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【発明の名称】 変速用歯車及びその製造装置
【発明者】 【氏名】長谷川 平一

【要約】 【課題】変速用歯及び先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を含む、変速用歯部及びクラッチスプライン歯部を、鍛造により、かつ、高精度に成形するようにした変速用歯車を提供すること。

【解決手段】鍛造により一体に成形された、変速用歯部Paと、クラッチスプライン歯部Pbとを有し、このクラッチスプライン歯部Pbに、先端にチャンファCbを有する逆テーパ状のスプライン歯Gbを鍛造により成形した変速用歯車において、逆テーパ状のスプライン歯Gbを形成したクラッチスプライン歯部Pbを基準にして、変速用歯部Paに、変速用歯Gaを転造ダイスによる鍛造により成形する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鍛造により一体に成形された、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とを有し、該クラッチスプライン歯部に、先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を鍛造により成形した変速用歯車において、前記逆テーパ状のスプライン歯を形成したクラッチスプライン歯部を基準にして、前記変速用歯部に、変速用歯を転造ダイスによる鍛造により成形したことを特徴とする変速用歯車。
【請求項2】 前記変速用歯が、ヘリカル歯であることを特徴とする請求項1記載の変速用歯車。
【請求項3】 前記変速用歯が、歯面にクラウニングを有することを特徴とする請求項1又は2記載の変速用歯車。
【請求項4】 変速用歯部に形成した変速用歯の歯元円の直径より、クラッチスプライン歯部に形成した逆テーパ状のスプライン歯の歯先円の直径が大きく、かつ、変速用歯部とクラッチスプライン歯部の隙間が2mm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の変速用歯車。
【請求項5】 前記逆テーパ状のスプライン歯が、鍛造により成形した歯車軸線に平行なスプライン歯間に、歯車軸線に対して放射状に配設したダイスを歯車軸線に直角方向に歯車中心に向かって押し込むことにより、前記ダイスの先端の形状に従う形状に成形されたものであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の変速用歯車。
【請求項6】 被加工歯車の中心に穿設した軸孔を保持するチャック手段と、該チャック手段を介して、前記被加工歯車を、その軸孔を中心軸として回転させるテールストックと、該テールストックに配設し、テールストックと共に回転する同期ギアと、前記テールストックと平行に配設し、前記同期ギアと噛合する従動ギア及び転造ダイスを配設した転造スピンドルとからなり、前記被加工歯車を、その軸孔を中心軸として回転させながら、前記同期ギア及び従動ギアを介して、前記被加工歯車と同期して回転する前記転造ダイスにより、前記被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成した変速用歯の仕上げ成形を行うようにしたことを特徴とする変速用歯車の製造装置。
【請求項7】 前記チャック手段が、コレットチャックと、該コレットチャックに嵌挿してコレットチャックを拡径して被加工歯車の中心に穿設した軸孔を保持するようにする雄コーンとからなることを特徴とする請求項6記載の変速用歯車の製造装置。
【請求項8】 前記転造ダイスが、前記被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成したヘリカル歯の仕上げ成形を行うものであることを特徴とする請求項6又は7記載の変速用歯車の製造装置。
