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【発明の名称】 メタルガスケット
【発明者】 【氏名】浮田 和彦

【要約】 【課題】メタルガスケット及び装着部材の塑性変形を防止し,2つの装着部材間のシール性を確保,維持することができるメタルガスケットを提供すること。

【解決手段】対向する2つの装着部材(シリンダヘッド71,シリンダブロック72)の間に配設するためのメタルガスケット1において,該メタルガスケット1は上記装着部材にガスケット板11,12が接し,上記両装着部材の間を連通させるガスケット孔10を有する。また,該ガスケット孔10の周縁には,該ガスケット孔10に向かって開口すると共に上記メタルガスケット1の厚み方向に拡大するように配設された一対の舌部31,32を有する拡開部3を有する。また,該拡開部3の外周側には,上記拡開部3の塑性変形を防止するための芯体5を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 対向する2つの装着部材の間に配設するためのメタルガスケットにおいて,該メタルガスケットは上記装着部材にガスケット板が接し,上記両装着部材の間を連通させるガスケット孔を有すると共に,該ガスケット孔の周縁には,該ガスケット孔に向かって開口すると共に上記メタルガスケットの厚み方向に拡大するように配設された一対の舌部を有する拡開部を有し,該拡開部の外周側には,上記拡開部の塑性変形を防止するための芯体を有することを特徴とするメタルガスケット。
【請求項2】 請求項1において,上記拡開部は,1枚のプレートによって形成されていることを特徴とするメタルガスケット。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記2つの装着部材は,シリンダヘッドとシリンダブロックであることを特徴とするメタルガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は,2つの装着部材の間に配設され,両者間を確実にシールするための金属製のガスケットに関する。
【0002】
【従来技術】従来,例えばシリンダヘッドとシリンダブロック等といった2つの装着部材の間に配設され,両者間をシールするための金属製のガスケットとして,次のメタルガスケットが知られている。
【0003】図9に示すごとく,上記メタルガスケット9は,装着部材971にガスケット板91が接し,装着部材971,972の間を連通させるガスケット孔90を有する(図6参照)。また,上記メタルガスケット9のガスケット板91は,このガスケット孔90の周縁に,ガスケット孔90に向かって閉塞するように配設された断面U字状の屈曲部93を有する。屈曲部93の折り返し部934は,上記装着部材972に接する。
【0004】また,上記メタルガスケット9は,上記屈曲部93の外周側に,芯プレート95を有する。この芯プレート95は,上記屈曲部93の折り返し部934に内側から当接している。一方,芯プレート95に設けたプレス部954は,上記ガスケット板91に内側から当接している。
【0005】また,上記メタルガスケット9はヘッドボルト73(図5参照)の軸力(締結力)によって,上記装着部材971,972の間に固定されている。また,上記装着部材971とガスケット板91との間に面圧を発生させると共に,上記屈曲部93の折り返し部934と装着部材972との間に面圧を発生させることにより,上記装着部材971,972の間をシールしている。
【0006】なお,上記面圧は,上記ガスケット板91と上記芯プレート95のプレス部954との当接部分,及び上記屈曲部93の折り返し部934と上記芯プレート95との当接部分において,特に高い。
【0007】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のメタルガスケットにおいては,次の問題がある。即ち,上記メタルガスケット9においては,上記装着部材971,972の間をシールするための面圧は,上記ヘッドボルト73の軸力によってのみ確保される。そのため,図9に示すごとく,上記装着部材971,972の間に流体,例えば燃焼ガスの圧力がかかり,上記装着部材971,972が引き離される場合に,上記装着部材971,972の間のシール性を確保するためには,上記ヘッドボルト73の軸力を高くして,予め上記装着部材971,972に発生する面圧を高くしておく必要がある。
