| 【発明の名称】 |
多段ローラ変速機および遊星ローラ式動力伝達装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】川瀬 達夫
【氏名】牧野 智昭
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| 【要約】 |
【課題】各接触部における接触面圧のばらつきを少なくし、さらに各接触部での潤滑機能の安定化を図る。
【解決手段】サンローラ1、アウターリング2、および多段ローラ3a、3bを有する多段ローラ変速機において、アウターリング2の内周面の軸方向端部に環状の除肉部4を設ける。これにより、ローラ3aとの接触部Xにおける軸方向の幅寸法が減少するので、接触部Xでの接触面圧を増大させることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 サンローラと、サンローラの外周側に同心配置されたアウターリングと、サンローラとアウターリングの間に設けられ、周方向で等間隔に配されたローラ群を半径方向に多段に配置してなる多段ローラとを有し、サンローラ、各段ローラおよびアウターリングを相互に圧接させ、かつ多段ローラのうち、少なくとも何れかの段の各ローラに、異なる回転半径を有する複数の外周面を持たせた摩擦式の多段ローラ変速機において、ローラと接触するアウターリング内周面の一部領域に、周方向に連続する除肉部を設けたことを特徴とする多段ローラ変速機。 【請求項2】 除肉部が溝状である請求項1記載の多段ローラ変速機。【請求項3】 除肉部が、軸方向の端部に設けられた切欠きである請求項1記載の多段ローラ変速機。 【請求項4】 除肉部に含油部材を配置した請求項1記載の多段ローラ変速機。 【請求項5】 ローラとの接触時に形成される、除肉部の軸方向の開口部を封口した請求項1または4記載の多段ローラ変速機。 【請求項6】 開口部が、ローラの軸方向移動を規制するための側板で封口されている請求項5記載の多段ローラ変速機。 【請求項7】 開口部が、アウターリングの内周面を内径側に延設してなる鍔部で封口されている請求項5記載の多段ローラ変速機。【請求項8】 除肉部の底面が円筒面若しくは円錐面である請求項1乃至7何れか記載の多段ローラ変速機。 【請求項9】 サンローラと、サンローラの外周側に同心配置されたアウターリングと、サンローラとアウターリングの間に設けられ、周方向で等間隔に配された遊星ローラとを有し、サンローラ、遊星ローラおよびアウターリングを相互に圧接させた遊星ローラ装置において、アウターリングと遊星ローラとの接触面圧を、サンローラとローラとの接触面圧とほぼ同程度にしたことを特徴とする遊星ローラ式動力伝達装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、サンローラとアウターリングとの間に多段ローラを配置した多段ローラ変速機、および、サンロ−ラとアウタ−リングとの間に遊星ロ−ラを配置した遊星ロ−ラ式動力伝達装置に関する。 【0002】 【従来の技術】歯車による動力伝達では、歯の噛み合いに起因する振動・騒音が生じやすい。これに対して、トラクションドライブでは転がりまたは滑り接触する滑らかな回転体間に形成される油膜を介して動力が伝達されるため、歯車よりも低振動・低騒音であるという特徴を有する。 【0003】一定の変速比を持つトラクションドライブの代表的なものに、図22に示すような遊星ローラ式動力伝達装置がある。これは、遊星歯車を構成する各歯車をローラまたはリング状部材に置き換えたもので、軸心を一致させて配置されたサンローラ31およびアウターリング32と、このサンローラ31とアウターリング32の間の空間に配置される複数の遊星ローラ33と、この遊星ローラ33を円周方向に等間隔かつ回転自在に保持するキャリア34とで構成される。この装置においては、例えば、リング32の円周方向の回転を規制することで、サンローラ31とキャリア34間での動力伝達が行われる。この遊星ローラ式動力伝達装置では、変速比を10以上にすることも可能であるが、サンローラ31と遊星ローラ33の接触面圧と、アウターリング32と遊星ローラ33の接触面圧のバランスから、変速比としては3〜6が適当である。 【0004】さらに大きな変速比がとれる動力伝達装置として、摩擦式多段ローラ変速機がある。これは図24及び図25に示すように、軸心が一致するように配置されたサンローラ1およびアウタ−リング2と、サンローラ1とアウターリング2の間に形成される空間に配置された多段ローラ3とで構成される。