| 【発明の名称】 |
無段変速装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】石川 宏史
【氏名】今西 尚
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| 【要約】 |
【課題】優れた伝達効率及び耐久性を有し、しかも小型且つ軽量な構造を実現する。
【解決手段】ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機47と、遊星歯車機構50とを組み合わせる。低速走行時には、低速用クラッチ73を接続し、総てのトルクをトロイダル型無段変速機47を通じて伝達する。高速走行時には、高速用クラッチ74を接続し、トルクの一部乃至は多くの部分を遊星歯車機構50を通じて伝達し、一部のトルクをトロイダル型無段変速機47に循環させる。構成要素の最適組み合わせにより、上記課題を解決する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動軸により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、このトロイダル型無段変速機を構成する出力側ディスクとこの遊星歯車機構の一部との間で動力を伝達する第一の動力伝達機構と、この遊星歯車機構の残部に上記入力軸から、上記トロイダル型無段変速機構を介する事なく直接動力を伝達する第二の動力伝達機構と、上記入力軸と出力軸との間の変速状態を高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在な切換手段とを備え、上記トロイダル型無段変速機は、互いに同心に且つ動力の伝達方向に関して互いに並列に配置した1対ずつの入力側ディスクと出力側ディスクとの間にそれぞれ複数個ずつ挟持したパワーローラの傾斜角度を同期して変える事により、上記入力軸の回転に基づいて回転する上記各入力側ディスクと上記各出力側ディスクとの間の減速比を同期して変える、ダブルキャビティ型のものであり、上記トロイダル型無段変速機に組み込んで上記各入力側ディスク及び出力側ディスク同士を互いに近付ける方向に押圧する押圧装置と上記遊星歯車機構とを、上記入力軸及び出力軸の軸方向に関して、上記第一、第二の動力伝達機構の間位置に設けた無段変速装置。 【請求項2】 駆動軸により回転駆動される入力軸と、この入力軸と平行に配置されてこの入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構とを備え、このトロイダル型無段変速機は、互いに同心に且つ動力の伝達方向に関して互いに並列に配置した1対ずつの入力側ディスクと出力側ディスクとの間にそれぞれ複数個ずつ挟持したパワーローラの傾斜角度を同期して変える事により、上記入力軸の回転に基づいて回転する上記各入力側ディスクと上記各出力側ディスクとの間の減速比を同期して変える、ダブルキャビティ型のものであり、上記遊星歯車機構は、上記出力軸と結合された太陽歯車と、この太陽歯車の周囲に配置したリング歯車と、同心円上に配置した複数本の枢軸によりそれぞれ上記太陽歯車及びリング歯車と噛合する遊星歯車をそれぞれ回転自在に支持する複数本の枢軸を設けたキャリアとから成るものであり、上記キャリアと上記各出力側ディスクとを第一の動力伝達機構により回転力の伝達を可能な状態に接続すると共に、上記入力軸と上記リング歯車とを第二の動力伝達機構により回転力の伝達を可能な状態に接続自在とし、上記入力軸と出力軸との間の変速状態を高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在な切換手段を備え、上記第一の動力伝達機構の減速比αと上記第二の動力伝達機構の減速比βとの比β/αを、上記トロイダル型無段変速機の最大増速時の減速比iH とほぼ同じとし、更に、上記トロイダル型無段変速機に組み込んで上記各入力側ディスク及び出力側ディスク同士を互いに近付ける方向に押圧する押圧装置と上記遊星歯車機構とを、上記入力軸及び出力軸の軸方向に関して、上記第一、第二の動力伝達機構の間位置に設けた無段変速装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車用の変速機として利用する、トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関し、小型で、しかもトロイダル型無段変速機の構成部材の耐久性を確保できる構造を実現するものである。 【0002】 【従来の技術】自動車用変速機として、図4〜5に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。 【0003】即ち、これら各トラニオン6、6は、それぞれの両端部外面に上記枢軸5、5を、互いに同心に設けている。又、これら各トラニオン6、6の中間部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。上記各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の、互いに対向する内側面2a、4a同士の間に挟持している。これら各内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記内側面2a、4aに当接させている。 【0004】上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、押圧装置であるローディングカム装置9を設け、このローディングカム装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、この入力側ディスク2を回転駆動自在としている。このローディングカム装置9は、入力軸1と共に回転するローディングカム(カム板)10と、保持器11により転動自在に保持した複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記ローディングカム10の片側面(図4〜5の右側面)には、円周方向に亙る凹凸であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図4〜5の左側面)にも、同様の形状を有するカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に関し放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。 【0005】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってローディングカム10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12、12を、入力側ディスク2の外側面に形成したカム面14に押圧する。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記両カム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。 