トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝
【発明者】 【氏名】一杉 英司

【氏名】村上 伸之

【氏名】伊藤 太郎

【要約】 【課題】リング溝からのオイル上がり量を抑制することができる2ピースオイルリング用リング溝を提供し、エンジンのオイル消費量を低減する。

【解決手段】ピストン(20)の軸方向に直交する上下面(13、14)と、その上下面を連結する底面(12)と、その底面に開口(19)を有するオイル逃がし穴(18)とを備えたリング溝(11)において、リング溝(11)にオイルリング(2)を外周端がシリンダ(7)の内周面に接するように内装したとき、底面(12)を、上下端(15、16)がオイルリング本体(1)の上下面内端よりも所定距離、好ましくはシリンダの内径の1/100〜1/300だけ内方に寄った半径方向位置にあり、本体の背面から張り出したコイルエキスパンダ(6)から、所定距離、好ましくは、シリンダ(7)の内径の1/100〜1/300離れてそれを囲む母線(17)を有する凹面に形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピストン(20)の軸方向に直交する上下面(13、14)と、前記上下面を連結する底面(12)と、前記底面に開口(19)を有するオイル逃がし穴(18)とを備えたリング溝(11)において、前記リング溝にオイルリング(2)を外周端がシリンダ(7)の内周面に接するように内装したとき、前記上下面の内端(15、16)は前記オイルリング本体(1)の上下面内端よりも所定距離、好ましくは前記シリンダの内径の1/100〜1/300だけ内方に寄った半径方向位置にあり、前記底面(12)は、前記内端(15、16)を上下端とし、前記本体の背面から張り出したコイルエキスパンダ(6)を囲む母線(17、21)から形成された凹面であることを特徴としてなるピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【請求項2】 前記母線(17)は、中心が軸方向位置において前記リング溝(11)の軸方向中心に、半径方向位置において前記コイルエキスパンダ(6)の中心にそれぞれ等しい位置にあり、半径が前記コイルエキスパンダ(6)の外径よりも所定距離、好ましくは前記シリンダ(7)の内径の1/100〜1/300だけ大きく、両端の半径方向位置が前記内端(15、16)と等しい位置にある円弧と、前記円弧の両端から前記内端に至る2つの直線とからなることを特徴としてなる請求項1記載のピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【請求項3】 前記母線(21)は両端が前記開口(19)の上下端と一致し、半径方向位置が前記コイルエキスパンダ(6)の内端より所定距離、好ましくは前記シリンダ(7)の内径の1/100〜1/300だけ内方に寄る軸方向の直線と、前記直線の両端から前記内端(15、16)に延長した2つの斜線とからなることを特徴としてなる請求項1記載のピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【請求項4】 前記母線は、中心が軸方向位置において前記リング溝の軸方向中心に、半径方向位置において前記コイルエキスパンダの中心にそれぞれ等しい位置にあり、半径が前記コイルエキスパンダの外半径よりも所定距離、好ましくは前記シリンダの内径の1/100〜1/300だけ大きい円弧と、前記円弧に前記内端から引いた2つの接線とからなることを特徴としてなる請求項1記載のピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【請求項5】 前記開口(19)は、前記底面(12)の略中央に開口することを特徴としてなる請求項1ないし4のいずれか1つに記載のピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【請求項6】 前記開口(19)は、前記下面(14)と交差することを特徴としてなる請求項1ないし4のいずれか1つに記載のピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピストンのコイルエキスパンダ付きオイルリング用リング溝に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のリング溝は、図1に示すように、横断面が角張った矩形であるか、又は、実開昭47−38204号に提案された内方の角を丸めた矩形であった。底面2と上下面3、4からなる矩形のリング溝1には本体5とコイルエキスパンダ6を組み合わせた2ピースオイルリングが内装され、リング溝1の軸方向幅は本体5の軸方向幅よりもわずかに、例えば0.04〜0.06mm大きく設定されていた。