【請求項9】 前記転造ダイスが、被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成した変速用歯の歯面にクラウニングの成形を併せて行うものであることを特徴とする請求項6、7又は8記載の変速用歯車の製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として、変速機のトランスミッションに使用される、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とを有する変速用歯車及びその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、変速機のトランスミッションに使用される、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とを有する変速用歯車は、■ 熱間鍛造により一体に成形された、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とに、ホブ切り等の機械加工により変速用歯と、スプライン歯とを、それぞれ形成する方法■ 熱間鍛造により成形された変速用歯部にホブ切り等の機械加工により変速用歯を形成し、この変速用歯部と、冷間鍛造により成形されたスプライン歯を有するクラッチスプライン歯部とを、スプライン接続又は電子ビーム溶接で一体化する方法■ 熱間鍛造により一体に成形された、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とに、ホブ切り等の機械加工により変速用歯を、熱間、冷間鍛造によりスプライン歯を、それぞれ形成する方法等により製造するようにしている。
【0003】ところで、上記■〜■の方法は、いずれも、変速用歯部にホブ切り等の機械加工により変速用歯を形成するものであるため、変速用歯のメタルフローが切断されて、歯車の強度が低下するとともに、機械加工による製造コストの上昇を回避することができないという問題点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この問題に対処するために、変速用歯部に、変速用歯を、例えば、プレスによる冷間鍛造により成形する方法を採用することも考えられるが、逆テーパ状のスプライン歯を形成したクラッチスプライン歯部と、変速用歯を形成した変速用歯部との同心性を確保することが困難で、高い精度の変速用歯車を製造することはできなかった。
【0005】また、現在、変速機のトランスミッションに汎用されている変速用歯車Wは、図11に示すように、変速用歯部Paと、クラッチスプライン歯部Pbとを有し、変速用歯部Paに変速用歯としてのヘリカル歯Gaを、クラッチスプライン歯部Pbに先端にチャンファCbを有する逆テーパ状のスプライン歯Gbを、それぞれ形成するようにしている。この変速用歯部Paに形成されるヘリカル歯Gaは、図10(C)に示すように、一般的には、15°〜35°の右又は左のねじれ角αを有し、かつ、変速用歯車Wの高速回転時のギャー音を小さくするために高歯に形成される。
【0006】このため、例えば、プレスによる冷間鍛造により、ヘリカル歯Gaを成形しようとすると、成形圧の大部分をヘリカル歯Gaの歯面Faが支えることとなって、ヘリカル歯Gaが撓むとともに、ヘリカル歯Gaの歯面Fbに隙間が生じ、その隙間に材料が流れることとなる。この結果、ヘリカル歯Gaは、歯面Faのねじれ角αaと、歯面Fbのねじれ角αbが異なって成形され、高い精度の変速用歯車を製造することが困難になるだけでなく、特に、この傾向は、ねじれ角αが大きいほど顕著となるため、ねじれ角αが30゜以上のヘリカル歯は、プレスによる冷間鍛造によっては成形ができなかった。
【0007】また、変速用歯車Wには、変速用歯部Paに、歯面にクラウニングCaを有するヘリカル歯Ga(図10(D)参照)を形成したものも採用されているが、プレスによる冷間鍛造によっては、クラウニングを成形することができなかった。
【0008】本発明は、上記従来の変速用歯車及びその製造方法の有する問題点に鑑み、変速用歯及び先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を含む、変速用歯部及びクラッチスプライン歯部を、鍛造により、かつ、高精度に成形するようにした変速用歯車及びその製造装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の変速用歯車は、鍛造により一体に成形された、変速用歯部と、クラッチスプライン歯部とを有し、該クラッチスプライン歯部に、先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を鍛造により成形した変速用歯車において、前記逆テーパ状のスプライン歯を形成したクラッチスプライン歯部(外周面)を基準にして、前記変速用歯部に、変速用歯を転造ダイスによる鍛造により成形したことを特徴とする。