【0006】入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸5、5を中心として前記各トラニオン6、6を所定方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図4に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を反対方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図5に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図4と図5との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。 【0007】又、図6〜7は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機の1例を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニードル軸受16、16を介して、回転自在に支持している。即ち、上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の中心部には断面形状が円形である貫通孔17、17を、それぞれ上記各ディスク2、4の内側面と外側面とを軸方向(図6の左右方向)に貫通する状態で形成している。上記各ニードル軸受16、16は、上記各貫通孔17、17の内周面と上記入力軸15の中間部外周面との間に設けている。又、上記各貫通孔17、17の内側面寄り端部内周面に形成した係止溝18、18には止め輪19、19を係止して、上記各ニードル軸受16、16が上記各貫通孔17、17から、上記各ディスク2、4の内側面2a、4a側に抜け出る事を防止している。又、ローディングカム10は上記入力軸15の端部(図6の左端部)外周面にスプライン係合させ、外向フランジ状の鍔部20により上記入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このローディングカム10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディスク2を、上記出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させるローディングカム装置9を構成している。上記出力側ディスク4には出力歯車21を、キー22、22により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転する様にしている。 【0008】1対のトラニオン6、6の両端部は1対の支持板23、23に、揺動並びに軸方向(図6の表裏方向、図7の左右方向)に亙る変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔24、24部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部25、25と枢支軸部26、26とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部25、25を上記各円孔24、24の内側に、ラジアルニードル軸受27、27を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部26、26の周囲にパワーローラ8、8を、別のラジアルニードル軸受28、28を介して、回転自在に支持している。 【0009】尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部26、26が各支持軸部25、25に対し偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図7で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、回転力の伝達状態で構成各部材に加わる大きな荷重に基づく、これら構成各部材の弾性変形に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向(図6の左右方向、図7の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、上記構成各部品に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。 【0010】又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受29、29とスラストニードル軸受30、30とを設けている。このうちのスラスト玉軸受29、29は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。又、上記各スラストニードル軸受30、30は、上記各パワーローラ8、8から上記各スラスト玉軸受29、29を構成する外輪31、31に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記各枢支軸部26、26及び上記外輪31、31が、前記支持軸部25、25を中心に揺動する事を許容するものである。 【0011】更に、上記各トラニオン6、6の一端部(図7の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド32、32を結合し、これら各駆動ロッド32、32の中間部外周面に駆動ピストン33、33を固設している。そして、これら各駆動ピストン33、33を、それぞれ駆動シリンダ34、34内に油密に嵌装している。 【0012】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の場合、入力軸15の回転は、ローディングカム装置9を介して入力側ディスク2に伝わる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝わり、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン33、33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33、33の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図7の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板23、23に枢支された枢軸5、5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図4〜5に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。 