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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機
【発明者】 【氏名】吉田 雅人

【要約】 【課題】第一ヨーク26を所定方向の揺動のみ自在に支持する為の、第一支持ポスト35aを固定する部分の加工を容易にする。

【解決手段】第一支持ポスト35aは、先端部61の断面形状を非円形とし、基端部62の断面形状を円形とする。そして、この基端部を、シリンダケース57に形成した円形の支持孔59にがたつきなく内嵌する。更に、位置決めピン65により、この支持孔59内での上記第一支持ポスト35aの回転方向に亙る位置決めを図る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーシングと、このケーシングの内側に互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に且つ互いに独立した回転を自在に支持された、少なくとも1個ずつの入力側ディスク及び出力側ディスクと、これら両ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な枢軸と、それぞれの両端部に設けたこれら各枢軸を中心として揺動する少なくとも1対のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面から突出した変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記両ディスクの内側面同士の間に挟持された、少なくとも1対のパワーローラと、これら両ディスクの内側面同士の間部分に存在するキャビティの側方に、このキャビティを両側から挟む状態で、互いにほぼ平行に設けられた第一、第二ヨークとを備え、このうちの第一ヨークは、上記各トラニオンの一端部に設けた枢軸を揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、第二ヨークは、上記各トラニオンの他端部に設けた枢軸を揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、上記第一、第二各ヨークの中間部は、それぞれ上記ケーシング内に固定した第一、第二支持ポストの先端部に揺動変位自在にしたものであり、少なくとも第一支持ポストの一部外周面の断面形状は、互いに平行な1対の平面を有する非円形であり、この非円形の断面形状を有する部分を、上記第一ヨークの中間部に形成した、互いに平行な1対の辺を有する非円形の係合孔に、所定方向に亙る揺動変位自在に係合させているトロイダル型無段変速機に於いて、上記第一支持ポストは、一部外周面の断面形状が非円形で、一部周面の断面形状が円形であり、上記ケーシング内で上記第一支持ポストを支持固定するべき固定部分には、この第一支持ポストの円形の断面形状を有する部分をがたつきなく嵌合自在な断面円形の部分が形成されており、この第一支持ポストと上記固定部分との間には、この断面円形の部分を中心とする回転方向に亙る位相を規制する為の凹凸係合部が設けられている事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明に係るトロイダル型無段変速機は、例えば自動車の変速機用の変速ユニットとして、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用する。
【0002】
【従来の技術】自動車用変速機として、図12〜13に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシング5(後述する図14〜16)の内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸6、6を中心として揺動するトラニオン7、7を設けている。
【0003】即ち、これら各トラニオン7、7は、両端部外側面に上記各枢軸6、6を、互いに同心に設けている。従って、これら各枢軸6、6は、上記両ディスク2、4の中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向に設けられている。又、これら各トラニオン7、7の中心部には変位軸8、8の基端部を支持し、上記各枢軸6、6を中心として各トラニオン7、7を揺動させる事により、上記各変位軸8、8の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン7、7に支持された変位軸8、8の周囲には、それぞれパワーローラ9、9を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ9、9を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持している。これら入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸6を中心とする円弧を上記入力軸1及び出力軸3を中心に回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した各パワーローラ9、9の周面9a、9aを、上記各内側面2a、4aに当接させている。
