トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ
【発明者】 【氏名】高田 健

【氏名】山本 章夫

【要約】 【課題】応力腐食割れがなく、保温性に優れたベローズを提供する。

【解決手段】外管と内管を備えた2重管構造のベローズにおいて、外管および内管がフェライト系ステンレス鋼からなり、外管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値が、内管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値よりも20MPa以上大きいことを特徴とする耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。外管、内管とも適宜C、Cr、Mo、Ni、Cu、Nb、Tiを適量含有させることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外管と内管を備えた2重管構造のベローズにおいて、外管および内管がフェライト系ステンレス鋼からなり、外管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値が、内管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値よりも20MPa以上大きいことを特徴とする耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【請求項2】 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、C:0.07%以下、 Cr:10〜23%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、C:0.03%以下、 Cr:10〜23%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【請求項3】 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Mo:0.2〜2%、Ni:0.2〜1%、Cu:0.1〜1%の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項2に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【請求項4】 内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Mo:0.2〜1.5%、Ni:0.2〜0.8%、Cu:0.1〜0.7%の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項2または3に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【請求項5】 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Nb:C含有量とN含有量の和の7倍以上、かつ0.6%以下、Ti:C含有量とN含有量の和の4倍以上、かつ0.6%以下の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【請求項6】 内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Nb:C含有量とN含有量の和の7倍以上、かつ0.6%以下、Ti:C含有量とN含有量の和の4倍以上、かつ0.6%以下の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れたステンレス鋼製2重管ベローズ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車排気系に使用されるフェライト系ステンレス鋼製ベローズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車排気系用に使用されるベローズはエンジンからの振動吸収を目的として使用されており、その内部は高温の排気ガスによる高温酸化環境、外部は融雪塩あるいは海塩粒子による高温塩害腐食環境に晒される。このベローズには、耐高温特性が優れた材料としてステンレス鋼が、特にベローズ加工が容易なオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。しかし、外部の高温塩害腐食環境下では、オーステナイト系ステンレス鋼の使用には応力腐食割れの懸念がある。そのため、特開平5−339682号公報に開示されている様に、応力腐食割れ性を抑制する元素を添加した材料の使用が試みられている。
【0003】一方、排気ガスの無害化の為に、より高温の排気ガスの触媒コンバーターへの導入が試みられている。そのため、排気系の触媒コンバーターの前に設置されるベローズには従来以上の排気ガスの保温性が要求される。しかし、これらの対策は未だになされていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】まず、応力腐食割れ対策には材料の変更が有効である。すなわち、耐応力腐食割れ性に有効な元素を添加した材料のベローズへの適用が有効である。しかし、この様な元素の添加を試みても応力腐食割れの懸念は依然残る。これらの元素の添加により材料の応力腐食割れ感受性が極力抑えられても、応力腐食割れによる微少な割れ発生の可能性はある。一度微少な割れが発生すれば、ベローズに加わる振動により、それを起点とする疲労破壊が発生する。一方、排気ガスを保温させるためには材質の変更だけでは不十分であり、ベローズ自体の構造の変更が必要と考えられる。
【0005】本発明の課題は、自動車用ベローズにおいて、応力腐食割れ性を極力低減させ、かつ通過する排気ガスの保温性を向上させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、フェライト系ステンレスを素材とすることによって、応力腐食割れを生じず、内外管の降伏応力差を規定することにより確実に内外管の間に空隙を設けて、外部との断熱性を確保して、保温性に優れた2重管ベローズを提供するもので、その要旨とするところは以下の通りである。