【0013】尚、この様に上記入力軸15と出力歯車21との間で回転力の伝達を行なう際には、構成各部材の弾性変形に基づいて上記各パワーローラ8、8が、上記入力軸15の軸方向に変位し、これら各パワーローラ8、8を枢支している前記各変位軸7、7が、前記各支持軸部25、25を中心として僅かに回動する。この回動の結果、前記各スラスト玉軸受29、29の外輪31、31の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受30、30が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。 【0014】更に、伝達可能なトルクを増大すべく、図8〜9に示す様に、入力軸15aの周囲に入力側ディスク2A、2B出力側ディスク4、4とを2個ずつ設け、これら2個ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを動力の伝達方向に関して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型の構造も、例えば特開平1−234646号公報、同7−158711号公報、同8−21503号公報、同8−35549号公報等に記載されている様に、従来から知られている。上記図8〜9に示した構造は、上記入力軸15aの中間部周囲に出力歯車21aを、この入力軸15aに対する回転を自在として支持し、この出力歯車21aの中心部に設けた円筒状のスリーブ35の両端部に上記各出力側ディスク4、4を、スプライン係合させている。そして、これら各出力側ディスク4、4に設けた貫通孔17、17の内周面と上記入力軸15aの外周面との間にニードル軸受16、16を設け、これら各出力側ディスク4、4及び上記出力歯車21aを上記入力軸15aの周囲に、この入力軸15aに対する回転、並びにこの入力軸15aの軸方向に亙る変位を自在に支持している。又、上記各入力側ディスク2A、2Bは、上記入力軸15aの両端部に、この入力軸15aと共に回転自在に支持している。この入力軸15aは、駆動軸36により、ローディングカム装置9を介して回転駆動する。尚、この駆動軸36の先端部(図8〜9の右端部)外周面と上記入力軸15aの基端部(図8〜9の左端部)内周面との間には、滑り軸受、ニードル軸受等のラジアル軸受37を設けている。従って、上記駆動軸36と入力軸15aとは、互いに同心に配置された状態のまま、回転方向に亙る若干の変位自在に組み合わされている。 【0015】但し、一方(図8〜9の右方)の入力側ディスク2Aは、背面(図8〜9の右面)をローディングナット38に、大きな弾力を有する皿板ばね39を介し突き当てて、上記入力軸15aに対する軸方向(図8〜9の左右方向)の変位を実質的に阻止している。これに対して、ローディングカム10に対向する入力側ディスク2Bは、ボールスプライン40により上記入力軸15aに、軸方向に亙る変位自在に支持している。そして、この入力側ディスク2Bの外側面(図8〜9の左面)と上記入力軸15aの中間部外周面に形成した係止段部41との間に、予圧ばねである皿板ばね42を設けている。この皿板ばね42は、上記皿板ばね39に比べて小さな弾力を有し、上記各ディスク2A、2B、4の内側面2a、4aとパワーローラ8、8の周面8a、8aとの各当接部に予圧を付与する。即ち、上記ローディングカム装置9が推力を発生していないか、発生しても小さな場合にも、上記各当接部の当接圧を確保して、トロイダル型無段変速機により小さなトルクも伝達自在とさせる。 【0016】又、前記出力歯車21aはハウジングの内側に設けた中間壁43に、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受44、44により、軸方向に亙る変位を阻止した状態で、回転自在に支持している。尚、上述の図8〜9に示したダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機が、ローディングカム10に対向する一方又は双方の入力側ディスク2A、2Bをボールスプライン40、40により上記入力軸15aに、軸方向に亙る変位自在に支持している理由は、これら両ディスク2A、2Bの回転を同期させつつ、上記ローディングカム装置9の作動に伴う構成各部材の弾性変形に基づいて上記両ディスク2A、2Bが、上記入力軸15aに対し軸方向に変位する事を許容する為である。又、一方の入力側ディスク2Aの背面をローディングナット38に、大きな弾力を有する皿板ばね39を介し突き当てているのは、トロイダル型無段変速機を介して伝達するトルクの急上昇時に、上記一方の入力側ディスク2Aに加わるスラスト方向の衝撃荷重を吸収する為である。 【0017】上述した様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の運転時、駆動軸36の回転は、ローディングカム装置9を介して他方(図8の左方)の入力側ディスク2Bに伝わり、更にこの回転が、入力軸15aを介して一方の入力側ディスク2Aに伝わって、これら両入力側ディスク2A、2Bが同期して回転する。そして、これら両入力側ディスク2A、2Bの回転が、それぞれ複数個ずつ(図示の例では2個ずつ合計4個)のパワーローラ8、8を介して1対の出力側ディスク4、4に伝わる。この結果、これら両出力側ディスク4、4を両端部にスプライン係合させたスリーブ35が回転し、このスリーブ35の中間部外周面に固設した出力歯車21aが回転する。この様にダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機では、上記駆動軸36から出力歯車21aへの回転伝達を、互いに並列に配置された2系統に分けて行なうので、大きなトルク伝達が可能になる。又、上記各ディスク2A、2B、4同士の間に挟持したパワーローラ8、8の傾斜角度を同期して変える事により、上記両入力側ディスク2A、2Bと上記両出力側ディスク4、4との間の変速比を変える事ができる。 【0018】上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機を実際の自動車用の無段変速機に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特開平1−169169号公報、同1−312266号公報に記載されている様に、従来から提案されている。図10は、この様な従来から提案されている無段変速装置の基本構成を略示している。駆動源であるエンジン45の駆動軸46(クランクシャフト)は、前述した図6〜7に示す様な構成を有するトロイダル型無段変速機47の入力軸15(図6〜7参照)に結合している。又、デファレンシャルギヤ48(本発明の実施の形態を示す図1〜3参照)を介して駆動輪を駆動する為の出力軸49は、遊星歯車機構50を構成する太陽歯車51(図1〜3参照)に結合固定して、この太陽歯車51と共に回転する様にしている。 【0019】又、上記トロイダル型無段変速機47の出力側ディスク4(図1〜3、図6〜7参照)と上記遊星歯車機構50の一部の構成部材とを第一の動力伝達機構52により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。