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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機
【発明者】 【氏名】山本 健

【要約】 【課題】パワーローラとトラニオンの傾転軸方向のガタを小さく抑えて望みの変速比に制御することを容易にすると共に、パワーローラを支持する軸受の支持剛性を高めたトロイダル型無段変速機を提供すること。

【解決手段】ピボットシャフト15aとトラニオン17aの間には、接触角がゼロではない第一軸受101を配置し、ピボットシャフト15aとパワーローラ18cとの間には、接触角がゼロではない第二軸受102を配置し、かつ、両軸受101,102が荷重ゼロで接触したときに、スラストニードル軸受100とパワーローラ18cとの間に隙間t1を設定し、しかも、パワーローラ軸受103とパワーローラ18cとの間に隙間t2を設定する手段とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンからの回転駆動力を入力する入力ディスクと、該入力ディスクに対向配置され、入力ディスクより伝達される回転駆動力を出力する出力ディスクと、これら入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイダル形状の曲面に挟持されるパワーローラと、前記入出ディスクのうち一方のディスクを他方のディスクに向けて伝達トルクに応じた力で軸方向に押圧するローディングカムと、前記入出ディスクのうち他方のディスクを一方のディスクに向けて軸方向に押圧する付勢手段と、前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、相互に偏心した両端部のうち一方の端部にパワーローラを回転自在に支持すると共に、他方の端部をトラニオンに対し回転自在に支持し、他端周りにパワーローラを揺動可能とするピボットシャフトと、前記ローディングカムの押圧力に起因してパワーローラに作用するスラスト力を受け止めるようにトラニオンの窪み内に配置されたスラストニードル軸受と、前記トラニオンの軸方向及び傾転方向の位置を検知するプリセスカムと、を備えたトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間、或いは、ピボットシャフトとパワーローラの間のうち少なくともどちらか一方に、接触角がゼロではない軸受を配置し、かつ、前記軸受が荷重ゼロで接触したときに、スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間に隙間を設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】 請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受を配置し、前記ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受を配置し、前記第一軸受と第二軸受の少なくとも一方を円錐ころ軸受としたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項3】 請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受を配置し、前記ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受を配置し、前記第一軸受と第二軸受の少なくとも一方をすべり軸受としたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3記載のトロイダル型無段変速機において、前記第一軸受の接触角を、トラニオンの背面方向に傾けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項5】 請求項1ないし請求項4記載のトロイダル型無段変速機において、前記第二軸受の接触角を、パワーローラの軸正面方向に傾けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項6】 請求項1ないし請求項5記載のトロイダル型無段変速機において、前記スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間の隙間、及び、パワーローラ軸受とパワーローラ間の隙間を、弾性ばねの発生する軸方向荷重で無くなるように設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両等に適用されるトロイダル型無段変速機の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】自動車用無段変速機は、その滑らかさ、運転のしやすさ及び燃費向上の期待もあって近年研究開発が進められている。既にVベルト式については実用化に至っている。
【0003】その一方で、Vベルトに比べて大容量かつ応答性のよいCVTが求められている。この可能性を達成するものとして、油膜のせん断によって動力を伝達するトラクションドライブ式トロイダル型無段変速機(以下、トロイダル型CVT)が知られている。