多段ローラ3は、周方向で等間隔に配されたローラ群を半径方向に多段に配置してなり、各段のローラ群におけるローラの個数は3個以上とされる。そして、何れかのローラ群の各ローラに、異なる回転半径を有する複数の外周面(転走面)を持たせることで、遊星ローラ式動力伝達装置よりも大きな変速比を達成することができる。 【0005】図24は、多段ローラ3として2段のローラ群(第1ローラ3aおよび第2ローラ3b)を配置し、第1ローラ3aにのみ2種類の回転半径を有する転走面を与えた例である。第1ローラ3aおよび第2ローラ3bのサンローラ1周りの回転(公転)が規制される場合、変速比eは、e=(RO R1L)/(RS R1S)で示される。 【0006】一方、第1ローラ3aおよび第2ローラ3bのサンローラ1周りの回転(公転)を規制する代わりにアウターリング2の回転を規制する場合には、変速比eは、e=(RO R1L)/(RS R1S)−1で示される図25は、多段ローラ3として3段のローラ群(第1ローラ3a、第2ローラ3b、および第3ローラ3c)を配置し、そのうち第1および第2ローラ3a、3bに2種類の回転半径を有する転走面を与えた例である。各ローラ3a〜3cのサンローラ1周りの回転(公転)が規制される場合、変速比eは、e=(RO R1LR2L)/(RS R1SR2S)で示される。 【0007】各ローラ3a〜3cのサンローラ1周りの回転(公転)を規制する代わりに、アウターリング2の回転を規制する場合には、変速比eは、e=(RO R1LR2L)/(RS R1SR2S)+1となる。 【0008】このように半径方向に多段化させることで軸方向のサイズが大きくなることを避けつつ大きな減速比を得ることができる。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】図24および図25に示す摩擦式多段ローラ変速機では、サンローラ1とアウターリング2の転走面間に各段ローラを圧接状態で配置することで、動力伝達に必要な法線力を各接触部、すなわちサンローラ1と第1ローラ3aの接触部X、第1ローラ3aと第2ローラ3bの接触部Y、および第2ローラ3bとアウターリング2の接触部Zにそれぞれ生じさせる(図26(a)参照)。図26(b)に示すように、サンローラ1と第1ローラ3aは軸方向に離隔した2箇所で接触しているが、それらの転走面の幅をそれぞれLX1、LX2とし、接触部YとZの転走面の幅をそれぞれLY 、LZ とすると、通常、各接触部X、Y、Zの軸方向幅はほぼ等しく設定される[(LX1+LX2)≒LY ≒LZ ]。この場合の各接触部での接触面圧は図21に示す通りで、主に曲率半径の違いのため、各接触部X、Y、Zの接触面圧には差が生じる。特に接触部X、Y、Zの幅が等しい場合、接触面圧の差が大きく、接触部Zの接触面圧は接触部Yの面圧に比べてかなり小さい。 【0010】油の粘度は圧力の増加とともに指数関数的に増加することが知られている。トラクションドライブにおける接触部は点接触や線接触のような集中接触が一般的であり、その高い接触面圧のために、接触部における油の粘度は非常に大きくなる。このような状態での油膜の大きなせん断抵抗によってトラクションドライブは動力を伝達する。図23に示すように、トラクション係数は圧力依存性を有し、1GPa以下のような比較的低い面圧の範囲では、接触面圧の増加と共にトラクション係数は増加する特性を示す。すなわち、図21に示すように、接触部3の面圧が低い場合、十分なトラクション係数が得られず、動力伝達性能は低下する。接触部Zで十分なトラクション係数が得られるように大きなしめ代で上記摩擦式多段ローラ変速機を組立てると、今度は接触部Xおよび接触部Yの面圧が過大となり、装置の寿命は大きく低下する。 【0011】さらに、摩擦式多段ローラ変速機を長時間にわたって安定して運転させるためには、各接触部において十分な油膜が形成されるように潤滑油を安定して供給することが必要である。潤滑方式として、油浴潤滑、または圧送された潤滑油を供給する強制潤滑を採用する場合は、十分な潤滑油を各接触部に供給できるが、シール機構の付加等により装置の大型化およびコストの増大を招く。装置の小型化および製作コストの低減のためには、潤滑方式をグリース潤滑にすることが望ましい。しかしながら、グリース潤滑の場合、運転に伴い転走面からグリースが排除され、潤滑油不足となりやすい。