又、上記駆動軸46及び入力軸15と上記遊星歯車機構50の他の構成部材とを第二の動力伝達機構53により、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。更に、上記駆動軸46及び入力軸15と出力軸49との間の変速状態を、高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在な、切換手段とを備える。そして、上記第一の動力伝達機構52の減速比αと上記第二の動力伝達機構53の減速比βとの比β/αを、上記トロイダル型無段変速機47の最大増速時の減速比(図5に示した状態での入力軸1と出力軸3との間の減速比)iH とほぼ同じとしている。 【0020】上述の図10に示す様な無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、低速走行モードでは上記駆動軸46及び入力軸15と出力軸49との間の動力を、総て上記トロイダル型無段変速機47を通じて伝達する。これに対して高速走行モードでは、動力を上記遊星歯車機構50を介して伝達し、この動力の一部をこの遊星歯車機構50から上記トロイダル型無段変速機47に循環させる。即ち、低速走行時には前記エンジン45の駆動力を上記トロイダル型無段変速機47のみで伝達し、高速走行時には上記駆動力を上記遊星歯車機構50で伝達する事により、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機47に加わるトルクの低減を図る様にしている。この様に構成する事により、上記トロイダル型無段変速機47の構成各部材の耐久性を向上させると同時に、無段変速装置全体としての伝達効率の向上を図れる。 【0021】上述した様な、パワー・スプリット型と呼ばれる無段変速装置は、高速走行時にトロイダル型無段変速機を通じて伝達するトルクの軽減を図り、耐久性の向上と伝達効率の向上とを図れるが、従来から知られている構造のものは、必ずしも大きな動力を効率良く伝達する事ができないものであった。例えば、前記特開平1−169169号公報に記載された発明の場合には、入力側ディスクと出力側ディスクとを1個ずつ設けた、所謂シングルキャビティ型のトロイダル製無段変速機と、2組の遊星歯車機構とを互いに組み合わせて成る。この為、構造が複雑で大型になり、重量が嵩む割合に、大きなトルクを効率良く伝達する事ができない。特開平1−312266号公報に記載された無段変速装置の場合も同様である。 【0022】これに対して、特開平9−89072号公報には、トロイダル型無段変速機と1個の遊星歯車機構とを組み合わせて成る無段変速装置が記載されている。但し、この公報に記載された無段変速装置は、低速走行時には駆動力を遊星歯車機構とトロイダル型無段変速機とを介して伝達し、高速走行時には上記駆動力をこのトロイダル型無段変速機のみで伝達する、所謂ギヤード・ニュートラル型と呼ばれるものである。この様なギヤード・ニュートラル型の無段変速装置の場合には、発進時から低速走行時にかけて、上記トロイダル型無段変速機に大きなトルクが加わる。この為、小型化とこのトロイダル型無段変速機の構成各部材の耐久性確保との両立を図る事が難しい他、伝達効率の確保も難しい。特開平10−103461号公報に記載された無段変速装置の場合も同様である。 【0023】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、トロイダル型無段変速機自体の構造、並びにこのトロイダル型無段変速機と遊星歯車機構との結合状態の組み合わせを最適なものにする事により、優れた伝達効率及び耐久性を有し、しかも小型且つ軽量に構成できる無段変速装置を実現するものである。 【0024】 【課題を解決するための手段】本発明の無段変速装置は、駆動軸により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、このトロイダル型無段変速機を構成する出力側ディスクとこの遊星歯車機構の一部との間で動力を伝達する、歯車伝達機構若しくはチェン伝達機構等の第一の動力伝達機構と、この遊星歯車機構の残部に上記入力軸から、上記トロイダル型無段変速機構を介する事なく直接動力を伝達する、歯車伝達機構若しくはチェン伝達機構等の第二の動力伝達機構と、上記入力軸と出力軸との間の変速状態を高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在な切換手段とを備える。そして、上記トロイダル型無段変速機は、互いに同心に且つ動力の伝達方向に関して互いに並列に配置した、1対ずつの入力側ディスクと出力側ディスクとの間に、それぞれ複数個ずつ挟持したパワーローラの傾斜角度を同期して変える事により、上記入力軸の回転に基づいて回転する上記各入力側ディスクと上記各出力側ディスクとの間の減速比を同期して変える、ダブルキャビティ型のものである。又、上記トロイダル型無段変速機に組み込んで上記各入力側ディスク及び出力側ディスク同士を互いに近付ける方向に押圧する、ローディングカム装置或は油圧ローディング装置等の押圧装置と、上記遊星歯車機構とを、上記入力軸及び出力軸の軸方向に関して、上記第一、第二の動力伝達機構の間位置に設けている。 【0025】 【作用】上述の様に構成する本発明の無段変速装置の作用は、次の通りである。先ず、低速走行時には、入力軸と出力軸との間の動力を総て上記トロイダル型無段変速機を通じて伝達する。この為に例えば、遊星歯車機構を構成する太陽歯車とリング歯車とキャリアとのうちの何れかの部材同士を結合し、これら太陽歯車とリング歯車とキャリアとを、太陽歯車を中心として一体的に回転させる。この状態ではトロイダル型無段変速機のみが、入力軸から出力軸に動力を伝達する。この低速走行時に入力、出力両ディスク同士の間の減速比を変換する際の作用は、前述の図8〜9に示した、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合と同様である。勿論、この状態では、上記入力軸と出力軸との間の減速比、即ち無段変速装置全体としての減速比は、トロイダル型無段変速機の減速比に比例する。又、この状態では、このトロイダル型無段変速機に入力されるトルクは、上記入力軸に加えられるトルクに等しくなる。 【0026】尚、この様な低速走行時に入力軸から出力軸に、総ての動力を上記トロイダル型無段変速機を通じて伝達する際の、無段変速装置全体としての伝達効率は、このトロイダル型無段変速機自体の伝達効率により定まる。本発明の無段変速装置を構成するダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機は、ローディングカム装置等の押圧装置が発生するスラスト荷重を内部で相殺する。この為、入力側、出力側両ディスクを支承する転がり軸受に大きなスラスト荷重が加わる事がなく、この転がり軸受の回転トルクが大きくなる事を防止して、上記トロイダル型無段変速機並びにこのトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の伝達効率を高くできる。 