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【発明の名称】 シールリング、シールリングの製法
【発明者】 【氏名】野水 孝男

【要約】 【課題】2つの密接したシールリングの摺動面の間から内部に密封した潤滑油が漏出しないように、対向面を砥石により研磨することにより、同心円方向に研磨すると共にNC研磨機による研磨工程の全自動化により、研磨精度を向上させたシールリング及びシールリングの製法を提供することを目的とする。

【解決手段】請求項1のシールリングは、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、その1対のシールリングを対向させて密接させたときの対向面の内周側の傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その対向面の外周側の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、その傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とする>
【特許請求の範囲】
【請求項1】 装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とするシールリング。
【請求項2】 装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、そのシールリングの外周に形成され、Oリングを外装する傾斜面を有する凹形装着部をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する凹形装着部研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの凹形装着部研磨工程と、傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの外周面と対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とするシールリング。
【請求項3】 装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とするシールリングの製法。
【請求項4】 装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、そのシールリングの外周に形成され、Oリングを外装する傾斜面を有する凹形装着部をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する凹形装着部研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの凹形装着部研磨工程と、傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの外周面と対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とするシールリングの製法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であるシールリング及びシールリングの製法に関し、更に詳しくは、フローティングシールの1構成要素として1対からなるケーシング内に1対のOリングと共に対向して配設される1対のシールリングの、殊にその1対のシールリングの対向する対向面の摺動面と傾斜面を砥石により研磨する研磨方法とその研磨方法により研磨したシールリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7〜図16に基づき従来のシールリングの切削、研磨方法について詳細に説明する。図7に示す装軌式建設機械等の足回りの特徴は、履帯即ち無限軌道100を備えているため、極悪条件の所でも走行が可能であり、牽引力も大きいが、回転部と揺動部が直接土砂や泥水に触れ、岩盤地ではそこに直接衝撃負荷が加わり、苛酷な作業環境下で使用される。図8〜図10に示すように、その無限軌道としての履帯100の誘動輪101、起動輪102、上転輪103、下転輪104の夫々の回転部には、フローティングシール110が装着されており、そのフローティングシール110は、内面に傾斜面111a,111bを有する1対のケーシング112a,112bと、内周に内筒面113a,113b、外周に傾斜面を有する凹形装着部114a,114bを備えた1対のシールリング115a,115bと、ケーシング112a,112bの内周の傾斜面111a,111bとシールリング115a,115bの外周の凹形装着部114a,114bとの間に弾性変形させられて挟装される1対のOリング116a,116bとにより構成される。