【0003】リング溝1の底面2は、ピストン20が実動熱膨時に首振り運動をしても、コイルエキスパンダ6の内端が接触しないようにしなければならない。このため、底面2は、本体1の外周端がシリンダ7に接するとき、コイルエキスパンダ2の内端よりも所定の距離、例えばシリンダ7の内径の1/200程度内方に寄った位置にくるように設定されていた。
【0004】リング溝1のオイルをホイルパンへ逃がすオイル逃がし穴8の開口9は底面2の軸方向中心よりも下方又はリング溝1の下面4に設定されていた。2ピースオイルリングのコイルエキスパンダ2は本体1の背面から半分近く内方へ張り出すから、リング溝1内におけるオイルリング背面の空隙は比較的大きく、特に、オイルリングのシリンダへの追従性を向上するために本体を薄幅化したとき、この空隙は一層大きくなっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】リング溝内のオイルリングは、図2に示すように、実動時にシリンダとの摩擦力、ピストンの運動による慣性力、燃焼によるガス圧力が作用する。排気工程において、慣性力が上向きに作用しても、ある期間摩擦力によりオイルリング10はリング溝1の下面側にあり、図3(a)に示すように、オイルリング10の上面に隙間が生じる。このとき、オイルリング背面溝内空隙のオイルが上面の隙間に入り込む。 次に、慣性力が摩擦力を超え、オイルリング10がオイルリング溝1の上面側に移動すると、上面の隙間に入り込んだオイルは、図3(b)に示すように、ピストンの外周へ押し出され、さらに、図3(c)に示すように、オイルは慣性力によりリング溝1から上昇し、燃焼室方向に移動して燃焼消失する。したがって、リング溝内のオイルリング背面空隙が大きいと、そこに存在するオイル量も、リング溝からのオイル上がり量も多くなり、当然、オイル消費量も増大する。
【0006】ブローバイガスはオイルリング背面空隙のオイルをオイル逃がし穴へ吹き下げるが、空隙が大きい上に、オイル逃がし穴の開口がコイルエキスパンダよりも下にあるため、ブローバイガスの吹き下げ作用は抑制され、空隙の上面側にオイルが残る。本発明は、リング溝のオイルリング背面空隙によるオイル消費の増大を防止することを課題とするものであり、その目的はオイル消費量を低減することが可能な2ピースオイルリング用リング溝を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するため、本発明が採用する手段は、2ピースオイルリングの本体軸方向幅よりもわずかに大きな軸方向幅を有するリング溝に、本体の外周端がシリンダの内周面に接するように内装したとき、リング溝の上下面の内端を本体上下面内端よりも所定距離、例えばシリンダ内径の1/200程度内方の位置に設定し、その上下面内端を上下端とする底面を横断面においてコイルエキスパンダを所定距離、例えばシリンダ内径の1/200程度離れて囲む母線からなる凹面に形成したことにある。
【0008】このリング溝は、従来のリング溝と軸方向及び半径方向の幅は同一であるが、オイルリングの背面の空隙は従来のものよりも大幅に小さくなるから、空隙に残って本体上面の隙間に流出するオイルは少なくなる。オイル逃がし穴の開口を底面の中央に設けると、空隙に残るオイルをブローバイガスの吹き下げ作用を利用してオイルパンに戻すことができる。しかし、吹き下げ作用を利用しにくいときは、従来のように、オイル逃がし穴の開口をリング溝の下面と同じレベル又はそれよりも低くして、オイルリングが掻き落としたオイルを迅速にオイルパンに戻す。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明を図面に示す第1実施例に基づいて説明する。図4に示すように、2ピースオイルリング10は、その外周端がシリンダ7の内周面に接するようにピストンのリング溝11に内装する。リング溝11の軸方向に垂直な上面13と下面14の間隔は、従来のものと同じであり、内装した2ピースオイルリング10の本体5の軸方向よりも0.04〜0.06mm大きい。
【0010】横断面において、上下面13、14の内端15、16は、半径方向位置において、本体5の上下面の内端よりもシリンダ7の内径の1/200程度内方にある。リング溝11の底面12は、半径がコイルエキスパンダ6の半径よりもシリンダ7の内径の1/200程度大きく、中心が軸方向位置においてリング溝11の軸方向中心と、半径方向位置においてコイルエキスパンダ6の中心とそれぞれ同一であり、両端の半径方向位置がリング溝の上下面内端15、16と同一である円弧と、その円弧の両端と上下面内端15、16とをそれぞれ結ぶ2つの直線とからなる母線17により形成される丸底状凹面である。
