| 【発明の名称】 |
アルミニウム基複合ピストン |
| 【発明者】 |
【氏名】服部 久雄
【氏名】鍛冶 俊彦
【氏名】橋倉 学
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| 【要約】 |
【課題】ピストンの各部位に要求される特性を満たし、かつ各部位での剥離が少ないアルミニウム基複合ピストンを提供する。
【解決手段】ピストン18は、アルミニウム合金製の頂部20Cと、頂部20Cに接し、頂部20Cと異なる組成のアルミニウム合金製のスカート部19Aとを備える。頂部20Cの線膨張係数とスカート部19Aの線膨張係数との差は2×10-6/K以下である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム合金製の第1部材と、前記第1部材に接し、前記第1部材と異なる組成のアルミニウム合金製の第2部材とを備え、前記第1部材の線膨張係数と前記第2部材の線膨張係数との差は2×10-6/K以下である、アルミニウム基複合ピストン。 【請求項2】 前記第1部材は、シリンダライナ内の燃焼室に向かい合うピストンヘッド部であり、前記第2部材は、シリンダライナと摺動するピストンリング部である、請求項1に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項3】 前記第1部材はシリンダライナと摺動するピストンリング部であり、前記第2部材は、ピストンピンを受入れるピンボス部である、請求項1に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項4】 前記第1部材は、ピストンピンを受入れるピンボス部であり、前記第2部材は、シリンダライナ内の燃焼室に向かい合うピストンヘッド部である、請求項1に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項5】 前記第1部材および前記第2部材はアルミニウムを主成分とし、鉄、ニッケル、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項6】 前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は硬質粒子を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項7】 前記第1および前記第2部材の少なくとも一方はミッシュメタルおよびシリコンの少なくとも一方を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項8】 前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方は粉末アルミニウム合金製である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム基複合ピストン。 【請求項9】 前記粉末アルミニウム合金の熱伝導率は100W/m・K以上である、請求項8に記載のアルミニウム基複合ピストン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ピストンに関し、特に、軽量で、熱伝導性が高いアルミニウム基複合ピストンに関するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車などの内燃機関のピストンは、軽量化することが必要であるため、従来からアルミニウム合金製の軽合金材料を鍛造や鋳造によりピストンを製造することが多い。しかし近年のエンジンにおける燃焼条件などの変化により、以前より高い耐熱強度がピストンに求められるようになってきている。 【0003】それに対し、以下の方法を用いることにより耐熱強度を高めたピストンが知られている。 【0004】■ マトリックス金属を変更したピストン。 ■ 繊維強化金属のような金属複合材料を用いたピストン。 【0005】■ セラミックス粉末を異なる配合比で複合した2層構造のピストン。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の技術のうち、■で示したマトリックス金属を変更したピストンは、ピストンに要求されるピストンヘッド部の耐熱強度、高熱伝導性、ピストンリング部に要求される高耐摩耗性などのような要求特性を同時に満足させることができない。また、■で示した繊維強化金属のような金属複合材料を用いたピストンは材料の延性が乏しいために鍛造のような塑性加工が容易でない。 