【0004】トロイダル型CVTは、その形状から、フルトロイダル型とハーフトロイダル型に分類できる。両型のうち、フルトロイダル型CVTでは、パワーローラにスラスト力がかからない。一方、ハーフトロイダル型CVTでは、パワーローラにスラスト力がかかり、この力を受けるためにベアリングを必要とする。このベアリング性能が効率に大きな影響を及ぼす。しかしながら、ハーフトロイダル型CVTは、ディスクとパワーローラとの2つの接触点に引いた接線が交点を持ち、その交点の軌跡が全変速範囲において回転軸の近傍にあることから、スピン損失がフルトロイダル型CVTに比べて小さく、これらの得失を考えてハーフトロイダル型CVTが選択され、実用化に向けて研究開発が進められている。
【0005】このハーフトロイダル型CVTの変速動作は、パワーローラ支持部材(以下、トラニオンという)にパワーローラ回転軸とディスク回転軸に垂直な方向に僅かな変位を与えることによってサイドスリップ力を発生し、傾転力を得る機構になっている。
【0006】このトラニオンにピボットシャフトを介してパワーローラを回転可能かつ揺動可能に支持する支持構造としては、例えば、特開平3−89066号公報に記載のものが知られている。
【0007】上記従来公報には、図8に示すように、トラニオンとピボットシャフトとの間の第一軸受、及び、ピボットシャフトとパワーローラとの間の第二軸受は、いずれも接触角が0°(ラジアルニードル軸受)に設定されたトロイダル型無段変速機が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のトロイダル型無段変速機のパワーローラ支持構造にあっては、トラニオンとピボットシャフトとの間の第一軸受、及び、ピボットシャフトとパワーローラとの間の第二軸受は、いずれも接触角がゼロであるため、両軸受けの内外輪間に設定されている半径方向の隙間により、パワーローラとトラニオンは傾転軸方向にガタを持つことになり、パワーローラとプリセスカムとの位置関係が、パワーローラに働く負荷の方向や大きさによって変化し、望みの変速比に制御できないという問題がった。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、パワーローラとトラニオンの傾転軸方向のガタを小さく抑えて望みの変速比に制御することを容易にすると共に、パワーローラを支持する軸受の支持剛性を高めたトロイダル型無段変速機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明では、エンジンからの回転駆動力を入力する入力ディスクと、該入力ディスクに対向配置され、入力ディスクより伝達される回転駆動力を出力する出力ディスクと、これら入出力ディスクの対向面にそれぞれ形成されたトロイダル形状の曲面に挟持されるパワーローラと、前記入出ディスクのうち一方のディスクを他方のディスクに向けて伝達トルクに応じた力で軸方向に押圧するローディングカムと、前記入出ディスクのうち他方のディスクを一方のディスクに向けて軸方向に押圧する付勢手段と、前記パワーローラを回転自在に支持するトラニオンと、相互に偏心した両端部のうち一方の端部にパワーローラを回転自在に支持すると共に、他方の端部をトラニオンに対し回転自在に支持し、他端周りにパワーローラを揺動可能とするピボットシャフトと、前記ローディングカムの押圧力に起因してパワーローラに作用するスラスト力を受け止めるようにトラニオンの窪み内に配置されたスラストニードル軸受と、前記トラニオンの軸方向及び傾転方向の位置を検知するプリセスカムと、を備えたトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間、或いは、ピボットシャフトとパワーローラの間のうち少なくともどちらか一方に、接触角がゼロではない軸受を配置し、かつ、前記軸受が荷重ゼロで接触したときに、スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間に隙間を設定したことを特徴とする。
【0011】請求項2記載の発明では、請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受を配置し、前記ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受を配置し、前記第一軸受と第二軸受の少なくとも一方を円錐ころ軸受としたことを特徴とする。
【0012】請求項3記載の発明では、請求項1記載のトロイダル型無段変速機において、前記ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受を配置し、前記ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受を配置し、前記第一軸受と第二軸受の少なくとも一方をすべり軸受としたことを特徴とする。
【0013】請求項4記載の発明では、請求項1ないし請求項3記載のトロイダル型無段変速機において、前記第一軸受の接触角を、トラニオンの背面方向に傾けたことを特徴とする。
【0014】請求項5記載の発明では、請求項1ないし請求項4記載のトロイダル型無段変速機において、前記第二軸受の接触角を、パワーローラの軸正面方向に傾けたことを特徴とする。
【0015】請求項6記載の発明では、請求項1ないし請求項5記載のトロイダル型無段変速機において、前記スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間の隙間、及び、パワーローラ軸受とパワーローラ間の隙間を、弾性ばねの発生する軸方向荷重で無くなるように設定したことを特徴とする。