【0008】しかし,上記メタルガスケット9の組付け初期の段階から上記面圧を高くすると,逆に上記装着部材971,972が互いに近づく場合に,上記ガスケット板91,折り返し部934にも過大な面圧が発生する。そのため,上記プレス部954のみならず,上記ガスケット板91,折り返し部934,及びこれに当接する上記装着部材971,972が塑性変形して,へたりが生じるおそれがある。この場合には,再び上記装着部材971,972が元の位置に戻ると,上記装着部材971,972に発生する面圧が低下してしまう。それ故,上記装着部材971,972の間のシール性を確保,維持することは困難である。
【0009】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,メタルガスケット及び装着部材の塑性変形を防止すると共に,2つの装着部材間のシール性を確保,維持することができるメタルガスケットを提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,対向する2つの装着部材の間に配設するためのメタルガスケットにおいて,該メタルガスケットは上記装着部材にガスケット板が接し,上記両装着部材の間を連通させるガスケット孔を有すると共に,該ガスケット孔の周縁には,該ガスケット孔に向かって開口すると共に上記メタルガスケットの厚み方向に拡大するように配設された一対の舌部を有する拡開部を有し,該拡開部の外周側には,上記拡開部の塑性変形を防止するための芯体を有することを特徴とするメタルガスケットにある。
【0011】本発明において最も注目すべきことは,ガスケット孔の周縁にはメタルガスケットの厚み方向に拡大するように配設された拡開部を有し,該拡開部の外周側には芯体を有することである。
【0012】また,自由状態において,上記一対の舌部は,それぞれ上記ガスケット板よりも上記装着部材側に突出して配設してある。そして,上記メタルガスケットの組付け時においては,各舌部は,それぞれ上記装着部材側に付勢するように配設されている。
【0013】次に,本発明の作用効果につき説明する。本発明のメタルガスケットにおいては,対向する2つの装着部材の間をシールするための面圧は,従来のごとくヘッドボルトの軸力だけでなく,上記メタルガスケットの舌部によっても確保されている。
【0014】即ち,上記2つの装着部材の間に流体,例えば燃焼ガスの圧力がかかり,上記2つの装着部材が引き離される場合には,上記拡開部は上記圧力を受けてさらに上記メタルガスケットの厚み方向に押し広げられる。そのため,上記拡開部の一対の舌部が,それぞれ上記装着部材を押圧するので,上記2つの装着部材が引き離されることによって減少する損失分の面圧を補償することができる。
【0015】そのため,例えば,従来のごとくヘッドボルトの軸力を高くする等の方法によって,予め上記装着部材に発生する面圧を高くすることなく,上記装着部材の間のシール性を確保することができる。
【0016】また,上記メタルガスケットの組付け初期の段階から上記面圧を高くすることがないので,逆に上記2つの装着部材が互いに近づく場合に,上記ガスケット板にも過大な面圧が発生することもない。それ故,上記ガスケット板及びこれに当接する上記装着部材が塑性変形して,へたりが生じるおそれもない。
【0017】さらに,上記芯体は,上記拡開部の塑性変形,及びこれに伴うへたりを防止できるので,上記拡開部の一対の舌部が互いに近づく方向に塑性変形することを防止することができる。そのため,上記舌部は,その付勢を失うことなく,それぞれ上記装着部材を押圧する。それ故,上記装着部材の間のシール性を確保したまま,維持することができる。
【0018】次に,請求項2の発明のように,上記拡開部は,1枚のプレートによって形成することが好ましい。この場合には,上記拡開部の応力集中しにくいので,上記拡開部が損傷しにくい。
【0019】次に,請求項3の発明のように,上記2つの装着部材は,シリンダヘッドとシリンダブロックであることが好ましい。この場合には,上記メタルガスケットは上記シリンダヘッドとシリンダブロックの間に配設され,上記メタルガスケットのガスケット孔は上記シリンダヘッドとシリンダブロックとによって構成された燃焼室に配設される。そして,例えば内燃機関等の燃焼工程において,燃焼ガスの圧力は上記シリンダヘッドを押し上げ,上記シリンダヘッドとシリンダブロックとを引き離す方向に作用すると共に,上記メタルガスケットの拡開部を押し広げる方向に作用する(実施形態例1参照)。
【0020】また,上記シリンダヘッドとシリンダブロックとの間にメタルガスケットを配設する場合には,該メタルガスケットは,上記燃焼工程における燃焼ガスの熱によって塑性変形を起こしやすくなっている。そのため,特に,この場合には,請求項1,2のメタルガスケットを使用することは効果的である。
