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【発明の名称】 無段変速機のクラッチ制御装置
【発明者】 【氏名】飯島 真

【要約】 【課題】ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを備えた無段変速機におけるクラッチの切換ショックやエンジンの空吹きが発生しないようにして走行性を向上する。

【解決手段】ロックアップクラッチが開放状態となって車両が走行していた状態のもとで、車速が所定値以上となってロックアップクラッチを係合させてロックアップに設定すると判断されたときには、スイッチ弁65をONさせるとともに、所定の時間t1 が経過した後に、ロックアップクラッチのリリース室のスリップ圧を低下させる。一方、ロックアップクラッチが係合状態となって車両が走行していた状態のもとで車両が所定値以下となりロックアップクラッチを開放させると判断されたときには、スリップ圧を高く設定するとともに、所定の時間t2が経過した後にスイッチ弁65をOFF させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換える切換手段と、前記リリース室に供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の走行状態に応じて前記ロックアップクラッチを係合状態とするか開放状態とするかを判断するロックアップ制御判定手段と、前記ロックアップ制御判定手段が前記開放状態から前記係合状態に切り換えると判断したときには、前記切換手段を係合位置に切り換えてから所定の時間が経過した後に、前記スリップ圧を低下させる制御手段とを有することを特徴とする無段変速機のクラッチ制御装置。
【請求項2】 ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換えるとともに、前記前進用クラッチの係合位置での油圧の流路を切り換える切換手段と、前記リリース室および前記前進用クラッチに供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の走行状態に応じて前記ロックアップクラッチを係合状態とするか開放状態とするかを判断するロックアップ制御判定手段と、前記ロックアップ制御判定手段が前記係合状態から前記開放状態に切り換えると判断したときには、前記スリップ圧を高くするとともに所定の時間が経過した後に、前記切換手段を開放位置に切り換える制御手段とを有することを特徴とする無段変速機のクラッチ制御装置。
【請求項3】 ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換えるとともに、前記前進用クラッチの係合位置での油圧の流路を切り換える切換手段と、前記リリース室および前記前進用クラッチの供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の急減速を検出する急減速制御判定手段と、ロックアップの状態のもとで前記急減速制御手段が前記車両の急減速を判断したときには、前記切換手段を開放位置に切り換えるとともに、前記スリップ圧を低圧に保持させる制御手段とを有することを特徴とする無段変速機のクラッチ制御装置。
【請求項4】 ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換える切換手段と、前記リリース室のスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、前記スリップ圧調整手段の故障を検出する故障検出手段と、前記故障検出手段が前記スリップ圧調整手段の故障を検出したときには、前記切換手段を開放位置に切り換えるとともに、前記スリップ圧を高圧に保持させる制御手段とを有することを特徴とする無段変速機のクラッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトルクコンバータのロックアップクラッチと前後進切換用クラッチとを有する無段変速機におけるクラッチを制御するようにした無段変速機のクラッチ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータと自動変速機とを備えたエンジンにおいては、ロックアップクラッチが係合状態となるとエンジンのクランク軸は変速機の入力軸に直結され、開放状態となると直結が解除されてトルクコンバータが作動状態となり、変速機クラッチにより自動的に変速比が設定されるようになっている。このため、クラッチが係合状態に切り換わったり、開放状態に切り換わったときに切換ショックが発生したり、切換タイミングのずれによってエンジンの空吹きやエンジンストールなどの問題が生じるおそれがある。