【0004】上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム等の押圧装置10を設け、この押圧装置10によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装置10は、入力軸1と共に回転するカム板11と、保持器12により保持した複数個(例えば4個)のローラ13、13とから構成している。上記カム板11の片側面(図12〜13の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面14を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図12〜13の右側面)にも、同様のカム面15を形成している。そして、上記複数個のローラ13、13を、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板11が回転すると、カム面14によって複数個のローラ13、13が、入力側ディスク2の外側面に形成したカム面15に押圧される。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ9、9に押圧されると同時に、上記1対のカム面14、15と複数個のローラ13、13との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸6、6を中心として前記各トラニオン7、7を所定方向に揺動させ、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図12に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸8、8を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各枢軸6、6を中心として上記各トラニオン7、7を反対方向に揺動させ、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図13に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸8、8を傾斜させる。各変位軸8、8の傾斜角度を図12と図13との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】上述の様なトロイダル型無段変速機により、実際の自動車用変速機を構成する場合、入力側ディスク2と出力側ディスク4とパワーローラ9、9とを2組設け、これら2組の入力側ディスク2と出力側ディスク4とパワーローラ9、9とを、動力の伝達方向に対して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機も、従来から広く知られている。図14〜16は、この様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の一種で、特公平8−23386号公報に記載されて従来から知られているものを示している。
【0008】ケーシング5の内側には入力軸1aを、回転のみ自在に支持している。そして、この入力軸1aの周囲に円管状の伝達軸16を、この入力軸1aと同心に、且つこの入力軸1aに対する相対回転を自在に支持している。この伝達軸16の中間部両端寄り部分には、第一、第二両入力側ディスク17、18を、互いの内側面2a、2a同士を対向させた状態で、それぞれボールスプライン19、19を介して支持している。従って、上記第一、第二両入力側ディスク17、18は、上記ケーシング5の内側に、互いに同心に且つ互いに同期した回転自在に支持されている。
【0009】又、上記伝達軸16の中間部の周囲には、第一、第二両出力側ディスク20、21を、スリーブ22を介して支持している。このスリーブ22は、中間部外周面に出力歯車23を一体に設けたもので、上記伝達軸16の外径よりも大きな内径を有し、上記ケーシング5内に設けた支持壁24に、1対の転がり軸受25、25により、上記伝達軸16と同心に、且つ回転のみ自在に支持している。上記第一、第二両出力側ディスク20、21は、この様に上記伝達軸16の中間部周囲に、この伝達軸16に対し回転自在に支持したスリーブ22の両端部に、それぞれの内側面4a、4aを互いに反対に向けた状態で、スプライン係合させている。従って、上記第一、第二両出力側ディスク20、21は、それぞれの内側面4a、4aを上記第一、第二何れかの入力側ディスク17、18の内側面2a、2aに対向させた状態でこれら第一、第二両入力側ディスク17、18と同心に、且つこれら第一、第二両入力側ディスク17、18とは独立した回転自在に支持されている。
