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【発明の名称】 メカニカルシール
【発明者】 【氏名】高橋 秀和

【要約】 【課題】回転形と静止形の両方に兼用できるとともに、静止形でバッフルスリーブを使用する場合と使用しない場合の両方に兼用できるメカニカルシールを提供する。

【解決手段】カラー2の内外周面にOリング溝3、4を設け、カラー2の一部に、内外周面間を貫通するねじ孔5とクエンチング孔6を設ける。回転形で使用する場合には、内周側のOリング溝3内にOリング18を装着し、外周側からねじ孔5にセットスクリュー24を螺合させ、回転軸25側に締め付ける。静止形で使用する場合には、外周側のOリング溝4内にOリング18を装着し、内周側からねじ孔5にセットスクリュー24を螺合させ、ハウジング20側に締め付ける。静止形でバッフルスリーブ12を使用する場合には、クエンチング孔6から注入したクエンチング液はバッフルスリーブ12を介して摺動面に導かれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸とハウジングとの間に設けられて両者間をシールするメカニカルシールであって、前記回転軸の軸線に垂直なシール端面を有するシールリングと、該シールリングにベローズを介して取り付けられるカラーと、前記シールリングのシール端面と接触する前記回転軸の軸線に垂直なシール端面を有するメイティングリングとを具え、前記カラーの内周面及び外周面にそれぞれOリング溝を設けるとともに、前記カラーの一部に、内外周面間を貫通するねじ孔を設けたことを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】 前記シールリング、前記ベローズ及び前記カラーと前記回転軸との間にバッフルスリーブを設けて、バッフルスリーブの一部を前記カラーに固定するとともに、前記カラーの一部に内外周面間を貫通するクエンチング孔を設けた請求項1記載のメカニカルシール。
【請求項3】 前記バッフルスリーブの外周側に微小隙間の絞り部を形成した請求項2記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はメカニカルシールに関し、特に、シールリング、ベローズ及びカラーを回転軸側に取り付ける回転形、それらをハウジング側に取り付ける静止形の両方に兼用できるとともに、静止形でバッフルスリーブを使用する場合と使用しない場合の両方に兼用できるベローズ形のメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来技術およびその問題点】ベローズ形のメカニカルシールには回転形と静止形があり、回転形は、カラー、ベローズ及びシールリングを回転軸側に取り付けるように構成したものであり、静止形は、それらをハウジング側に取り付けるように構成したものである。
【0003】そして、回転形の場合には、回転軸側に取り付けたシールリングのシール端面とハウジング側に取り付けたメイティングリングのシール端面とを相互に接触させることで、回転軸とハウジングとの間をシールでき、静止形の場合には、ハウジング側に取り付けたシールリングのシール端面と回転軸側に取り付けたメイティングリングのシール端面とを相互に接触させることで、回転軸とハウジングとの間をシールできるものである。
【0004】また、静止形の場合、バッフルスリーブを使用する場合と使用しない場合とがあり、バッフルスリーブを使用する場合には、バッフルスリーブを介してクエンチング液を摺動面に導くことによって、摺動面から漏れ出た流体を外部に排出することができるものである。
【0005】静止形でバッフルスリーブを使用したメカニカルシールの一例を図2に示す。このメカニカルシール31は、ハウジング50側に取り付けられる金属製のカラー32と、カラー32に溶接等によって連結される金属製のベローズ37と、ベローズ37に溶接等によって連結される金属製のアダプタ38と、アダプタ38に嵌合されるカーボン製のシールリング40と、ハウジング50に取り付けられるとともに、カラー32、ベローズ37、アダプタ38及びシールリング40と回転軸55との間に位置するバッフルスリーブ42と、回転軸55側に取り付けられる金属製のスリーブ47と、スリーブ47に嵌合されるアダプタ48と、アダプタ48に嵌合されるカーボン製のメイティングリング45とを具えている。
【0006】そして、回転軸55側に取り付けたメイティングリング45のシール端面46にハウジング50側に取り付けたシールリング40のシール端面41を接触させて、ベローズ37の付勢力によってシールリング40をメイティングリング45の方向に押圧し、この状態で回転軸55を回転させることにより、メイティングリング45のシール端面46とシールリング40のシール端面41とが相互に摺動接触して、回転軸55とハウジング50との間がシールされるものである。
