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【発明の名称】 自動変速機
【発明者】 【氏名】糟谷 悟

【氏名】塚本 一雅

【氏名】早渕 正宏

【要約】 【課題】6速を達成するギヤトレインの自動変速機において、クラッチ油圧サーボへの供給油路を短縮し、クラッチ作動レスポンスを向上させる。

【解決手段】自動変速機は、変速機ケース10、入力軸11、出力軸19、4つの変速要素S2,S3,C2(C3),R3を有するプラネタリギヤセットG、減速プラネタリギヤG1、2つのブレーキB−1,B−2、3つのクラッチC−1,C−2,C−3を有する変速機構を備える。変速機ケースの前端壁部側に円筒ボス部10aを設け、内部にセンタサポート10Sを設ける。センタサポートの前方円筒状部10cに減速プラネタリギヤを配置し、円筒ボス部の外周上に1つのクラッチC−2の油圧サーボ40を配置し、センタサポートの後方円筒状部10dの外周上に他の2つのクラッチC−1,C−3の油圧サーボ30,50を配置し、変速機ケースの円筒ボス部内と、センタサポートの後方円筒状部内に、それぞれ各クラッチの油圧サーボへの油圧供給油路L1〜L3を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速機ケースと、入力軸と、出力軸と、少なくとも4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、減速プラネタリギヤと、少なくとも2つの係止手段と、3つのクラッチとを備える自動変速機であって、プラネタリギヤセットは、その第1の変速要素が第1のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結され、第2の変速要素が第3のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結されるとともに、第1の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第3の変速要素が第2のクラッチにより入力軸に連結されるとともに、第2の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第4の変速要素が出力軸に連結されたものにおいて、前記変速機ケースは、その前端に前端壁部を有するとともに、前端壁部から変速機の内方に向かって延在する円筒ボス部を有し、変速機ケースの内部に、該変速機ケースに連結された円環板状部と、円環板状部の内周側部から軸方向前方に延在する前方円筒状部と、軸方向後方に延在する後方円筒状部を有するセンタサポートが配置され、該センタサポートの前方円筒状部に減速プラネタリギヤが配置され、該減速プラネタリギヤの前方に位置する円筒ボス部の外周上に第2のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの後方に位置する後方円筒状部の外周上に第1及び第3のクラッチの油圧サーボが配置され、変速機ケースの前端壁部から円筒ボス部にかけて第2のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から後方円筒状部にかけて第1及び第3のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成されたことを特徴とする自動変速機。
【請求項2】 変速機ケースと、入力軸と、出力軸と、少なくとも4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、減速プラネタリギヤと、少なくとも2つの係止手段と、3つのクラッチとを備える自動変速機であって、プラネタリギヤセットは、その第1の変速要素が第1のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結され、第2の変速要素が第3のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結されるとともに、第1の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第3の変速要素が第2のクラッチにより入力軸に連結されるとともに、第2の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第4の変速要素が出力軸に連結されたものにおいて、前記変速機ケースは、その前端に前端壁部を有するとともに、前端壁部から変速機の内方に向かって延在する円筒ボス部を有し、変速機ケースの内部に、該変速機ケースに連結された円環板状部と、円環板状部の内周側部から軸方向前方に延在する前方円筒状部と、軸方向後方に延在する後方円筒状部を有するセンタサポートが配置され、該センタサポートの前方円筒状部に減速プラネタリギヤが配置され、該減速プラネタリギヤの前方に位置する円筒ボス部の外周上に第2のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの前方に位置する前方円筒状部の外周上に第1のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの後方に位置する後方円筒状部の外周上に第3のクラッチの油圧サーボが配置され、変速機ケースの前端壁部から円筒ボス部にかけて第2のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から前方円筒状部にかけて第1のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から後方円筒状部にかけて第3のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成されたことを特徴とする自動変速機。