それらのケーシング112a,112b、シールリング115a,115b、Oリング116a,116bは、対向する状態で組込まれており、1対のケーシング112a,112bは固定ケーシング112aと回転ケーシング112bであり、固定ケーシング112aには固定シールリング115aが、回転ケーシング112bには回転シールリング115bが夫々Oリング116a,116bを介して装着されている。その1対のシールリング115a,115bは、1対のケーシング112a,112b内に対向して配設され、回転ケーシング112bと回転シールリング115bが回転可能に装着されている。その1対のシールリング115a,115bの対向面の外周側の摺動面117a,117bは、夫々の1対のケーシング112a,112bとシールリング115a,115bの間に弾性変形させられて挟装されているOリング116a,116bの弾性変形により生ずる押圧力により所定の面圧で密接させられた状態で摺動する。それらの1対のOリング116a,116bが密接されているケーシング112a,112bの傾斜面111a,111bとの密接部と、シールリング115a,115bの凹形装着部114a,114bとの密接部、及び、対向する1対のシールリング115a,115bの摺動面117a,117b同志の密接部は、シール性を備え、対向面の内筒面113a,113b側の球面の一部からなる両傾斜面118a,118bの間の間隙に密封された潤滑油が漏出しないと共に泥水や土砂或は汚泥などの侵入を防止している。従って、装軌式建設機械等が如何なる状態にあってもその1対のシールリング115a,115bの当接面である摺動面117a,117bは、摺動可能、回転可能に密接し、且つ、内側に密封された潤滑油が漏出しないように極めて精密に形成される必要がある。105は、軸、106は、カラー、107は、鍔付ブッシュ、108は、潤滑油、矢印は、外部よりの泥水、土砂、砂利の侵入経路を示す。
【0003】それらの同軸105線上に対向して配設される1対のシールリング115a,115bの内の回転シールリング115bが回転するとき、それらのシールリング115a,115bの対向面の外周側の摺動面117a,117bが密接し且つ極めて滑らかに摺動するように、極めて精密に形成するする必要があり、そのために、従来は、図11以下に示す手順で製造されていた。先ず始めに、外周にOリング116を外装可能な傾斜面を有する凹形装着部114を備えた環状のシールリング115の原形を製造する。(図11)
その製造したシールリング115の外周の対向面側に突設したフランジの外周121、及び、シールリング115の外周側のOリング116を装着する凹形装着部114を図示しないバイトで同様に切削する。(図12)
このように機械的にバイトにより切削して外形を整えた多数の環状のシールリング115,115を、1200Rや2000Rなどの球面の一部122aを備え、軸芯を中心に水平方向に回転する球面ラップ盤122上に載置し、多数の環状のシールリング115,115のうちの数個単位のシールリング115,115に押圧盤123,123により球面ラップ盤122の軸芯に向って(矢印)押圧しながら球面ラップ盤122を水平方向に回転してシールリング115,115の対向面の傾斜面118,118を油や水に溶解した研磨剤により研磨する。(図13)
このようにして球面ラップ盤122により傾斜面118を研磨したシールリング115,115を洗浄剤を使って油や水に溶解した研磨剤を1点も残さないように完全に洗浄する。そのとき、例え1つの研磨剤が残っていても、その研磨剤が次工程で大変な悪影響を発生させるので、十分且つ完全に洗浄する必要がある。(図示せず)
こうして洗浄したシールリング115,115を、1200Rや2000Rなどの平面状の平滑面124aに形成され、軸芯を中心に水平方向に回転する平面ラップ盤124上に載置し、個別に荷重体125,125を載置し、その荷重体125,125により平面ラップ盤124の軸芯に向って(矢印)押圧しながら平面ラップ盤124を水平方向に回転してシールリング115,115の対向面の外周側の摺動面117を研磨する。(図14)
これらの研磨したシールリング115,115を再度洗浄剤を使って洗浄する。(図示せず)