【0003】このため、自動変速機の変速用シフトスイッチ信号によりシフトバルブの切換時間に応じて、トルクコンバータのロックアップクラッチを一時開放するタイミングをとるようにして、変速切換ショックやエンジン空吹きを解消するようにしたものがある(特開平1−98758号公報)。
【0004】しかしながら、これは自動変速機の変速動作とのタイミングに合わせてロックアップクラッチを一時開放制御するものであり、この制御方式を無段変速機のようにロックアップ制御と走行用のクラッチ制御とを1つのON-OFFバルブつまりスイッチバルブにより制御する場合には適用することができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを備えた無段変速機におけるクラッチの切換ショックやエンジンの空吹きが発生しないようにして走行性の向上を図ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の無段変速機のクラッチ制御装置は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換える切換手段と、前記リリース室に供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の走行状態に応じて前記ロックアップクラッチを係合状態とするか開放状態とするかを判断するロックアップ制御判定手段と、前記ロックアップ制御判定手段が前記開放状態から前記係合状態に切り換えると判断したときには、前記切換手段を係合位置に切り換えてから所定の時間が経過した後に、前記スリップ圧を低下させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】本発明の無段変速機のクラッチ制御装置は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換えるとともに、前記前進用クラッチの係合位置での油圧の流路を切り換える切換手段と、前記リリース室および前記前進用クラッチに供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の走行状態に応じて前記ロックアップクラッチを係合状態とするか開放状態とするかを判断するロックアップ制御判定手段と、前記ロックアップ制御判定手段が前記係合状態から前記開放状態に切り換えると判断したときには、前記スリップ圧を高くするとともに所定の時間が経過した後に、前記切換手段を開放位置に切り換える制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】本発明の無段変速機のクラッチ制御装置は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換えるとともに、前記前進用クラッチの係合位置での油圧の流路を切り換える切換手段と、前記リリース室および前記前進用クラッチの供給されるスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、車両の急減速を検出する急減速制御判定手段と、ロックアップの状態のもとで前記急減速制御手段が前記車両の急減速を判断したときには、前記切換手段を開放位置に切り換えるとともに、前記スリップ圧を低圧に保持させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0009】本発明の無段変速機のクラッチ制御装置は、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータと、前進用クラッチを有する前後進切換装置と、プライマリプーリおよび該プライマリプーリとの間に駆動ベルトが掛け渡されたセカンダリプーリを有する無段変速機とを備え、エンジンの回転を前記トルクコンバータと