摩擦式多段ローラ変速機では、面圧を低下させて転がり疲労寿命を向上させるために、各接触部は全て線接触させている。このように、各接触部における接触形態が線接触である場合は、運転に伴う転走面からのグリースの排除が点接触の場合よりも著しく、潤滑油不足にいたりやすい。 【0012】そこで、本発明は各接触部における接触面圧のばらつきを少なくし、さらに各接触部での潤滑機能の安定化を図ることを目的とする。 【0013】 【課題を解決するための手段】上記目的の達成のため、本発明では、サンローラと、サンローラの外周側に同心配置されたアウターリングと、サンローラとアウターリングの間に設けられ、周方向で等間隔に配されたローラ群を半径方向に多段に配置してなる多段ローラとを有し、サンローラ、各段ローラおよびアウターリングを相互に圧接させ、かつ多段ローラのうち、少なくとも何れかの段の各ローラに、異なる回転半径を有する複数の外周面を持たせた摩擦式の多段ローラ変速機において、ローラと接触するアウターリング内周面の一部領域に、周方向に連続する除肉部を設けた。 【0014】このように接触面圧が最も小さいアウターリングの内周面に除肉部を形成すれば、ローラとの接触部における軸方向の幅寸法が減少するため、接触部での接触面圧を増大させることができる。従って、他の接触部における接触面圧との差を小さくすることができ、トラクション係数の増大による動力伝達性能の改善が達成される。また、この除肉部は、潤滑剤を保留する油溜りとしても機能するので、接触部に安定して潤滑剤を供給することが可能となる。 【0015】上記除肉部は、例えば溝状に形成したり、あるいは接触面の軸方向の端部を切欠くことによって形成される。除肉部は環状に形成する他、周方向で部分的に形成する(円弧状に形成する)こともできる。 【0016】除肉部に含油部材を配置すれば、接触部にさらに潤沢な油を供給することができ、潤滑性の向上が図られる。 【0017】ローラとの接触時に形成される、除肉部の軸方向の開口部を封口しておけば、除肉部が密閉空間となるため、除肉部に潤滑剤を閉じ込めることができる。また、除肉部に含油部材を配置した場合には、その脱落が防止される。封口は、ローラの軸方向移動を規制するための側板や、アウターリングの内周面を内径側に延設してなる鍔部で行うことができる。 【0018】除肉部の底面は、円筒面とする他、円錐面とすることもできる。 【0019】以上と同様の観点から、サンローラと、サンローラの外周側に同心配置されたアウターリングと、サンローラとアウターリングの間に設けられ、周方向で等間隔に配された遊星ローラとを有し、サンローラ、遊星ローラおよびアウターリングを相互に圧接させた遊星ローラ装置において、アウターリングと遊星ローラとの接触面圧を、サンローラとローラとの接触面圧とほぼ同程度にすることもできる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図1乃至図20に基いて説明する。 【0021】図1(a)(b)は本発明にかかる多段ローラ式変速機の一実施形態を示すものである。図示のように、この多段ローラ式変速機は、サンローラ1、サンローラ1の外周側にこれと同心配置されたアウターリング2、サンローラ1の外周面とアウターリング2の内周面間に、円周等間隔に配されたローラ群を径方向に亘って多段に圧接配置した多段ローラ3、を主要な構成要素として構成される。多段ローラ3は複数段に配置されていれば足り、その段数は問わないが(図24の2段、図25の3段、あるいはそれ以上の段数でもよい)、本実施形態では、第1ローラ3aと第2ローラ3bとで2段に構成した場合を例示する。各段のローラ群の個数も問わないが、3個以上が望ましく、本実施形態では、各段のローラ3a、3bをそれぞれ4個ずつ配置した場合を例示する。 【0022】第1ローラ3aは2つの回転半径を持つ軸方向断面H型に形成される。第1ローラ3aの外周面のうち、大径側の外周面がサンローラ1に、小径側の外周面が第2ローラ3bにそれぞれ圧接している。第2ローラ3bは、アウターリング2の両端面にボルト止めした一対の側板8によって軸方向両側から挾持され、軸方向の移動が規制されている。また、第2ローラ3bは、第1ローラ3aの大径部間の凹部に嵌合されており、これにより両ローラ3a、3bは互いに相手側のローラの軸方向移動を規制し合う構造になっている。