以上の工程を経て製造されたシールリング115,115の対向面の摺動面117と傾斜面118には、図15に示すような綾模様119が形成される。この綾模様19の形成されたシールリング115,115を図10に示したように同一軸線上に対向させて配設し、その当接した摺動面117,117を拡大すると、極めて微細ではあるが、図16に示すようにな僅かな間隙119a,119aが見られ、苛酷な条件下における装軌式建設機械等の作動により回転シールリング115aと固定シールリング115bの僅かな間隙から、対向するシールリング115a,115b内に密封された潤滑油108が漏出し故障する。このような事故や故障をなくするために、対向するシールリング115a,115bの傾斜面118と摺動面117とは、極めて平滑に、且つ、密接できるように精密加工される必要がある。以上のようなシールリング115の製造方法は、履帯100を備えた装軌式建設機械が日本に導入された当初から採用されていたシールリングの製造方法であり、従来から当業者にとって熟知された自明なシールリングの製造方法であるにも拘らず、「・・・・・固定シールリングと回転シールリングのテーパー面を、・・・同一方向目で研削し、装着時に両シールリングの方向目がクロスした状態で対向する・・・・・」という特公平5−43325のフローティングシール装置が公告されているが、装軌式建設機械等の作動条件は、大変苛酷ではあるが、それらの走行スピードは大変遅く、従って、フローティングシールとシールリングの回転数は少なく、遠心力が作用するほどの力はなく、十分な効果が認められなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来のシールリングは、外周の傾斜面をバイトにより機械的に切削した上で、球面ラップ盤により研磨したのち油或は水に溶解した洗浄剤により洗浄し、残留洗浄剤のないことを目視確認検査し、更に平面ラッフル盤により研磨し、再度油或は水に溶解した洗浄剤により洗浄し、残留洗浄剤のないことを再度目視確認検査するという多段階の工程を経て製造され、その過程には機械化不能な目視確認検査工程がある上に、洗浄不良による後工程の悪影響などの諸々の不都合がある。又、前述の球面・平面ラップ盤による綾模様による極めて微細な間隙は、2つのシールとOリングの間に密封された潤滑油漏出の原因ともなっている。更に、球面・平面ラップ盤の研磨では、均一かつ真正な球面或は平面に研磨することができず、シールリングの摺動面と傾斜面の精度が低下するという困難な問題があった。そこで当社では、種々の検討を加えて試作した結果、第1に、2つの対向するシールリングの摺動面と傾斜面に綾模様ではなく、摺動面と傾斜面を円盤形のグラインダー形砥石により円周方向にシールリングとすることで解決した。そのシールリングの摺動面と傾斜面には、同芯円状の研磨跡が残ることとなるが、鏡面研磨を施せば、更に効果的である。以上のように、グラインダー形砥石によりシールリングの摺動面と傾斜面を円周方向に添ってすることにより、シールリングの磨工程を全自動化することができるようになり、その結果、製造コストの大幅削減効果を得た。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係るシールリング、シールリングの製法は、以上のような課題を解決するものであって、次のようなものである。請求項1のシールリングは、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とする。
【0006】請求項2のシールリングは、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、そのシールリングの外周に形成され、Oリングを外装する傾斜面を有する凹形装着部をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する凹形装着部研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの凹形装着部研磨工程と、傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの外周面と対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とする。
【0007】請求項3のシールリングの製法は、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とする。