【0016】
【発明の作用および効果】請求項1記載の発明では、ピボットシャフトとトラニオンの間、或いは、ピボットシャフトとパワーローラの間のうち少なくともどちらか一方に、接触角がゼロではない軸受が配置され、かつ、接触角がゼロではない軸受が荷重ゼロで接触したときに、スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間に隙間が設定される。
【0017】そして、組み付け時にローディングナット等を締め始めると付勢手段が軸方向荷重を発生し、この荷重によりスラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間の隙間を縮める。
【0018】よって、接触角がゼロでない軸受において半径方向の隙間を無くすことができ、これによりパワーローラとトラニオンの傾転軸方向のガタが小さく抑えられる。このため、パワーローラに働く負荷の方向や大きさによるパワーローラとプリセスカムとの位置関係の変化も小さく抑えられ、望みの変速比に制御することが容易となる。
【0019】さらに、接触角がゼロでない軸受に必ず荷重が働くことになり、軸受に予圧を与えることができるため、パワーローラを支持する軸受の支持剛性が高められる。ちなみに、軸受剛性は一定ではなく、軸受に予め荷重を与えておけば、軸受剛性は高くなるというという特性を持つ。
【0020】請求項2記載の発明では、ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受が配置され、ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受が配置され、第一軸受と第二軸受の少なくとも一方が円錐ころ軸受とされる。
【0021】このように、2つの軸受がいずれも接触角がゼロではない軸受とされることで、一方の軸受のみを接触角がゼロではない軸受とする場合に比べ、パワーローラとトラニオンの傾転軸方向のガタがさらに小さく抑えられ、望みの変速比に制御することが容易となるし、2つの軸受の支持剛性を共に高めることができる。
【0022】請求項3記載の発明では、ピボットシャフトとトラニオンの間に第一軸受が配置され、ピボットシャフトとパワーローラの間に第二軸受が配置され、第一軸受と第二軸受の少なくとも一方がすべり軸受とされる。
【0023】よって、基本的な作用効果は請求項2記載の発明と同じであるが、円錐ころ軸受に比べ、すべり軸受の方がコストを低くすることができる。
【0024】請求項4記載の発明では、第一軸受の接触角が、トラニオンの背面方向に傾けて設定される。
【0025】よって、パワーローラに入力された軸方向の荷重はピボットシャフトを介して第一軸受が受け、この第一軸受の接触角による荷重の径方向分力にて半径方向の隙間が無くなる。
【0026】請求項5記載の発明では、第二軸受の接触角が、パワーローラの軸正面方向に傾けて設定される。
【0027】よって、パワーローラに入力された軸方向の荷重を第二軸受が受け、この第二軸受の接触角による径方向分力にて半径方向の隙間が無くなる。
【0028】請求項6記載の発明では、スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間の隙間、及び、パワーローラ軸受とパワーローラ間の隙間が、弾性ばねの発生する軸方向荷重で無くなるように設定される。
【0029】そして、組み付け時に弾性ばね荷重が働くと、スラストニードル軸受とトラニオン間またはスラストニードル軸受とパワーローラ間の隙間が無くなると共に、パワーローラ軸受とパワーローラ間の隙間も無くなる。
【0030】よって、パワーローラ軸受にも軸方向荷重が働き、パワーローラ軸受の支持剛性を高めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)実施の形態1は請求項1,2,4,5,6に記載の発明に対応するトロイダル型無段変速機である。
【0032】[全体構成について]図2は実施の形態1のトロイダル型無段変速機を示す全体構成図で、10はトロイダル型無段変速機を示し、図外のエンジンからの回転駆動力がトルクコンバータ12を介して入力される。トルクコンバータ12は、ポンプインペラ12a,タービンランナ12b,ステータ12c,ロックアップクラッチ12d,アプライ側油室12e,及びリリース側油室12f等からなり、その中心部をインプットシャフト14が貫通している。
【0033】前記インプットシャフト14は、前後進切換機構36と連結され、該機構36は、遊星歯車機構42,前進用クラッチ44及び後進用ブレーキ46などを備える。遊星歯車機構42は、ダブルピニオンの夫々と噛合するリングギヤ42b,サンギヤ42cを有してなる。
【0034】前記遊星歯車機構42のピニオンキャリヤはトルク伝達軸16に連結され、該トルク伝達軸16には、第一無段変速機構18及び第二無段変速機構20が変速機ケース22内の下流側にタンデム配置される(デュアルキャビティ型)。尚、符号64で示すベースに、コントロールバルブ系のボディを配置する。