【0007】さらに、■で示したセラミックス粉末を配合した2層構造の複合ピストンは、たとえば特開平1−180927号公報に記載されているが、このピストンは鍛造後に2層の界面から剥離が起きるという問題がある。 【0008】そこで、この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、成形されたピストンが高い信頼性を有し、しかも、ピストンヘッド部が高い耐熱強度、高熱伝導性を有し、ピストンリング部が高い耐摩耗性を有するピストンを提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】この発明に従ったアルミニウム基複合ピストンは、アルミニウム合金製の第1部材と、その第1部材に接し、第1部材と異なる組成のアルミニウム合金製の第2部材とを備える。第1部材の線膨張係数と第2部材の線膨張係数との差は2×10-6/K以下である。 【0010】このように構成されたアルミニウム基複合ピストンにおいては、第1部材の線膨張係数と第2部材の線膨張係数との差を2×10-6/K以下としているため、第1部材と第2部材の線膨張係数の差が十分に小さくなる。そのため、このピストンは使用されて高温となっても第1部材と第2部材との間の熱応力が加わりにくくなり、第1部材と第2部材の界面での剥離の発生を抑制できる。 【0011】また、第1部材は、シリンダライナ内の燃焼室に向かい合うピストンヘッド部であり、第2部材は、シリンダライナと摺動するピストンリング部であることが好ましい。そうすれば異なる要求特性のピストンヘッド部とピストンリング部の各々に対し、適切な特性の材料を適用することができる。 【0012】また、第1部材はシリンダライナと摺動するピストンリング部であり、第2部材はピストンピンを受入れるピンボス部であることが好ましい。そうすれば異なる要求特性のピストンリング部とピンボス部の各々に対し、適切な特性の材料を適用することができる。 【0013】また、第1部材は、ピストンピンを受入れるピンボス部であり、第2部材は、シリンダライナ内の燃焼室に向かい合うピストンヘッド部であることが好ましい。そうすれば異なる要求特性のピンボス部とピストンヘッド部の各々に対し、適切な特性の材料を適用することができる。 【0014】さらに、第1部材と第2部材とはアルミニウムを主成分とし、鉄、ニッケル、チタンおよびジルコニウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、鉄、ニッケル、チタンおよびジルコニウムがアルミニウムとの間で化合物を作るためピストンの耐熱性が向上する。 【0015】また、第1部材および第2部材の少なくとも一方は硬質粒子を含むことが好ましい。 【0016】この場合、第1部材および第2部材の耐摩耗性を向上させることができる。また、第1部材および第2部材の少なくとも一方はミッシュメタルおよびシリコンの少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、第1部材および第2部材の少なくとも一方がミッシュメタルを含むとアルミニウム合金の組織が細かくなり耐摩耗性や耐熱性が向上する。また、シリコンを含むと耐摩耗性が向上する。 【0017】また、第1部材および第2部材の少なくとも一方は粉末アルミニウム合金製であることが好ましい。この場合、粉末製造時の急冷効果により、アルミニウム合金の組織が細かくなり、疲労強度、耐熱性が向上する。 【0018】また、粉末アルミニウム合金の熱伝導率は100W/m・K以上であることが好ましい。 【0019】 【実施例】以下、この発明の実施例について図面を用いて説明する。 【0020】(実施例1)図1を参照して、エアーアトマイズ法でアルミニウム合金粉末A(組成:Al−20重量%Si−3重量%Fe−2重量%Ni−1.5重量%Ti、平均粒径:35μm)を作製した(ステップ1)。またエアーアトマイズ法でアルミニウム合金粉末B(組成:Al−8重量%Fe、平均粒径:33μm)を作製した(ステップ3)。 【0021】硬質粒子としての平均粒径が3μmのSiC粉末を用意した(ステップ4)。アルミニウム合金粉末BとSiC粉末とを重量比が15:85で配合し、これをV型混合機で均一に混合して混合粉末Cを形成した(ステップ5)。アルミニウム合金粉末Aを、直径が90mmで高さが45mmの形状に金型成形し、相対密度が75%の成形体11Aを作製した(ステップ2)。混合粉末Cを、直径が90mmで高さが25mmの形状に金型成形し、相対密度が75%の成形体12Cを作製した(ステップ6)。 【0022】成形体11Aと成形体12Cを大気中で直接誘導加熱することにより、これらの温度を793Kとした。次に、図2に示すように、金型22および23内に加熱された成形体11Aと12Cを入れた。