トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンとその加工方法
【発明者】 【氏名】鎌村 有宏

【氏名】堀家 章史

【氏名】岩沢 隆二

【要約】 【課題】トラニオン6aに円孔15を加工する作業と、平坦面29、段差面31、31、内側面38、38等を切削加工する作業とを、能率良くしかも高精度で行なわせる。

【解決手段】主軸34を回転させつつ、切削工具39により上記円孔15を加工する。この加工に前後して、スライダ35によりチャック36を回転中心軸に対し直角方向に平行移動する。そして、上記平坦面29と、それぞれが部分円筒面である、上記段差面31、31及び内側面38、38等を切削加工する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハーフトロイダル型無段変速機を構成するパワーローラを揺動変位及び回転自在に支持する為、両端部に互いに同心の1対の枢軸を、中間部内側面に上記パワーローラに加わるスラスト荷重を支承しつつこのパワーローラの揺動変位を許容する為のスラスト軸受を添設する為の平坦面を、この平坦面の一部にその一端を開口させる状態で円孔を、それぞれ設けたハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンに於いて、上記平坦面の周縁部と他の部分との境界部分に存在する段差面は、単一の中心軸を有する部分円筒面であり、この部分円筒面の中心軸は、上記円孔の中心軸に対して上記各枢軸の配列方向にずれた位置に存在する事を特徴とするハーフトロイダル型無段変速機用トラニオン。
【請求項2】 請求項1に記載したハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンの加工方法であって、旋削加工を行なう工作機械の主軸の先端部に支持したチャックにトラニオンを、円孔及び部分円筒面の中心軸と上記主軸の中心軸とを一致若しくは平行にして把持した状態で、この主軸を回転させつつこれら円孔と部分円筒面並びに平坦面との一方を加工した後、上記チャックを上記主軸の中心軸に対し直角方向に平行移動させてから、この主軸を回転させつつ上記円孔と部分円筒面並びに平坦面との他方を加工する事を特徴とするハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンの加工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明の対象となるハーフトロイダル型無段変速機は、例えば自動車の変速機用の変速ユニットとして、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用する。特に、本発明は、この様なハーフトロイダル型無段変速機に組み込むトラニオンの加工を容易に行なえる様にするものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車の変速機用の変速ユニットとして、図7〜8に略示する様なハーフトロイダル型無段変速機を使用する事が、研究されている。このハーフトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。ハーフトロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6が設けられている。即ち、これら各枢軸5、5の中心軸は、上記入力軸1及び出力軸3の中心軸と交差する事はないが、これら入力軸1及び出力軸3の中心軸の方向に対し直角な方向に存在する。
【0003】上記各トラニオン6、6は、両端部外側面に上記枢軸5、5を、互いに同心に設けている。又、各トラニオン6、6の中心部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記各枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させる事により、各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン6、6に支持された変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持している。これら両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ8、8の周面8a、8aは、上記内側面2a、4aに当接させている。
【0004】上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム等の押圧装置9を設け、この押圧装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記カム板10の片側面(図7〜8の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図7〜8の右側面)にも、同様のカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に関して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】上述の様に構成するハーフトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13によって複数個のローラ12、12が、入力側ディスク2の外側面に設けたカム面14に押圧される。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記1対のカム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図7に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図8に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図7と図8との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】上記各トラニオン6、6の具体的形状、並びにこれら各トラニオン6、6にパワーローラ8、8を支持する部分の構造に就いては、例えば特開平8−240251号公報等に記載されて従来から知られている。