【0027】図11は、トロイダル型無段変速機に入力したトルクとこのトロイダル型無段変速機の伝達効率との関係を示している。縦軸は伝達効率を、横軸は入力トルク(N・m)を、それぞれ表している。又、(A)はシングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合を、(B)はダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合を、それぞれ示している。又、各線図の右下部に示したiは、トロイダル型無段変速機を構成する入力側ディスクと出力側ディスクとの間での減速比を表している。このiの数値が1未満の場合には、トロイダル型無段変速機が増速状態である。この様な図11の(A)と(B)とを比較すれば明らかな通り、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機は、シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に比べて、特に伝達すべきトルクが大きい場合に、優れた伝達効率を得られる。しかも、ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機は、シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に比べて大きな動力を伝達可能である為、本発明の無段変速装置は、大きな動力を高い効率で伝達可能である。 【0028】これに対して、高速走行時には、動力を前記遊星歯車機構により伝達すると共に、一部の動力をこの遊星歯車機構を介して上記トロイダル型無段変速機に循環させる。この状態では、上記トロイダル型無段変速機を構成する1対の出力側ディスクに、この遊星歯車機構からトルクが伝わる。又、この状態では、上記無段変速装置全体としての減速比は、上記遊星歯車機構を構成する太陽歯車とリング歯車とキャリアとの回転速度の差に応じて変化する。そこで、上記トロイダル型無段変速機の減速比を変えて、上記各部材の回転速度の差を変えれば、上記無段変速装置全体としての減速比を調節できる。即ち、この状態では、トロイダル型無段変速機の減速比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の減速比の値は小さくなる(増速側に変化する)。この様な高速走行時の状態では、無段変速装置全体の減速比の値を小さくすべく(変速比を増速側に変化させるべく)、トロイダル型無段変速機の減速比の値を大きくする(減速側に変化させる)程、このトロイダル型無段変速機に入力されるトルクが小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機に入力されるトルクを小さくして、このトロイダル型無段変速機の構成部品の耐久性向上並びに伝達効率の向上を図れる。 【0029】この様に、本発明の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを組み合わせて、パワー・スプリット型の無段変速装置を構成している為、トロイダル型無段変速機を通過するトルクを小さく抑える事ができる。この為、入力側、出力側両ディスク及びパワーローラ等、上記トルクを伝達する為の部材に加わる荷重を小さく抑えて、これら各部材の耐久性を十分に確保できる。 【0030】図12は、無段変速装置の変速比と、この無段変速装置を構成するトロイダル型無段変速機のパワーローラ部分を通過する(このパワーローラが伝達する)トルクの大きさとの関係を示している。横軸は無段変速装置の減速比の逆数を、縦軸は上記パワーローラ部分を通過するトルクTと、この無段変速装置の入力軸に送り込むトルクtとの比(T/t)を、それぞれ表している。又、(A)はギヤード・ニュートラル型の無段変速装置の場合を、(B)はパワー・スプリット型の無段変速装置の場合を、それぞれ示している。又、矢印は、低速走行状態と高速走行状態の切り換えのタイミングを示している。この様な図12の(A)と(B)とを比較すれば明らかな通り、本発明が採用した、パワー・スプリット型の無段変速装置によれば、低速走行時にトロイダル型無段変速機を通過するトルクを無段変速装置の入力軸に送り込むトルクと同じにし、高速走行時にはこの入力軸に送り込むトルクよりも小さくできる。これに対して、ギヤード・ニュートラル型の無段変速装置によれば、高速走行時にトロイダル型無段変速機を通過するトルクが無段変速装置の入力軸に送り込むトルクと同じになり、低速走行時には、トロイダル型無段変速機を通過するトルクが無段変速装置の入力軸に送り込むトルクよりも遥かに大きくなる。この様な図12から明らかな通り、パワー・スプリット型の構造を採用した本発明の無段変速装置は、トロイダル型無段変速機の構成各部材に加わる荷重を低減できる。従って、自動車用の変速機として利用した場合に、低速走行時にエンジンの出力を調整する(低くする)等の面倒な制御を行なう事なく、トロイダル型無段変速機の耐久性確保を図れる。 【0031】 【発明の実施の形態】図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本発明の無段変速装置は、駆動源であるエンジン45の駆動軸46(クランクシャフト)につながって、このエンジン45により回転駆動される入力軸55を備える。この入力軸55の入力側端部(図1〜2の左端部)と上記駆動軸46の出力側端部(図1の右端部)との間には、トルクコンバータ、電磁クラッチ等の発進クラッチ56を、これら駆動軸46及び入力軸55に対し直列に設けている。従って図示の例の場合には、これら駆動軸46と入力軸55とを、互いに同心に配置している。これに対して、上記入力軸55の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸49を、この入力軸55と平行に、この入力軸55と独立した回転自在に配置している。そして、この入力軸55の周囲にトロイダル型無段変速機47を、上記出力軸49の周囲側方(図1の右方)に遊星歯車機構50を、それぞれ設けている。上記入力軸55及び出力軸49は、無段変速装置を収納するケーシング54の内側に、それぞれ転がり軸受により、軸方向に回る変位を阻止した状態で、回転自在に支持している。 【0032】上記トロイダル型無段変速機47は、ダブルキャビティ型のもので、前述の図8〜9で説明したものと同様の構成を有する。即ち、上記トロイダル型無段変速機47は、互いに同心に且つ動力の伝達方向に関して互いに並列に配置した1対ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを、1本の入力軸15a(トロイダル型無段変速機47の入力軸で、無段変速装置全体としての入力軸55と同心に配置されている。)の周囲に配置している。このうちの入力側ディスク2A、2Bは、上記入力軸15aの両端部に、この入力軸15aと同期した回転を自在に支持しており、出力側ディスク4、4はこの入力軸15aの中間部周囲に、互いに同期した、且つこの入力軸15aに対する回転を自在に支持している。 