【0021】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態例にかかるメタルガスケットについて,図1〜図6を用いて説明する。本例のメタルガスケットは,図1〜図6に示すごとく,対向する2つの装着部材であるシリンダヘッド71とシリンダブロック72との間に配設されるメタルガスケット1である。該メタルガスケット1は上記シリンダヘッド71,シリンダブロック72に,それぞれガスケット板11,12が接し(図2(B)),上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72の間を連通させるガスケット孔10(図6)を有する。
【0022】また,該ガスケット孔10の周縁には,該ガスケット孔10に向かって開口すると共に上記メタルガスケット1の厚み方向に拡大するように配設された一対の舌部31,32を有する拡開部3を有する。また,該拡開部3の外周側には,上記拡開部3の塑性変形を防止するための芯体5を有する。
【0023】以下,順を追って説明する。上記メタルガスケット1は,図1〜図6に示すごとく,内側に位置する芯プレート55(図4)と,その端部559を包むように形成される芯体5と,これらを上下から挟み込む外側の2枚のプレートとによって構成されている。また,上記メタルガスケット1は,図6に示すごとく,4気筒用の金属製のガスケットであり,4つの上記ガスケット孔10を有する。
【0024】上記芯体5の上側に位置するプレートは,図3に示すごとく,上側のガスケット板11と,これから延設された上記拡開部3とからなる。この拡開部3は,上記4つのガスケット孔10の周縁において形成されている。また,上記拡開部3は,上記のごとく,1枚のプレートによって形成されている。一方,上記芯体5の下側に位置するプレートは,下側のガスケット板12により形成されている。
【0025】そして,上側のガスケット板11は,図1,図2(B)に示すごとく,上記シリンダヘッド71に当接し,下側のガスケット板12は上記シリンダブロック72に当接する。また,上記拡開部3は,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72の間を連通させるガスケット孔10に対向配設されている。上記ガスケット板11,12,及び上記拡開部3の材質は,弾性を有する金属である。
【0026】また,上記拡開部3は,図1に示すごとく,断面略M字状であり,上記ガスケット孔10に向かって開口している。また,上記拡開部3は上記上下一対の舌部31,32を一体的に有する。なお,上記舌部32の端部39は,上記ガスケット板12の端部129と上記芯プレート55との間に,配設されている。
【0027】また,自由状態において,上側の舌部31は上記ガスケット板11よりも上方に突出して延設され,下側の舌部32は上記ガスケット板12よりも下方に突出して延設されている。そして,上記メタルガスケット1の組付け時において,上記舌部31はシリンダヘッド71側に付勢するように,上記舌部32はシリンダブロック72側に付勢するように形成されている。
【0028】次に,上記芯体5は,図1に示すごとく,上記拡開部3を介して上記ガスケット孔10に対向配設されると共に,上記舌部31,32の延設部分に挟持されている。また,上記芯体5は,図4に示すごとく,上記ガスケット板11,12との間に間隙をおいて配設された上記芯プレート55の端部559に固定してある。上記芯体5及び芯プレート55の材質は,金属である。
【0029】また,上記ガスケット孔10は,図5,図6に示すごとく,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72,及びピストン75によって閉塞された燃焼室70に配設される。また,上記メタルガスケット1は,多数のボルト孔17と多数の冷却水孔18とを有する。そして,上記メタルガスケット1は,各ボルト孔17には締結用のヘッドボルト73を挿通し,これを螺着することによって,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72との間に組付けられる。
【0030】本例のメタルガスケット1においては,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72との間をシールするための面圧は,従来のごとくヘッドボルト73の軸力だけでなく,上記メタルガスケット1の舌部31,32の押圧力によっても確保されている。
【0031】そのため,内燃機関の燃焼工程において,図2(A)に示すごとく,上記燃焼室70内の燃焼ガスが上記シリンダヘッド71を押し上げて,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72とが引き離される場合には,上記拡開部3は上記圧力を受けてさらに上下方向に押し広げられる。そのため,上記拡開部3の一対の舌部31,32が,それぞれ上記シリンダヘッド71及びシリンダブロック72を押圧するので,両者が引き離されることによって減少する損失分の面圧を補償することができる。