【0008】請求項4のシールリングの製法は、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシールの1構成要素であり、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を有する環状のシールリングであって、そのシールリングの外周に形成され、Oリングを外装する傾斜面を有する凹形装着部をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する凹形装着部研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の内周側に形成される円錐の台形の一部からなる傾斜面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する傾斜面研磨工程と、その1対のシールリングを対向させて密接させたとき、密接するシールリングの対向面の外周側に形成される平坦な環状の摺動面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨する摺動面研磨工程と、を備え、それらの凹形装着部研磨工程と、傾斜面研磨工程と、摺動面研磨工程とによりシールリングの外周面と対向面をグラインダー形砥石により円周方向に研磨することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】鋳造、鍛造、板金、プレスなどにより、内周に内筒面を有し、外周にOリングを外装する傾斜面を備えた凹形の装着部を備えた環状のシールリングの原形を製造したのち、そのシールリングの原形の凹形のOリング装着部、2つのシールリングを対向させたときの対向面の外周側の摺動面、その対向面の内周側の傾斜面を円盤形の砥石即ちグラインダー形砥石により円周方向に研磨する。そのとき、シールリングの摺動面、傾斜面、凹形の装着部には、鏡面研磨する場合を除き同心円状の研磨痕跡が残ることとなる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図示例に従って順次説明する。図1は、摺動面と傾斜面に同心円方向に研磨したシールリングの斜視図、 図2は、摺動面と傾斜面を同心円方向に研磨したシールリングの平面図、 図3は、2つのシールリングを対向させた状態の要部拡大縦断面図付要部拡大縦断面図である。
【0011】図1〜図3に基づき説明する。図10に示したように、装軌式建設機械等の走行装置などに装着されるフローティングシール110は、内面に傾斜面111(111a,111b)を有する固定ケーシング112aと回転ケーシング112bとからなる1対のケーシング112と、内周に軸105を挿入する内筒面113(113a,113b)を有し、外周にOリング116(116a,116b)を外装するための傾斜面を備えた凹形の装着部114(114a,114b)を備えた固定シールリング115aと回転シールリング115bからなる1対のシールリング115と、ケーシング112(112a,112b)の内周の傾斜面111とシールリング115の外周の凹形の装着部114との間に弾性変形させられて挟装される1対のOリング114とにより構成されている。(以上は、従来例と同一であり、以下、符号を改めて説明する)図1、図2に示すように、そのシールリング1は、外周にOリングを外装する傾斜面を備えた凹形の装着部2を備え、内周に内筒面5を備え、その2つのシールリング1,1を対向させて密接したとき、それらの対向する対向面の外周部に平滑な環状の摺動面3を備え、その摺動面3の内筒面5側には、縦断面が円錐形の台形の一部からなる傾斜面4を備えた環状体として形成されている。このシールリング1,1を前述のようにケーシング内に同一軸線上に装着したとき、即ち、同一軸(実施例では図示せず)に外装したとき、シールリング1,1の外周の凹形装着部2に外装した夫々のOリング(実施例では図示せず)の弾性変形により生ずる押圧力により、2つのシールリング1,1の対向する摺動面3,3は、所定の面圧で密接させられた状態で摺動可能となっている。従って、対向するシールリング1,1の内側の傾斜面4,4の間には間隙6が形成され、その間隙6には、従来と同様潤滑油が密封されており、当接させられた両摺動部3,3の間から潤滑油が漏出しないように、Oリングの弾性変形により生ずる押圧力により密接されている。従って、従来の綾目模様に研磨された対向面のシールリングでは、図16に示したように、密接された両摺動部3,3間の間隙から潤滑油が漏出する可能性が強かった。そこで、開発者は、対向面の傾斜面4を球面の一部からなる傾斜面4ではなく、円錐形の台形からなる凹部の一部からなる傾斜面を形成すれば、図1、図2に示すように、摺動面3と傾斜面4を円盤状のグラインダー型の砥石により同心円方向に研磨することができ、綾目模様の研磨痕跡の欠陥を排除できるうえに、NC研磨機による全自動かが可能であると考えた。又、このようにして研磨すると、摺動部3及び傾斜面4には僅かではあるが同心円状の研磨痕跡7,7が残ることになる(理想的には、鏡面研磨であり、その場合は研磨痕跡が残らず)。図3に示すように、その同心円方向に研磨した2つのシールリング1,1を対向させた位置でケーシング内に配設すると、従来の綾目模様のシールリングとは異なり、潤滑油が軸心から放射方向に向って同心円状の研磨痕跡7,7の乗り越え辛く、Oリングの弾性変形押圧力により密接させられた両摺動面3,3の間から潤滑油が漏出し辛くなる。このような潤滑油が漏れ辛いフローティングシール用シールリング1,1を造るため、以下に詳述する工程により、シールリング1,1を製造したところ、大変好結果が得られた。