図9〜11は、この公報に記載された、トラニオン6にパワーローラ8を支持する部分の従来構造を示している。このトラニオン6の中間部には、円孔15を形成している。この円孔15は、このトラニオン6の両端部に形成した枢軸5、5と直交する方向に(枢軸5、5の中心軸を延長した線と円孔15の中心軸を延長した線とが直交する方向に)形成している。そして、上記円孔15の内側部分に、変位軸7を支持している。この変位軸7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部16と枢支軸部17とを有する。このうちの支持軸部16を上記円孔15の内側に、ラジアルニードル軸受18を介して、回転自在に支持している。又、上記枢支軸部17の周囲にパワーローラ8を、別のラジアルニードル軸受19を介して回転自在に支持している。
【0008】又、上記パワーローラ8の外側面と上記トラニオン6の中間部内側面との間には、パワーローラ8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受20とスラストニードル軸受21とを設けている。このうちのスラスト玉軸受20は、上記パワーローラ8に加わるスラスト荷重を支承しつつ、このパワーローラ8の回転を許容する。この様なスラスト玉軸受20は、複数個の玉22、22と、各玉22、22を転動自在に保持する円環状の保持器23と、円環状のスラスト玉軸受外輪24とから構成している。各スラスト玉軸受20の内輪軌道は上記パワーローラ8の外側面に、外輪軌道は上記スラスト玉軸受外輪24の内側面に、それぞれ形成している。
【0009】又、上記スラストニードル軸受21は、レース25と保持器26とニードル27、27とから構成している。この様なスラストニードル軸受21は、上記レース25を上記トラニオン6の内側面に当接させた状態で、この内側面と上記スラスト玉軸受外輪24の外側面との間に挟持している。一方、上記ラジアルニードル軸受18を構成する円筒状のラジアルニードル軸受外輪28は上記円孔15の内側に、がたつきなく嵌合固定している。そして、嵌合固定した状態でこのラジアルニードル軸受外輪28の一端部をトラニオン6の内側面から突出させ、この突出した部分に、上記スラストニードル軸受21を構成する、上記レース25と保持器26とを外嵌して、上記トラニオン6に対するこれらレース25及び保持器26の位置決めを図っている。
【0010】上述の様に構成されるスラストニードル軸受21は、上記各パワーローラ8から上記各スラスト玉軸受外輪24に加わるスラスト荷重を支承しつつ、上記枢支軸部17及び上記スラスト玉軸受外輪24が上記支持軸部16を中心として揺動する事を許容する。即ち、ハーフトロイダル型無段変速機では、変速作業や伝達すべきトルクの変動、構成各部材の弾性変形等に起因して、入力側、出力側両ディスク2、4(図7〜8)の一方又は双方が軸方向に変位し、変位軸7が上記支持軸部16を中心として僅かに回動する。この回動の結果、上記スラスト玉軸受20のスラスト玉軸受外輪24の外側面と上記トラニオン6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、上記スラストニードル軸受21が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0011】上述の様に構成されるハーフトロイダル型無段変速機のトラニオン6は、炭素鋼等の剛性の高い金属製素材を鍛造により所定の形状に加工した後、必要とする部分に切削、研削等の仕上加工を施す。このうち、前記ラジアルニードル軸受18を組み付ける為の円孔15及び上記スラストニードル軸受21を添設する為の平坦面29は、マシニングセンタ等を利用した切削加工により形成する。例えば、この平坦面29を加工するには、回転工具をこの平坦面29とすべき内側面中間部に押し付けつつ、この平坦面29を加工する。従来の場合には、この平坦面29の切削加工と、上記円孔15の穿設作業及び仕上切削加工とは、別工程で行なっていた。即ち、平坦面29と円孔15とのうちの一方を加工した後、上記トラニオン6を工作機械から取り外して別の工作機械にセットし、平坦面29と円孔15とのうちの他方を加工していた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した様なハーフトロイダル型無段変速機のトラニオン6の加工を能率良く、しかも高精度で行なう為には、平坦面29と円孔15とを、工作機械への着脱を行なう事なく、一工程で行なえる様にする事が好ましい。本発明のハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンとその加工方法は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の対象となるハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンは、前述した従来のハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンと同様に、ハーフトロイダル型無段変速機を構成するパワーローラを揺動変位及び回転自在に支持する為、両端部に互いに同心の1対の枢軸を、中間部内側面に上記パワーローラに加わるスラスト荷重を支承しつつこのパワーローラの揺動変位を許容する為のスラスト軸受を添設する為の平坦面を、この平坦面の一部にその一端を開口させる状態で円孔を、それぞれ設けている。