前記前後進切換装置と前記無段変速機とを介して出力する無段変速機のクラッチ制御装置であって、前記ロックアップクラッチのアプライ室およびリリース室への油圧の供給を係合位置と開放位置とに油路を切り換える切換手段と、前記リリース室のスリップ圧を調整するスリップ圧調整手段と、前記スリップ圧調整手段の故障を検出する故障検出手段と、前記故障検出手段が前記スリップ圧調整手段の故障を検出したときには、前記切換手段を開放位置に切り換えるとともに、前記スリップ圧を高圧に保持させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】図1はベルトを用いた車両用の無段変速機の駆動系を示す概略図であり、図示省略したエンジンにより駆動されるクランク軸1は、トルクコンバータ2のポンプ側ケース3にドライブプレート4を介して直結されており、ポンプ側ケース3内に設けられたポンプインペラ3aに対向して配置されたタービンランナ5はタービン軸6に直結されている。ポンプインペラ3aとタービンランナ5の間にはステータ7が配置され、このステータ7はステータ支持軸8に取り付けられたワンウェイクラッチ8aにより支持されている。タービン軸6には、ドライブプレート4に係合する係合位置と離れる開放位置とに移動可能にロックアップクラッチ9が直結されており、エンジンの動力はトルクコンバータ2またはロックアップクラッチ9を介してタービン軸6に伝達される。
【0012】ロックアップクラッチ9の一方側は供給室つまりアプライ室9aとなり、他方側は開放室つまりリリース室9bとなっており、リリース室9b内に供給した油圧をアプライ室9aを介して循環させることにより、トルクコンバータ2は作動状態となる。一方、アプライ室9aに油圧を供給し、リリース室9b内の油圧を下げることによりロックアップクラッチ9はドライブプレート4と係合してロックアップ状態となる。このリリース室9b内の圧力を調整することによりロックアップクラッチ9を滑らせるようにしたスリップ圧制御が行われる。
【0013】タービン軸6は前後進切換装置11を介して無段変速機12の入力軸つまりプライマリ軸13に伝達されるようになっている。プライマリ軸13にはプライマリプーリ14が設けられており、プライマリプーリ14はプライマリ軸13に固定された固定プーリ14aと、これに対向してプライマリ軸13に対してボールスプラインなどにより軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ14bとを有し、プーリのコーン面間隔可変となっている。プライマリ軸13に平行に配置された出力軸つまりセカンダリ軸15にはセカンダリプーリ16が設けられており、セカンダリプーリ16はセカンダリ軸15に固定された固定プーリ16aと、これに対向してセカンダリ軸15に対して可動プーリ14bと同様に軸方向に摺動自在に装着される可動プーリ16bとを有し、プーリのコーン面間隔可変となっている。なお、駆動系全体はケース10内に組み込まれている。
【0014】プライマリプーリ14とセカンダリプーリ16との間には駆動ベルト17が掛け渡されており、両方のプーリ14,16の溝幅を変化させることにより、それぞれのプーリ14,16に対する巻付け径の比率を変化させてセカンダリ軸15の回転数が無段変速されることになる。
【0015】プライマリプーリ14の溝幅を変化させるために、可動プーリ14bとの間にプライマリ油室18を形成するシリンダ19がプライマリ軸13に取り付けられ、セカンダリプーリ16の溝幅を変化させるために、可動プーリ16bとの間にセカンダリ油室21を形成するプランジャ22がセカンダリ軸15に取り付けられている。
【0016】セカンダリ軸15はギヤ23,24を介して中間軸25に連結されており、中間軸25に取り付けられたギヤ26がディファレンシャル装置27のファイナルギヤ28に噛み合い、ディファレンシャル装置27に連結された車軸29a,29bには車輪31a,31bが取り付けられている。前輪駆動車の場合には、車輪31a,31bは前輪となる。