【0012】図4は、グラインダー型砥石によるシールリングの外周面のOリング装着部を研磨する製造工程の説明断面図、 図5は、グラインダー型砥石によるシールリングの対向面の摺動面を研磨する製造工程の説明断面図、 図6は、グラインダー型砥石によるシールリングの対向面の傾斜面を研磨する製造工程の説明断面図である。
【0013】図4〜図6に基づき実施例を説明する。鋳造、鍛造、板金、プレス、熔着、その他の手段によりシールリング1,1の原形を製造する。そのシールリング1,1の原形は、外周にOリングを外装するための傾斜面を備えた凹形の装着部2を有し、1対のシールリング1,1を対向させたときの対向面の外周側に設けられた平坦な環状の摺動面3を有し、その摺動面3の内周側に隣接して設けられ、縦断面が円錐形の台形の一部からなる環状の傾斜面4を有し、その傾斜面4の内周に軸を挿入する内筒面5を有する環状体として形成されている。その環状体であるシールリング1の外周の凹型装着部2、対向面の環状の摺動面3、及び、対向面の環状の傾斜面4をグラインダー型或はグラインダー型砥石により研磨する。その研磨工程は、以下に詳述するように、凹型装着部研磨工程11、摺動面研磨工程12及び傾斜面研磨工程13からなり、その順序は、必要に応じて任意に選択することができる。
【0014】図4に示すように、凹型装着部研磨工程11は、環状のシールリング1の外周に備えられ、図示しないOリングを外装する傾斜面を備えた凹形装着部2を研磨する工程であり、その凹型装着部研磨工程11は、凹形装着部2に線密接或は線密嵌する形状の外周を備えたグラインダー形砥石15により、その凹形装着部2を研磨する工程である。更に詳述する。凹型装着部研磨方法11は、以下の通りである。先ず始めに、シールリング1の凹形装着部2に線密接或は線密嵌可能な形状の外周面を備えたグラインダー形砥石15を用意し、そのシールリング1を図示しない固定具により固定する。次に、そのシールリング1の凹形装着部2に或はシールリング1を軸芯を中心に自転させた状態の凹形装着部2にグラインダー形砥石15の外周面を押圧させながらグラインダー形砥石15を軸芯を中心に自転させると共にシールリング1の軸芯を中心に外周を公転させて研磨する。そのグラインダー形砥石15は、当初実線で図示した位置にあり、自転しながらシールリング1の外周の凹形装着部2を研磨しながらシールリング1の外周に添って公転し、一点破線で図示したシールリング1の外周の対向位置に到達し、更に公転を続け、当初の実線で図示した位置に到達する。更に公転を繰り返し、シールリング1の外周の凹形装着部2を研磨する。その時、グラインダー形砥石15の外周の円周と、シールリング1の凹形装着部2の外周の円周とは、面ではなく1本の線として線密接或は線密嵌している。逆に、シールリング1によりグラインダー形砥石15の外周を公転させて研磨することもできる。以上のようにして、シールリング1の外周の凹形装着部2をグラインダー形砥石15により円周方向に研磨する。
【0015】次いで、図5に示すように、摺動面研磨工程12は、対向する1対のシールリング1,1の対向面の外周側の平坦部である環状の摺動面3を研磨する工程であり、その摺動面研磨工程12は、前記の場合と同様に、摺動面3に線密接する形状の外周を備えたグラインダー形砥石16により、その摺動面3を研磨する工程である。更に詳述する。摺動面研磨工程12は、シールリング1の摺動面3に線密接可能な外周面を備えたグラインダー形砥石16を用意し、そのシールリング1を図示しない固定具により固定する。次に、そのシールリング1の摺動面3に或はシールリング1を軸芯を中心に自転させた状態の摺動面3にグラインダー形砥石16の外周面を線密接させて押圧させながらグラインダー形砥石16を軸芯を中心に自転させると共にシールリング1の軸芯を中心に外周を円周方向に添って公転させて研磨する。