【0033】図示の例では、上記1対の出力側ディスク4、4は、スリーブ35の両端部にスプライン係合させており、このスリーブ35を、上記ケーシング54内に固定した中間壁43に対し、回転自在に支持している。即ち、二重壁状に形成した、この中間壁43に形成した通孔58の内側に上記スリーブ35を、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支承自在なアンギュラ型の玉軸受44、44等の、1対の転がり軸受により、回転のみ自在(軸方向に亙る変位不能)に支持している。又、上記スリーブ35の軸方向中間部で、上記1対の玉軸受44、44の間部分には、第一の動力伝達機構52を構成する出力歯車21aを固設している。 【0034】又、上記各入力側ディスク2A、2Bの内側面2a、2aと上記各出力側ディスク4、4の内側面4a、4aとの間に複数個(通常2〜3個)のパワーローラ8、8を挟持し、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記両内側面2a、4aとを当接させている。これら各パワーローラ8、8は、トラニオン6、6及び変位軸7、7(図8参照。図1〜2には省略。)により、回転自在に支持している。上記トロイダル型無段変速機47は、前述の図8〜9に示したトロイダル型無段変速機と同様に、上記各トラニオン6、6を互いに同期させて揺動させ、上記各パワーローラ8、8を支持している変位軸7、7の傾斜角度を変える事により、上記各入力側ディスク2A、2Bと上記各出力側ディスク4との間の減速比を変える。 【0035】上述の様なトロイダル型無段変速機47の押圧装置であるローディングカム装置9を構成するカム板10は、上記入力軸15aの入力側端部(図1〜2の左端部)に、転がり軸受60により、この入力軸15aに対する回転方向の変位自在に支持している。図示の例では、上記転がり軸受60としてアンギュラ型の玉軸受を使用し、上記ローディングカム装置9の作動に伴って上記カム板10に加わるスラスト荷重を、上記入力軸15aに伝達自在としている。又、このカム板10は、その背面(図1の左面)に形成した突部61、61と、前記入力軸55に固設した駆動腕62、62とを係合させる事により、この入力軸55と同期して回転自在としている。従って、上記ローディングカム装置9側に設けた入力側ディスク2Bは、上記入力軸55の回転に伴い、上記出力側ディスク4に向け押圧されつつ回転する。同時に、反対側の入力側ディスク2Aも、上記出力側ディスク4に向け押圧されつつ回転する。 【0036】又、前記遊星歯車機構50を構成する太陽歯車51は、前記出力軸49の中間部に固設している。従ってこの出力軸49は、この太陽歯車51の回転に伴って回転する。この太陽歯車51の周囲にはリング歯車63を、この太陽歯車51と同心に、且つ回転自在に設けている。そして、このリング歯車63の内周面と上記太陽歯車51の外周面との間に、複数組(通常は3〜4組)の遊星歯車組64、64を設けている。これら各遊星歯車組64、64はそれぞれ、互いに噛合した1対ずつの遊星歯車を組み合わせて成るもので、各組毎に一方の遊星歯車を上記リング歯車63に、他方の遊星歯車を上記太陽歯車51に、それぞれ噛合させている。尚、この様に、1対ずつの遊星歯車から成る遊星歯車組64、64を使用するのは、上記太陽歯車51とリング歯車63との回転方向を一致させる為である。従って、無段変速装置の他の構成要素との関係で、これら両歯車51、63の回転方向を一致させる必要がなければ、これら両歯車51、63に同じ遊星歯車を噛合させても良い。 【0037】上述の様な各遊星歯車組64、64を構成する各遊星歯車は、キャリア65に設けた、上記出力軸49と平行な枢軸66、66により、回転自在に支持している。又、上記キャリア65は、中空円管状の第一の伝達軸67に、この第一の伝達軸67と同心に結合固定している。この第一の伝達軸67は、前記出力軸49の片半部(図1〜2の右半部)に、ニードル軸受等の転がり軸受により回転自在に支持している。この様な第一の伝達軸67の外周面には、前記出力歯車21aと共に前記第一の動力伝達機構52を構成する、伝達歯車68を、スプライン係合等により外嵌固定している。そして、この伝達歯車68と上記出力歯車21aとを、中間歯車69を介して互いに噛合させる事により、前記トロイダル型無段変速機47の出力側ディスク4、4と前記遊星歯車機構50のキャリア65との間で動力の伝達を行なう、上記第一の動力伝達機構52を構成している。従って上記キャリア65は、上記各出力側ディスク4、4の回転に伴って、これら出力側ディスク4、4と同方向に、上記出力歯車21aと伝達歯車68との歯数の比に応じた(例えば半分の)速度で回転する。 【0038】一方、前記入力軸55と上記遊星歯車機構50のリング歯車63とは、第二の動力伝達機構53により、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。この第二の動力伝達機構53は、互いに噛合する駆動歯車70と従動歯車71とにより構成している。即ち、駆動歯車70を、前記発進クラッチ56と前記ローディングカム装置9との間部分で、上記入力軸55の中間部に固定すると共に、従動歯車71を、前記出力軸49の中間部他端寄り部分の周囲に設けている。即ち、この従動歯車71をその外周面に固設した、中空円環状の第二の伝達軸72を上記出力軸49の周囲に、ニードル軸受等の転がり軸受により、この出力軸49に対する回転自在に支持している。図示の例では、上記駆動歯車70の歯数と従動歯車71の歯数とを、互いに等しくして(減速比を1として)いる。従って上記第二の伝達軸72は、上記入力軸55の回転に伴って、この入力軸55と反対方向に、この入力軸55と同速で回転する。 【0039】又、本発明の無段変速装置は、クラッチ機構を備える。このクラッチ機構は、低速用クラッチ73と、高速用クラッチ74と、後退用クラッチ75とから成る。このうちの低速用クラッチ73は、前記第一の伝達軸67と上記出力軸49との間に設けており、接続時には、前記遊星歯車機構50を構成する太陽歯車45とリング歯車46と遊星歯車48、48との相対変位を阻止し、これら太陽歯車45とリング歯車46とを一体的に結合する。又、上記高速用クラッチ74は、上記第二の伝達軸72とリング歯車63との間に設けており、接続時には、これら第二の伝達軸72とリング歯車63とを一体的に結合する。更に、上記後退用クラッチ75は、このリング歯車63と、前記ケーシング54内の固定の部分との間に設けており、接続時にはこのリング歯車63を回転不能に固定する。これら低速用クラッチ73と高速用クラッチ74と後退用クラッチ75とは、何れか1個のクラッチが接続された場合には、他の2個のクラッチの接続が断たれる様に、制御回路(油圧、電気)を構成している。 【0040】更に、図示の例では、上記出力軸49とデファレンシャルギヤ48とを、第二の駆動歯車76と第二の従動歯車77とから成る第三の動力伝達機構78により接続している。