【0017】前後進切換装置11は、タービン軸6に固定される前進用クラッチドラム部に設けられたクラッチシリンダ32と、プライマリ軸13に固定されたクラッチハブ33とを有し、これらの間には多板式の前進用クラッチ34が設けられている。この前進用クラッチ34を作動するための油圧ピストン35がクラッチシリンダ32内に組み込まれている。したがって、クラッチシリンダ32内の油室32aに油圧を供給して前進用クラッチ34を接続状態とすると、タービン軸6の回転はクラッチハブ33を介してプライマリ軸13に伝達されてプライマリ軸13はタービン軸6と同一の正転方向に回転する。
【0018】プライマリ軸13にはサンギヤ36が固定され、この外側にはリングギヤ37が回転自在にケース10内に設けられている。クラッチシリンダ32を備えた前進用クラッチドラム部に取り付けられたキャリア38には、相互に噛み合って対をなすプラネタリピニオンギヤ41,42が回転自在に装着され、一方のプラネタリピニオンギヤ41はサンギヤ36に噛み合い、他方のプラネタリピニオンギヤ42はリングギヤ37の内歯と噛み合っており、これらのギヤによりダブルピニオン式プラネタリギヤが構成されている。それぞれのプラネタリピニオンギヤ41,42は、図1にあっては作図の便宜上、1つずつが離して示されているが、対となって噛み合っており、複数対設けられている。
【0019】このリングギヤ37とケース10との間には多板式の後退用ブレーキ43が設けられており、この後退用ブレーキ43を作動するための油圧ピストン44がケース10に形成されたブレーキシリンダ45内に組み込まれている。したがって、前進用クラッチ34が開放された状態のもとで、ブレーキシリンダ45内の油室45aに油圧を供給して後退用ブレーキ43を制動状態とすると、リングギヤ37がケース10に固定された状態になるので、タービン軸6とともにキャリア38が回転することにより、対となったプラネタリピニオンギヤ41,42を介してサンギヤ36およびプライマリ軸13は、タービン軸6とは逆の逆転方向に回転する。前進用クラッチ34および後退用ブレーキ43は、前後進切換装置11の摩擦係合要素となっている。
【0020】ブレーキシリンダ45やクラッチシリンダ32などの油圧作動機器を作動させるために、ケース10内には油圧源としてのオイルポンプ47が配置されており、このオイルポンプ47はクランク軸1によりポンプ側ケース3を介して駆動されるようになっている。
【0021】図2は図1に示された駆動系の作動を制御するための油圧回路を示す図であり、オイルパン48内の油を吸引して吐出するオイルポンプ47の吐出口はセカンダリ圧路50によりセカンダリプーリ16の可動プーリ16bを作動させるセカンダリ油室21に接続されるとともに、セカンダリ圧制御弁51のセカンダリ圧ポートに接続されている。このセカンダリ圧制御弁51によって、セカンダリ油室21に供給されるセカンダリ圧は、たとえば、1〜3MPa 程度の範囲内のうち所定の圧力に調整されて駆動ベルト17に必要な伝達容量に見合った値に制御される。つまり、登坂や急加速などのようにエンジン出力が大きいときには、セカンダリ圧は上げられて駆動ベルト17のスリップが防止され、エンジン出力が小さいときにはセカンダリ圧は下げられてオイルポンプ47のロスと伝達効率の向上が図られる。
【0022】セカンダリ圧路50はプライマリ圧制御弁52のセカンダリ圧ポートに接続され、この制御弁52の制御圧ポートに接続されたプライマリ圧路53はプライマリプーリ14側の可動プーリ14bを作動させるプライマリ油室18に接続され、この油室18にはプライマリ圧制御弁52により調圧されたプライマリ圧が供給される。このプライマリ圧はセカンダリ圧を調圧つまり減圧して設定されるので、セカンダリ圧を超えない。ただし、プライマリ油室18の受圧面積はセカンダリ油室21の受圧面積よりも大きく設定されているので、駆動ベルト17を挟み付ける力はセカンダリプーリ16側よりもプライマリプーリ14側の方を大きくすることができる。このように、プライマリ油室18の受圧面積がセカンダリ油室21の受圧面積よりも大きく設定されているので、プライマリ圧を目標変速比、変速速度に応じた値に制御することにより、プライマリプーリ14の溝幅を変化させて車速を制御することが可能となる。
【0023】セカンダリ圧制御弁51とプライマリ圧制御弁52は、図示する場合には、いずれも比例電磁式リリーフ弁が使用されており、ソレノイド51a,52aに供給される電流値に応じてセカンダリ圧とプライマリ圧とが設定される。ただし、それぞれの制御弁51,52としては、ソレノイド51a,52aへの通電と非通電とからなる1サイクルのうち通電が行なわれるデューティ比を変化させるようにして圧力を調整するようにしたデューティソレノイド弁を使用するようにしても良い。