【0014】特に、請求項1に記載したハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンに於いては、上記平坦面の周縁部と他の部分との境界部分に存在する段差面は、単一の中心軸を有する部分円筒面である。そして、この部分円筒面の中心軸は、上記円孔の中心軸に対して上記各枢軸の配列方向にずれた位置に存在する。
【0015】更に、請求項2に記載したハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンの加工方法は、旋削加工を行なう工作機械の主軸の先端部に支持したチャックにトラニオンを、円孔及び部分円筒面の中心軸と上記主軸の中心軸とを一致若しくは平行にして把持した状態で、この主軸を回転させつつこれら円孔と部分円筒面並びに平坦面との一方を加工した後、上記チャックを上記主軸の中心軸に対し直角方向に平行移動させてから、この主軸を回転させつつ上記円孔と部分円筒面並びに平坦面との他方を加工する。
【0016】
【作用】上述の様に構成する本発明のハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンとその加工方法によれば、同一のチャックにトラニオンを把持した状態のまま、円孔と部分円筒面並びに平坦面の加工を行なえる。この為、トラニオンの加工の能率化によりコストの低減を図れるだけでなく、上記円孔と平坦面との直角度の向上を図れる等、形状並びに寸法精度の向上も図れる。
【0017】
【発明の実施の形態】図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。先ず、図1は、本発明のトラニオン6aを示している。このトラニオン6aは、前述の図9に示した従来から知られているトラニオン6と同様に、両端部に互いに同心の1対の枢軸5、5を、中間部内側面に形成した平坦面29を、この平坦面29の一部にその一端を開口させる状態で円孔15を、それぞれ設けている。特に、本例のトラニオン6aの場合には、上記平坦面29の周縁部と他の部分との境界部分に存在する段差面31、並びに上記各枢軸5、5を設ける為に、上記トラニオン6aの長さ方向(図2の上下方向)両端部に形成した1対の折れ曲がり部37、37の内側面38、38は、単一の中心軸O31を有する部分円筒面である。そして、この部分円筒面である段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31は、上記円孔15の中心軸O15に対して、上記各枢軸5、5の配列方向(図1の上下方向)にずれた位置に存在する。言い換えれば、上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31と円孔15の中心軸O15とは、互いに一致はしないが、それぞれ上記両枢軸5、5の中心軸O5 と直交する。
【0018】次に、図2〜3は、上述の様なトラニオン6aの平坦面29と円孔15とを、旋削を行なう工作機械32により加工する状態を示している。この工作機械32は、基台33の上方で回転する主軸34の先端面(図2〜3の右端面)に、スライダ35を介してチャック36を設けて成る。このスライダ35は、上記主軸34の回転中心軸に対し直角方向に平行移動自在である。そして、上記チャック36に、被加工物である上記トラニオン6aを把持自在としている。一方、上記基台33の上面にはバイト等の切削工具39を、互いに直角方向に亙る移動自在に設けた1対の移動テーブル40、41により、この基台33の上面に対し平行に、且つ二次元方向に亙る移動自在に支持している。
【0019】上述の様な工作機械32を使用して、上記トラニオン6aの段差面31、31及び各内側面38、38と円孔15とを加工する作業は、次の様にして行なう。先ず、上記主軸34の先端部に支持したチャック36に上記トラニオン6aを、上記段差面31、31及び各内側面38、38を構成する部分円筒面の中心軸O31並びに上記円孔15の中心軸O15と、上記主軸34の中心軸O34と一致若しくは平行にした状態で把持する。この状態で、上記スライダ35を、図2に示す様に一端側(図2の下端側)に変位させて、加工すべき上記円孔15の中心軸O15と、上記主軸34の中心軸O34と一致させる。そして、この主軸34を回転させつつ、上記切削工具39を上記トラニオン6aの中間部に突き当てて、上記円孔15の内面の仕上加工を行なう。
【0020】次いで、図3に示す様に、上記スライダ35を、図3に示す様に他端側(図3の上端側)に変位させて、切削加工すべき上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31と、上記主軸34の中心軸O34と一致させる。そして、この主軸34を回転させつつ、上記切削工具39を、上記段差面31、31及び各内側面38、38並びにこれら段差面31、31及び各内側面38、38に囲まれた平坦面29等に突き当てて、これら各面31、38、29を加工する。
【0021】上述の様に構成する本発明のハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンとその加工方法によれば、同一のチャック36にトラニオン6aを把持した状態のまま、上記円孔15と上記段差面31、31及び各内側面38、38を構成する部分円筒面並びに上記平坦面29の加工を行なえる。この為、これら各部を加工する為に、トラニオン6aをチャック36に着脱する作業を1回行なうのみで足り、トラニオンの加工の能率化によるコストの低減を図れる。しかも、チャック36への着脱を繰り返す事に伴う誤差の発生を抑える事ができるので、上記円孔15と平坦面29との直角度の向上を図れる等、形状並びに寸法精度の向上も図れる。
【0022】尚、本発明の加工方法を能率良く行なわせる為には、上記主軸34に対して上記チャック36を支持するスライダ35が、上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31と、上記円孔15の中心軸O15との変位量△L(図1)分だけ、確実且つ迅速に変位させられる構造を有するものを使用する事が好ましい。この様なスライダ35の構造としては、図4〜5に示したもの、或は図6に示したものを使用できる。