【0010】本発明が対象とする変速用歯車には、変速用歯がヘリカル歯のものや平歯のものを含む。
【0011】また、本発明が対象とする変速用歯車には、歯面にクラウニングを有するものを含む。
【0012】また、本発明が対象とする変速用歯車には、変速用歯部に形成した変速用歯の歯元円の直径より、クラッチスプライン歯部に形成した逆テーパ状のスプライン歯の歯先円の直径が大きく、かつ、変速用歯部とクラッチスプライン歯部の隙間が2mm以下であるものを含む。
【0013】また、本発明が対象とする変速用歯車には、逆テーパ状のスプライン歯が、鍛造により成形した歯車軸線に平行なスプライン歯間に、歯車軸線に対して放射状に配設したダイスを歯車軸線に直角方向に歯車中心に向かって押し込むことにより、前記ダイスの先端の形状に従う形状に成形されたものを含む。
【0014】本発明の変速用歯車の製造装置は、上記本発明の変速用歯車を製造するための装置に関するものであって、被加工歯車の中心に穿設した軸孔を保持するチャック手段と、該チャック手段を介して、前記被加工歯車を、その軸孔を中心軸として回転させるテールストックと、該テールストックに配設し、テールストックと共に回転する同期ギアと、前記テールストックと平行に配設し、前記同期ギアと噛合する従動ギア及び転造ダイスを配設した転造スピンドルとからなり、前記被加工歯車を、その軸孔を中心軸として回転させながら、前記同期ギア及び従動ギアを介して、前記被加工歯車と同期して回転する前記転造ダイスにより、前記被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成した変速用歯の仕上げ成形を行うようにしたことを特徴とする。
【0015】この場合において、チャック手段を、コレットチャックと、該コレットチャックに嵌挿してコレットチャックを拡径して被加工歯車の中心に穿設した軸孔を保持するようにする雄コーンとから構成することができる。
【0016】また、転造ダイスを、被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成したヘリカル歯の仕上げ成形を行うように構成することができる。
【0017】また、転造ダイスが、被加工歯車の変速用歯部に予め荒形成した変速用歯の歯面にクラウニングの成形を併せて行うように構成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の変速用歯車及びその製造装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】まず、本発明の変速用歯車の成形方法を、図11(A)、(B)に示す形態の変速用歯車Wを成形する場合について、図1を用いて説明する。
【0020】まず、製造する変速用歯車Wに適した素材を、ビレットシャー又は鋸で、所定の大きさに切断し(図1(1)、(2))、この素材W0を熱間又は温間鍛造するのに適した温度に加熱する(図1(3))。この場合、素材には、変速用歯車Wに適した鋼材、例えば、SC鋼、SCM鋼、SNC鋼、SNCM鋼、SCR鋼等を使用することができる。また、加熱温度は、熱間又は温間鍛造の別、素材の材質、形状、大きさ等に応じて定めることができ、例えば、1150℃〜1200℃に加熱する。
【0021】加熱後、素材W0を複数の熱間又は温間鍛造工程を経て、変速用歯部Paと、クラッチスプライン歯部Pbとを一体に成形するとともに、変速用歯部Paに変速用歯Raを、クラッチスプライン歯部Paに歯車軸線に平行なスプライン歯Rbを、それぞれ荒成形した中間製品W4に形成する。この熱間鍛造工程は、特に限定されるものではないが、通常、据込工程(図1(4))、ブロッカ工程(図1(5))、フィニッシャ工程(図1(6))及びピアス工程(図1(7))の4工程よりなる。このうち、据込工程(図1(4))は、素材W0を鍛造し易い形状に成形する工程で、この工程を経た素材W1を、ブロッカ工程(図1(5))及びフィニッシャ工程(図1(6)。詳細は後述。)により、全体形状を所要の形状に整えるようにするとともに、変速用歯部Pa及びクラッチスプライン歯部Pbに所要の歯を荒形成するものである。このブロッカ工程及びフィニッシャ工程は、素材W1の材質、成形する中間製品W1の形状、大きさ等に応じて、さらに複数の工程で以て構成することができる。そして、ピアス工程(図1(7))により、中間製品W3の中心に軸孔Hを形成した中間製品W4を得るようにする。なお、軸孔Hの直径は、最終仕上がり寸法よりもやや小径に形成するものとする。
