したり、あるいは外側から切断するためには円筒治具に軸方向のスリット等の開口部を設けることが必要である。 【0040】 【発明の効果】以上のように説明された本発明の製造方法によると、拡張された後の形状復帰特性の高いシールリングが生産効率良く得られ、またシールリングの組立性向上及び使用時におけるシール性の向上を図ることが可能となる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004385 【氏名又は名称】エヌオーケー株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年9月16日(1998.9.16) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100085006 【弁理士】 【氏名又は名称】世良 和信 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−88103(P2000−88103A) |
| 【公開日】 |
平成12年3月31日(2000.3.31) |
| 【出願番号】 |
特願平10−280593 |
|