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【発明の名称】 トロイダル式無段変速機
【発明者】 【氏名】安原 伸二

【氏名】玉川 隆雄

【氏名】六角 和夫

【氏名】江口 正二

【要約】 【課題】低温条件や高速回転においても、ディスクとローラの凝着や軌道面の損傷を防止でき、常に確実な動力伝達を達成できるトロイダル式無段変速機を提供する。

【解決手段】このトロイダル式無段変速機は、ディスク2,3および5を鉄系金属材料で作製し、ローラ12,13をセラミックで作製した。したがって、この変速機では、セラミック製のローラ12,13と金属製のディスク2,3および5とが摩擦接触するから、金属同士が接触する従来例に比べて、焼き付きや損傷が起こりにくくなる。また、この変速機では、ディスク2,3,5とローラ12,13との高い接触面圧に起因する発熱に対し、ローラ12,13をセラミック製としたので、ローラの耐熱性が向上し、より高い接触面圧および、より高い回転速度で使用することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 凹湾曲面からなる円周軌道を有するディスクを対向させ、この対向するディスクの両円周軌道に摩擦接触しながら回転して、両ディスク間の動力伝達を行うローラを備えたトロイダル式無段変速機において、上記ディスクを金属材料で作製し、上記ローラをセラミックで作製したことを特徴とするトロイダル式無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、たとえば、自動車の自動変速機に用いられるトロイダル式無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、トロイダル式無段変速機としては図2に示すものがある。このトロイダル式無段変速機は、第1入力ディスク81,出力ディスク82,第2入力ディスク83が順に同芯軸上に配置されていて、第1,第2入力ディスク81,83と出力ディスク82とが独立して回転するようになっている。また、この変速機は、第1入力ディスク81と出力ディスク82との間に挟まれて、第1入力ディスク81から出力ディスク82に動力を伝達する第1ローラ85と、第2入力ディスク83と出力ディスク82とに挟まれて、第2入力ディスク83から出力ディスク82に動力を伝達する第2ローラ86を備えている。
【0003】上記第1ローラ85は、第1入力ディスク81および出力ディスク82の凹湾曲面からなる円周軌道81A,82Aに摩擦接触しながら、両ディスク81,82の回転軸と交差する回転軸84回りに回転して、第1入力ディスク81から出力ディスク82に動力を伝達する。また、第2ローラ86は、第2入力ディスク83および出力ディスク82の凹湾曲面からなる円周軌道83A,82Bに摩擦接触しながら、両ディスク83,82の回転軸と交差する回転軸89回りに回転して、第2入力ディスク83から出力ディスク82に動力を伝達する。
【0004】図2に実線(一点鎖線)で示すように、第1ローラ85および第2ローラ86の回転軸84,89が、上記ディスク81,82,83の回転軸に対する軸直角姿勢から傾いている角度が大きいほど、第1,第2入力ディスク81,83から出力ディスク82への増速比(減速比)が大きくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来のトロイダル式無段変速機では、ディスクおよびローラが軸受鋼等で作製されていた。
【0006】ところが、トロイダル式無段変速機では、ディスクとローラとの接触面圧が、例えば、4GPa(ギガパスカル)程度まで高くなる。このため、特に、低温(例えば、−40℃)において、潤滑油の粘度が高くなって、ディスクとローラ間に十分な油量が供給されず、油膜ができにくくなり、ディスクとローラ間の凝着やディスク軌道面の損傷が発生するという問題がある。
【0007】そこで、この発明の目的は、低温条件や高速回転においても、ディスクとローラの凝着や軌道面の損傷を防止でき、常に確実な動力伝達を達成できるトロイダル式無段変速機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、この発明のトロイダル式無段変速機は、凹湾曲面からなる円周軌道を有するディスクを対向させ、この対向するディスクの両円周軌道に摩擦接触しながら回転して、両ディスク間の動力伝達を行うローラを備えたトロイダル式無段変速機において、上記ディスクを金属材料で作製し、上記ローラをセラミックで作製したことを特徴としている。