【0010】又、前記ケーシング5の内面で上記第一、第二両出力側ディスク20、21の側方位置には、これら両出力側ディスク20、21を両側から挟む状態で、第一、第二両ヨーク26、27を支持している。これら第一、第二両ヨーク26、27は、それぞれ、鋼等の金属板にプレス加工を施す事により、或は鋼等の金属材料に鍛造加工を施す事により、短冊状(図14〜16の上側の第一ヨーク26、26)若しくは矩形枠状(図14〜16の下側の第二ヨーク27)に形成している。これら第一、第二各ヨーク26、27のうちの第一ヨーク26、26にはそれぞれの両端部に、第二ヨーク27にはその四隅部に、後述する第一、第二両トラニオン28、29の両端部に設けた第一、第二両枢軸30、31を揺動自在に支持する為の円形の支持孔32、32を設けている。又、上記各第一ヨーク26、26の長さ方向(図14の表裏方向、図15〜16の左右方向)中間部には、矩形の第一係止孔33を形成している。これに対して、上記第二ヨーク27の一部で、前記伝達軸16の軸方向(図14の左右方向、図15〜16の表裏方向)両端部の幅方向(図15〜16の上下方向)中央部には、円形の第二係止孔34、34を、それぞれ形成している。
【0011】それぞれがこの様な形状を有する上記第一、第二各ヨーク26、27は、上記ケーシング5の内面で互いに対向する部分に形成した第一、第二各支持ポスト35、36の先端部に、それぞれ若干の揺動変位自在に支持している。これら各第一、第二各支持ポスト35、36はそれぞれ、第一入力側ディスク17の内側面2aと第一出力側ディスク20の内側面4aとの間部分である第一キャビティ37、第二入力側ディスク18の内側面2aと第二出力側ディスク21の内側面4aとの間部分である第二キャビティ38に、それぞれ対向する部分に設けている。従って、上記第一、第二各ヨーク26、27を上記各第一、第二各支持ポスト35、36に支持した状態で、一方の第一ヨーク26及び第二ヨーク27の一端部は上記第一キャビティ37の外周部分に、他方の第一ヨーク26及び第二ヨーク27の他端部は上記第二キャビティ38の外周部分に、それぞれ対向する。
【0012】尚、上記第一、第二各支持ポスト35、36のうち、第一支持ポスト35、35の先端部は、断面矩形に形成している。従って、これら各第一支持ポスト35、35の先端部と上記各第一ヨーク26、26の中間部に形成した矩形の第一係止孔33、33とを嵌合させた状態で、これら各第一ヨーク26、26は、図15〜16の時計、反時計方向に関する揺動のみ自在となる。言い換えれば、図14の時計、反時計方向に関する揺動は不能である。これに対して、上記各第二支持ポスト36、36の先端部外周面は、球状凸面としている。従って、これら各第二支持ポスト36、36の先端部を、上記第二ヨーク27の両端部の幅方向中央部に形成した円形の第二係止孔34、34に嵌合させた状態で、上記第二ヨーク27は、図15〜16の時計、反時計方向に関する揺動だけでなく、図14の時計、反時計方向に関する若干の揺動も自在となる。上記第一、第二各ヨーク26、27をこの様に支持する事により、後述する変速動作時に、次述する第一、第二両トラニオン28、29の変位を円滑に行なわせる事ができる。
【0013】又、上記第一キャビティ37内で第一入力側ディスク17及び第一出力側ディスク20の直径方向反対位置には1対の第一トラニオン28、28を、上記第二キャビティ38内で第二入力側ディスク18及び第二出力側ディスク21の直径方向反対位置には1対の第二トラニオン29、29を、それぞれ配置している。このうち、上記各第一トラニオン28、28の両端部に互いに同心に設けた、各第一トラニオン28、28毎に2本ずつ、合計4本の第一枢軸30、30は、図15に示す様に、一方の第一ヨーク26の両端部と第二ヨーク27の一端部とに、揺動並びに軸方向に亙る変位自在に支持している。即ち、これら第一、第二各ヨーク26、27の一端部に形成した支持孔32、32の内側に上記各第一枢軸30、30を、ラジアルニードル軸受39、39により支持している。これら各ラジアルニードル軸受39、39はそれぞれ、外周面が球状凸面であり内周面が円筒面である外輪40と複数本のニードル41、41とから成る。従って上記各第一枢軸30、30は、上記第一、第二各ヨーク26、27の一端部の幅方向両側に、各方向の揺動並びに軸方向に亙る変位自在に支持されている。又、上記各第二トラニオン29、29は上記第二キャビティ38内に、図16に示す様に、上記第一トラニオン28、28と同様の構造により支持している。
【0014】上述の様にして前記ケーシング5の内側に、揺動及び上記第一、第二各枢軸30、31の軸方向に亙る変位自在に支持した、上記第一、第二各トラニオン28、29の中間部にはそれぞれ、図15〜16に示す様に円孔42、42を形成している。そして、これら各円孔42、42部分に、第一、第二各変位軸43、44を支持している。これら第一、第二各変位軸43、44はそれぞれ、互いに平行で且つ偏心した支持軸部45、45と枢支軸部46、46とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部45、45を上記各円孔42、42の内側に、ラジアルニードル軸受47、47を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部46、46の周囲に第一、第二各パワーローラ48、49を、別のラジアルニードル軸受83、83を介して回転自在に支持している。