【請求項3】 前記入力軸は、第2のクラッチの油圧サーボを内包するドラムを介して減速プラネタリギヤの入力要素に連結され、減速プラネタリギヤの反力要素は、前方円筒状部の外周上に固定され、出力要素は、第1のクラッチの油圧サーボを内包するドラムに連結され、第1のクラッチのドラムは、減速プラネタリギヤの出力をセンタサポートの前方から内周を通して後方に導く連結部材を介してセンタサポートの内周側に回転自在に支持され、第2のクラッチのドラムは、入力軸を介して円筒ボス部の内周側に支持され、第3のクラッチのドラムは、センタサポートの外周上に回転自在に支持され、第1〜第3のクラッチの各ドラムと、円筒ボス部及び前方円筒状部並びに後方円筒状部との相対回転部に、各油圧供給油路を漏れ止めする一対ずつのシールリングが配設された、請求項1又は2記載の自動変速機。
【請求項4】 前記第1の係止手段は、ワンウェイクラッチと、該ワンウェイクラッチに対して直列に配置されたブレーキを包含し、ワンウェイクラッチは、第3のクラッチの油圧サーボを内包するドラムに連結支持され、ブレーキの油圧サーボは、センタサポートの円環板状部に内包された、請求項3記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機に関し、特に、そのギヤトレインの各クラッチへサーボ油圧を供給する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジン等を動力源とする駆動のために用いられる自動変速機には、負荷に応じた効率の良い動力伝達により省エネルギを図る上で、多段化の要求があり、こうした要求から、例えば、乗用車用自動変速機の変速機構は、従来の前進4速のものから5速のものへと移行しつつある。こうしたなかで、限られた搭載スペース内で更なる多段化を実現するには、ギヤトレインの一層の小要素化、機構の簡素化が必要となる。そこで、最小限の変速要素からなるプラネタリギヤセットを用い、それを操作する3つのクラッチと2つのブレーキとで、前進6速・後進1速を達成するギヤトレインが特開平4−219553号公報において提案されている。この提案に係るギヤトレインは、エンジン出力回転、厳密にはトルクコンバータのタービン出力回転と、それを減速した回転とを3つのクラッチを用いて適宜変速機構の4つの変速要素からなるプラネタリギヤセットへ2つの速度の異なる入力として入力させ、2つのブレーキで2つの変速要素を変速機ケースに係止することで多段の前進6速を達成するものである。この提案に係るギヤトレイン構成は、変速段当たりの変速要素数、必要とするクラッチ及びブレーキの数において非常に合理的なものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、一般に各クラッチやブレーキの油圧サーボに油圧を供給する油路が、相対回転する部材間を通る部位には、漏れ止めのためにシールリングを配置するが、こうしたシールリングは、その圧接により密封効果を生じさせるものであるため、相対回転により比較的大きな摺動抵抗を生じる。そのため、配設されるシールリングの数が多いと、回転部材の回転抵抗が増し、動力損失が大きくなる。したがって、シールリングはできるだけ少なくすることが望ましい。こうした油路構成の点から上記従来技術のギヤトレインをみると、このトレインでは、トルクコンバータからの出力が、一方でそのまま、他方で減速プラネタリギヤを介して減速されてプラネタリギヤセットへ入力される2系統の入力側動力伝達経路があるため、変速のために動力伝達経路を切り換える各クラッチの油圧サーボの配置によっては、それらに変速機ケースから供給する油圧の供給油路が錯綜し、相対回転する部材間を何度も油路が横断する連通配置となるため、シールリングが多数必要になる。
【0004】また、自動変速機においては、油圧制御装置による各クラッチやブレーキの油圧サーボの油圧の給排で、摩擦係合部材の係合・解放を制御して、所望の変速段を達成しているが、それらの係合・解放のレスポンスが悪いと、変速時間が長くなり、運転者に違和感を与えるため、クラッチやブレーキの係合・解放は、レスポンスよく行われなければならない。こうしたレスポンスの良否は、油圧制御装置から油圧サーボへ油圧を供給する油路がそれ自体かなりの容量を持つことから、油路の長さに影響され、油路があまり長すぎると、油路に油を充満するための時間が長くなり、結果的に油圧サーボを作動させるまでの時間が長くなるため、レスポンスの悪化を招く。更に、油路長のみならず、各油路相互の長さに極端な差があると、各油圧サーボ相互間でレスポンスにばらつきを生じるため、油路長の極端な不均衡も好ましくない。