【0009】この発明のトロイダル式無段変速機では、セラミック製のローラと金属製のディスクとが摩擦接触するから、金属同士が接触する従来例に比べて、焼き付きや損傷が起こりにくくなる。また、従来、ディスクとローラとの高い接触面圧に起因する発熱に対し、入出力ディスクは表面積が大きく放熱し易いが、ローラは表面積が小さく高温になり易いという問題があったが、この発明では、ローラ材質をセラミック製としたので、ローラの耐熱性が向上し、より高い接触面圧および、より高い回転速度で使用することが可能となる。したがって、この発明によれば、低温条件や高速回転においても、ディスクとローラの凝着や軌道面の損傷を防止でき、常に確実な動力伝達を達成できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0011】図1に、この発明のトロイダル式無段変速機の実施の形態を示す。この実施形態は、入力軸1に固定された第1,第2入力ディスク2,3と、この第1,第2入力ディスク2,3の間に配置され、第1,第2入力ディスク2,3と同芯軸上かつ独立に回転できるようになっている出力ディスク5とを備えている。この出力ディスク5は、入力軸1に対して軸受(図示せず)で回転自在に支持されており、ギア部5Aに巻回されたベルト6で出力側に動力を取り出すようになっている。
【0012】上記第1入力ディスク2は、出力ディスク5の凹湾曲面状円周軌道7に対向する凹湾曲面状円周軌道8を備え、第2入力ディスク3は、出力ディスク5の凹湾曲面助円周軌道10に対向する凹湾曲面状円周軌道11を備えている。そして、上記第1入力ディスク2の軌道8と出力ディスク5の軌道7の間に第1ローラ12が配置され、第2入力ディスク3の軌道11と出力ディスク5の軌道10との間に第2ローラ13が配置されている。第1ローラ12は、ディスク2,5の軌道8,7に摩擦接触しながら回転して、入力ディスク2から出力ディスク5に回転力を伝達し、第2ローラ13は、ディスク3,5の軌道11,10に摩擦接触しながら回転して、入力ディスク3から出力ディスク5に回転力を伝達する。
【0013】上記第1,第2ローラ12,13は、入力軸1に対して交差する回転軸15,16を備え、この回転軸15,16は、ローラ12,13が出力ディスク5を挟んで対称な傾斜角θ1,θ2になるように制御される。傾斜角θ1が大きいほど減速比が大きくなり、傾斜角θ2が大きいほど増速比が大きくなる。
【0014】そして、この実施形態では、上記入力ディスク2,3および出力ディスク5が軸受鋼で作製されており、第1,第2ローラ12,13がセラミック材で作製されている。
【0015】上記構成のトロイダル式無段変速機は、入力軸1が回転すると、第1,第2入力ディスク2,3が一緒に回転し、この入力ディスク2,3の軌道8,11に摩擦接触して回転するローラ12,13が、出力ディスク5の両軌道7,10に摩擦接触して出力ディスク5を回転させ、回転力を伝達する。
【0016】ここで、このトロイダル式無段変速機では、セラミック製のローラ12,13と金属製のディスク2,3および5とが摩擦接触するから、金属同士が接触する従来例に比べて、焼き付きや損傷が起こりにくくなる。また、この実施形態では、ディスク2,3,5とローラ12,13との高い接触面圧に起因する発熱に対し、セラミック製ローラ12,13を使用することにより、耐熱性が向上するので、より高い接触面圧および、より高い回転速度で使用することが可能となる。したがって、この実施形態によれば、低温条件や高速回転においても、ディスク2,3,5とローラ12,13との凝着や軌道面8,11,7,10の損傷を防止でき、常に確実な動力伝達を達成できる。また、高速回転時の油量が少なく高温となってもローラに焼き付きが発生しにくくなるから、油量を抑えて油の撹拌抵抗を抑えることができ、効率の向上を図れる。
【0017】
【発明の効果】以上より明らかなように、この発明のトロイダル式無段変速機は、ディスクを金属材料で作製し、ローラをセラミックで作製した。したがって、この発明では、セラミック製のローラと金属製のディスクとが摩擦接触するから、金属同士が接触する従来例に比べて、焼き付きや損傷が起こりにくくなる。また、この発明では、ディスクとローラとの高い接触面圧に起因する発熱に対し、より耐熱性の良いセラミック製のローラを使用したので、より高い接触面圧および、より高い回転速度で使用することが可能となる。したがって、この発明によれば、低温条件や高速回転においても、ディスクとローラの凝着や軌道面の損傷を防止でき、常に確実な動力伝達を達成できる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成11年4月22日(1999.4.22)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外1名)
【公開番号】 特開2000−304117(P2000−304117A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−114767