【0022】変速用歯部Pa及びクラッチスプライン歯部Pbに所要の歯を荒形成した中間製品W4に対して、必要に応じて、熱処理工程(図1(8))において、焼準等の熱処理を施し、ショットブラスト工程(図1(9))において、中間製品W4の表面に付着しているスケールを除去し、さらに、潤滑処理工程(図1(10))において、次工程の冷間鍛造工程を円滑に行うために、ボンデライト・ボンダリューベ処理、二硫化モリブデン系潤滑剤による処理等の所要の潤滑処理を施すようにする。
【0023】潤滑処理工程(図1(10))を経た中間製品W4に対して、冷間コイニング工程(図1(11))において、クラッチスプライン歯部Pbに荒形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Rbの仕上げ成形を行った後、この中間製品W5に対して、スプライン歯成形工程(図1(12)。詳細は後述。)において、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Sbを、逆テーパ状のスプライン歯Gbに成形する。
【0024】スプライン歯成形工程(図1(12))を経た中間製品W6に対して、機械加工工程(図1(13))において、最終仕上がり寸法に成形した逆テーパ状のスプライン歯Gbを形成したクラッチスプライン歯部Pbの外周面を基準にして、中間製品W6の端面(クラッチスプライン歯部Pbの外周面に対する直角度をだすため)、軸孔Hの内周面(クラッチスプライン歯部Pbの外周面と同心にするため)、その他の部分の旋削加工を行う。
【0025】機械加工工程(図1(13))を経た中間製品W7に対して、フローフォーミングによる変速用歯成形工程(図1(14)。詳細は後述。)において、軸孔Hを中心軸として回転しながら、変速用歯部Paに荒形成した変速用歯Raを、変速用歯Gaに仕上げ成形する。このとき、併せて、必要に応じて、変速用歯Raの歯面にクラウニングCaを成形することができる。
【0026】変速用歯成形工程(図1(14))を経た中間製品W8に対して、機械加工工程(図1(15))において、変速用歯部Paの外径、端面その他の部分の旋削加工を行った後、熱処理工程(図1(16))において、浸炭焼入、焼戻し等の所要の熱処理を施し、さらに、研磨処理工程(図1(17))を経て、最終製品の変速用歯車Wを得ることができる。
【0027】次に、図1(6)のフィニッシャ工程について、詳細に説明する。フィニッシャ工程は、熱間又は温間鍛造工程のブロッカ工程(図1(5))により、全体形状を所要の形状に整えた中間製品W2に、変速用歯部Paと、クラッチスプライン歯部Pbとを一体に成形するとともに、変速用歯部Paに変速用歯Raを、クラッチスプライン歯部Pbに歯車軸線に平行なスプライン歯Rbを、それぞれ荒成形するものである。
【0028】このフィニッシャ工程を実施するための荒歯成形装置の一例を図2に示す。この荒歯成形装置3は、変速用歯部Paに変速用歯としてのヘリカル歯Raを、クラッチスプライン歯部Pbに歯車軸線に平行なスプライン歯Rbを、同時に荒成形するためのものであり、以下、その構造を説明する。
【0029】ベース30上にダイス取付台31を取り付け、このダイス取付台31に、ギアダイス32を取り付ける。ギアダイス32は、円筒状に形成し、その内周面に中間製品W2の変速用歯部Paに形成するヘリカル歯Raに対応した成形用歯32aを備えている。また、ギアダイス32内には、中間製品W2を上下より挟持、押圧して塑性変形を生じさせる上パンチ33U及び下パンチ33Dが、それぞれ上下方向から挿入されるようにする。この場合、ギアダイス32の成形用歯32aと、下パンチ33Dの外周面に形成した従動歯33aとが噛合し、下パンチ33Dがギアダイス32内で移動すると、その移動量に合わせて、下パンチ33Dが回転するように構成する。