【0007】(1) 外管と内管を備えた2重管構造のベローズにおいて、外管および内管がフェライト系ステンレス鋼からなり、外管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値が、内管のフェライト系ステンレス鋼の降伏応力値よりも20MPa以上大きいことを特徴とする耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
(2) 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、C:0.07%以下、Cr:10〜23%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、C:0.03%以下、Cr:10〜23%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする前記(1)に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
【0008】(3) 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Mo:0.2〜2%、Ni:0.2〜1%、Cu:0.1〜1%の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(2)に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
(4) 内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Mo:0.2〜1.5%、Ni:0.2〜0.8%、Cu:0.1〜0.7%の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(2)または(3)に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
【0009】(5) 外管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Nb:C含有量とN含有量の和の7倍以上、かつ0.6%以下、Ti:C含有量とN含有量の和の4倍以上、かつ0.6%以下の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれか1項に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
(6) 内管のフェライト系ステンレス鋼が、重量%で、Nb:C含有量とN含有量の和の7倍以上、かつ0.6%以下、Ti:C含有量とN含有量の和の4倍以上、かつ0.6%以下の1種もしくは2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれか1項に記載の耐応力腐食割れ性と保温性に優れた2重管ベローズ。
【0010】
【発明の実施の形態】発明者らは、先ず応力腐食割れの低減のために、部品構造の変更により負荷応力を低減させて応力腐食割れを抑制する方法を検討した。負荷応力の大きい部分はベローズの山の部分(凸部)である。そこで、山の高さ、素材板厚、山と山の間隔等を変えたベローズを数種試作し、形状を変更して山部分への負荷応力の低減を試みた。
【0011】バネ定数測定や疲労試験により評価を行ったが、形状を変更しても凸部に負荷される応力値は依然応力腐食割れを引き起こす範囲内と推定された。そこで発明者らは、材料の変更以外に応力腐食割れを低減させる方法は無いと考え、応力腐食割れに対する懸念が少ない材料としてフェライト系ステンレス鋼を自動車排気系材料に適用することを検討した。
【0012】まず材料に要求される特性は加工性である。フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼に比べて加工性が劣る。フェライト系ステンレス鋼の加工性を向上させるためには、Fe、Cr以外の元素を極力低減させることが必要である。次に、耐高温塩害特性と耐高温酸化特性が材料に要求される。この様な特性の向上には種々の元素の添加が必要となり、ベローズ加工が可能な範囲内でこの様な種々の元素を添加しなければならない。
【0013】本発明者等はさらに保温性についても検討した。従来より様々な製品において、保温性を向上させるために断熱材を内外壁の間へ装填する方法が適用されている。断熱材には、主に微小な気泡を多く含む物質が頻繁に使用されている。ところで、ベローズは2重管から成形される2重構造であり、本発明者等はこの2重管の間に断熱物質を装填することを検討した。しかし、排気ガスの高温度に耐えうる断熱材は見出せなかった。
【0014】そこで、発明者らはこの2重管の間に空気の層を形成させることに想到した。2重管の外管の温度が低下しても空気層による断熱効果で、内部を通過する排気ガスに抜熱量は少なくなる。すなわち、フェライト系ステンレス鋼を用い、2重管の間に空気層を導入することで、応力腐食割れ性の懸念が少なく、かつ排気ガスの保温性に優れたベローズの作製を試みた。
【0015】発明者らが、空隙のある2重管の構造の決定とその形成方法について検討した結果、図1に示す様に、空気に触れる面積の大きいベローズの凹部分5に空隙3を導入することとした。次に、この様な空隙の導入方法について検討した。この様な空隙は、ベローズ加工後の凹凸部のスプリングバック量の違いで形成される。つまり、スプリングバック量の大きい材料を外管に使用すれば、凹凸部での曲率は大きくなり、図1の様な空隙が生じる。このスプリングバック量は降伏応力に依存する。したがって、降伏応力値の大きい材料を外管2に、その小さい材料を内管1に適用すれば、上記の様な空隙がベローズ加工時に形成される。
【0016】この様な内管用素材と外管用素材の降伏応力値の差は、成分の添加量や種類、素材製造時の熱処理による結晶粒形制御等により得られる。降伏応力値の異なる材料でベローズ加工を実施し、引張試験による素材の降伏応力値の差が20MPa以上であれば、上述した効果を有するに十分な空隙が得られると推定された。