サンローラ1と第1ローラ3aとの接触部Xは軸方向に離隔した2箇所にあり、これら2つの接触部の軸方向幅をLX1、LX2とし、かつ第1ローラ3aと第2ローラ3bとの接触部Y、およびアウターリング2と第2ローラ3bの接触部Zの軸方向幅をそれぞれLY 、LZ とすると、(LX1+LX2)≒LY >LZ の関係が成り立つ。 【0023】摩擦式多段ローラ変速機の全体構造図を図2に示す。サンローラ1は、2個の軸受5で一方のハウジング6に回転自在に支持された高速回転軸7の一端に装着される。ハウジング6には第2ローラ3bの個数分の第2ローラ支持軸9が植設されており、第2ローラ3bが軸受10を介して第2ローラ支持軸9に支持されることで第2ローラ3b、さらには第1ローラ3aの高速軸7まわりの回転(公転)が規制される。他方のハウジング12には低速回転軸13が2個の軸受14を介して回転自在に支持されており、高速軸7と低速軸13が同軸に配置されるよう、ハウジング6とハウジング12はボルト15等によって結合される。図2では、アウターリング2と低速軸13は別部材(アウターリングホルダ16)によって結合されているが、低速軸13とアウターリング2を一体に成形して低速軸13の一端内周面を第2ローラ3bの外周面に接触させてもよい。 【0024】第1ローラ3aおよび第2ローラ3bのサンローラ1まわり回転(公転)を規制する代わりに、アウターリング2の回転を規制する場合の全体構造図を図3に示す。図2と同様に、アウターリング2とサンローラ1の間に、それぞれ4個の第1ローラ3aと第2ローラ3bがそれぞれ円周等間隔に圧接状態で配置される。アウターリング2は、高速軸7と同軸になるようにハウジング6にボルト17で固定される。また、低速軸13の軸端大径部には第2ローラ3bの個数分だけ第2ローラ支持軸9が植設されており、第2ローラ3bは軸受10を介して第2ローラ支持軸9に回転自在に支持される。 【0025】本発明においては、図1乃至図3に示すように、第2ローラ3bと接触するアウターリング2の内周面に、その一部領域を肉取りして周方向に連続する除肉部4が形成される。図4は除肉部4の一例で、アウターリング2の内周面の軸方向両端に環状の切欠き4aを設けたものである。アウターリング2の軸方向中央側は、第2ローラ3bの外周面と転がり滑り接触する転走面2aとなる。除肉部4は、環状に設ける他、周方向の一部分に設けて円弧状に形成してもよい。また、この除肉部4は、各ローラ3a、3bがサンローラ1回りの回転(公転)を規制されるか否かにかかわらず適用することができる。 【0026】除肉部4を設けることにより、アウターリング2と第2ローラ3bとの接触部Zの幅LZ が第1ローラ3aと第2ローラ3bとの接触部Yの幅LY よりも小さくなる(LZ <LY )。その結果、図20に示すように、接触部Zの接触面圧を増大させて接触部の違いによる接触面圧の差を小さくすることができ、装置の動力伝達性能を上げることができる。なお、このように接触部Zの接触面圧を増大させた場合、接触部Zでの疲労寿命の低下が懸念されるが、集中接触による応力の繰り返しを最も多く受けるのは接触部Xを有するサンローラ1であり、また、図20に示すように最も面圧が高いのは接触部Yであるから、接触部Zの面圧を上昇させても、変速機全体での疲労寿命は大きく低下しない。したがって、接触部Zでの幅LZ は、その接触面圧が接触部XやYでの接触面圧以下(両接触面圧のうち最も低い面圧以下)となる範囲で、当該接触面圧に対応させた軸方向幅に設定するのが望ましい。 【0027】また、アウターリング2の内周面に形成された除肉部4は、変速機内部に封入された潤滑剤(潤滑油または潤滑グリース)を一時停留させる油溜りとしても機能するので、接触部Zに安定して潤滑剤を供給することができる。接触部Zに供給された潤滑剤は、第2ローラ3bに付着することによって接触部Yに安定供給され、さらに第1ローラ3aに付着することによって接触部Xに安定供給される。また、除肉部4は、第2ローラ3bとの接触時には軸方向に開口部を有するが、この開口部は図5に示すように側板8によって封口されるため、除肉部4に溜まった油は漏れることなく接触部Zに安定供給される。 【0028】図6(a)(b)は、除肉部4を、アウターリング2内周面の軸方向端部よりも中央側に溝4bとして形成したものである。(a)図は溝4bを2つ並設した場合、(b)図は1つの溝4bを設けた場合を示す。これらの溝4bは、第2ローラ3bがアウターリング2に接触することで完全に密閉された空間となり、そのために溝4bに溜まった油は漏れることなく接触部Zに安定供給される。 