上下パンチ33U,33Dは、ギアダイス32と協同して、中間製品W2に塑性変形を生じさせることにより、中間製品W3に成形することができる形状に形成されており、さらに、下パンチ33Dは、その上部の内周面に中間製品W2のクラッチスプライン歯部Pbに形成する歯車軸線に平行なスプライン歯Rbに対応した成形用歯33bを備えている。上下パンチ33U,33Dは、上下ベアリングプレート34U,34Dを介して回転自在に支持されるとともに、上パンチ33Uは上パンチ取付台37を介して昇降台38により、下パンチ33Dは油圧シリンダ35内に作動油を供給することにより移動するピストン36により、それぞれ昇降できるようにする。下パンチ33Dには、下ノックアウトピンP1を挿通し、ベース30を貫通するノックアウトピンP2にて操作されるようにし、また、上パンチ33Uには、上ノックアウトピンP3を挿通し、昇降台38を貫通するノックアウトピンP4にて操作されるようにする。
【0030】次に、この荒歯成形装置3の動作について説明する。中間製品W2を下パンチ33D上に載置し、昇降台38を降下することにより、中間製品W2を上パンチ33Uと下パンチ33Dの間で挟持、押圧して塑性変形を生じさせ、変速用歯部Paにヘリカル歯Raを、クラッチスプライン歯部Pbに歯車軸線に平行なスプライン歯Rbを、同時に荒成形する。その後、油圧シリンダ35内に作動油を供給してピストン36を上昇させ、下パンチ33Dを押し上げるようにする。この場合、ピストン36は、成形された中間製品W3が、ギアダイス32から離脱するまで、上昇させるようにする。このとき、ギアダイス32の成形用歯32aと、下パンチ33Dの外周面に形成した従動歯33aとが噛合しているため、下パンチ33Dがギアダイス32内で移動すると、その移動量に合わせて、下パンチ33Dが回転し、これに合わせて成形された中間製品W3が共に回転する。これにより、中間製品W3の変速用歯部Pa及びクラッチスプライン歯部Pbに、それぞれ形成されたヘリカル歯Ra及び歯車軸線に平行なスプライン歯Rbが、損傷を受けることなく、中間製品W3を取り出すことができる。すなわち、中間製品W3の取り出しは、昇降台38を上昇させることにより、上パンチ33Uと下パンチ33Dによる中間製品W3の挟持を解除した後、油圧シリンダ35のピストン36を上昇させることにより、ギアダイス32の成形用歯32aから、中間製品W3の変速用歯部Paに形成されたヘリカル歯Raを離脱させる。その後、ノックアウトピンP2を介して下ノックアウトピンP1を、また、ノックアウトピンP4を介して上ノックアウトピンP3を突出することにより、下パンチ33Dの成形用歯33bから、中間製品W3のクラッチスプライン歯部Pbに形成された歯車軸線に平行なスプライン歯Rbを離脱させ、中間製品W3を上下パンチ33U,33Dから離型するようにする。
【0031】次に、図1(12)のスプライン歯成形工程について、詳細に説明する。スプライン歯成形工程は、冷間コイニング工程(図1(11))において、クラッチスプライン歯部Pbに荒形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Rbの仕上げ成形を行った後、この中間製品W5に対して、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯を、逆テーパ状のスプライン歯Gbに成形するものである。
【0032】このスプライン歯成形工程を実施するためのスプライン歯成形装置の一例を図3〜図5に示す。このスプライン歯成形装置1は、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯を、逆テーパ状のスプライン歯Gbに成形するためのものであり、以下、その構造を説明する。上型11を、上型取付台12に、ばね12Sにより下方に向けて付勢されるようにして配設する。この上型11と対向する下型13を、下型取付台14に固定し、この下型取付台14に、下型13を貫通してパンチ15を配設し、このパンチ15の外側に、ノックアウトピン20により操作される円筒状のノックアウト筒16を配設し、さらに、下型取付台14に円筒状のケース17を固定する。ケース17には、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Sbを、逆テーパ状のスプライン歯Gbに形成するために、スプライン歯Gbの歯間角度及び歯数に合致したカム嵌挿孔17Hを定ピッチで形成するとともに、このカム嵌挿孔17Hの外側面をカム支持面17Fに形成し、カム嵌挿孔17H内にそれぞれカム21を嵌挿する。