金型21を用いて加圧力800MPaで成形体11Aと12Cに圧力を加えて鍛造した後に2つの成形体11A、12Cを一体化・緻密化し、直径が90mmで高さが52mmの粉末鍛造体13を得た(ステップ7)。 【0023】得られた粉末鍛造体13を温度793Kに加熱した後、図3で示すような金型24を用いて粉末鍛造体をさらに鍛造して鍛造ピストン素材17を得た(ステップ8)。なお、鍛造ピストン素材17は、成形体11Aが変形して形成された下部15Aと、成形体12Cが変形して形成された上部16Cにより構成される。 【0024】鍛造ピストン素材17を加工することにより、図4で示す形状のピストン18を形成した。なお、ピストン18は、下部15Aを加工して形成されたスカート部19Aと、上部16Cを加工して形成された頂部20Cにより構成される。頂部20Cは、ピストンヘッド部18aとピストンリング部18bとを含み、スカート部19Aはピンボス部18cを含む。 【0025】このようにして作製したピストンを、中心軸を含む断面で切断してこの切断面を研磨して観察したところ、頂部20Cとスカート部19Aとの界面で亀裂がなくスカート部19Aと頂部20Cとは密着し一体化していた。 【0026】次に、頂部20Cとスカート部19Aの各々の領域から試験片を切出し、線膨張係数と疲労強度と耐摩耗性を評価した。線膨張係数は温度473K〜673Kの範囲で測定した。また、疲労強度は温度573Kの条件で小野式回転曲げ疲労試験により測定した。 【0027】ここで、小野式回転曲げ疲労試験について説明する。図5を参照して、軸受101および103に回転軸102および104を載置する。試験片105の一方端を回転軸102と連結し、試験片105の他方端を回転軸104に連結する。この状態で、回転軸102の荷重点102aと回転軸104の荷重点104とに荷重棒108を接続する。荷重棒108と荷重点102および104との間には回転軸受を介在させるため、荷重棒108からの荷重を回転軸102および104が受けた状態でも回転軸102および104は回転することができる。 【0028】この状態で、矢印106で示す方向に荷重棒108に荷重Pを掛ける。すると、荷重点102aと荷重点104aとにもそれぞれ、P1 /2の荷重が掛かる。この状態で回転軸102および104を矢印107で示す方向に回転させる。この回転を続けることにより試験片105に曲げ荷重を加えながら試験片を回転させて以下の条件で疲労強度の測定を行なった。 【0029】試験温度:573K回転数:3600rpm【0030】また、大越式摩耗試験機により試験片の耐摩耗性の試験を行なった。ここで、大越式摩耗試験器について説明する。図6および図7を参照して、試験片111上に幅がBで直径が2rの回転円板112を載置する。この回転円板は矢印113で示す方向に速度Vで回転することが可能である。この回転円板112を矢印113で示す方向に速度Vで回転させ、回転円板112に矢印114で示す方向に加圧力P2 を加える。すると、試験片111の部分のうち回転円板112と接する部分が摩耗して深さがhの摩耗痕ができる。摩擦距離L0 だけ摩擦した時の最終荷重をP0 、その時の摩耗痕幅をb0 とすると、比摩耗量Ws は、Ws =Bb03/8rP0 L0 で表わされる。これらの関係より摩耗量を算出する。試験は、摩擦速度2m/sで、相手材をS45C(JIS)として乾式で行なった。 【0031】また、ピストンをエンジンに組込み、エンジンの実機試験を行ない頂部20Cとスカート部19Aの間に亀裂があるかどうかを調べた。その結果を表1に示す。 【0032】 【表1】
表1より、この発明に従ったピストン(サンプル1)は、ピストンリング部を含む頂部20Cの線膨張係数とボス部18cを含むスカート部19Aとの線膨張係数の差が1.6×10-6/Kと小さかった。さらに、ピストンリング部18bやピンボス部18cでの疲労強度は大きく摩耗量が小さかった。 【0033】比較のために、アルミニウム粉末合金Aの代わりに、平均粒径が3μmのSiC粉末とアルミニウム合金粉末Bを、V型混合機を用いて重量比で5:95で均一に混合した混合粉末Dを用いた。この混合粉末Dと混合粉末Cからなる複合ピストン(サンプル2)を上述の実施例と同様の方法で作製した。サンプル2の線膨張係数と疲労強度と耐摩耗性の評価結果も表1に示す。 【0034】サンプル2では、ピストンリング部、ピンボス部各々の特性を満足するが、両者の間の線膨張係数の差が大きかった。そのため、エンジン実機試験後のピストンの界面に亀裂が見られ、信頼性が低いことがわかった。 