【0024】セカンダリ圧制御弁51のドレーン路は、リリーフ弁である潤滑圧制御弁54に対して潤滑圧路55により接続されており、この潤滑圧制御弁54により、潤滑圧はたとえば、0.2〜0.4MPa 程度に調圧され、この圧力の油圧が駆動ベルトや前後進切換装置11などの変速機各部やロックアップ開放時のリリース室9bに供給される。
【0025】図2に示すように、セカンダリ圧路50は減圧弁であるクラッチ圧制御弁57に接続されており、このクラッチ圧制御弁57に外部パイロット圧を供給することにより、たとえば、0.7MPa 程度の低いクラッチ圧がクラッチ圧路58に供給され、外部パイロット圧の供給を停止することにより、たとえば、1.2MPa 程度の高いクラッチ圧がクラッチ圧路58に供給される。
【0026】クラッチ圧路58と潤滑圧路55との間にはバイパス路59が接続され、このバイパス路59には、クラッチ圧路58から潤滑圧路55に向かう油圧の流れを阻止し、潤滑圧がクラッチ圧よりも高くなったときにのみ、潤滑圧路55からクラッチ圧路58に向かう流れを許容する逆止め弁60が設けられている。
【0027】トルクコンバータ2のアプライ室9aに接続されたアプライ圧路61、リリース室9bに接続されたリリース圧路62、後退用ブレーキ43を作動させるブレーキ油室45aに接続されたブレーキ用切換圧路63、および前進用クラッチ34を作動させるクラッチ油室32aに接続されたクラッチ用切換圧路64と、前述した潤滑圧路55およびクラッチ圧路58との接続などを制御するために、スイッチ弁65が設けられている。
【0028】このスイッチ弁65は、それぞれ3ポート切換弁構造となった4つの部分を有し、図2および図3に示すように外部パイロット圧が加わらない状態におけるF&Rモードつまり車速が所定値以下となった状態におけるロックアップクラッチ9の開放位置と、図4に示すように外部パイロット圧が加わった状態におけるロックアップクラッチ9の係合位置との2位置に作動する。
【0029】開放位置にあっては、図3に示すように潤滑圧路55とリリース圧路62とがスイッチ弁65により連通状態となり、オイルクーラ66が設けられた冷却路67とアプライ圧路61とが連通状態となる。これにより、油圧回路はトルクコンバータ2が作動し、前後進切換装置11の油圧制御が可能なモードつまりF&Rモードとなり、このときには、潤滑圧に設定された油圧はリリース室9bに供給され、アプライ室9aから排出されてオイルクーラ66を経てオイルパンに戻される。
【0030】一方、係合位置にあっては、図4に示すように、クラッチ圧路58とアプライ圧路61とが連通状態となり、クラッチ圧に設定された油圧がアプライ室9aに供給される。このときには、クラッチ圧路58に接続されたスリップ圧路68がリリース圧路62に連通される。スリップ圧路68にはスリップ圧制御弁71が設けられており、このスリップ圧制御弁71はこれの外部パイロット室に供給される外部パイロット圧に応じてスリップ圧路68に供給されるスリップ圧を、クラッチ圧と同一の圧力から圧力0の範囲のうち任意の圧力に制御する。したがって、スリップ圧が0になるとロックアップクラッチ9が係合してロックアップモードとなり、クラッチ圧と同一になるとロックアップクラッチ9が開放される。そして、このスリップ圧を適宜制御することによりロックアップクラッチ9の回転差を一定に制御するロックアップクラッチ9のスリップ制御を行なうことができる。
【0031】スイッチ弁65が係合位置となったときには、潤滑圧路55はスイッチ弁65を介して冷却路67に連通することになり、このときの潤滑油の流れ量を減少させるために、潤滑圧路55のうちスイッチ弁65の入口には絞り55aが設けられている。
【0032】スリップ圧制御弁71に外部パイロット圧を供給するために、この弁71のパイロットポートとクラッチ圧路58との間にはパイロット圧路72が接続されており、このパイロット圧路72にはパイロット圧を制御するために圧力調整弁73が設けられており、スリップ圧制御弁71と圧力調整弁73とによりスリップ圧調整手段が構成されている。この圧力調整弁73はソレノイド73aに供給される電流のデューティ比を変化させることにより圧力を調整するようにしたデューティソレノイド弁が使用されているが、セカンダリ圧制御弁51と同様に電流制御による比例電磁式のリリーフ弁を使用するようにしても良い。