カム嵌挿孔17H内に嵌挿されたカム21は、下型取付台14に、ばね24を介して支持されるとともに、ノックアウトピン19により操作される環状フランジ18にて支持され、この環状フランジ18にボルト21Vにより固定される。この場合、ノックアウトピン19がフランジ18を押し上げた後、ノックアウトピン20がノックアウト筒16を押し上げるように、ノックアウトピン19及びノックアウトピン20の長さを設定するようにする。カム21は、その背面を、ケース17のカム支持面17Fに摺接するように高精度に仕上げられており、その下部内側にピン22を、ピン22の上端側が内方向に傾斜するように突設するとともに、このピン22の傾斜角と等しい傾斜角を有するダイス押圧面21Tをカム21の内側面に、ピン22と対向して形成する。下型13の上部には、図4に示すように、逆テーパ状のスプライン歯Gbの歯間角度及び歯数に合致したダイス嵌挿孔13Hを、下型13の中心に向かって形成する。このダイス嵌挿孔13Hは、断面略円形で、かつその頂部を平面状にカットするようにし、この各ダイス嵌挿孔13Hに、断面略円形で、かつその頂部を平面状にカットしたダイス23を、嵌挿するようにする。これにより、ダイス23は、下型13の中心に向かって放射状に配設されるとともに、ケース17でダイス23の平面部を押さえ、ダイス23が回転しないように構成されている。ダイス23の先端23Dは、その先端23Dを、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Sbに押し付け、塑性変形を生じさせることにより、逆テーパ状のスプライン歯Gbに成形することができる形状に形成されている。また、ダイス23には、ピン22を挿通するためのピン挿通孔23Hを穿設するとともに、ダイス23の後端面23Tは、カム21のダイス押圧面21Tに対応した傾斜面に形成する。
【0033】次に、このスプライン歯成形装置1の動作について説明する。中間製品W5を下型13上に載置し、上型取付台12を降下することにより、中間製品W5をばね12Sにより付勢された上型11と下型13の間で挟持するとともに、上型取付台12の降下にて、カム21の上面を中間製品W5の挟持より少し遅れて押圧する。これにより、カム21及びフランジ18が押し下げられ、カム21のダイス押圧面21Tにてダイス23の後端面23Tが押圧され、各ダイス23は、下型13の中心に向かう方向、すなわち、中間製品W5の軸心方向に摺動し、ダイス23の先端23Dにて、クラッチスプライン歯部Pbに形成した歯車軸線に平行なスプライン歯Sbを、逆テーパ状のスプライン歯Gbに成形する。その後、上型取付台12を上昇させるとともに、ノックアウトピン19を押し上げ、フランジ18を上昇させる。これにより、カム21も上昇するが、カム21に傾斜して突設したピン22が、ダイス23のピン挿通孔23Hに挿通されているので、カム21の上昇に合わせて、各ダイス23は、下型13の中心と逆方向に強制的に摺動して、ダイス23の先端23Dが、逆テーパ状のスプライン歯Gbが成形された中間製品W6から離脱する。中間製品W6の取り出しは、ダイス23の先端23Dが、中間製品W6から離脱し、中間製品W6のクラッチスプライン歯部Pbに形成した逆テーパ状のスプライン歯Gbが、ダイス23の先端23Dにより損傷を受けることがないようにした後、ノックアウトピン20を押し上げ、ノックアウト筒16を突出することにより、中間製品W6を下型13から離型することにより行うようにする。
【0034】次に、図1(14)のフローフォーミングによる変速用歯成形工程について、詳細に説明する。フローフォーミングによる変速用歯成形工程は、図1(12)のスプライン歯成形工程により、最終仕上がり寸法に成形した逆テーパ状のスプライン歯Gbを形成したクラッチスプライン歯部Pbを基準にして、軸孔Hを形成した中間製品W7を、軸孔Hを中心軸として回転しながら、変速用歯部Paに荒形成した変速用歯Raを、変速用歯Gaに仕上げ成形するものである。
【0035】このフローフォーミングによる変速用歯成形工程を実施するためのフローフォーミング装置の一例を図6〜図9に示す。フローフォーミング装置7は、変速用歯部Paに荒形成した変速用歯としてのヘリカル歯Raを、変速用歯としてのヘリカル歯Gaに仕上げ成形するものであり、以下、その構造を説明する。