【0035】前記第一無段変速機構18は、対向面がトロイダル曲面に形成される一対の入力ディスク18a及び出力ディスク18bと、これら入出力ディスク18a,18bの対向面間に摩擦接触されると共にトルク伝達軸16に関し対称配置される一対のパワーローラ18c,18dと、これらパワーローラ18c,18dをそれぞれ傾転可能に支持する支持機構及び油圧アクチュエータとしてのサーボピストン(図3)を備える。第二無段変速機構20も同様、対向面がトロイダル曲面に形成される一対の入力ディスク20a及び出力ディスク20bと、一対のパワーローラ20c,20dと、その支持機構及びサーボピストン(図3)を備える。
【0036】トルク伝達軸16上において無段変速機構18,20は、出力ディスク18b,20bが対向するように互いに逆向きに配置され、第一無段変速機構18の入力ディスク18aは、トルクコンバータ12を経た入力トルクに応じた押圧力を発生するローディングカム装置34によって図中軸方向右側に向かって押圧される。
【0037】前記ローディングカム装置34は、ローディングカム34aを有し、スライドベアリング38を介し軸16に支持される。第二無段変速機構20の入力ディスク20aは、皿ばね40(付勢手段)により図中軸方向左側に向かって押圧付勢されている。
【0038】各入力ディスク18a,20aは、ボールスプライン24,26を介して伝達軸16に回転可能かつ軸方向に移動可能に支持される。
【0039】上記機構において、各パワーローラ20c,20dは後述する作動により変速比に応じた傾転角が得られるようにそれぞれ傾転され、入力ディスク18a,20aの入力回転を無段階(連続的)に変速して出力ディスク18b,20bに伝達する。
【0040】出力ディスク18a,18bは、トルク伝達軸16上に相対回転可能に嵌合された出力ギヤ28とスプライン結合され、伝達トルクは該出力ギヤ28を介し、出力軸(カウンタシャフト)30に結合したギヤ30aに伝達され、これらギヤ28,30aはトルク伝達機構32を構成する。また、出力軸30上に設けたギヤ56とこれらにそれぞれ噛合するアイドラギヤ54とよりなる伝達機構48を設け、出力軸50はこれをプロペラシャフト60に連結する。
【0041】[変速制御系の構成について]上記パワーローラ18c,18d,20c,20dを変速比に応じた傾転角が得られるようにそれぞれ傾転させる変速制御系について、図3に示す概略図により説明する。
【0042】まず、各パワーローラ18c,18d,20c,20dは、相互に偏心した両端部を持つピボットシャフト15a,15b,25a,25bの一端部に回転自在に支持される。そして、ピボットシャフト15a,15b,25a,25bの他端部は、トラニオン17a,17b,27a,27bの上端部に対し回転自在に支持され、しかも、偏心軸構造にすることで他端周りに揺動可能である。このトラニオン17a,17b,27a,27bの下端部には、トラニオン17a,17b,27a,27bを軸方向に移動させてを傾転させる油圧シリンダとしてのサーボピストン70a,70b,72a,72bが設けられている。
【0043】前記サーボピストン70a,70b,72a,72bを作動制御する油圧制御系として、ハイ側油室に接続されるハイ側油路74と、ロー側油室に接続されるロー側油路76と、ハイ側油路74を接続するポート78aとロー側油路76を接続するポート78bを有する変速制御弁78とが設けられている。
【0044】前記変速制御弁78のライン圧ポート78cには、オイルポンプ80及びリリーフ弁82を有する油圧源からのライン圧が供給される。
【0045】前記変速制御弁78の変速スプール78dは、トラニオン17aの軸方向及び傾転方向を検知し、変速制御弁78にフィードバックするレバー84及びプリセスカム86と連動する。
【0046】前記変速制御弁78の変速スリーブ78eは、ステップモータ88により軸方向に変位するように駆動される。
【0047】前記ステップモータ88を駆動制御する電子制御系として、CVTコントローラ90が設けられ、このCVTコントローラ90には、スロットル開度センサ92、エンジン回転センサ94、入力軸回転センサ96、出力軸回転センサ(車速センサ)98等からの入力情報が取り込まれる。
【0048】[パワーローラ支持機構について]上記パワーローラ18c,18d,20c,20dのうちパワーローラ18cの支持機構を示す図1及び図4に基づいて、その構成を説明する。
【0049】パワーローラ18cとトラニオン17aの間には、パワーローラ18cの揺動を円滑に行うべくスラストニードル軸受100が配置されている。
【0050】ピボットシャフト15aとトラニオン17aの間には、接触角がゼロでない第一軸受101が配置され、ピボットシャフト15aとパワーローラ18cの間には、接触角がゼロでない第二軸受102が配置され、パワーローラ18cとトラニオン17aとの間には、パワーローラ軸受103が配置されている。
【0051】前記第一軸受101と第二軸受102は、いずれも円錐ころ軸受であり、第一軸受101の接触角は、大径側がパワーローラ18c側となるように、トラニオン17aの背面方向に傾けた設定とされ、前記第二軸受102の接触角は、大径側がトラニオン17a側となるように、パワーローラ18cの軸正面方向に傾けた設定とされている。なお、第一軸受101及び第二軸受102の内輪は、いずれもピボットシャフト15aに一体化されている。
【0052】そして、前記両軸受101,102が荷重ゼロで接触したときに、図4に示すように、スラストニードル軸受100とパワーローラ18cとの間に隙間t1が設定され、かつ、パワーローラ軸受103とパワーローラ18cとの間に隙間t2が設定されている。
【0053】この隙間t1と隙間t2は、図1に示す組み付け終了時点において、皿ばね40の発生する軸方向荷重で無くなるように寸法が規定されている。