【0032】そのため,例えば,従来のごとくヘッドボルト73の軸力を高くする等の方法によって,予め上記シリンダヘッド71,シリンダブロック72に発生する面圧を高くすることなく,上記シリンダヘッド71,シリンダブロック72間のシール性を確保することができる。
【0033】また,上記メタルガスケット1の組付け初期の段階から上記面圧を高くすることがないので,図2(B)に示すごとく,逆に上記シリンダヘッド71及びシリンダブロック72が互いに近づく場合に,上記舌部31,32や上記ガスケット板11,12にも過大な面圧が発生することもない。それ故,上記舌部31,32や,上記ガスケット板11,12及びこれに当接する上記シリンダヘッド71,シリンダブロック72が塑性変形して,へたりが生じるおそれもない。
【0034】さらに,上記芯体5は,上記拡開部3の塑性変形,及びこれに伴うへたりを防止できるので,上記拡開部3の舌部31,32が互いに近づく方向に塑性変形することを防止することができる。そのため,上記舌部31,32は,その付勢を失うことなく,それぞれ上記シリンダヘッド71及びシリンダブロック72を押圧する。それ故,上記シリンダヘッド71,シリンダブロック72間のシール性を確保したまま,維持することができる。
【0035】また,上記拡開部3は,1枚のプレートによって形成されているので,上記拡開部3の開口部,舌部31,32に分散して圧力がかかり,応力集中しにくいので,上記拡開部3が損傷しにくい。
【0036】また,上記シリンダヘッド71とシリンダブロック72との間に上記メタルガスケット1を配設する場合には,該メタルガスケット1は,上記燃焼工程における燃焼ガスの熱によって塑性変形を起こしやすくなっている。そのため,特に,この場合には,塑性変形防止効果と,シール性の確保,維持に優れた本例のメタルガスケット1を使用することは効果的である。
【0037】実施形態例2本例のメタルガスケットは,図7に示すごとく,上記ガスケット板12の端部129を密着させた状態で複数回折り曲げることにより,上記芯プレートと上記芯体とを形成したものである。また,上記舌部32の端部39も,上記ガスケット孔10側に折り曲げられて上記ガスケット板12の端部129に当接し,上記芯体を形成している。
【0038】また,上記シリンダヘッド71には,上記舌部31への延設部分として上記ガスケット板11の一部分が接している。なお,上記ガスケット板11の大部分は,上記ガスケット板12に面接触しており,上記シリンダヘッド71には接しない。また,上記ガスケット板12は,上記シリンダブロック72には接しない。その他は,実施形態例1と同様である。
【0039】本例のメタルガスケットにおいては,上記ガスケット板12の端部129を密着させた状態で複数回折り曲げることにより,上記芯体を容易に形成することができる。また,上記ガスケット板12を上記芯プレートとして兼用すると共に,上記ガスケット板12の端部129を上記芯体として兼用することができる。そのため,メタルガスケットの部品数を減らし,より簡単な構造にすることができる。また,メタルガスケットの組立も容易である。その他は実施形態例1と同様の作用効果を有する。
【0040】実施形態例3本例のメタルガスケットは,図8に示すごとく,上記ガスケット板11,12を次のように構成したものである。即ち,上記ガスケット板11は,上記舌部31への延設部分としての一部分だけを上記シリンダヘッド71に接している。一方,上記ガスケット板12は,上記舌部32の端部39との当接部分である端部129だけを,上記シリンダブロック72に接している。
【0041】なお,上記ガスケット板11の端部119は,上記芯プレート55に接触しており,上記シリンダヘッド71には接しない。また,上記ガスケット板12の大部分は,上記芯プレート55に面接触しており,上記シリンダブロック72には接しない。その他は,実施形態例1と同様である。本例のメタルガスケットにおいても実施形態例1と同様の作用効果を有する。
【0042】
【発明の効果】上述のごとく,本発明によれば,メタルガスケット及び装着部材の塑性変形を防止すると共に,2つの装着部材間のシール性を確保,維持することができるメタルガスケットを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成10年7月28日(1998.7.28)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰 (外1名)
【公開番号】 特開2000−46185(P2000−46185A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−212770