従って、上記出力軸49が回転すると、これら第三の動力伝達機構78及びデファレンシャルギヤ48を介して左右1対の駆動軸79、79が回転し、自動車の駆動輪を回転駆動させる。又、前記第一の動力伝達機構52を構成する伝達歯車68と、前記ケーシング54内の固定の部分との間には一方向クラッチ80(図1のみ図示。図2には省略。)を設けている。この一方向クラッチ80は、前記トロイダル型無段変速機47の構成各部材が所定方向にのみ回転し、逆方向に回転するのを防止する役目を有する。 【0041】上述の様に構成する本例の無段変速装置の作用は、次の通りである。先ず、低速走行時には、上記低速用クラッチ73を接続すると共に、上記高速用クラッチ74及び後退用クラッチ75の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチ56を接続し、前記入力軸55を回転させると、トロイダル型無段変速機47のみが、上記入力軸55から出力軸49に動力を伝達する。即ち、低速用クラッチ73の接続に伴って、前記太陽歯車45とキャリア65とリング歯車46とが一体的に結合され、前記遊星歯車機構50を構成する各歯車51、63、64同士の相対回転が不能になる。又、上記高速用クラッチ74及び後退用クラッチ75の接続が断たれる事で、上記キャリア65は、前記第一の伝達軸67の他端部に固定した従動歯車71の回転速度に関係なく、回転自在となる。 【0042】従って、この状態で上記入力軸55を回転させると、この回転は前記ローディングカム装置9を介して前記1対の入力側ディスク2A、2Bに伝わり、更に複数のパワーローラ8、8を介して前記1対の出力側ディスク4、4に伝わる。更に、これら両出力側ディスク4、4の回転は、前記第一の動力伝達機構52を構成する出力歯車21a、中間歯車69、伝達歯車68を介して、キャリア65に伝わる。上述の様にこの状態では、遊星歯車機構50を構成する各歯車51、63、64同士の相対回転が不能になっているので、このうちの太陽歯車51に結合固定した出力軸49が、この太陽歯車51及びキャリア65と同じ速度で回転する。 【0043】この様な低速走行時に、入力側、出力側両ディスク2A、2B、4同士の間の減速比を変える際の作用は、前述の図8〜9に示したダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合と同様である。勿論、この状態では、上記入力軸55と出力軸49との間の減速比、即ち、無段変速装置全体としての減速比は、トロイダル型無段変速機47の減速比に比例する。又、この状態では、このトロイダル型無段変速機47に入力されるトルクは、上記入力軸55に加えられるトルクに等しくなる。尚、低速走行時には、前記第二の動力伝達機構53を構成する駆動歯車70及び従動歯車71は、空回りするだけである。 【0044】この様な低速走行時に入力軸55から出力軸49に、総ての動力を上記トロイダル型無段変速機47を通じて伝達する際の、無段変速装置全体としての伝達効率は、このトロイダル型無段変速機47自体の伝達効率により定まる。本発明の無段変速装置を構成するダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機47は、前記ローディングカム装置9が発生するスラスト荷重を内部で相殺する。即ち、このローディングカム装置9の作動に基づいて前記1対の入力側ディスク2A、2Bのうち、このローディングカム装置9側の入力側ディスク2B及びこの入力側ディスク2Bと対向する出力側ディスク4には、図1〜2で右向きのスラスト荷重が加わる。これに対して、上記ローディングカム装置9と反対側の入力側ディスク2A及びこの入力側ディスク2Aと対向する出力側ディスク4には、図1〜2で左向きで上記右向きのスラスト荷重と同じ大きさのスラスト荷重が加わる。これら両方向のスラスト荷重は、前記入力軸15a及びスリーブ35に伝わった状態で、これら両部材15a、35内で互いに相殺される。この為、これら両部材15a、35を介して入力側、出力側両ディスク2A、2B、4を支承する転がり軸受に大きなスラスト荷重が加わる事がない。この結果、前述の図11(A)(B)からも明らかな通り、これら各転がり軸受の回転トルクが大きくなる事を防止して、上記トロイダル型無段変速機47並びにこのトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の伝達効率を高くできる。 【0045】これに対して、高速走行時には、前記高速用クラッチ74を接続すると共に、前記低速用クラッチ73及び後退用クラッチ75の接続を断つ。この状態で上記入力軸55を回転させると、この入力軸55から前記出力軸49には、前記第二の動力伝達機構53を構成する前記駆動歯車70及び従動歯車71と前記遊星歯車機構50とが、動力を伝達する。 【0046】即ち、上記高速走行時に上記入力軸55が回転すると、この回転は上記第二の動力伝達機構53並びに高速用クラッチ74を介してリング歯車63に伝わり、このリング歯車63を回転させる。そして、このリング歯車63の回転が複数の遊星歯車組64、64を介して太陽歯車51に伝わり、この太陽歯車51を固定した上記出力軸49を回転させる。上記リング歯車63が入力側となった場合に上記遊星歯車機構50は、前記キャリア65が停止している(リング歯車63の内側で回転しない)と仮定すれば、上記リング歯車63と太陽歯車51との歯数の比に応じた減速比(1未満の値)で、このリング歯車63と太陽歯車51との間で動力を伝達する。但し、上記キャリア65は上記リング歯車63の内側で回転し、無段変速装置全体としての減速比は、このキャリア65の回転速度に応じて変化する。そこで、上記トロイダル型無段変速機47の減速比を変えて、上記キャリア65の回転速度を変えれば、上記無段変速装置全体としての減速比を調節できる。 【0047】即ち、図示の例では、上記高速走行時に上記キャリア65が、上記リング歯車63及び太陽歯車51と同方向に回転する。従って、上記キャリア65の回転速度が遅い程、上記太陽歯車51を固設した出力軸49の回転速度が速くなる。例えば、上記トロイダル型無段変速機47を最大増速状態とし、上記リング歯車63の回転速度とキャリア65の回転速度(何れも角速度)が同じになれば、上記リング歯車63と出力軸49との回転速度が同じになる。これに対して、上記キャリア65の回転速度がリング歯車63の回転速度よりも遅ければ、このリング歯車63の回転速度よりも出力軸49の回転速度が速くなる。 【0048】従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機47の減速比を大きくする(減速側に変化させる)程、無段変速装置全体の減速比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機47に、前記各入力側ディスク2A、2Bからではなく、前記各出力側ディスク4、4からトルクが加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、本発明の無段変速装置の場合には、前記第二の動力伝達機構53を構成する駆動歯車70が、動力の伝達方向に関して、前記ローディングカム装置9よりも上流側(エンジン45側)に存在する。