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【発明の名称】 密封装置
【発明者】 【氏名】庄島 大八

【要約】 【課題】カット部を有する複数のバックアップリングの位置の入れ替わりを防ぎ、シール性や信頼性並びに寿命等を向上させることを可能とする密封装置を提供する。

【解決手段】カット部を有するシールリングを隣接させて複数備えた密封装置において、隣り合う第1及び第2バックアップリング3,4(シールリング)のカット部3a,4aのカット面の方向を異ならせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カット部を有するシールリングを隣接させて複数備えた密封装置において、隣り合うシールリングのカット部のカット面の方向を異ならせたことを特徴とする密封装置。
【請求項2】 前記シールリングのカット部の先端にアール処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カット部を有するシールリングを隣接させて複数備えた密封装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、高圧の密封流体(作動油)が作用する装置の駆動力伝達部等において、ハウジングの軸孔内周面と該軸孔に挿通される軸の外周面との間の環状隙間からの密封流体の漏れを防止するために密封装置が備えられている。
【0003】図6は、このような密封装置100の概略構成を説明する断面構成説明図である。図6において、ハウジング101の軸孔101aと軸102は同軸的に配置されており、軸102は目的に合わせて停止/回転動/揺動/往復動等の動作がなされる。
【0004】軸102の外周面102aには断面矩形状の環状溝102bが設けられ、大気側Tから密封流体の封入されている密封側Mに向けて、第1バックアップリング103、第2バックアップリング104、ゴム状弾性体によるOリング105が備えられている。
【0005】第1及び第2バックアップリング103,104は、Oリング105が密封流体の圧力Pを受けた時にハウジング101の軸孔101aと軸102の外周面102aの間の環状隙間106へとはみ出してしまうことを防止している。
【0006】これらバックアップリングとしては、Oリング105を介して圧力を受けた場合に大きく弾性変形(環状隙間106へのはみ出し)してしまわず、且つ摺動抵抗の小さな材料(例えばPTFE等のフッ素系樹脂材料)が選択されている。
【0007】また、2つのバックアップリングは、環状溝102bへの装着性と、圧力が加わった際に拡径して軸孔101aに密接するために、バイアスカット103a,104aによる割りが入っている。
【0008】図7(a)はこのバイアスカット103a,104aをラジアル方向(図6におけるV1−V1矢視)より見た状態を示し、図7(b)はバイアスカット103aをスラスト方向(図7(a)におけるV2−V2矢視)より見た状態を示している。
【0009】このようなバイアスカットは、圧力や温度によって割りが容易に閉じることから、バックアップリングの周方向に対して略直交する面を端面とするストレートカットと共に製造工程も簡単なことから一般的に採用されている。
【0010】尚、2つのバックアップリングの機能として、第1のバックアップリング103は環状溝102bの壁面に直接当接することから剛性を必要とし、第2のバックアップリング104はOリング105の傷つきを防止するために柔らかさが求められることより、第1のバックアップリング103を第2のバックアップリング104よりも硬く設定することが行なわれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、軸102の動作(回転動、揺動、往復動あるいは振動等)と圧力PによるOリング105の押圧動作等が関係し、第1のバックアップリング103と第2のバックアップリング104との位置が入れ替わるという現象が発生することがある。
【0012】この現象は、図8に示されるように、拡径した際にバイアスカット103a,104aが開き、隣接する他のバックアップリングの端部同志が交差して位置を入れ替えてしまうというものである。
【0013】従って、このような現象が発生すると、バックアップリングの変形による密封装置としてのシール性の低下や、硬い第1のバックアップリング103がOリング105と接触して損傷させる虞(図8の領域R1部)があり、信頼性や寿命の低下につながることが懸念されていた。
【0014】本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、カット部を有する複数のバックアップリングの位置の入れ替わりを防ぎ、密封装置のシール性や信頼性並びに寿命等を向上させることを可能とする密封装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明にあっては、カット部を有するシールリングを隣接させて複数備えた密封装置において、隣り合うシールリングのカット部のカット面の方向を異ならせたことを特徴とする。
【0016】これにより、隣り合うシールリングのカット部のカット面の方向が異なることから、カット部同志が近接した場合において、カット部が交差してシールリングの位置を入れ替えてしまうことが防止される。
【0017】前記シールリングのカット部の先端にアール処理を施すことも好適である。
【0018】これにより、隣接するバックアップリングを傷つけたり、カット部自体のエッジがこぼれた場合に異物となり、当接面にかみ込んで損傷や摩耗を発生させることが防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1〜図2は本発明を適用した第1の実施の形態における密封装置1の構成を説明する図である。図1においては、密封装置1が軸102に設けた溝102bに嵌め込まれ、2対向面としてのハウジング101の軸孔101aと軸102の外周面102aの間の環状隙間106をシールしている状態を説明する要部断面図(軸方向に切断した図)である。