【0054】なお、プリセスカム86の無い他のパワーローラ18d,20c,20dについても、パワーローラ間の支持剛性やフリクションが異なると制御上問題をきたすという理由で、上記パワーローラ18cと同様の構成とする。
【0055】次に、作用を説明する。
【0056】[変速比制御作用]トロイダル型CVTは、パワーローラ18c,18d,20c,20dを傾転させることによって変速比を変える。つまり、ステップモータ88を回転させるとによって変速スリーブ78eが変位すると、サーボピストン70a,70b,72a,72bの一方のサーボピストン室に作動油が導かれ、他方のサーボピストン室から作動油が排出され、パワーローラ18c,18d,20c,20dの回転中心がディスク18a,18b,20a,20bの回転中心に対してオフセットする。このオフセットによってパワーローラ18c,18d,20c,20dに傾転力が発生し、傾転角が変化する。
【0057】この傾転運動およびオフセットは、プリセスカム86及びレバー84を介して変速スプール78dに伝達され、ステップモータ88により変位する変速スリーブ78eとの釣り合い位置で静止する。
【0058】なお、ステップモータ88は、CVTコントローラ90からの目標変速比が得られる駆動指令により変速スリーブ78eを変位させる。
【0059】[組み付け時]組み付け時にローディングナットを締め始めると、皿ばね40が荷重を発生し、ディスク18a,18b,20a,20bを介してパワーローラ18cを軸方向に押し付けると、荷重が小さいうちは第一軸受101及び第二軸受102だけで荷重を支持する(図4)。
【0060】そして、ローディングナットを締め込んで荷重が増すと、第一軸受101及び第二軸受102のころとレースの接触部が次第に変形し、パワーローラ18cとピボットシャフト15aが軸方向に移動する。
【0061】そして、皿ばね40の荷重がある一定値に達すると、パワーローラ18cとパワーローラ軸受103の玉、及びパワーローラ軸受103とスラストニードル軸受100が接触し、さらに、ローディングナットを所定の位置まで締め込むとすべての軸受100,101,102,103で荷重を受けている状態となる(図5)。
【0062】なお、他のパワーローラ18d,20c,20dについても同様の作用を示す。
【0063】[軸受の支持剛性について]ピボットシャフトを支持する軸受に接触角を持つ第一軸受101及び第二軸受102を使用するのは、単にガタを無くすというだけではなく、支持剛性を高めるという目的をも併せ持つ。
【0064】すなわち、従来例では、ニードル軸受の角部のみが接触するため支持剛性が低いが、本発明では、第一軸受101及び第二軸受102に対する全面当たりとなり、かつ予圧を与えることが可能なため、支持剛性を高めることができる。
【0065】この支持剛性が予圧により高まる理由について述べると、ピボットシャフトの接触角及び背面ベアリングの隙間に対する支持剛性の関係は、接触点のヘルツ変形(Hertz変形)で決まっており、変形量は荷重の2/3乗に比例する(図6)。すなわち、軸受の剛性は一定ではなく、荷重が大きいほど高くなる。よって、軸受に予め荷重を与えておけば、剛性を高くすることができる(予圧という)。
【0066】本発明は、この特性を利用するものであり、外輪に働く荷重は、背面ベアリングの隙間が無くなるまではピボットシャフトで受けるため、予圧を与えることができる(実際には、ローディングナットを締め付け、皿ばね荷重で隙間が無くなるくらいに設定する)。
【0067】一方、従来例のように軸受に接触角がないと、軸方向にいくら押してもレースとローラが接触しないので、予圧は与えられない。よって背面ベアリングに隙間を設定することも不可能である。太いローラを圧入すれば予圧可能であるが、組付けが困難となる。
【0068】(実施の形態2)実施の形態2は請求項1,3,4,5,6に記載の発明に対応するトロイダル型無段変速機である。
【0069】まず、構成を説明すると、この実施の形態2では、図7に示すように、第一軸受を円錐ころ軸受ではなくすべり軸受による第一軸受101'とした例である。尚、他の構成は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0070】基本的な作用効果は、実施の形態1と同じであるが、円錐ころ軸受に比べ、すべり軸受の方がコストを低くすることができる。
【0071】(その他の実施の形態)実施の形態1,2では、第一軸受及び第二軸受の両方共に接触角を持つ軸受とする例を示したが、いずれか一方の軸受のみが接触角を持つ軸受としても良く、この場合、効果的に変わりなく、効果のレベルが多少下がるだけである。
【0072】実施の形態1,2では、接触角がゼロではない第一軸受及び第二軸受として円錐ころ軸受とすべり軸受の例を示したが、テーパローラ軸受やアンギュラコンタクト軸受などの他のタイプの軸受を用いることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年4月19日(1999.4.19)
【代理人】 【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟 (外1名)
【公開番号】 特開2000−304116(P2000−304116A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−110960