【0029】図7は、アウターリング2内周面の軸方向端部よりも中央側に除肉部4として2つの溝4b並設し、さらに軸方向端部側の内周面を中央側の内周面よりも大径に形成することにより(D1 <D2 )、各溝4bの軸方向中央側の内周面のみを上記転走面2aとしたものである。この場合、図8に示すように、第2ローラ3bとの接触時には、第2ローラ3bの外周面および側板8が溝4bを密閉するので、溝4bでの潤滑剤の保持能力を高めることができる。 【0030】図9に示すように、除肉部4は側板8で封口する他(図面右側)、アウターリング2の一端内径部を内径側に延設して形成された鍔部2bで封口してもよい。この鍔部2bも側板8と同様に第2ローラ3bの軸方向移動を規制する役割を果たす。 【0031】除肉部4の底面は上記のように円筒面とする他、円錐面としてもよい。図10(a)はアウターリング2の軸方向両端に設けた切欠き4aの底面を円錐面とした例である。この場合も図10(b)に示すように切欠き4aを側板8で封口することにより(鍔部2bで封口してもよい)、切欠き4aを密閉空間とすることができる。 【0032】上述の各除肉部4には、内部に保持した油を徐々に滲出す含油部材18を配置してもよい。図11(a)(b)はその一例で、(a)図は2つの切欠き4aに含油部材18を配置した例、(b)図は溝4bに含油部材18を配置した例である。油含油部材18としては、■焼結材より成形した多孔質部材に潤滑油を含浸させたもの、■ポリエチレンなどの発泡性樹脂を多孔質に成形し、これに潤滑油を含浸させたもの、あるいは■ポリエチレンなどの樹脂と潤滑油の混合物を加熱・冷却により固形化したもの、等が使用可能である。何れの含油部材であっても滲み出した油が接触部に供給されるため、さらなる潤滑性の向上が達成される。油含油部材18の断面形状は、除肉部4に収容可能な形状・寸法であれば足り、また、その長さ方向は、環状とする他、円周方向の一部領域のみに配置されるような紐状であってもよい。 【0033】なお、以上の構成は、図22に示す遊星ローラ式動力伝達装置にも同様に適用することができる。すなわち、アウターリング32の内周面の一部領域に周方向に連続する除肉部を設け、アウターリング32と遊星ローラ33の接触面圧をサンローラ31と遊星ローラ33との接触面圧とほぼ同程度に設定するのである。除肉部の態様としては、図4乃至図11に示す何れの構成も適用することができる。 【0034】上記の多段ローラ変速機を増速機として使用する場合、ローラ変速機の高速軸7および低速軸13は、それぞれ負荷側の回転軸と原動機の回転軸に連結される。また、減速機として使用する場合、高速軸7および低速軸13は逆に原動機の回転軸と負荷側の回転軸にそれぞれ連結される。これらの連結方式としてセレーションやカップリングを使用する場合は、その着脱が容易でなく、また、高速軸7および低速軸13にセレーションまたはキー溝を設けるため、加工工数が増加する。また、スプラインによる連結方式を採用する場合、上記セレーション等に比べて着脱は容易であるが、やはり軸にスプラインを設けるため加工工数が増加する。 【0035】これを解決するためには、上記変速機の入力部材または出力部材に中空円筒部を形成し、その中空円筒部にローラ式一方向クラッチを挿入するとともに、ローラクラッチの内周部に原動側の回転軸、若しくは負荷側の回転軸を挿入する構造とするのがよい。また、原動機の回転軸もしくは負荷側の回転軸に中空円筒部を形成し、その中空円筒部にローラ式一方向クラッチを挿入し、ローラクラッチの内周部に上記変速機の入力部材もしくは出力部材の軸部を挿入してもよい。上記入力部材は、高速側若しくは低速側の回転軸の何れでもよく、出力部材はこれとは反対側(低速側若しくは高速側)の回転軸とする。 【0036】以上の構成から、常に一方向の回転によって原動機から動力が伝達される場合においては、セレーションやカップリング等による連結方式に比べ、容易に軸の着脱が行えるようになる。また、連結部にはセレーションやキー溝を設ける必要がなく、加工コストを低減できる。 【0037】図12乃至図17は上記ローラ式一方向クラッチ20を用いた実施形態で、このうち図12〜図16は第1ローラ3aおよび第2ローラ3bのサンローラ1回りの回転(公転)が規制される場合の実施形態で、図17はアウターリング2の回転(自転)が規制される場合の実施形態である。 【0038】図12は低速側の入出力部材となるアウターリングホルダ16、およびローラ式一方向クラッチ20を介して、アウターリング2と原動側回転軸若しくは負荷側回転軸21との間で回転を伝達させる場合を示している。