【0015】尚、前記第一、第二各キャビティ37、38毎に1対ずつ設けた、上記第一、第二各変位軸43、44は、上記第一、第二各キャビティ37、38毎に、前記入力軸1a及び伝達軸16に対して180度反対側位置に設けている。又、これら第一、第二各変位軸43、44の各枢支軸部46、46が各支持軸部45、45に対し偏心している方向は、前記第一、第二入力側、出力側各ディスク17、18、20、21の回転方向に関して同方向(図15〜16で上下逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸1aの配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各第一、第二各パワーローラ48、49は、上記入力軸1a及び伝達軸16の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、トロイダル型無段変速機により伝達するトルクの変動に基づく、構成各部材の弾性変形量の変動等に起因して、上記各第一、第二各パワーローラ48、49が上記入力軸1a及び伝達軸16の軸方向(図14の左右方向、図15〜16の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、構成各部材に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0016】又、上記各第一、第二各パワーローラ48、49の外側面と前記第一、第二各トラニオン28、29の中間部内側面との間には、第一、第二各パワーローラ48、49の外側面の側から順に、スラスト玉軸受50、50と、滑り軸受或はニードル軸受等のスラスト軸受51、51とを設けている。このうちのスラスト玉軸受50、50は、上記各第一、第二各パワーローラ48、49に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各第一、第二各パワーローラ48、49の回転を許容する。又、上記各スラスト軸受51、51は、上記各第一、第二各パワーローラ48、49から上記各スラスト玉軸受50、50の外輪52、52に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記枢支軸部46、46及び上記外輪52、52が前記支持軸部45、45を中心に揺動する事を許容する。
【0017】更に、上記第一、第二各トラニオン28、29の一端部(図15〜16の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド53、53を結合し、これら各駆動ロッド53、53の中間部外周面に駆動ピストン54、54を固設している。そして、これら各駆動ピストン54、54を、それぞれ駆動シリンダ55、55内に油密に嵌装している。これら各駆動ピストン54、54と駆動シリンダ55、55とが、それぞれ上記第一、第二各トラニオン28、29を第一、第二各枢軸30、31の軸方向に亙って変位させる為のアクチュエータを構成する。又、上記各駆動シリンダ55、55内には、図示しない制御弁の切り換えに基づいて、圧油を給排自在としている。
【0018】更に、前記入力軸1aと前記第一入力側ディスク17との間には、ローディングカム等の押圧装置10を設けている。この押圧装置10は、上記入力軸1aの中間部にスプライン係合すると共に軸方向に亙る変位を阻止された状態で支持されて、上記入力軸1aと共に回転するカム板11と、ローラ13とを含んで構成している。そして、上記入力軸1aの回転に基づいて上記第一入力側ディスク17を、第二入力側ディスク18に向け押圧しつつ回転させる。
【0019】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の運転時、入力軸1aの回転は押圧装置10を介して第一入力側ディスク17に伝えられ、この第一入力側ディスク17と第二入力側ディスク18とが、互いに同期して回転する。そして、これら第一、第二両入力側ディスク17、18の回転が、前記第一、第二両キャビティ37、38内にそれぞれ1対ずつ設けた第一、第二各パワーローラ48、49を介して、第一、第二両出力側ディスク20、21に伝えられ、更にこれら第一、第二両出力側ディスク20、21の回転が、前記出力歯車23より取り出される。入力軸1aと出力歯車23との間の回転速度比を変える場合には、上記制御弁の切り換えに基づいて、上記第一、第二両キャビティ37、38に対応してそれぞれ1対ずつ設けた駆動ピストン54、54を、各キャビティ37、38毎に互いに逆方向に同じ距離だけ変位させる。
【0020】これら各駆動ピストン54、54の変位に伴って上記1対ずつ合計4個のトラニオン28、29が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図15〜16の右側の第一、第二両パワーローラ48、49が各図の下側に、図15〜16の左側の第一、第二両パワーローラ48、49が各図の上側に、それぞれ変位する。この結果、これら各第一、第二各パワーローラ48、49の周面9a、9aと上記第一、第二両入力側ディスク17、18及び第一、第二両出力側ディスク20、21の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って前記第一、第二各トラニオン28、29が、ヨーク26、27に枢支した第一、第二各枢軸30、31を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図12〜13に示した様に、上記各第一、第二各パワーローラ48、49の周面9a、9aと上記各ディスク17、18、20、21の内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸1aと出力歯車23との間の回転速度比が変化する。