【0005】本発明は、こうした事情に鑑みなされたものであり、油圧制御装置から油圧サーボへの油路を可能な限り短縮しながら、各油路の長さ相互の不均衡も最小限に抑え、かつ、シールリングを最少とすることで、クラッチの係合レスポンスを向上させつつ摩擦抵抗の軽減を図った自動変速機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、変速機ケースと、入力軸と、出力軸と、少なくとも4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、減速プラネタリギヤと、少なくとも2つの係止手段と、3つのクラッチとを備える自動変速機であって、プラネタリギヤセットは、その第1の変速要素が第1のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結され、第2の変速要素が第3のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結されるとともに、第1の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第3の変速要素が第2のクラッチにより入力軸に連結されるとともに、第2の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第4の変速要素が出力軸に連結されたものにおいて、前記変速機ケースは、その前端に前端壁部を有するとともに、前端壁部から変速機の内方に向かって延在する円筒ボス部を有し、変速機ケースの内部に、該変速機ケースに連結された円環板状部と、円環板状部の内周側部から軸方向前方に延在する前方円筒状部と、軸方向後方に延在する後方円筒状部を有するセンタサポートが配置され、該センタサポートの前方円筒状部に減速プラネタリギヤが配置され、該減速プラネタリギヤの前方に位置する円筒ボス部の外周上に第2のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの後方に位置する後方円筒状部の外周上に第1及び第3のクラッチの油圧サーボが配置され、変速機ケースの前端壁部から円筒ボス部にかけて第2のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から後方円筒状部にかけて第1及び第3のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成されたことを特徴とする。
【0007】また、本発明は、変速機ケースと、入力軸と、出力軸と、少なくとも4つの変速要素を有するプラネタリギヤセットと、減速プラネタリギヤと、少なくとも2つの係止手段と、3つのクラッチとを備える自動変速機であって、プラネタリギヤセットは、その第1の変速要素が第1のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結され、第2の変速要素が第3のクラッチにより減速プラネタリギヤを介して入力軸に連結されるとともに、第1の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第3の変速要素が第2のクラッチにより入力軸に連結されるとともに、第2の係止手段により変速機ケースに係止可能とされ、第4の変速要素が出力軸に連結されたものにおいて、前記変速機ケースは、その前端に前端壁部を有するとともに、前端壁部から変速機の内方に向かって延在する円筒ボス部を有し、変速機ケースの内部に、該変速機ケースに連結された円環板状部と、円環板状部の内周側部から軸方向前方に延在する前方円筒状部と、軸方向後方に延在する後方円筒状部を有するセンタサポートが配置され、該センタサポートの前方円筒状部に減速プラネタリギヤが配置され、該減速プラネタリギヤの前方に位置する円筒ボス部の外周上に第2のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの前方に位置する前方円筒状部の外周上に第1のクラッチの油圧サーボが配置され、減速プラネタリギヤの後方に位置する後方円筒状部の外周上に第3のクラッチの油圧サーボが配置され、変速機ケースの前端壁部から円筒ボス部にかけて第2のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から前方円筒状部にかけて第1のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成され、センタサポートの円環板状部から後方円筒状部にかけて第3のクラッチの油圧サーボへの油圧供給油路が形成されたことを特徴とする。
【0008】上記いずれかの構成において、前記入力軸は、第2のクラッチの油圧サーボを内包するドラムを介して減速プラネタリギヤの入力要素に連結され、減速プラネタリギヤの反力要素は、前方円筒状部の外周上に固定され、出力要素は、第1のクラッチの油圧サーボを内包するドラムに連結され、第1のクラッチのドラムは、減速プラネタリギヤの出力をセンタサポートの前方から内周を通して後方に導く連結部材を介してセンタサポートの内周側に回転自在に支持され、第2のクラッチのドラムは、入力軸を介して円筒ボス部の内周側に支持され、第3のクラッチのドラムは、センタサポートの外周上に回転自在に支持され、第1〜第3のクラッチの各ドラムと、円筒ボス部及び前方円筒状部並びに後方円筒状部との相対回転部に、各油圧供給油路を漏れ止めする一対ずつのシールリングが配設された構成とするのが有効である。
