| 【発明の名称】 |
内燃機関用ピストン |
| 【発明者】 |
【氏名】塩谷 聡
【氏名】大関 浩
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| 【要約】 |
【課題】ピストンスカート部の耐摩耗性と低フリクションの両立を図る。
【解決手段】本発明に係る内燃機関用ピストン1は、スカート部3の表面15をその十点平均粗さRzが10μm以下となるよう加工し、この表面15に、溝幅30乃至100μmの溝16を加工したものである。接触面積を増大して面圧を下げ、摩耗及びフリクションを低減できる。また溝16内にオイルを保持できるので潤滑性も保てる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スカート部の表面をその十点平均粗さRzが10μm以下となるよう加工し、該表面に、溝幅30乃至100μmの溝を加工したことを特徴とする内燃機関用ピストン。 【請求項2】 上記溝がスライシングブレードによって加工される請求項1記載の内燃機関用ピストン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関用ピストンに係り、特に、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等のレシプロエンジンに適用される内燃機関用ピストンに関するものである。 【0002】 【従来の技術】この種のピストンのスカート部は燃焼工程においてシリンダボア面に対し高速で摺動し、上死点及び下死点ではストローク方向が逆転する。この逆転時、互いの摺動部は瞬間的に境界潤滑領域にさらされる。特にこの領域において上死点側では爆発工程による筒内圧力をもスカート部のスラスト側、反スラスト側で受けるため、スカート部は、相手側のシリンダボア内面性状と併せて、耐焼付き性、耐スカッフ性等に対して考慮した設計がなされている。 【0003】従来、スカート部の表面は、実開昭55-165936 号公報にも示されるように、旋削加工又はローラ転造等の周知の方法で、十点平均粗さRzが20μm以上となるよう加工され、スカート部の摩耗が進行しても油溜まりとしての谷部が残されるようになっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のスカート部は、摩耗の進行は不可避であるいう前提のもと、さらに大きな表面粗さを形成することで寿命を向上させるというものであり、本質的な摩耗低減策に至ってないばかりか、逆にフリクションを悪化させてしまっている。 【0005】そこで、本発明の目的は、スカート部の耐摩耗性と低フリクションの両立を図った内燃機関用ピストンを提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明に係る内燃機関用ピストンは、スカート部の表面をその十点平均粗さRzが10μm以下となるよう加工し、この表面に、溝幅30乃至100μmの溝を加工したものである。 【0007】ここで、上記溝がスライシングブレードによって加工されるのが好ましい。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。 【0009】図1は本発明に係るピストン1を示し、ピストン1は上部にピストンリング装着部2を、下部にスカート部3を有する。ピストンリング装着部2においてはトップランド4、セカンドランド5及びサードランド6が設けられ、これらランドの間にトップリング溝7、セカンドリング溝8及びサードリング溝9が設けられる。紙面厚さ方向に沿ってピストンピン穴10が設けられ、これにピストンピン(図示せず)を挿入させるようになっている。ピストンピン穴10の周囲にピストンピンボス11が設けられる。 【0010】ピストン1はシリンダボア12内に昇降自在に挿入され、そのボア内面13上を摺動する。シリンダボア12の頂部開口部がシリンダヘッド14により閉鎖される。図示例において、ピストン1の左側がスラスト側、右側が反スラスト側となる。 【0011】特に、図2に詳しく示すように、スカート部3の表面15は、十点平均粗さRzが10μm以下となるよう加工され、この表面15に、溝幅Wが30乃至100μmの微細な溝16が加工されている。表面15は周知の旋剤加工等により従来に比べ平滑に仕上げられる。溝16はピストン軸方向と垂直な円周方向に沿って所定長さ延出され、独立したものが軸方向に複数等ピッチで並べられている。溝16はスカート部3のスラスト側と反スラスト側とに設けられる。 【0012】溝16は本出願人が特願平9-149928号で開示したようにスライシングブレードにより加工される。即ち、極薄の厚さを有する円盤状カッタの如きスライシングブレードを、スカート部3の表面15に所定深さ切り込むと共に、そのスライシングブレードを、ピストン1に対しピストン軸回りに相対移動させ、これによってカッタの厚みと同幅の溝16を一定深さ、一定長さで周方向に加工している。