【0007】また、ハウジング50にはバッフルスリーブ42の外周側に通じるクエンチング孔51が設けられていて、このクエンチング孔51からクエンチング液を注入することで、クエンチング液がバッフルスリーブ42の外周面を介してシールリング40とメイティングリング45との摺動面に導かれ、摺動面から漏れ出た流体がバッフルスリーブ42と回転軸55との間の隙間を介して排出孔52に導かれ、排出孔52から外部に排出されるものである。
【0008】しかしながら、上記のような構成のメカニカルシール31にあっては、カラー32の軸線方向外側のハウジング50の部分にクエンチング孔51が設けられるとともに、その外側にバッフルスリーブ42の固定用のねじ孔(図示せず)が設けられているため、ハウジング50の軸線方向への厚みが厚くなってしまう。このため、取付けスペースが軸線方向に長くなってしまい、取付けができない場合がある。また、全体としてコスト高となってしまう。さらに、ベローズ37の振動を抑制する機能を有していないため、ベローズ37が短期間で疲労してしまう。そして、回転形と静止形の両方に兼用できないため、それぞれの仕様に合わせたものを用意しなければならない。
【0009】この発明は前記のような従来のもののもつ問題点を解決したものであって、回転形と静止形の両方に兼用することができるとともに、静止形でバッフルスリーブを使用する場合であっても、ハウジングの軸線方向への厚みが厚くなるようなことがなく、取付けスペースが軸線方向に長くなって、取付けができなくなるようなことがないメカニカルシールを提供することを目的とするものである。また、ベローズの振動を抑制することができて、ベローズの耐久性を大幅に高めることができるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。さらに、回転形と静止形の両方に兼用できるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0010】
【問題点を解決するための手段】上記の問題点を解決するためにこの発明は、回転軸とハウジングとの間に設けられて両者間をシールするメカニカルシールであって、前記回転軸の軸線に垂直なシール端面を有するシールリングと、該シールリングにベローズを介して取り付けられるカラーと、前記シールリングのシール端面と接触する前記回転軸の軸線に垂直なシール端面を有するメイティングリングとを具え、前記カラーの内周面及び外周面にそれぞれOリング溝を設けるとともに、前記カラーの一部に、内外周面間を貫通するねじ孔を設けた手段を採用したものである。また、前記シールリング、前記ベローズ及び前記カラーと前記回転軸との間にバッフルスリーブを設けて、バッフルスリーブの一部を前記カラーに固定するとともに、前記カラーの一部に内外周面間を貫通するクエンチング孔を設けた手段を採用したものである。さらに、前記バッフルスリーブの外周側に微小隙間の絞り部を形成した手段を採用したものである。
【0011】
【作用】この発明は前記のような手段を採用したことにより、回転形として使用する場合には、カラーの内周側のOリング溝内にOリングを装着し、この状態でカラーを回転軸側に取り付けることによってカラーと回転軸との間がシールされることになる。また、静止形として使用する場合には、カラーの外周側のOリング溝内にOリングを装着し、この状態でカラーをハウジング側に取り付けることによってハウジングとの間がシールされることになる。また、カラーのクエンチング孔からクエンチング液を注入することで、クエンチング液がシールリングとメイティングリングとの摺動面に導かれ、摺動面から漏れ出た流体を外部に排出することができることになる。さらに、バッフルスリーブの外周側の絞り部によってベローズの振動を抑制することができることになる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。図1には、この発明によるメカニカルシールの一実施の形態が示されていて、この実施の形態によるメカニカルシール1は、回転軸25とハウジング20との間に装着されて、両者間をシールするベローズ形のメカニカルシールであって、カラー2と、カラー2に連結されるベローズ7と、ベローズ7に連結されるアダプタ8と、アダプタ8に嵌合されるシールリング10と、バッフルスリーブ12と、メイティングリング15とを具えている。
【0013】カラー2は、金属から形成される筒状をなすものであって、軸線方向の一端部の内外周面にはそれぞれ環状のOリング溝3、4が所定の深さで穿設されるとともに、軸線方向の他端部には内外周面間を貫通するねじ孔5とクエンチング孔6とが少なくとも1箇所に設けられ、軸線方向の一端面には軸線方向へのねじ孔(図示せず)が所定の深さで設けられるようになっている。