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上述の様に構成され作用する従来のトロイダル型無段変速機の場合、ケーシング5内に各第一支持ポスト35、35を支持固定する部分の加工が面倒で、コストが嵩む原因となっていた。図14〜16に示した構造では、上記各第一支持ポスト35、35を、上記ケーシング5の内面に固定した固定プレート56に対し一体に設けているが、この様な構造は、実際にトロイダル型無段変速機を造る場合には現実的ではない。支持ポスト部分の構造に就いては、前述の特公平8−23386号公報に記載されたものの他、特開平10−299852号公報に記載されたものも存在するが、同様の問題がある。
【0022】実際のトロイダル型無段変速機を構成する場合には、上記各第一支持ポスト35、35を、上記ケーシング5自体若しくはこのケーシング5内に固定した部分に形成した支持孔に嵌合し、ボルトにより固定する。ところが、従来から考えられていた、上記各第一支持ポスト35、35の取付構造の場合には、これら各第一支持ポスト35、35の先端部だけでなく基端部の断面形状も矩形にしていた為、上記支持孔の断面形状も矩形にしなければならなかった。上記各第一支持ポスト35、35をがたつきなく嵌合させる、断面矩形の支持孔を形成する作業は面倒で、トロイダル型無段変速機の製造コストが嵩む原因となる。本発明は、この様な事情に鑑みて、製造作業が容易で、低コストで造れるトロイダル型無段変速機を実現すべく発明したものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、ケーシングと、このケーシングの内側に互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に且つ互いに独立した回転を自在に支持された、少なくとも1個ずつの入力側ディスク及び出力側ディスクと、これら両ディスクとの間部分で、これら各ディスクの中心軸と交差する事はないが、この中心軸の方向に対して直角方向となる捻れの位置に存在する、互いに同心若しくは平行な枢軸と、それぞれの両端部に設けたこれら各枢軸を中心として揺動する少なくとも1対のトラニオンと、これら各トラニオンの内側面から突出した変位軸と、これら各変位軸の周囲に回転自在に支持された状態で、上記両ディスクの内側面同士の間に挟持された、少なくとも1対のパワーローラと、これら両ディスクの内側面同士の間部分に存在するキャビティの側方に、このキャビティを両側から挟む状態で、互いにほぼ平行に設けられた第一、第二ヨークとを備える。そして、このうちの第一ヨークは、上記各トラニオンの一端部に設けた枢軸を揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、第二ヨークは、上記各トラニオンの他端部に設けた枢軸を揺動並びにそれぞれの軸方向に亙る変位自在に支持するものであり、上記第一、第二各ヨークの中間部は、それぞれ上記ケーシング内に固定した第一、第二支持ポストの先端部に揺動変位自在にしたものであり、少なくとも第一支持ポストの一部外周面の断面形状は、互いに平行な1対の平面を有する非円形であり、この非円形の断面形状を有する部分を、上記第一ヨークの中間部に形成した、互いに平行な1対の辺を有する非円形の係合孔に、所定方向に亙る揺動変位自在に係合させている。
【0024】特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記第一支持ポストは、一部外周面の断面形状が非円形で、一部周面の断面形状が円形である。又、上記ケーシング内で上記第一支持ポストを支持固定するべき固定部分には、この第一支持ポストの円形の断面形状を有する部分をがたつきなく嵌合自在な断面円形の部分が形成されている。更に、この第一支持ポストと上記固定部分との間には、この断面円形の部分を中心とする回転方向に亙る位相を規制する為の凹凸係合部が設けられている。
【0025】
【作用】上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機が、入力側ディスクと出力側ディスクとの間で回転力の伝達を行なう際の作用、並びにこれら両ディスク同士の間の速度比を変える際の作用は、前述した従来のトロイダル型無為段変速機の場合と同様である。特に、本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、第一支持ポストの基端部を嵌合させるべく、固定の部分に形成する部分を断面円形としている為、先端部の断面形状を非円形とした第一ポストをケーシング内に支持固定する為の加工作業が容易になる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1〜4は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、第一ヨーク26を一方向にのみ揺動自在に支持する為、その先端部の断面形状を略矩形等の非円形にした第一支持ポスト35aを、ケーシング5内に支持固定する部分の構造にある。その他の部分の構造及び作用は、前述した従来構造と同様であるから、同等部分に関する重複する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分並びに前述した従来構造と異なる部分を中心に説明する。