【0011】上の圧力リングを抜けるブローバイガスの吹き下げ作用を利用できるときは、リング溝11のオイル逃がし穴18は底面12に開口し、その開口19の中心は、軸方向位置において、リング溝11の軸方向中心と一致するのが最良であるが、従来公知のものと同様に、開口中心は底面の軸方向中心よりも下方又はリング溝の下面に設置してもよい。このオイルリング溝11の開口19より上のオイルリング背面の空隙は、横断面において、従来の矩形横断面リング溝のものよりも図においてクロスハッチングした部分だけ減少する。
【0012】第1実施例のリング溝11は、図3(d)に示すように、オイルリング10の背面空隙は小さいから排気行程時に空隙に存在するオイルは、図3(a)に示す従来例のものに比べると少量であり、したがって、図3(e)及び(f)に示すように、オイルリング10の上面側への移動によりリング溝から外周へ押し出されるオイルの量も、リング溝11から上がるオイルの量も図3(b)及び(c)に示す従来のものよりも少ない。
【0013】オイルリングの背面空隙に残存するオイルはブローバイガスによりオイル逃がし穴に吹き下げられるが、高速回転時には1サイクル当りのブローバイガス流量は減少し、それに対し慣性力が増加するため、オイルリングの背面空隙に残存するオイル量も増大する。しかし、本発明のオイルリング背面空隙は従来よりも小さいから、オイルリング背面空隙に残るオイル量も、リング溝からのオイル上がり量も少ないから、オイル消費量は従来よりも低減する。
【0014】
【実施例】次に、図5に示す本発明の第2実施例について説明する。第2実施例の平底状底面12を形成する母線21は、横断面において上下端が開口19の上下端と合致し、半径方向位置がコイルエキスパンダ6の内端よりもシリンダ7の内形の1/200程度だけ内方に寄る軸方向の直線と、その直線の上下端と上下面13、14の内端15、16を結ぶ2つの直線とからなる。
【0015】第2実施例の母線27は第1実施例のものより全体として少し内方に寄るから、オイルリング10の背面の上方空隙は、第1実施例のものよりも少し大きいが、それでも従来の矩形横断面リング溝のものに比べると、図においてクロスハッチングした部分だけ減少するから、面積は大幅に小さくなる。したがって、第2実施例もオイル消費量を低減することができる。これ以外は第1実施例と同じである。
【0016】図示していないが、リング溝の底面を第1実施例の底面よりは内方に寄るが、第2実施例の底面よりは外方に寄るように形成してもよい。例えば、底面を第1実施例の円弧と、その円弧に対してリング溝上下面内端から延長した2つの接線からなる母線により形成される丸底状凹面とすることも可能である。図6は、図1に示す従来例のリング溝、図4及び図5に示す第1及び第2実施例のリング溝を持つピストンを3.1リットル水冷直列4気筒ディーゼルエンジンに取付けて実施した。オイル消費量測定テストの結果を示すグラフである。このグラフは、本発明のリング溝によりエンジンのオイル消費量が低減することを示すものであり、オイル消費量を従来例よりも実施例1は35%程度、実施例2は15%程度低減する。
【0017】先に述べたように、オイル逃がし穴の開口をリング溝の下面よりも低くすることも可能である。図7に示す第3実施例及び図8に示す第4実施例のリング溝11の底面12は、第1実施例及び第2実施例のものとそれぞれ略同じであるが、オイル逃がし穴18の開口19は底面12の中央ではなく、リング溝11の下面14と交差する低い位置にある。
【0018】
【発明の効果】本発明のリング溝は、従来の底面が横断面が角張った矩形又は内方の上下の隅に丸みを付けた矩形の底辺てあったものとは異なり、底面がオイルリング本体の背面から張り出すコイルエキスパンダを囲む凹面であるから、従来のものよりもオイルリング背面空隙が大幅に縮小して、そこに存在するオイルを減少すると共に、その底面にオイル逃がし穴を開口してオイルリング背面空隙のオイルが容易に吹き下げられるようにしたから、リング溝からのオイル上がり量が減少してエンジンのオイル消費量が低減するという優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】390022806
【氏名又は名称】日本ピストンリング株式会社
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年3月31日(1999.3.31)
【代理人】 【識別番号】100073988
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 肇
【公開番号】 特開2000−46183(P2000−46183A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平11−90900