従って、前記高速用クラッチ74を接続した状態では、上記エンジン45から入力軸55に伝達されたトルクは、上記ローディングカム装置9が上記入力側ディスク2Aを押圧する以前に、前記第二の動力伝達機構53を介して前記遊星歯車機構50のリング歯車63に伝達される。従って、入力軸55の側から上記ローディングカム装置9を介して上記各入力側ディスク2A、2Bに伝達されるトルクは殆どなくなる。 【0049】一方、上記第二の動力伝達機構53を介して前記遊星歯車機構50のリング歯車63に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車組64、64から、キャリア65及び第一の動力伝達機構52を介して、上記各出力側ディスク4、4に伝わる。この様に出力側ディスク4、4からトロイダル型無段変速機47に加わるトルクは、無段変速装置全体の減速比を小さくすべく(増速側に変化させるべく)、トロイダル型無段変速機47の減速比を大きくする程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機47に入力されるトルクを小さくして、このトロイダル型無段変速機47の構成部品の耐久性向上を図れる。 【0050】この様に、本発明の無段変速装置は、上記トロイダル型無段変速機47と上記遊星歯車機構50とを組み合わせて、パワー・スプリット型の無段変速装置を構成している為、上記トロイダル型無段変速機47を通過するトルクを小さく抑える事ができる。この為、このトロイダル型無段変速機47を構成する前記入力側、出力側両ディスク2A、2B、4及びパワーローラ8、8等、上記トルクを伝達する為の部材に加わる荷重を小さく抑えて、これら各部材の耐久性を十分に確保できる。即ち、前述の図12(A)(B)から明らかな通り、上記トロイダル型無段変速機47を通過するトルクを小さく抑える事ができる。従って、前記ローディングカム装置9が発生するスラスト荷重が小さくなる為、上記各ディスク2A、2B、4の内側面2a、4aと上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの当接部の面圧を低く抑えて、これら各面2a、4a、8aの転がり疲れ寿命を十分に確保できる。この結果、低速走行時にも前記エンジン45の出力を調整する(低くする)等の面倒な制御を行なう事なく、上記トロイダル型無段変速機47の耐久性確保を図れる。 【0051】又、前述の説明から明らかな通り、無段変速装置全体としての減速比は、低速走行時にはトロイダル型無段変速機47の減速比に応じて(比例して)変化する。又、高速走行時にはトロイダル型無段変速機47の減速比とは逆に(反比例して)変化する。従って、自動車が停止状態から次第に速度を上げる事を考えた場合、上記トロイダル型無段変速機47の減速比は、前記低速用クラッチ73を接続しての低速走行時には次第に小さくなり(増速状態に変化し)、前記高速用クラッチ74を接続しての高速走行時には次第に大きくなる(減速状態に変化する)。低速走行時と高速走行時との切り換え時に上記トロイダル型無段変速機47の減速比は、最も小さく(最増速状態に)なっている。本発明の無段変速装置の場合には、前記第一の動力伝達機構52の減速比α(例えば2程度)と、前記第二の動力伝達機構53の減速比β(例えば1程度)との比β/αを、上記トロイダル型無段変速機47の最大増速時の減速比iH (例えば0.5程度)とほぼ同じとしている為、上記低速走行時と高速走行時との切り換え時に、無段変速装置全体としての減速比が急に変化する事を防止して、円滑な切り換え状態を実現できる。 【0052】更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸49を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ73、74の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ75を接続し、上記リング歯車63を固定する。この結果、トロイダル型無段変速機47を介して回転駆動されるキャリア65の回転に基づく、上記各遊星歯車組64、64を構成する各遊星歯車の公転及び自転に伴って、前記太陽歯車51及びこの太陽歯車51を固設した出力軸49が、前述した高速走行時並びに上述した低速走行時とは逆方向に回転する。 【0053】次に、図3は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、無段変速装置を収納する為のケーシング54aを、1対の分割ユニット81a、81b同士をボルト82、82により結合固定する事により構成している。そして、第一の動力伝達機構52を構成する出力歯車21aを固設したスリーブ35を、上記両分割ユニット81a、81b同士の突き合わせ部に於いて、上記ケーシング54aに対し、玉軸受44、44等の、1対の転がり軸受により回転自在に支持している。 【0054】上述の様な構成を採用する事により本例の場合には、中間壁43を介してケーシング54(図1)にスリーブ35を支持する第1例の場合に比べて、スリーブ35の支持剛性を高くできる。この結果、このスリーブ35に固設した出力歯車21aの変位を抑え、この出力歯車21aと中間歯車69(図2)との噛合状態を良好にして、これら両歯車21a、69の耐久性を向上させると共に、これら両歯車21a、69同士の噛合部で発生する騒音の低減を図れる。又、ケーシング54の奥部に中間壁43を挿入し、更にボルトにより固定すると言った、面倒な組立作業が不要になり、無段変速装置全体としての組立作業が容易になる。その他の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。 【0055】 【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、優れた伝達効率及び耐久性を有し、しかも小型且つ軽量に構成できる無段変速装置を実現して、例えば前置エンジン前輪駆動車(FF車)用の優れた自動変速機を提供できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004204 【氏名又は名称】日本精工株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年10月21日(1998.10.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100087457 【弁理士】 【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−120822(P2000−120822A) |
| 【公開日】 |
平成12年4月28日(2000.4.28) |
| 【出願番号】 |
特願平10−299498 |
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