【0035】なお、表1中a、cおよびdは各サンプルの組成を示すが、たとえばcにおいて(Al−8重量%Fe)−15重量%SiC(3μm)というときは、鉄を8重量%含むアルミニウム合金と、直径が3μmのSiC粒子とを重量比で85:15で混合した材料を示す。以下同様である。 【0036】(実施例2)図8を参照して、エアーアトマイズ法で、アルミニウム合金粉末A(組成:Al−20重量%Si−3重量%Fe−2重量%Ni−1.5重量%Ti、平均粒径:35μm)を製造した(ステップ31)。エアーアトマイズ法でアルミニウム合金粉末B(組成:Al−8重量%Fe、平均粒径:33μm)を製造した。平均粒径が12μmのSiC粉末を用意した(ステップ33)。平均粒径12μmのSiC粉末とアルミニウム合金粉末Bとを重量比が15:85となるように配合してV型混合機で均一に混合して混合粉末Eとした(ステップ34)。 【0037】アルミニウム合金粉末Aを所定量だけ金型に充填した後に引続き混合粉末Eを金型に充填した後加圧し、直径が90mmで高さが70mmの形状の成形体41を作製した(ステップ35)。成形体41を大気中で直接誘導加熱により温度793Kに加熱し、直ちに加圧力800MPaで粉末鍛造して緻密化した。これにより、直径が90mmで高さが52mmの粉末鍛造体42を得た(ステップ36)。 【0038】粉末鍛造体42を温度793Kに加熱し、図3で示す鍛造ピストン素材17と同様の形状の鍛造ピストン素材47を作製した(ステップ37)。鍛造ピストン素材47に切削加工を施して図9で示すピストン44(サンプル3)を形成した(ステップ38)。図9を参照して、このピストン44は、混合粉末Eから形成された頂部46Eとアルミニウム合金粉末Aから形成されたスカート部45Aにより構成される。またピストン44は、ピストンヘッド部44aと、ピストンリング部44bと、ピンボス部44cとを有する。 【0039】このピストン44を、中心軸を含む断面で切断してその切断面を研磨して観察したところ、頂部46Eとスカート部45Aとの界面で亀裂がなく密着し両者が一体化していた。また、スカート部45Aと頂部46Eの各々の領域から試験片を切出し、線膨張係数、熱伝導率、疲労強度、耐摩耗性を評価した。また、ピストン44をエンジンに組込み、エンジンの実機試験を行なった。これらの結果を表2に示す。 【0040】 【表2】
表2より、頂部16Eとピンボス部45Aとの線膨張係数の差は1.6×10-6/Kと小さい。また、エンジン実機試験でも頂部46Eとスカート部45Aとの間には亀裂が認められず高い信頼性が得られた。 【0041】比較のために、従来行なわれている溶湯鍛造法により複合ピストンを以下の手順で作製した。 【0042】まずピストンリング部の強化材としてリング状のニレジスト鋳鉄を金型内に設置した。この金型内に温度1023Kのアルミニウム合金AC8A(JIS)溶湯を金型に注入し、加圧力150MPaで溶湯鍛造した。その後、切削加工を行なってピストン(サンプル4)に仕上げた。このピストンについて上述のサンプル3と同様の試験を行なった。その結果も表2に示す。 【0043】エンジン実機試験の結果、サンプル4では、ピストンの頂部の一部が溶損していた。この結果から、今回試験のエンジン運転条件に耐えるためには、冷却のためのクーリングチャネルなどが必要となる。 【0044】サンプル3のようにピストンリング部を含む領域の熱伝導率を100W/m・K以上とすることにより、より高いエンジン負荷の条件でもシリンダへの伝熱によってピストンの温度を低く保つことができる。そのため、冷却のためのクーリングチャンネルを省略でき製造コストを低減できエンジン効率の向上が可能となる。 【0045】(実施例3)図10を参照して、エアーアトマイズ法で、アルミニウム合金粉末A(組成:Al−20重量%Si−3重量%Fe−2重量%Ni−1.5重量%Ti、平均粒径:35μm)を製造した(ステップ51)。 【0046】アルミニウム合金粉末B(組成:Al−8重量%Fe、平均粒径:33μm)をエアーアトマイズ法で製造した(ステップ52)。平均粒径が3μmのSiC粉末を用意した(ステップ53)。 【0047】このSiC粉末とアルミニウム合金粉末Bとを重量比が15:85となるように配合し、V型混合機で均一に混合して混合粉末Cを作製した(ステップ54)。 【0048】アルミニウム合金粉末F(組成:Al−3重量%Zr−2重量%Ni−13重量%ミッシュメタル、平均粒径:32μm)をエアーアトマイズ法で製造した(ステップ55)。平均粒径が3μmのSiC粉末を用意した(ステップ56)。このSiC粉末とアルミニウム合金粉末Fを重量比が15:85となるように配合し、V型混合機で均一に混合して混合粉末Gとした(ステップ57)。 【0049】混合粉末Gを直径が60mmで高さが33mmの金型で成形して成形体71Gを作製した(ステップ58)。