【0023】先ず、図4〜5に示した第1例の構造は、主軸34の端面の直径方向反対側2個所位置に固定した、それぞれ断面L字形のガイド42、42同士の間にスライドプレート43を、がたつきなく且つ摺動自在に挟持している。従ってこのスライドプレート43は、上記1対のガイド42、42の配列方向に対し直角方向(図4〜5の上下方向)に変位自在である。又、上記スライドプレート43の変位方向に関して、上記主軸34の端面の直径方向反対側2個所位置には、それぞれストッパ44、44を固定している。これら両ストッパ44、44同士の間隔D44は、上記スライドプレート43の変位方向に亙る長さL43よりも、上記変位量△L分だけ大きい(D44=L43+△L)。
【0024】又、上記主軸34の先端部にはアクチュエータ45を内蔵し、このアクチュエータ45により上記スライドプレート43を、上記1対のガイド42、42の配列方向に対し直角方向に変位駆動自在としている。更に、上記スライドプレート43の前面(図4の右面)には、前記トラニオン6aの両端部に設けた枢軸5、5をがたつきなく係止自在なワークストッパ46、46と、上記トラニオン6aを両側から挟持固定自在な把持爪47、47とを設けている。
【0025】前記円孔15と上記段差面31、31及び各内側面38、38を構成する部分円筒面並びに上記平坦面29との加工を行なう場合に、上記トラニオン6aは、上記各ワークストッパ46、46に上記各枢軸5、5を係止し、上記各把持爪47、47により両側から挟持する。この状態で、上記アクチュエータ45により上記スライドプレート43を、図4〜5の下端側にまで変位させれば、加工すべき上記円孔15の中心軸O15と、上記主軸34の中心軸O34とが一致する。これに対して、上記アクチュエータ45により上記スライドプレート43を、図4〜5の上端側にまで変位させれば、切削加工すべき上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31と、上記主軸34の中心軸O34とが一致する。尚、図4〜5は、上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O34とを一致させた状態を示している。
【0026】上述の図4〜5に示したスライダの第1例の構造の場合、1対のストッパ44、44により、スライドプレート43の変位量を△Lに規制していた。これに対して、図6に示したスライダの第2例の構造の場合には、チャック36aの端面に、ストロークが△Lであるアクチュエータ45aを設けている。そして、このアクチュエータ45aにより、直接トラニオン6aを、枢軸5、5の軸方向に亙り変位駆動自在としている。上記アクチュエータ45aのストロークの一端側(図6の下端側)に上記トラニオン6aを変位させた状態で、加工すべき円孔15の中心軸O15と主軸の中心軸O34とが一致し、他端側(図6の上端側)にまで変位させた状態で、切削加工すべき上記段差面31、31及び各内側面38、38の中心軸O31と、上記主軸の中心軸O34とが一致する。尚、図6は、上記段差面31、31及び内側面38、38の中心軸O31と、上記主軸34の中心軸O34とを一致させた状態を示している。
【0027】尚、本発明の加工方法を実施する場合に、そのままでは、トラニオン6aを含む、チャック36、36aと共に回転する部分の重心を、主軸34の中心軸O34上に常に位置させる事はできない。そして、この重心位置と中心軸O34とのずれが大きい状態で、上記主軸34を高速回転させた場合には、振動が発生して、加工精度が悪化する。この様な振動に基づく加工精度の悪化を防止する為には、加工時に高速回転が必要な、上記円孔15の加工時に、上記重心を主軸34の中心軸O34上に位置させる事が好ましい。上記段差面31、31及び各内側面38、38等の加工時には、上記主軸34の回転速度をあまり早くする必要はないので、上記重心位置と中心軸O34とが多少ずれていても、有害な振動の発生を抑えて、十分な加工精度を確保できる。
【0028】スライダの構造に関して、上述の様な加工時の振動を考えた場合には、上述の図6に示した第2例の構造が、主軸34の中心軸O34からずれた状態で回転する部分の質量を少なく抑える面からは好ましい。但し、上記図6に示した第2例の構造の場合には、上記円孔15を加工する際と上記段差面31、31及び各内側面38、38等を切削加工する際とで、把持爪47、47によるトラニオン6aの把持及びその解除を行なう為、把持精度の面から、加工精度が悪化する可能性がある。
【0029】これに対して、図4〜5に示した第1例の場合には、把持爪47、47によりトラニオン6aを把持した状態のまま、上記円孔15と上記段差面31、31及び各内側面38、38等との加工を行なえる。従って、振動を抑えられるのであれば、図4〜5に示した第1例の構造が、加工精度を確保する面からは好ましい。特に、主軸34の先端部に、スライドプレート43と逆方向に変位するバランスウェイトを設け、このバランスウェイトを含む重心が、常に上記主軸34の回転中心軸上に存在する様にすれば、加工時に振動が発生するのを防止できるので、図4〜5に示した第1例の構造の利点が顕著になる。
【0030】
【発明の効果】本発明のハーフトロイダル型無段変速機用トラニオンとその加工方法は、以上に述べた通り構成され作用するので、ハーフトロイダル型無段変速機のトラニオンの加工を能率良く、しかも高精度で行なって、低コストでしかも高性能のトロイダル型無段変速機の実現に寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成11年5月19日(1999.5.19)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開2000−329209(P2000−329209A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願平11−138219