【0017】次に、ベローズ加工が可能なフェライト系ステンレス鋼の成分について検討した。ベローズは通常2重管パイプの内側からの油圧による張り出しと、パイプ自体の圧縮により製造される。ベローズの加工で最も厳しい箇所は、外に張り出した凸部の部分である。この部分での加工を可能にさせるためには、様々な検討の結果、材料の伸びの向上が必要であると考えた。そのためには、Fe、Cr以外の元素量を極力低減させた材料が望ましい。特に含有C量の低減は加工性向上に有効であり、内管と外管にはC量の低い材料を使用した。耐高温塩害特性および耐高温酸化特性は、加工性を劣化させない範囲内での添加Cr量の限定により得られる。
【0018】以下に外管および内管の成分限定の理由をさらに詳しく説明する。まず外管の成分は、Cが0.07重量%(以下%と略)以下であれば、ベローズ加工に十分な加工性が得られる。Crは、耐食性の要求から、内外管とも10%以上の添加が必要であるが、23%を超えると加工性が大幅に劣化し、ベローズの加工が出来なくなる。それ故、下限を10%、上限を23%とした。
【0019】厳しい高温塩害腐食環境、例えば海浜地区や融雪塩散布が頻繁に行われる地区を走行する場合では、上記発明鋼を使用したベローズでは、この外管の耐高温塩害性では不十分である。この様な環境でベローズが使用される場合は、外管用材料に優れた耐高温塩害特性が要求される。これを得るためにはMo,Ni,Cu添加が有効である。
【0020】十分な耐高温塩害特性を得るためには、Moの添加量は0.2%以上が必要であるが、添加量の増大に従い延性が劣化し、2%を超える添加ではベローズ加工は困難になる。以上より、Mo添加の上限を2%、下限を0.2%とした。Ni、Cuの添加量もMoと同様な理由で限定した。Niは、下限を0.2%、上限を1%と規定した。またCuは、下限を0.1%、上限を1%と規定した。
【0021】一方、極めて大きな振動が加わる環境下でベローズが使用される場合がある。例えば凹凸の激しい路面での走行が頻繁である場合や、エンジンの振動が非常に大きい場合等である。この様な場合、走行時にベローズに加わる応力は大きくなり、応力腐食割れに加えて疲労破壊の発生が懸念される。その抑制にはベローズの凹凸部に加わる応力を極力低減させる必要がある。そのためには鋼を硬化させる固溶C量や固溶N量の低減が効果的である。これらの元素を固着して固溶量を低減させるためには、TiあるいはNbの添加が有効である。
【0022】CおよびNを固着させるのに必要な量は、Nbの場合ではC含有量とN含有量の和の7倍、Tiの場合ではその4倍である。これ以上の添加により十分CおよびNをこれらの元素により固着出来る。しかし、過剰な添加はベローズ加工に必要な加工性を劣化させるため添加量の上限の設定が必要であり、Nb、Tiともに0.6%を超えない範囲の添加が望まれる。
【0023】次に、内管素材の成分は、各元素の効果は外管と同様であるが、外管との降伏応力差を維持するために、C,Mo,Ni,Cuの上限値の規定に注意が必要である。Cr量は耐高温塩害性のために必要であり、外管素材と同じ量だけ添加しなくてはならない。C量の限定は、外管との降伏応力差を維持するために、0.03%以下の含有量とする必要がある。
【0024】エンジンの排気ガスが高温の場合、例えば排気量の大きいエンジンを搭載した自動車や高速走行が頻繁である自動車等の場合、内管用材料には優れた耐高温酸化特性が要求される。この特性を得るためには、耐高温塩害特性を得た場合と同様に、Mo、Ni、Cuの添加が有効である。添加量は外管と同様に、それぞれ、Mo:0.2%以上、Ni:0.2%以上、Cu:0.1%以上の添加で上記の効果が得られるが、添加量の上限は、ベローズ加工が可能であることとともに、外管との降伏応力差が得られることを考慮して設定しなければならず、Mo:1.5%以下、Ni:0.8%以下、Cu:0.7%以下の範囲で添加する。
【0025】
【実施例】表1は、試験に供した材料の成分である。厚さ0.2mmのフェライト系ステンレス鋼を用いた。表番号中A1からA5およびR1の成分の板は外管用材料として、B1からB7までの成分の板は内管用材料として使用した。これらの板の降伏応力値の差は20MPa以上である。これらの板をTIG溶接により外管と内管の外径がそれぞれ52.9mmと51.9mmであるパイプに造管し、表2に示す組合わせのベローズを試作製造した。試作されたベローズには予想通りに、保温に必要な空隙が形成された。
【0026】このようにして試作したベローズを、3%食塩水に5分間浸漬、700℃の大気炉中に2時間保定、室温までの大気中徐冷の3工程を1サイクルとした塩害腐食サイクル試験に供した。但し、食塩水浸漬時のみ、ベローズ内部に食塩水が入らぬ様ベローズ両端を封じた。試験は10サイクルまで行った。現行使用されているSUS304製ベローズを用いた同様の試験も行い、10サイクル後のベローズ表面に発生した微少な割れを観察し、その割れ状態を評価基準と設定した。その状態よりも割れが小さいか、もしくは割れが全くないと判断される場合では評価は○、大きいと評価される場合では評価は×とした。表2に評価結果を記す。No.16の試作ベローズでの評価が×である原因は、外管用材料にCr量が少ないためと推定された。
【0027】以上のように、外管と内管に材質の異なるフェライト系ステンレス鋼を使用することにより、ステンレス鋼製ベローズの応力腐食割れの懸念は低減する。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【発明の効果】本発明の2重管ベローズは、従来のオーステナイト系ステンレス鋼を使用したものに比べて応力腐食割れに対する懸念が極めて少なくなり、内外管の降伏応力差を規定することによって、2重管の間に空隙を確実に形成させることにより、排気ガスの保温効果が高まることで、触媒反応による排気ガスの無害化に非常に有利である。さらに、適切な元素を添加することにより、耐食性、疲労特性など、自動車用部材として要求される各種特性をも付加できるため、特に自動車排気系において、理想的なベローズを提供できる。したがって、本発明は極めて高い産業上の価値を有する発明であるということができる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成10年7月31日(1998.7.31)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【公開番号】 特開2000−46182(P2000−46182A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−217615