【0033】車室内に設けられた走行モード切換用のコントロールレバーつまりセレクトレバー74には、これによりそれぞれ連動するマニュアル弁75とリバースシグナル弁76とが連結されており、それぞれの弁75,76はセレクトレバー74によって設定されるP(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジおよびDs (スポーツドライブ)レンジに対応した5位置に作動する。
【0034】リバースシグナル弁76を介してクラッチ圧路58をスイッチ弁65の外部パイロット室に連通させるパイロット圧路77には、3ポート式のソレノイド型の切換弁78が設けられており、スイッチ弁65と切換弁78とにより切換手段が構成されている。その切換弁78のソレノイド78aに通電すると、図4に示すように、スイッチ弁65はロックアップ制御位置つまりロックアップクラッチの係合位置となり、ソレノイド78aに対する通電をOFF すると、図2および図3に示すようにF&Rモード位置となる。パイロット圧路77は、破線で示すようにクラッチ圧制御弁57の外部パイロット室57aに接続されており、リバースシグナル弁76がN位置、D位置およびDs 位置のいずれかに設定された場合には、クラッチ圧制御弁57の外部パイロット室57aにクラッチ圧が供給されて、クラッチ圧は低い圧力、たとえば0.7MPa に設定される。一方、リバースシグナル弁76が上記以外のP位置およびR位置に設定された場合には、クラッチ圧制御弁57の外部パイロット室57aには油圧が供給されずに、クラッチ圧は高い圧力、たとえば、1.2MPa に設定される。
【0035】スイッチ弁65とマニュアル弁75との間には共通の切換圧路79が設けられており、この切換圧路79はスイッチ弁65が図3に示すようにF&Rモード位置になるとスリップ圧路68に連通し、スイッチ弁65が図4に示すようにロックアップ制御位置となるとクラッチ圧路58に連通する。この切換圧路79はセレクトレバー74の操作によりマニュアル弁75がDレンジとDs レンジのいずれかに設定されたときには、マニュアル弁75を介してクラッチ用切換圧路64に連通状態となり、Rレンジに設定されたときにはブレーキ用切換圧路63に連通状態となる。
【0036】上述した油圧制御回路を有する車両にあっては、セレクトレバー74の操作によって図4に示すようにDレンジが選択された場合、さらにDs レンジおよびNレンジが選択された場合には、リバースシグナル弁76を介してクラッチ圧路58がパイロット圧路77に連通状態となり、クラッチ圧制御弁57の外部パイロット室57aにはクラッチ圧が供給されるので、クラッチ圧路58には低いクラッチ圧が供給される。したがって、セレクトレバー74の操作によって前進走行位置であるDレンジおよびDs レンジのいずれもが設定された場合には、低いクラッチ圧が、クラッチ圧路58、スリップ圧路68および切換圧路79を介して前進用クラッチ34の油室32aに供給される。
【0037】一方、セレクトレバー74の操作によってPレンジおよびRレンジのいずれかが設定された場合には、リバースシグナル弁76によってクラッチ圧路58とパイロット圧路77との連通が遮断されて、クラッチ圧制御弁57の外部パイロット室57aがドレーン状態となるので、クラッチ圧路58には高いクラッチ圧が供給される。したがって、セレクトレバー74の操作によって後退位置であるRレンジが設定された場合には、高いクラッチ圧がクラッチ圧路58、スリップ圧路68および切換圧路79を介して後退用ブレーキ43の油室45aに供給される。
【0038】図5はスイッチ弁65をON-OFF作動させるための切換弁78とスリップ圧制御弁71を作動させるための圧力調整弁73を制御するクラッチ制御部80の制御回路を示すブロック図である。
【0039】クラッチ制御部80は、セレクトレバー74の操作により出力されたレンジ信号が入力される走行モード判定部81と、エンジンのスロットル開度θ、エンジン回転数Ne および車速Vの信号がそれぞれ入力されるロックアップ制御判定部82と、これらの信号に加えてブレーキスイッチ信号が入力する急減速制御判定部83と、圧力調整弁73の故障を検出する故障検出部84とを有している。