軸方向の一ヶ所の加工を終えたらカッタを外して軸方向に1ピッチ送り、これを繰り返して複数の独立した溝16を形成する。このスライシングブレード加工法は半導体加工において特に用いられる。 【0013】なお、図3に示すように、従来のスカート部3aの表面15aは、バイトによる旋削加工又はローラによる転造加工等で、十点平均粗さRzが20μm以上となるよう加工され、スカート部3aの摩耗が進行しても油溜まりとしての谷部21aが残されるようになっている。これに対し本案の表面15は粗さが従来の半分以下である。 【0014】次に、本案の優位性を従来との比較を交えて説明する。 【0015】先ず、図4乃至図6を用い、摺動面の表面断面形状と負荷率との関係について説明する。各図において、摺動面の表面断面形状は左側に、負荷率は右側に示す。一般に左図は粗さ曲線、右図は負荷曲線と称される。 【0016】図4においては、摺動面の表面の断面形状が連続した波形で、断面三角状の山部18と谷部19とが交互に連なっている。谷部19の底の位置を粗さないし高さの基準(0)とし、山部18の最大高さが2aで、粗さ中心Cが高さaの位置にある。この場合、粗さ中心Cに平行な各高さ位置の断面で見たとき、山部18による実の部分の断面積を総断面積で除した値が負荷率である。即ち、摺動面が相手方に押し付けられるとき、実の部分に負荷ないし荷重がかかるので、この実部分の総面積に対する割合を負荷率と称するのである。負荷率は 0〜100 %の値をとる。 【0017】図4の例では、高さ2aのとき負荷率 0%で、高さが減少するにつれ負荷率が一定割合で増大し、高さ0のとき負荷率 100%となる。なお図示断面で見る山部18と谷部19の面積比は1:1である。一方、山部18にかかる面圧は負荷率が小さいほど大きくなる。小面積で荷重を受けるようになるからである。よってかかる摺動面の場合、最初のうちは面圧が大きく、摩耗が早期に進行し、摩耗の進行につれ負荷率が増大し、面圧が減少し、摩耗の進行が遅延するという特性を呈する。これは、摺動面には不向きな特性である。初期摩耗が著しく、ある程度摩耗が進まないと摩耗の進行度合いを遅くできないからである。 【0018】次に、図5の例では、断面正方形状の山部18と谷部19とが交互に連なっている。前記同様、山部18の最大高さは2a、粗さ中心Cの高さa、図示断面で見る山部18と谷部19の面積比は1:1である。この場合、高さ2aから 0まで負荷率は一定で50%の値をとる。よって最初から最後まで、つまり山部18ないし谷部19が消滅するまで、面圧は少ない値で一定で、摩耗の進行度合いも遅延することを意味する。これは摺動面として好適な特性である。 【0019】次に、図6の例では、山部18と谷部19とを断面四角形状としながらも、その面積比を5:3と変えている。即ち、山部18の幅を5a、谷部19の幅を3aとしている。なお前記同様、山部18の最大高さは2a、粗さ中心Cの高さはaである。この場合、負荷率は、高さ2aから0まで一定の62.5%(=5/(5+3)×100)となる。よって、負荷率の増大によりさらに面圧を下げ、摩耗の進行度合いをさらに遅らせることができる。この特性は摺動面としては一層好適である。当然、二点鎖線で示す如く山部18の幅を増し、負荷率を増大すれば、さらに面圧を減少し、摩耗の進行度合いを遅らせることができる。 【0020】このように、摩耗の進行という観点からすれば、できるだけ長期間広い摺動面面積を確保し、面圧を下げた方が有利である。この意味で本案は、スカート部3の表面15をできるだけ平滑に仕上げ、具体的にはRz≦10μmに仕上げている。 【0021】逆に従来は、図3に示すように、バイトによる旋削加工又はローラによる転造加工によるので、スカート部表面15aの谷部21aの断面形状が円形となり、これに隣り合う山部20aの断面形状が略三角形となる。これにより前述した図4の特性を呈するようになり、摩耗特性上不利となる。 【0022】ただし、表面を平滑に仕上げても負荷率 100%では摩擦係数が増大しフリクションが増加する。そこで本案では、オイル溜まりとしての幅狭の溝16を設け、摺動面(図2に示すスカート部3ないし山部20の表面15)に絶えず給油を行い、フリクションの増加を防いでいる。こうして本案のスカート表面部の断面形状は図6に示したものと同様となる。つまり本案の考え方は、摺動面面積を大きくとって面圧を下げ、互いの摺動面が強力に当たらないようにし、これによって摩耗の進行を遅延すると共に、摺動面間における油膜の形成を促進し、溝16からの給油を常時確保してフリクションも低下するというものである。 【0023】逆に従来のものでは、摺動面面積が小さいので、面圧が増大し、互いの摺動面が強力に当たるようになる。つまり本案が面接触に近い状態となるのに対し、従来は線接触に近い状態となる。これだと摩耗の進行が早まるばかりか、摺動面間に油膜ができづらくなり、境界潤滑となってせっかく谷部21aでオイルを溜めておいてもこれを給油できず、フリクションも増大してしまう。こういった意味で本案の構成は従来に比し極めて有利である。 