同図では、アウターリング2とアウターリングホルダ16はボルト22とナット23で結合されているが、両部材を圧入によって結合しても良い。アウターリングホルダ16は中空円筒部24を有し、この中空円筒部24にローラ式一方向クラッチ20が挿入され、さらにこのローラ式一方向クラッチ20の内周中空部に原動側もしくは負荷側の回転軸21が挿入される。 【0039】図13は、アウターリング2とアウターリングホルダ16を一体に成形した実施形態を例示している。アウターリング2にはローラ式一方向クラッチ20を挿入するための中空円筒部24が成形され、このローラ式一方向クラッチ20を介してアウターリング2の回転が原動側もしくは負荷側の回転軸21に伝達される。 【0040】図14は、原動側もしくは負荷側の回転軸21に中空円筒部24が形成され、中空円筒部24にローラ式一方向クラッチ20が挿入され、さらにローラ式一方向クラッチ20の内周部にアウターリングホルダ16の軸部16a(低速軸13)が挿入されたものである。 【0041】図15と図16は、ローラ式一方向クラッチ20を介して高速軸7と原動側もしくは負荷側の回転軸21との間で回転を伝達させる場合の実施形態を示している。図15では、その一端がサンローラである高速軸7にローラ式一方向クラッチ20を挿入するための中空円筒部24が成形され、その一方向クラッチ20の内周部に原動側もしくは負荷側の回転軸21が挿入される。これに対し、図16では、原動側もしくは負荷側の回転軸21にローラ式一方向クラッチ20を挿入するための中空円筒部24が形成され、その一方向クラッチ20の内周部に一端がサンローラ1である高速軸7が挿入される。 【0042】図17は、アウターリング2の回転が規制される場合の実施形態で、低速側の入出力部材である第2ローラキャリア25に第2ローラ3bの個数だけの第2ローラ支持軸9が植設される。さらに、第2ローラキャリア25には、ローラ式一方向クラッチ20を挿入するための中空円筒部24が成形され、その一方向クラッチ20の内周部に原動側もしくは負荷側の回転軸21が挿入される。 【0043】図18および図19に、中空円筒部24に収容されたローラ式一方向クラッチ20を示す。このローラ式一方向クラッチ20はそのクラッチ機能を有するローラ20aの軸方向両側にラジアル荷重を負荷する軸受20bを備えていることを特徴とする。図18はその軸受20bが針状ころ軸受である場合、図13は含油軸受等の滑り軸受である場合を示している。 【0044】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、接触面圧が最も小さいアウターリングの内周面に周方向の除肉部を形成しているので、ローラとの接触部における軸方向の幅寸法が減り、当該接触部での接触面圧を増大させることができる。従って、他の接触部における接触面圧との差を小さくすることができ、トラクション係数の増大による動力伝達性能の改善が達成される。また、大きな締め代を付加する場合のように、他の接触部での接触面圧が過大となって装置寿命を低下させることもない。 【0045】除肉部に含油部材を配置すれば、接触部にさらに潤沢な油を供給することができ、さらなる潤滑性の向上が図られる。 【0046】ローラとの接触時に形成される、除肉部の軸方向の開口部を封口しておけば、除肉部が密閉空間となるので、潤滑剤を除肉部に閉じ込めることができ、潤滑剤の安定供給に優れた効果が発揮される。また、除肉部に含油部材を配置した場合には、その脱落を防止することもできる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000102692 【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年10月14日(1998.10.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064584 【弁理士】 【氏名又は名称】江原 省吾 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−120820(P2000−120820A) |
| 【公開日】 |
平成12年4月28日(2000.4.28) |
| 【出願番号】 |
特願平10−292541 |
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