この成形体71Gを内径が90mmの金型の中心軸上に設置し、この上に混合粉末Cを充填した。さらにその上にアルミニウム合金粉末Aを充填した後、加圧力600MPaで成形して3種類の合金組成からなる層状の粉末成形体72を作製した(ステップ59)。この粉末成形体72を大気中で直接誘導加熱により温度793Kに加熱し、直ちに加圧力800MPaで粉末鍛造し緻密化して直径が90mmで高さが52mmの粉末鍛造体73を得た(ステップ60)。 【0050】得られた粉末鍛造体73を温度793Kに加熱し、図3で示す鍛造ピストン素材17と同様の形状の鍛造ピストン素材74とし(ステップ61)、切削加工を施して図11で示すような形状のピストン75(サンプル5)に仕上げた(ステップ62)。 【0051】図11を参照して、このピストン75は、アルミニウム合金粉末Aからなるピンボス部76Aと、混合粉末Cからなるピストンリング部76Cと、成形体71Gからなるリップ部(ピストンヘッド部)77Gにより構成される。このピストン75を、中心軸を含む断面で切断してその切断面を研磨して観察したところ、ピンボス部76Aとピストンリング部76Cとの界面で亀裂がなく、また、リップ部77Gとピストンリング部76Cとの界面でも亀裂がなく、これらは一体化していた。 【0052】また、ピンボス部76A、ピストンリング部76Cおよびリップ部77Gからそれぞれ試験片を切出し、実施例1と同様の手法で線膨張係数、熱伝導率、疲労強度および耐摩耗性を評価した。また、ピストン75をエンジンに組込み、エンジンの実機試験を行なった。なお、この実機試験は実施例1および2の場合よりも50%高い回転数で実施した。これらの結果を表3に示す。 【0053】 【表3】
表3より、ピンボス部76A、リップ部77G、ピストンリング部76Cでの熱膨張係数の差は1.6×10-6/Kと小さい。また、エンジン実機試験を行なってもピストン表面には亀裂は見られず、高い信頼性が得られた。一方、実施例1に従って作製したピストン(サンプル1)に対し、上述の条件でエンジン実機試験をした。その結果も表3に示す。試験後のピストンの頭頂部のリップ部に微小なクラックが認められた。 【0054】以上の結果から、線膨張係数の差を小さく抑えながら耐熱性の必要とされる箇所に、より耐熱性の高い材料を用いることで部品全体としての耐熱性、信頼性の高いピストンを製造することができる。 【0055】(実施例4)実施例4では、ピストンのそれぞれの部分に要求される特性を調べ、その特性を満たすような金属の組成について検討した。 【0056】まず、上述のように、ピストンは、ピストンヘッド部、ピストンリング部およびピンボス部に分かれるが、それぞれの部分に要求される特性をまとめると表4のようになる。 【0057】 【表4】
この特性を満たすような組成のアルミニウム合金について検討したところ、以下の表5で示すサンプル11〜30が表4で示すような特性を満たすことがわかった。 【0058】 【表5】
この表5に記載されたサンプルを組合せて以下のサンプル31〜40で示すピストンを製造した。 【0059】 【表6】
【0060】 【表7】
このピストンについて、上述の実施例1〜3で示すようなエンジンの実機試験を行なったところ、ピストンのそれぞれの部材の間には剥離がなく高い信頼性が得られた。 【0061】(実施例5)実施例5では、表4で示すような特性を満たすアルミニウム合金組成について考察した。 【0062】(1) ピストンヘッド部に好ましい組成本発明者らは、ピストンヘッド部に好ましいアルミニウム合金組成について種々の実験を行なったところ、以下の合金系を用いれば表4で示すピストンヘッド部の特性を満たすことがわかった。 【0063】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)と硬質粒子からなる合金系アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:5重量%以上10重量%以下Alの含有率:残部ピストンヘッド部に対する、SiC、Al2 O3 およびSi3 N4 の合計の含有率:0重量%以上18重量%以下なお、この合金系の線膨張係数は12×10-6/K以上22.8×10-6/Kとなる。 【0064】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)とミッシュメタルと硬質粒子からなる合金系の場合アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:3重量%以上8重量%以下アルミニウム合金に対する、ミッシュメタルの含有率:5重量%以上15重量%以下Alの含有率:残部ピストンヘッド部に対する、SiC、Al2 O3 およびSi3 N4 の合計の含有率:0重量%以上18重量%以下なお、この合金系の場合、線膨張係数は11.3×10-6/K以上22.1×10-6/K以下であった。 