【0014】ベローズ7は、打抜き加工等によって波形環状に形成した金属製のダイアフラム板を複数枚一列に並べて、隣接するダイアフラム板の外径部間及び内径部間をガス溶接等によって交互に連結して、全体を蛇腹筒状に形成したものであって、一端がカラー2側にガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。
【0015】アダプタ8は、金属から形成される筒状をなすものであって、一端部内周面側には環状の段部9が形成され、この段部9内にシールリング10の外周側が嵌合されるようになっている。アダプタ8にはベローズ7の他端がガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。
【0016】シールリング10は、カーボンから形成される筒状をなすものであって、外周側をアダプタ8の段部9内に嵌合させることで、アダプタ8に一体に取り付けられるようになっている。シールリング10の軸線方向の一端面は回転軸25の軸線と垂直となるシール端面11に形成されている。
【0017】バッフルスリーブ12は、筒状に形成されるものであって、軸線方向の一端には径方向外方に環状に張り出る鍔部13が一体に形成されるようになっている。鍔部13の複数箇所には軸線方向に貫通する孔(図示せず)が設けられ、この孔を挿通したボルト23をカラー2のねじ孔5に螺合させて締め付けることで、カラー2にバッフルスリーブ12を固定することができるものである。
【0018】バッフルスリーブ12の外周面とアダプタ8の内周面との間には微小隙間の絞り部14が形成され、この絞り部14によってクエンチング液が流通する際のベローズ7の振動を小さく抑えることができ、ベローズ7の疲労を抑制することができるものである。
【0019】メイティングリング15は、カーボンから形成される筒状をなすものであって、軸線方向の一端面は回転軸25の軸線と垂直なシール端面16に形成されている。メイティングリング15は、回転形として使用する場合には、単独でハウジング20側に取り付けられ、静止形として使用する場合には、スリーブ17等を介して回転軸25側に取り付けられるようになっている。なお、19はスリーブ17とメイティングリング15との間をシールするOリングである。
【0020】ハウジング20にはカラー2のクエンチング孔6に通じるクエンチング孔21が設けられ、このクエンチング孔6、21からクエンチング液を注入することで、クエンチング液がバッフルスリーブ12の外周面を介してシールリング10とメイティングリング15との摺動面に導かれ、摺動面から漏れ出た流体をバッフルスリーブ12と回転軸25との間の隙間を介してハウジング20に設けられている排出孔22から外部に排出することができるものである。
【0021】そして、上記のように構成したメカニカルシール1を静止形として使用する場合には、図1に示すように、回転軸25にスリーブ17を嵌合させるとともに、スリーブ17の外周側にOリング19を介してメイティングリング15を嵌合させる。
【0022】そして、カラー2の外周面側のOリング溝4内にOリング18を装着し、この状態でカラー2、ベローズ7、アダプタ8及びシールリング10をハウジング20の内周側に位置し、カラー2をハウジング20の内周側に嵌合させ、カラー2のねじ孔5内に内周側からセットスクリュー24を螺合させ、所定のトルクで締め付けてカラー2をハウジング20側に固定する。
【0023】そして、カラー2、ベローズ7、アダプタ8及びシールリング10の内周側にバッフルスリーブ12を位置し、その鍔部13をカラー2の端面に接触させ、鍔部13の孔をカラー2のねじ孔に一致させ、鍔部13の孔にボルト23を挿通させてカラー2のねじ孔に螺合させ、所定のトルクで締め付けてバッフルスリーブ12をカラー2に固定する。
【0024】そして、バッフルスリーブ12の内周側に回転軸25を挿通させて、シールリング10のシール端面11とメイティングリング15のシール端面16とを相互に接触させ、ベローズ7の付勢力によって両端面を接近する方向に押圧する。
【0025】そして、回転軸25とハウジング20との間にシール部材26を装着し、両者間の軸線方向の一端部をシールする。
【0026】このようにして、カラー2、ベローズ7、アダプタ8及びシールリング10をハウジング20側に取り付け、メイティングリング15を回転軸25側に取り付け、この状態で回転軸25を回転させると、シールリング10のシール端面11とメイティングリング15のシール端面16とが相互に摺動接触して回転軸25とハウジング20との間がシールされるものである。
【0027】この場合、Oリング18が二次シールとして機能することによってハウジング20との間がシールされ、Oリング19が二次シールとして機能することによって回転軸25との間がシールされるものである。