【0036】フローフォーミング装置7は、交互に正逆回転可能なテールストック部4と、このテールストック部4と協同して、中間製品W7を挟持するチャック部5と、テールストック部4の回転にて駆動され、中間製品W7の変速用歯部Paに荒形成したヘリカル歯Raを、ヘリカル歯Gaに仕上げ成形する転造ダイス部6とより構成する。テールストック部4は、交互に正逆回転可能に構成されたテールストック41の先端に、同期ギア42、受けダイス43及びコレットチャック44を、ボルト45にて固定して構成する。この場合、同期ギア42は、少なくともその歯が、テールストック41より突出し、かつ、その歯が、成形されるヘリカル歯Ga(変速用歯部Paに荒形成したヘリカル歯Ra)と位相が合うものを使用するようにする。また、受けダイス43には、中間製品W7のクラッチスプライン歯部Pbに形成した逆テーパ状のスプライン歯Gbに対応するスプライン歯形状の凹部を形成するようにする。チャック部5は、テールストック部4と対向して配設される、回転可能なチャック受台51に、クランプダイ52及び雄コーン54をボルト55にて固定するとともに、クランプダイ52の外周に配設したストリッパ53をロッド56に係着して構成する。そして、チャック部5を前進させることにより、対向して配設した、テールストック部4の受けダイス43とチャック部5のクランプダイ52とにより、中間製品W7を、中間製品W7のクラッチスプライン歯部Pbに形成した逆テーパ状のスプライン歯Gbを受けダイス43に形成したスプライン歯形状の凹部に嵌合して、挟持するようにする。これにより、中間製品W7の変速用歯部Paに荒形成したヘリカル歯Raと同期ギア42の位相が一致することとなる。また、中間製品W7は、チャック部5の雄コーン54が、テールストック部4のコレットチャック44内に挿入されて、コレットチャック44の爪片44aを拡径することにより保持されるため、中間製品W7の軸孔Hを中心軸として正確に保持されることとなる。また、ストリッパ53は、チャック受台51に固定したクランプダイ52の外周に摺動可能に配設するとともに、チャック受台51を貫通するロッド56の先端に係着し、ロッド56の基端を固定した取付台57を、チャック受台51の軸方向に移動可能に支持するようにする。そして、ヘリカル歯Gaを成形した後、チャック受台51を後退させることにより、受けダイス43とクランプダイ52による中間製品W8の挟持を解除するとともに、ストリッパ53をロッド56を介して突出することにより、クランプダイ52に嵌合されている中間製品W8を離型することができるように構成する。転造ダイス部6は、テールストック41に対して平行移動する移動台61と、この移動台61に、軸受63,63を介して、テールストック41に対して平行に配設した転造スピンドル62と、転造スピンドル62に配設した、同期ギア42と噛合する従動ギア64及び転造ダイス65とから構成する。
【0037】次に、このフローフォーミング装置7の動作について説明する。チャック部5を前進させることにより、対向して配設した、テールストック部4の受けダイス43とチャック部5のクランプダイ52とにより、中間製品W7を挟持するとともに、転造ダイス部6の移動台61を、テールストック41に対して平行移動して、従動ギア64を同期ギア42に、転造ダイス65を中間製品W7の変速用歯部Paに荒形成したヘリカル歯Raに、それぞれ噛合するようにする。テールストック41を回転することにより、中間製品W7及びチャック部5を回転するようにする。この場合、テールストック41は、好ましくは、所定の周期で、正逆回転を交互に繰り返して行うようにする。一方、テールストック41の回転は、同期ギア42、従動ギア64及び転造スピンドル62を介して、転造ダイス65に伝達され、転造ダイス65が、同期ギア42と同期して回転する。これにより、転造ダイス65と噛合している、中間製品W7は、テールストック41によって回転されることにより、転造ダイス65と同期して回転しながら、その変速用歯部Paに荒形成したヘリカル歯Raが、転造ダイス65による鍛造により、ヘリカル歯Gaに仕上げ成形される。ヘリカル歯Gaが形成された中間製品W8の取り出しは、チャック受台51を後退させることにより、受けダイス43とクランプダイ52による中間製品W8の挟持を解除するとともに、ストリッパ53をロッド56を介して突出することにより、クランプダイ52に嵌合されている中間製品W8を離型することにより行うようにする。