そのグラインダー形砥石16は、当初実線で図示した位置にあり、自転しながらシールリング1の摺動面3を研磨しながらシールリング1の摺動面3に添って公転し、一点破線で図示したシールリング1の摺動面3の央部に図示したグラインダー形砥石16aの位置に到達し、公転を続け、一点破線で図示したシールリング1の摺動面3の央部に図示したグラインダー形砥石16bの位置に到達し、更に公転を続けて、図示しないグラインダー形砥石16cの位置に到達し、そして、当初の実線で図示した位置に到達する。更に公転を繰り返し、シールリング1の摺動面3を研磨する。その時、グラインダー形砥石16の外周の円周と、シールリング1の摺動面3とは、面ではなく1本の線として線密接している。尚、シールリング1によりグラインダー形砥石16の外周を公転させて研磨することもできる。以上のようにして、シールリング1の摺動面3をグラインダー形砥石16により円周方向に研磨する。
【0016】図6に示すように、今一つ傾斜面研磨工程13は、対向する1対のシールリング1,1の対向面の摺動面3に隣接する内面側の傾斜面4を研磨する工程であり、その傾斜面研磨工程13は、傾斜面4に線密接する形状の外周を備えたグラインダー形砥石17により、その傾斜面4を研磨する工程である。更に詳述する。傾斜面研磨工程13は、以下の通りである。先ず始めに、シールリング1の傾斜面4に線密接可能な形状の外周面を備えたグラインダー形砥石17を用意し、そのシールリング1を図示しない固定具により固定する。次いで、そのシールリング1の傾斜面4に或はシールリング1を軸芯を中心に自転させた状態の傾斜面4にグラインダー形砥石17の外周面を押圧させながらグラインダー形砥石17を軸芯を中心に自転させると共にシールリング1の軸芯を中心に外周を円周方向に添って公転させて研磨する。そのグラインダー形砥石17は、当初実線で図示した位置にあり、自転しながらシールリング1の傾斜面4を研磨しながらシールリング1の傾斜面4に添って公転し、一転破線で図示したシールリング1の傾斜面4の央部に図示したグラインダー形砥石17aの位置に到達し、公転を続け、一点破線で図示したシールリング1の傾斜面4の央部に図示したグラインダー形砥石17bの位置に到達し、更に公転を続けて、図示しないグラインダー形砥石17cの位置に到達し、そして、当初の実線で図示した位置に到達する。更に公転を繰り返し、シールリング1の傾斜面4を研磨する。その時、グラインダー形砥石17の外周と、シールリング1の傾斜面4の外周の円周とは、面ではなく1本の線として線密接している。尚、シールリング1によりグラインダー形砥石17の外周を公転させて研磨することもできる。以上のようにして、シールリング1の傾斜面4をグラインダー形砥石17により円周方向に研磨する。
【0017】尚、図示しないが、図5のグラインダー形砥石16の外周の形状を摺動面3傾斜面4に同時に線密接可能な形状とすることにより、摺動面研磨工程12と傾斜面研磨工程13を1つの対向面研磨工程とすることも可能である。
【0018】以上のような研磨工程により研磨されるシールリングとシールリングの製法なので、シールリング1の凹形装着部2に線密接或は線密嵌可能な形状の外周面を備えたグラインダー形砥石15を用意すれば、その凹形装着部2をグラインダー形砥石15で研磨することができるようになった。又、シールリング1,1の対向面の傾斜面を球面の一部からなる傾斜面ではなく、円錐形の台形の一部からなる傾斜面4としたので、一般に市販されている円盤状のグラインダー型の砥石16,17によりその傾斜面4と共に摺動面3を円周方向に研磨できるようになり、従来のラップ盤による研磨では難しかった自動研磨ができるようになった。上記のようにして凹形装着部2、摺動面3及び傾斜面4をグラインダー型の砥石15,16,17により研磨するのであるから、その摺動面3と傾斜面4には同心円状の研磨痕跡7,7が形成されるから、2つのシールリング1,1の対向面の傾斜面4,4の間に密封された潤滑油が、緊密に密接した摺動面3,3の同心円状の環状の研磨痕跡7,7である凹凸を乗り越え、その緊密に密接した両摺動面3,3の間から漏出することがなくなった。その摺動面3と傾斜面4を研磨痕跡7,7が残らないように鏡面仕上すると、より一層効果的である。又、原形が製造されたシールリング1,1の外形(凹形装着部2、摺動面3及び傾斜面4)を円盤状のグラインダー形砥石15〜17により研磨するので、水や油に溶解した研磨剤を使用していなく、研磨剤の残留残滓がないから、簡単な洗浄工程でシールリング1,1の十分な洗浄が可能となり、目視確認検査工程が無用となり、シールリング1,1の原型製造後の全工程をNC機械による自動化が可能となり、その結果、工程間の段取り換え作業もなくなり、製造コストが大幅に低減され、殊に、シールリング1,1が大径になるほど作業効率が向上し、製造コストの低減効果が大きくなる。上記のような製造工程により製造した70φのシールリング1,1を製造する場合と、従来の製造工程により製造した70φのシールリング1,1を製造する場合の1例を比較すると、以下のようになる。従来の工程による場合は、製造したシールリングをバイトにより機械的に切削し外形を整える・・・・・・・・ 120分そのシールリングの傾斜面を球面ラップ盤で研磨する・・・・・・・・ 40分そのシールリングを洗浄剤で洗浄する・・・・・・・・ 20分そのシールリングの摺動面を平面ラップ盤で研磨する・・・・・・・・ 20分合計時間 ・・・・・ 200分グラインダー型の砥石による研磨の場合(NC研磨機による)