【0028】一方、上記のような構成のメカニカルシール1を回転形として使用する場合には、図示はしないが、メイティングリング15をハウジング20側に固定するとともに、カラー2の内周側のOリング溝3内にOリング18を装着し、この状態でカラー2、ベローズ7、アダプタ8及びシールリング10の内周側に回転軸25を挿通させて、シールリング10のシール端面11をメイティングリング15のシール端面16に接触させ、カラー2のねじ孔5に外周側からセットスクリュー24を螺合させ、所定のトルクで締め付けてカラー2を回転軸25に固定すればよいことになる。
【0029】上記のように構成したこの実施の形態によるメカニカルシール1にあっては、カラー2の内外周面にOリング溝3、4を設けるとともに、カラー2に内外周面間を貫通するねじ孔5を螺設したことにより、回転形として使用する場合には、内周側のOリング溝3内にOリング18を装着して、ねじ孔5に外周側からセットスクリュー24を螺合させて締め付けることによってカラー2を回転軸25側に固定し、静止形として使用する場合には、外周側のOリング溝4内にOリング18を装着して、ねじ孔5に内周側からセットスクリュー24を螺合させて締め付けることによってカラー2をハウジング20側に固定すればよいことになる。
【0030】したがって、構造を変更することなく、回転形と静止形の両方に使用することができることになる。
【0031】また、静止形でバッフルスリーブ12を使用する場合には、カラー2にクエンチング孔6を設けるとともに、バッフルスリーブ12を固定するねじ孔を設けることにより、ハウジング20の軸線方向への厚みが厚くなるようなことがなくなる。
【0032】したがって、取付けスペースが軸線方向に長くなって、取付けが困難になるようなことがなくなる。また、ハウジング20の軸線方向の厚みを薄くできるので、全体としてのコストを下げることができるとともに、小さなスペースでもバッフルスリーブを備えたクエンチング機構を採用できるので、長寿命化が可能となる。
【0033】さらに、アダプタ8とバッフルスリーブ12との間に微小隙間の絞り部14を設けたことにより、クエンチング液が流通する際のベローズ7の振動を小さく抑えることができることになる。
【0034】したがって、ベローズ7の疲労を抑制することができ、耐久性を大幅に向上させることができることになる。
【0035】
【発明の効果】この発明は前記のように構成して、カラーの内周面及び外周面にそれぞれOリング溝を設けるとともに、カラーの一部に内外周面間を貫通するねじ孔を設けたことにより、回転形として使用する場合には、カラーの内周側のOリング溝内にOリングを装着し、この状態でカラーを回転軸側に取り付け、ねじ孔に外周側からねじを螺合させ、所定のトルクで締め付けることにより、カラー、ベローズ及びシールリングを回転軸側に固定することができることになる。また、静止形として使用する場合には、カラーの外周側のOリング溝内にOリングを装着し、この状態でカラーをハウジング側に取り付け、ねじ孔に内周側からねじを螺合させ、所定のトルクで締め付けることにより、カラー、ベローズ及びシールリングをハウジング側に固定することができることになる。したがって、構造変更することなく、回転形と静止形の両方に兼用できることになる。
【0036】また、カラーの一部に、内外周面間を貫通するクエンチング孔を設けたことにより、静止形でバッフルスリーブを使用する場合に、クエンチング孔を設けるためのスペースを軸線方向に大きく必要とすることがなくなる。したがって、ハウジングの軸線方向への厚みが厚くなるようなことはなく、取付けが困難となるようなことがなくなる。さらに、ハウジングの軸線方向への厚みを薄くできるので、小スペースでもバッフルスリーブを備えたクエンチング機構を採用でき、長寿命化が可能となる。さらに、ハウジングを薄くできるので、全体としてのコストを下げることができることになる。
【0037】そして、バッフルスリーブとの間に微小隙間の絞り部を形成したことにより、クエンチング液が流通する際のベローズの振動を小さく抑えることができることになる。したがって、ベローズの疲労を抑制することができ、耐久性を大幅に高めることができることになる。
【出願人】 【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
【出願日】 平成10年7月31日(1998.7.31)
【代理人】 【識別番号】100088074
【弁理士】
【氏名又は名称】中林 幹雄
【公開番号】 特開2000−46199(P2000−46199A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−217573