【0027】ケーシング5内に、駆動ピストン54、54を嵌合させる為の駆動シリンダ55、55を設けたシリンダケース57と、これら駆動シリンダ55、55内に給排する為の圧油を制御する為の制御弁を内蔵したバルブケース58とを固定している。請求項に記載した固定部分である上記シリンダケース57の中央部には、請求項に記載した断面円形の部分である断面円形の支持孔59を、上記バルブケース58の片面(図1の上面)でこの支持孔59と整合する部分には、この支持孔59よりも大径の凹部60を、それぞれ形成している。そして、これら支持孔59及び凹部60の内側に、上記第一支持ポスト35aを支持固定している。
【0028】この第一支持ポスト35aは、先端部61の断面形状が非円形で、基端部62の外周面の断面形状が円形であり、基端面には取付フランジ63を固設している。このうちの先端部61は、円柱部の直径方向反対側2個所位置に互いに平行な1対の平面64、64を形成する事により、断面形状を小判形(略矩形)に形成している。又、上記基端部62の外径は、上記支持孔59の内径とほぼ一致させて、この基端部62をこの支持孔59に、がたつきなく内嵌自在としている。上記第一支持ポスト35aを上記シリンダケース57に支持固定するのに、上記基端部62を支持孔59に内嵌し、上記取付フランジ63を上記シリンダケース57の片面(図1の下面)に突き当てた状態で、この取付フランジ63をシリンダケース57にねじ止め固定している。又、この取付フランジ63と上記シリンダケース57との間には、位置決めピン65を掛け渡して、上記第一支持ポスト35aが上記支持孔59を中心に回転するのを防止している。言い換えれば、この支持孔59の部分を中心とする回転方向に亙る位相を規制する為の凹凸係合部を構成している。又、この状態で上記取付フランジ63は上記凹部60内に入り込んで、上記バルブケース58との干渉を防止される。
【0029】上述の様にして前記ケーシング5内に固定した、上記第一支持ポスト35aの先端部61には、第一ヨーク26の中間部を、一方向(図1の時計方向及び反時計方向、図2の表裏方向)に関する揺動自在に支持している。即ち、上記第一ヨーク26の中間部に形成した矩形の第一係止孔33に上記先端部61を、この第一ヨーク26の長さ方向(図1〜2の左右方向)に関しては緩く、幅方向(図1の表裏方向、図2の上下方向)に関してはがたつきなく嵌合させている。この状態で上記先端部61の外周面を構成する1対の平面64、64は、上記第一係止孔33の幅方向両側に存在する1対の辺66、66の内面とがたつきなく摺接し、上記方向の揺動を許容する。
【0030】上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、上記第一支持ポスト35aの基端部62を嵌合させるべく、上記シリンダケース57に形成する支持孔59を断面円形としている為、先端部61の断面形状を非円形とした上記第一ポスト35aを前記ケーシング5内の所定部分に支持固定する為の、上記支持孔59の加工作業が容易になる。しかも、上記第一支持ポスト35aを上記ケーシング5内に支持固定した状態では、この第一支持ポスト35aが上記支持孔59を中心に回転する事はない。従って、上記第一ヨーク26が不正規な方向(図1の表裏方向、図2の紙面方向)に揺動する事を確実に防止して、変速時に於ける各第一トラニオン28、28(第二トラニオン29、29も同様)の変位を円滑に行なわせる事ができる。
【0031】尚、図示の例では、上記第一支持ポスト35aを通じて、各第一パワーローラ48、48(第二パワーローラ49、49も同様)の周面9a、9aと第一入力ディスク17及び第一出力ディスク20(図14参照、第二入力ディスク18及び第二出力ディスク21も同様)の内側面2a、4aとの当接部(図14参照、トラクション部)に、潤滑油(トラクションオイル)を供給自在としている。この為に本例の場合には、図示しない給油ポンプから前記凹部60内に潤滑油を送り込み自在とすると共に、上記第一支持ポスト35a内に給油通路67を設けている。更に、この第一支持ポスト35aの先端部に、上記各面9a、2a、4aに向いたノズル孔68、68(図1、4と図2、3とで位置が違うが、何れの部分に形成するかは設計的に定める)を形成している。
【0032】又、図示の例では、各第一トラニオン28、28同士の間にケーブル69を、襷掛けに掛け渡して、これら各第一トラニオン28、28の揺動角度を機械的に同期させている。更に、第二支持ポスト36の先端部に、トラクション部にトラクションオイルを吹き付ける為のノズル駒70と、上記各第一トラニオン28、28の揺動角度が過大になるのを防止する為のストッパプレート71とを設けている。尚、これらケーブル69、ノズル駒70、ストッパプレート71は、従来から知られており、本発明の要旨とも関係しない。