【0038】以上、本発明の変速用歯車及びその製造装置について、変速用歯部Paに変速用歯としてのヘリカル歯Gaを形成するようにした、図11(A)、(B)に示す形態の変速用歯車Wを例に説明したが、本発明の対象は、この形態の変速用歯車に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更を加えることができる。
【0039】より具体的には、本発明が対象とする変速用歯車Wには、変速用歯Gaがヘリカル歯のもののほか、平歯のものが含まれ、さらに、図10(C)、(D)に示すような、変速用歯Gaの歯面にクラウニングCaを有するものが含まれる(クラウニングCaを有さないものも当然含まれる。)。この場合、フローフォーミング装置7の転造ダイス65の形状を適宜選定することにより、中間製品W7の変速用歯部Paに荒形成した変速用歯Raを、転造ダイス65による鍛造により、変速用歯Gaに仕上げ成形する際に、併せて、変速用歯Gaの歯面にクラウニングCaを成形することができる。
【0040】また、本発明が対象とする変速用歯車Wには、変速用歯部Paにホブ切り等の機械加工により変速用歯Gaを形成する方法では加工が困難であった、図10(B)に示すような、変速用歯部Paに形成した変速用歯Gaの歯元円の直径Daより、クラッチスプライン歯部Pbに形成した逆テーパ状のスプライン歯Gbの歯先円の直径Dbが大きく、かつ、変速用歯部Paとクラッチスプライン歯部Pbの間に形成した溝Naの隙間tが2mm以下であるもの、図10(C)に示すような、変速用歯部Paとクラッチスプライン歯部Pbの間に隔壁Nbを形成したもの等が含まれる(図10(A)に示すような、変速用歯部Paとクラッチスプライン歯部Pbに形成した溝Naの隙間tが2mmより大きいものも当然含まれる。)。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、変速用歯及び先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を含む、変速用歯部及びクラッチスプライン歯部を、鍛造により、一体に成形することが可能となるため、以下の作用効果を奏するものである。
■ 変速用歯及び先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を鍛造により成形することにより、歯のメタルフローが切断されることがなく、歯車の強度が向上するとともに、機械加工による製造コストの上昇を回避し、変速用歯車の製造コストを低廉にできる。
■ テーパ状のスプライン歯を形成したクラッチスプライン歯部と、変速用歯を形成した変速用歯部との同心性を確保することが容易で、高い精度の変速用歯車を製造することができる。
■ 変速用歯としてヘリカル歯を成形する場合に、両側の歯面のねじれ角の差がなく、高い精度の変速用歯車を製造することができ、特に、ねじれ角が30゜以上のヘリカル歯も、鍛造によって成形することができる。
■ 変速用歯を、鍛造によって仕上げ成形する際に、併せて、変速用歯の歯面にクラウニングを成形することができる。
■ 先端にチャンファを有する逆テーパ状のスプライン歯を鍛造により成形することにより、機械加工による引っ掛かりがなく、高い精度の変速用歯車を製造することができることと相俟って、シフトフィーリングの良好な変速用歯車を得ることができる。
■ 変速用歯車の構成材料の制約がないことから、例えば、難切削高強度鋼の使用が可能となり、小形の変速用歯車を容易に製造することができる。
■ 機械加工では困難な形状の変速用歯車を製造することができ、小形の変速用歯車を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】391063684
【氏名又は名称】株式会社メタルアート
【出願日】 平成9年12月26日(1997.12.26)
【代理人】 【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治 (外1名)
【公開番号】 特開2000−329216(P2000−329216A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願2000−128748(P2000−128748)