【0024】また、本案ではスライシングブレードにより溝16を加工するので、従来の切削や研削で得られていたレベル以上の幅狭の溝を容易に加工できる。これにより溝幅を任意な大きさに自由に設定できる。当然、溝16の深さも自由に設定できる。 【0025】次に、図11に理想的な負荷曲線の形を示す。先ず初期摩耗部となる粗さRpk及び負荷率Mr 1の値はできるだけ小さいのが望ましい。初期摩耗が少なくなりなじみ性が良好となるからである。次に実用域である粗さRk 及び負荷率Mr 1〜Mr2の範囲はできるだけ広いのが望ましい。耐用期間が増加するからである。 【0026】また、オイル保持部をなす粗さRvkの範囲は大きく、負荷率Mr 2〜100 の範囲は小さいのが望ましい。摺動部をなす山部分の面積を大きくとりながらも、谷部分の面積を増大し、オイル保持量を増やせるからである。ここでオイル保持量は曲線ab、直線bc、caで囲まれた面積で表せるが、曲線db、直線be、edで囲まれた面積が、直線ad、曲線adで囲まれた面積と等しくなるよう、Rvkの下限値を定めると、オイル保持量は三角形aecの面積で近似できる。よってオイル保持量V0 は以下式により計算できる。 【0027】 V0 =(100−Mr 2)/2000×Rvk (mm3 /cm2 ) 次に、図7乃至図10を用い、本案と従来とのピストン試作品の実測データに基づく差異を説明する。図7及び図8は本案にかかるピストンスカート表面部の粗さ曲線及び負荷曲線、図7及び図8は従来にかかる同粗さ曲線及び負荷曲線である。 【0028】本案の表面は細かい旋剤加工により平滑に仕上げられ、表面粗さRz=2.0 μmである。溝は幅W=30μm、深さH=15μm、ピッチP= 1.5mmである(図2参照)。従来の表面はバイトによる旋削加工で、表面粗さRz=20μmである。 【0029】本案の場合、Rvk=5.4701μm、Mr 2=89.0000 %というデータが得られた。これにより前式からV0 =0.0301(mm3 /cm2 )となる。一方、従来の場合、Rvk=3.5152μm、Mr 2=93.0000 %というデータが得られた。これにより前式からV0 =0.0123(mm3 /cm2 )となる。 【0030】このように、本案の場合、従来に比し約3倍のオイル保持量を得られる。つまり表面粗さが1/10でも溝加工を行うことでオイル保持量を増大できる。逆に、従来は、谷部面積が大きくてもオイル保持量は少ない。負荷曲線についても、図8に示す本案の方が図10に示す従来より理想に近い形が得られる。 【0031】以上のように、本案によれば、ピストンスカート部の耐摩耗性と低フリクションとの両立を図れる。そしてピストンのストローク時に溝内に良好にオイルを保持できるので、特に上下死点における境界潤滑領域での焼付き、スカッフ等を防止できる。ピストンとシリンダボア内面とのクリアランスも減少でき、ピストン首振り時の接触面積を増大し、摩耗及びフリクションを低減できる。またフリクションを低減できるので出力の向上も可能である。またクリアランスを減少できるのでスラップ音を低減できると共に、ピストンスカート部の表面処理を廃止しコストダウンが可能である。 【0032】なお、溝の位置、幅、ピッチ等は上述の趣旨を逸脱しない範囲で実機試験等に基づき任意に定めることができる。また図12には従来のピストンの首振りの様子を示す。ピストン〜ボア間のクリアランスが大きく、首振り傾向が著しい。特に燃焼工程開始のピストン上死点において、ピストンが燃焼圧力を受けること、ストローク方向が逆転することなどにより、ピストンのトップランド4a周辺(部位A)とスカート部3aの反スラスト側周辺(部位B)とで強力な接触が発生し、境界潤滑となり易い。よって、部位Bではスカート部3aに本案にかかる溝を加工し、部位Aではシリンダボア内面に特願平9-149928号に示した如き溝を加工するのがよい。この組み合わせによりピストン/ボア摺動面全域の潤滑が改善される。 【0033】 【発明の効果】以上要するに本発明によれば、ピストンスカート部の耐摩耗性と低フリクションの両立を図れるといった、優れた効果が発揮される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000170 【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年9月18日(1998.9.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100068021 【弁理士】 【氏名又は名称】絹谷 信雄
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| 【公開番号】 |
特開2000−88101(P2000−88101A) |
| 【公開日】 |
平成12年3月31日(2000.3.31) |
| 【出願番号】 |
特願平10−264545 |
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