【0020】図1において、ハウジング101の軸孔101aと軸102は同軸的に配置されており、軸102は目的に合わせて停止/回転動/揺動/往復動等の動作がなされる。
【0021】軸102の外周面102aには断面矩形状の環状溝102bが設けられ、大気側Tから密封流体の封入されている密封側Mに向けて、シールリングとしての第1バックアップリング3と第2バックアップリング4、ゴム状弾性体によるOリング5が備えられている。
【0022】第1及び第2バックアップリング3,4は、Oリング5が密封流体の圧力Pを受けた時にハウジング101の軸孔101aと軸102の外周面102aの間の環状隙間106へとはみ出してしまうことを防止している。
【0023】これらバックアップリングとしては、Oリング5を介して圧力を受けた場合に大きく弾性変形(環状隙間106へのはみ出し)してしまわず、且つ摺動抵抗の小さな材料(例えばPTFE等のフッ素系樹脂材料)が選択されている。
【0024】また、2つのバックアップリングは、環状溝102bへの装着性と、圧力が加わった際に拡径して軸孔101aに密接するために断面略矩形状であり、カット部としての「割り」、即ち、各バックアップリングの周方向に対して傾いたバイアスカット3a,4aが形成されている。
【0025】図2(a)はこの第1及び第2バックアップリング3,4をバイアスカット3a,4aが見えるラジアル方向(図1におけるV3−V3矢視)より示した状態を示し、図2(b)は第1バックアップリング3のバイアスカット3aをスラスト方向(図2(a)におけるV4−V4矢視)より見た状態、図2(c)は第2バックアップリング4のバイアスカット4aをスラスト方向(図2(a)におけるV4−V4矢視)より見た状態を示している。
【0026】また、図3(a),(b)は、各バックアップリング3,4を独立させて示した斜視図である。
【0027】このように、第1のバックアップリング3のバイアスカット3aは、矢印A1で示されるスラスト方向に対して平行となるカット面を有し、第2のバックアップリング4のバイアスカット4aは、矢印A2で示されるラジアル方向に対して平行となるカット面を有していることから、それぞれのカット面の方向が異なり、軸102の動作によってカット部同志が近接した場合においても、カット部が交差してシールリングの位置を入れ替えてしまうことが防止される。
【0028】この実施の形態において、Oリング5側のバックアップリング4にラジアル方向に対して平行となるカット面を備えたことは、圧力PによりOリング5が押圧された際にカット面が倣い、バックアップリング4におけるはみ出しを防止させる効果を得るためである。
【0029】尚、バイアスカットとしては、カット面を平面とすることで直刃のカッター等や機械加工により簡単に形成することが可能となるが、波形刃のカッターや成形加工によって波形状の切断面とすることも可能である。
【0030】また、従来技術と同様に第1のバックアップリング3を第2のバックアップリング4よりも硬く設定して耐圧性向上を図ることができる。
【0031】(実施の形態2)図4に第2の実施の形態におけるバックアップリング13,4を示す。図4は第1の実施の形態の図2に対応するもので、図4(a),(b),(c)の関係は図2と同じである。
【0032】但し、バックアップリング3に代えてバックアップリング13をバックアップリング4の隣に配置させた状態である。
【0033】このバックアップリング13は、バックアップリング4と同様にラジアル方向に対して平行となるカット面のバイアスカット13aを有しているが、このバイアスカット13aは、バックアップリング4のバイアスカット4aのカット面とは反対方向に傾斜するカット面を有するものである。
【0034】このような、バックアップリング13とバックアップリング4の組み合わせによっても、それぞれのカット面の方向が異なり、軸102の動作によってカット部同志が近接した場合においても、カット部が交差してシールリングの位置を入れ替えてしまうことが防止される。
【0035】(実施の形態3)図5に第3の実施の形態におけるバックアップリング23,24を示す。図5(a),(b)は、バックアップリング23,24の一部を切断し、カット部23a,24aを露出させている。
【0036】発明者の実験によると、隣接したバックアップリング同士は、使用において周方向に相対回転することになり、カット部がエッジ状であると相手側バックアップリングを傷つけたり、カット部自体のエッジがこぼれた場合に異物となり、当接面にかみ込んで損傷や摩耗を発生させることが確認された。
【0037】従って、バイアスカットにおける軸方向端面側のエッジ23b,23c,24b,24cにアール付けを行なうことで、隣接したバックアップリング同士の損傷を低減することができた。
【0038】また、バックアップリング23では、鋭角となったエッジ23dにアール付けを行なうことにより、エッジのこぼれを防止することができた。
【0039】
【発明の効果】上記発明の実施の形態に説明されるように、本発明を適用した密封装置によると、カット部を有する複数のシールリングの位置の入れ替わりを防ぎ、密封装置のシール性や信頼性並びに寿命等を向上させることが可能となる。
【0040】シールリングのカット部の先端にアール処理を施すことにより、隣接するバックアップリングを傷つけたり、カット部自体のエッジがこぼれた場合に異物となり、当接面にかみ込んで損傷や摩耗を発生させることが防止できる。
【出願人】 【識別番号】000004385
【氏名又は名称】エヌオーケー株式会社
【出願日】 平成10年7月29日(1998.7.29)
【代理人】 【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信 (外2名)
【公開番号】 特開2000−46195(P2000−46195A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−228662