【0033】次に、図5〜8は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、シリンダケース57aの片面(図5の上面)で第一キャビティ37(第二キャビティ38も同様)に対向する部分に、請求項に記載した固定部分である凸部72を形成している。そして、この凸部72の先端部73の断面形状を円形にしている。第一支持ポスト35bは、この様な凸部72に支持固定する為、片面(図5の下面)中央部に、内周面の断面形状が円形の嵌合凹部74を形成している。この嵌合凹部74の内径は上記先端部73の外径とほぼ等しくして、この先端部73をこの嵌合凹部74にがたつきなく内嵌自在としている。これに対して、上記第一支持ポスト35bの外周面は、直径方向反対側2個所位置に互いに平行な1対の平面64a、64aを形成する事により、断面形状を小判形に形成している。
【0034】又、上記凸部72の中心部には、この凸部72の先端面に開口するねじ孔75を、上記第一支持ポスト35bの中心部には通孔76を、それぞれ形成している。この第一支持ポスト35bは、上記先端部73を上記嵌合凹部74に内嵌した状態で、上記通孔76を挿通したねじ77を上記ねじ孔75に螺合し更に緊締する事により、上記凸部72の先端部に固定している。又、この状態で、上記第一支持ポスト35bの一部で中心から外れた部分に形成した位置決め通孔78を挿通した位置決めピン65を、上記先端部73の端面で中心から外れた位置に形成した位置決め凹孔79に圧入している。この構成により上記第一支持ポスト35bをケーシング5内に、上記各平面64a、64aを第一ヨーク26の長さ方向(図5の左右方向)に向けた状態で、がたつきなく且つ回転不能に支持固定している。
【0035】この様にしてケーシング5内の所定の位置に所定の方向で支持固定した、上記第一支持ポスト35bには、上記第一ヨーク26の中間部に形成した第一係止孔33を、所定方向に関する揺動変位自在に外嵌する。その他の部分の構成及び作用は、前述した第1例の場合と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0036】次に、図9〜11は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、前述した第1例及び上述した第2例とは逆に、シリンダケース57bの側(図9の下側)に、外周面を球状凸面とした第二支持ポスト36を設け、これとは反対側(図9の上側)に、先端部(図9の下端部)の断面形状を非円形とした第一支持ポスト35cを設けている。この様な第一支持ポスト35cは、ケーシング5の側壁部80に形成した取付孔81部分で、このケーシング5に直接支持固定している。
【0037】この第一支持ポスト35cは、先端部61aの断面形状が非円形で、基端部62aの外周面の断面形状が円形であり、基端面には取付フランジ63aを固設している。このうちの先端部61aは、上記基端部62aよりも小径で、円柱部の直径方向反対側2個所位置に互いに平行な1対の平面64b、64bを形成する事により、断面形状を小判形(略矩形)に形成している。又、上記基端部62aの外径は、上記取付孔81の内径とほぼ一致させて、この基端部62aをこの取付孔81に、がたつきなく内嵌自在としている。上記第一支持ポスト35cを上記ケーシング5に支持固定するのに、上記基端部62aを取付孔81に内嵌し、上記取付フランジ63aを上記側壁部80の外面(図9の上面)に形成した座ぐり部82の底面に突き当てた状態で、この取付フランジ63aを上記ケーシング5にねじ止め固定している。又、これら取付フランジ63aとケーシング5との間に位置決めピン65を掛け渡して、上記第一支持ポスト35cが上記取付孔81を中心に回転するのを防止している。
【0038】この様にしてケーシング5内の所定の位置に所定の方向で支持固定した、上記第一支持ポスト35cには、第一ヨーク26の中間部に形成した第一係止孔33を、所定方向に関する揺動変位自在に外嵌する。又、図示の例では、上記第一支持ポスト35cの先端部に、トラクション部にトラクションオイルを吹き付ける為のノズル駒70と、第一トラニオン28、28(第二トラニオン29、29の場合も同様)の揺動角度が過大になるのを防止する為のストッパプレート71とを支持している。その他の部分の構成及び作用は、前述した第1例の場合と同様であるから、重複する説明は省略する。尚、本発明は、入力側ディスクと出力側ディスクとを2組設けた、所謂ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に限らず、シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機にもそのまま通用できる。
【0039】
【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、その先端部の断面形状を非円形にした第一支持ポストを、ケーシング内に支持固定する為に要する、各部の加工作業が容易となり、トロイダル型無段変速機の低廉化を図れる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成11年5月19日(1999.5.19)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開2000−329208(P2000−329208A)
【公開日】 平成12年11月30日(2000.11.30)
【出願番号】 特願平11−139086