【0040】ロックアップ制御判定部82と急減速制御判定部83と故障検出部84からの出力信号は前進クラッチおよびロックアップクラッチの制御部85に入力されて、この制御部85からの出力信号によって、切換弁78と圧力調整弁73とが制御されるようになっている。
【0041】図6は車両の走行状態に応じた図5に示すクラッチ制御部80からの制御信号によって切換弁78のON-OFFと圧力調整弁73によるスリップ圧の変化とを示すタイムチャートである。
【0042】図2に示すように、Nレンジが選択されているときには、切換弁78はOFF となってスイッチ弁65は図2に示すように開放位置であり、ロックアップクラッチ9は開放状態であり、圧力調整弁73によりスリップ圧制御弁71によって設定されるスリップ圧は低圧となる。
【0043】Dレンジがセレクトレバー74によって選択されると、図3に示すようにF&Rモードとなり、スイッチ弁65はNレンジと同様に開放位置のままであるが、前進用クラッチ34を係合状態とすべくクラッチシリンダ32にはスイッチ弁65を介してスリップ圧が供給される。このスリップ圧はエンジン回転数Ne とスロットル開度θに応じたデューティ比の信号が供給される圧力調整弁73により高圧に設定される。
【0044】車速が上昇して所定車速を超えると、クラッチ制御部80からは開放状態のロックアップクラッチ9を係合状態に切り換えるべく、切換弁78に作動信号が出力されて切換弁78はONとなり、図6において■で示すように、スイッチ弁65にはパイロット圧が供給されてスイッチ弁65がONとなって係合位置つまりロックアップモードに切り換わる。ただし、図6において破線で示されるように、クラッチ制御部80から出力信号が出されてからスイッチ弁65の切り換わり完了までに所定の作動遅れt0がある。
【0045】スイッチ弁65が切り換わると、アプライ室9aにはクラッチ圧制御弁57により調整されたクラッチ圧が供給されることになり、リリース室9b内の油圧はスリップ圧制御弁71を介してオイルパン48に戻されることになるが、クラッチ制御部80から切換弁78に作動信号が出力されてから、所定の時間遅れt1が経過するまではスリップ圧を変化させることなく、時間遅れt1 が経過したときに圧力調整弁73に対してデューティ比を変化させるように作動信号をクラッチ制御部80から作動信号を送り、■で示すように、スリップ圧を徐々に低下させる低下制御を実行する。
【0046】これにより、既にアプライ室9aに供給されたクラッチ圧に対してスリップ圧が徐々に低下するように制御されるので、ロックアップクラッチ9は■で示すようにスムースに係合し、係合ショックが発生することが防止される。スリップ切換時間が経過すると、スリップ圧は低圧になる。時間遅れt1 はスイッチ弁65の切換完了までの時間遅れt0 と同一かあるいはそれよりも長い時間に設定されており、スイッチ弁65の作動時間の誤差を吸収して確実にスムースな係合が達成される。ロックアップモードに切り換わった後における前進用クラッチ34のクラッチシリンダ32には、スイッチ弁65が切り換わることから、スリップ圧よりも高いクラッチ圧が作用することになる。
【0047】ロックアップモードで走行していた状態のもとで、車速が所定値以下に低下すると、F&Rモードに切り換えられることになるが、まず、図6において■で示すように、圧力調整弁73によりスリップ圧を低圧から高圧に徐々に上昇させるように上昇制御し、所定の時間遅れt2 が経過した後に、切換弁78が■で示すようにOFF されて、スイッチ弁65はOFF となって係合位置から開放位置に切り換わり、F&Rモードへの切り換えが完了する。
【0048】このように、スイッチ弁65がF&Rモードに切り換えられる前に、スリップ圧制御弁71によってスリップ圧路68は高圧のスリップ圧に切り換えられており、スイッチ弁65がF&Rモードに切り換わったときには、既にロックアップクラッチ9は開放状態となっているとともに、前進用クラッチ34には高圧に切り換わっているスリップ圧が■で示すように供給されることになる。これにより、前進用クラッチ34に作用する油圧の落ち込みがなくなり、エンジンの空吹きを防止することができる。