製造したシールリングを上記研磨工程11,12,13に従いNC自動研磨機により研磨する・・・・・・・・・ 30分以上の比較例で分かる通り、製造した70φのシールリングを25個を従来通りバイトにより機械的切削し、球面・平面ラップ盤により研磨する所要時間が、200分要していたが、グラインダー型の砥石11,12,13による簡素化された研磨工程11,12,13で自動化したNC研磨機によりシールリングを研磨する方法では使用時間が、30分で完了してしまう上に、洗浄剤を使う洗浄工程が無用化或は簡易化できるという効果も生まれた。更に、不良品が発生したときの原因追求が容易になり、その成果が次回以降のシールリングの製造時に容易に活かせるようになった。砥石を使用するので、球面ラップ盤や水平ラップ盤の場合と異なり、常に精度の高い研磨面を備えたシールリングが得られるから、殊に、2つのシールリングの対向面である摺動面と傾斜面の加工精度が大変優れており、Oリングの押圧力による緊密接度が高く、シールリングの両傾斜面間に密封された潤滑油の漏出による事故が激減した。
【0019】
【発明の効果】本発明に係るシールリング、シールリングの製法は、以上のような構成を備えているので、以下に列記するような諸々の効果を奏する。以上のような製造工程により製造されるシールリングとシールリングの製法なので、シールリングの凹形装着部に線密接或は線密嵌可能な形状の外周面を備えたグラインダー形砥石を用意することにより、その凹形装着部をグラインダー形砥石で研磨することができるようになった。
【0020】又、以上のような製造工程により製造されるシールリングとシールリングの製法であり、シールリングの対向面の傾斜面を球面の一部からなる傾斜面ではなく、円錐形の台形の一部からなる傾斜面としたので、一般に市販されている円盤状のグラインダー型の砥石によりその傾斜面を研磨できるようになり、その傾斜面に同心円状の研磨痕跡が残ると、2つのフローティングシールの対向面の間に密封された潤滑油が、緊密に密接した摺同面と傾斜面の同心円状の研磨痕跡からなる環状の凹凸を乗り越え、その緊密に密接した両摺同面の間から漏出することが難しくなり、その摺同面と傾斜面を鏡面仕上すると、更に一層効果的である。
【0021】又、製造されたシールリングの原型の外形を円盤状のグラインダー型の砥石により研磨(凹型装着部研磨工程、摺動面研磨工程及び傾斜面研磨工程)するので、水や油に溶解した研磨剤を使用しないから、シールリングの洗浄工程が至って簡単且つ容易となり、原型製造後の全工程をNC機械による自動化が可能となり(従来の方法では、洗浄状態の目視確認検査があるため研磨工程の全自動化は、不可能であった)、工程間の段取り作業もなくなり、製造コストが大幅に低減され、殊に、シールリングが大径になるほど作業効率が向上し、製造コストの低減効果が大きくなる。
【0022】グラインダー形砥石を使用するので、球面ラップ盤や水平ラップ盤と異なり、常に精度の高い研磨面を備えたシールリングが得られるから、2つのシールリングの対向面である摺動面と傾斜面の加工精度が大変優れており、Oリングの押圧力による緊密接度が高く、シールリングの両傾斜面間に密封された潤滑油の漏出による事故が激減した。
【0023】更に、グラインダー形砥石による研磨は、研磨剤を使うラップ盤研磨とは異なり、シールリングに付着した研磨剤を取り払う洗浄工程がなく、シールリング洗浄工程を簡易化できる上に、不良品が発生したときの原因追求が容易になり、その成果が次回以降のシールリングの製造時に容易に活かせるようになった。
【出願人】 【識別番号】594054036
【氏名又は名称】三條金属株式会社
【出願日】 平成10年7月29日(1998.7.29)
【代理人】 【識別番号】100099863
【弁理士】
【氏名又は名称】中倉 和彦
【公開番号】 特開2000−46197(P2000−46197A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−213969