【0065】(2) ピストンリング部に好ましい組成本発明者らは、ピストンリング部に好ましい組成について種々の実験を行なったところ、以下の組成が好ましいことがわかった。 【0066】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)と硬質粒子からなる合金系アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:5重量%以上10重量%以下Alの含有率:残部ピストンリング部に対する、SiC、Al3 O3 およびSiN4 の合計の含有率:3重量%以上18重量%以下なお、この合金系の場合に、線膨張係数は12×10-6/K以上20×10-6/Kであった。 【0067】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)とミッシュメタルと硬質粒子からなる合金系の場合アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:3重量%以上8重量%以下アルミニウム合金に対する、ミッシュメタルの含有率:5重量%以上15重量%以下Alの含有率:残部ピストンリング部に対する、SiC、Al2 O3 およびSi3 N4 の合計の含有率:3重量%以上18重量%以下なお、この合金系の線膨張係数は11.3×10-6/K以上19.5×10-6/Kであった。 【0068】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)とSiからなる合金系アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:5重量%以上10重量%以下アルミニウム合金に対する、Siの含有率:10重量%以上28重量%以下Alの含有率:残部なお、この合金系の線膨張係数は13.8×10-6/K以上20.2×10-6/K以下であった。 【0069】(3) ピンボス部に好ましい組成本発明者らは、ピンボス部に好ましい組成について種々の実験を行なったところ、以下の組成が好ましいことがわかった。 【0070】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)とSiからなる合金系アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:5重量%以上10重量%以下アルミニウム合金に対する、Siの含有率:10重量%以上28重量%以下Alの含有率:残部なお、この合金系の線膨張係数は13.8×10-6/K以上20.2×10-6K以下であった。 【0071】■ Al−(Fe、Ni、TiおよびZrの少なくとも1種)とミッシュメタルからなる合金系アルミニウム合金に対する、Fe、Ni、TiおよびZrの合計の含有率:3重量%以上8重量%以下アルミニウム合金に対する、ミッシュメタルの含有率:5重量%以上15重量%以下なお、この合金系の線膨張係数は18×10-6/K以上22.1×10-6K以下であった。 【0072】以上、この発明の実施例について説明したがここで示した実施例はさまざまに変形可能である。 【0073】今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 【0074】 【発明の効果】この発明に従えば、ピストンの各部分で要求される特性を満たし、かつ、各部分の剥離が少なく信頼性の高いアルミニウム基複合ピストンを得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002130 【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年9月9日(1998.9.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064746 【弁理士】 【氏名又は名称】深見 久郎 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−88100(P2000−88100A) |
| 【公開日】 |
平成12年3月28日(2000.3.28) |
| 【出願番号】 |
特願平10−255503 |
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