【0049】また、ロックアップモードで走行中に急減速されたと急減速制御判定部83が判定した場合には、切換弁78を■で示すようにOFF させて直ちにスイッチ弁65をOFF してF&Rモードつまり開放位置に切り換えて、アプライ室9aへの油圧の供給を停止するとともに、スリップ圧制御弁71によりスリップ圧を低圧に保持させる。これにより、前進用クラッチ34とロックアップクラッチ9はともに■で示すように開放状態となり、エンジンストールが回避される。
【0050】上記した制御において、スリップ圧を制御するための圧力調整弁73の故障が故障検出部84により判定された場合には、判断時がF&Rモードでもロックアップモードなどの他のモードでも、切換弁78は■で示すようにOFF されて、スイッチ弁65は開放位置に切り換えられてF&Rモードに固定される。故障と判断されたときの圧力調整弁73に供給されるデューティ比がゼロとなると、■’で示すように、スリップ圧は最大圧のクラッチ圧となり、ロックアップクラッチ9は開放状態となる。これにより、低速走行のときにロックアップクラッチ9の引きずりを発生することが防止される。
【0051】図7は前述したクラッチ制御装置の制御手順のメインルーチンを示すフローチャートであり、ステップS1で前進走行モードが選択されていると判断されたときには、ステップS2で前進用クラッチ34が係合状態に設定され、車速が所定値以上となってロックアップ条件となったことがステップS3で判断されたならば、ロックアップモードに切り換えられてステップS4でロックアップクラッチ9は係合状態に設定される。ステップS3でロックアップ条件とならないと判断されたときには、ステップS5によりロックアップクラッチ9は開放状態を維持する。
【0052】ロックアップモードにおいて急減速制御条件となったことがステップS6で判断されたならば、前進用クラッチとロックアップクラッチはともに開放状態に切り換えられる(ステップS7,S8)。ステップS9で急減速制御を通常制御に復帰すると判断されたならば、ステップS1に戻される。
【0053】図8はクラッチ制御装置のサブルーチンを示すフローチャートであり、ステップS11で圧力調整弁73が故障しておらず、ステップS12でロックアップ条件が成立したと判断された場合には、ステップS13で切換弁78がONされるとともに、ステップS14ではタイマーt1 が設定される。ステップS15でタイマーt1 のタイムアップが判断されると、ステップS16において圧力調整弁73により低圧制御が実行されてロックアップクラッチ9が係合状態となる。一方、ステップS11で圧力調整弁73が故障であると判断された場合と、ステップS12でロックアップ条件が成立していないと判断された場合には、ステップS17,S18が実行されて、F&Rモードとなる。
【0054】ステップS16におけるロックアップ係合状態は、ステップS19を経てステップS20においてロックアップ解除が判断されるまで実行され、ロックアップ解除が判断されると、ステップS21において圧力調整弁73によりスリップ圧が高圧に切り換えられるとともに、ステップS22によりタイマーt2 が設定される。ステップS23でタイマーt2 のタイムアップが判断されると、ステップS24において切換弁78がOFF され、F&Rモードに切り換えられる。
【0055】本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、トルクコンバータのロックアップクラッチが開放状態から係合状態にスムースに切り換わり、ロックアップショックないし係合ショックの発生を防止することができる。ロックアップクラッチが係合状態から開放状態に切り換わる際におけるエンジンの空吹きの発生を防止することができる。急減速時のエンジンストールの発生を防止することができる。スリップ圧を調整するスリップ圧調整手段が故障した場合にはロックアップクラッチの引きずりの発生を防止することができる。このようにして、車両の走行性が向上される。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年5月21日(1999.5.21)
【代理人】 【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和 (外2名)
【公開番号】 特開2000−329228(P2000−329228A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願平11−140910