【0009】そして、第1の係止手段として、ワンウェイクラッチが配置され、該ワンウェイクラッチに対して直列にブレーキが配置される場合は、軸長を短縮し、部品点数を削減する上では、ブレーキの油圧サーボは、センタサポートの円環板状部に内包させた構成とするのが有効である。
【0010】
【発明の作用及び効果】上記請求項1記載の構成では、センタサポートの外周上に、減速プラネタリギヤの出力要素をプラネタリギヤセットの所定の変速要素に連結する第1及び第3のクラッチを配置し、変速機ケース前方の円筒ボス部外周上に、入力軸をプラネタリギヤセットの所定の変速要素に連結する第2のクラッチを配置したので、回転速度の異なる2つの入力回転を分離して取り出すことができ、シールリングを最少とすることができる。また、センタサポート上に2つのクラッチの油圧サーボを、そして変速機ケースの円筒ボス部上に1つのクラッチの油圧サーボを配置したので、油圧制御装置からそれぞれのクラッチの油圧サーボに油圧を供給する油路が長くなり過ぎるのを防止できる。これにより、クラッチやブレーキの係合・解放のレスポンスが良くなる。
【0011】一方、請求項2記載の構成では、上記の効果に加えて、第1のクラッチと第3のクラッチをセンタサポートに対して前後に振り分けることで、それらの油圧サーボもセンタサポート上で前後に分散させることができ、それにより油圧制御装置からそれぞれのクラッチの油圧サーボに油圧を供給する油路の長さの不均衡ををなくすことができる。
【0012】そして、請求項3記載の構成では、センタサポートの外周上に配置した第1のクラッチのドラムの回転支持をセンタサポートの内周側で行っているので、センタサポートとドラムとの相対回転対向面を広くとることができ、それにより油圧供給油路のドラムとの接続部の位置を油路長を考慮して自由に設定することができる。
【0013】また、請求項4記載の構成では、第1の係止手段をワンウェイクラッチと、それに直列のブレーキとする場合において、センタサポートがブレーキの油圧サーボの配設スペースとして利用されるため、油圧サーボ形成用部材が不要となり、部品点数が削減でき、しかも、変速機の軸長が短くなる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面に沿い、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明をフロントエンジンリヤドライブ(FR)形式の車両用自動変速機に適用した第1実施形態を模式化した断面で示す。この自動変速機は、変速機ケース10と、入力軸11と、出力軸19と、少なくとも4つの変速要素S2,S3,C2(C3),R3を有するプラネタリギヤセットGと、減速プラネタリギヤG1と、少なくとも2つの係止手段(本形態においてそれぞれ2系統2組の係止手段)B−1,(F−1,B−2),B−3(F−2)と、3つのクラッチC−1,C−2,C−3とを備える構成とされている。
【0015】そして、プラネタリギヤセットGの第1の変速要素S3が第1のクラッチC−1により減速プラネタリギヤG1を介して入力軸11に連結され、第2の変速要素S2が第3のクラッチC−3により減速プラネタリギヤG1を介して入力軸11に連結されるとともに第1の係止手段B−1(F−1,B−2)により変速機ケース10に係止可能とされ、第3の変速要素C3が第2のクラッチC−2により入力軸11に連結されるとともに第2の係止手段B−3(F−2)により変速機ケース10に係止可能とされ、第4の変速要素R3が出力軸19に連結されている。
【0016】本発明の基本的特徴に従い、変速機ケース10は、その前端に前端壁部10fを有するとともに、前端壁部10fから変速機の内方に向かって延在する円筒ボス部10aを有する。そして、変速機ケース10の内部に、変速機ケース10の周壁に連結された円環板状部10bと、円環板状部10bの内周側部から軸方向前方に延在する前方円筒状部10cと、軸方向後方に延在する後方円筒状部10dを有するセンタサポート10Sが配置されている。このセンタサポート10Sの前方円筒状部10cには、減速プラネタリギヤG1が配置され、減速プラネタリギヤG1の前方に位置する円筒ボス部10aの外周上には、第2のクラッチC−2の油圧サーボ40が配置され、減速プラネタリギヤG1の後方に位置する後方円筒状部10dの外周上には、第1及び第3のクラッチC−1,C−3の油圧サーボ30,50が配置されている。更に、変速機ケース10の前端壁部10fから円筒ボス部10aにかけて第2のクラッチC−2の油圧サーボ40への油圧供給油路L2が形成され、センタサポート10Sの円環板状部10bから後方円筒状部10dにかけて第1及び第3のクラッチC−1,C−3の油圧サーボ30,50への油圧供給油路L1,L3が形成されている。
【0017】次に、この実施形態のギヤトレインを更に詳細に説明する。図2のスケルトンを参照して、この自動変速機では、その機構の最前部に、図示しないエンジンに連結されるロックアップクラッチ付のトルクコンバータ2が配置され、その後部に前進6速・後進1速を達成する変速機構が配置された構成が採られている。トルクコンバータ2は、ポンプインペラ21と、タービンランナ22と、それらの間に配置されたステータ23と、ステータ23を変速機ケース10に一方向回転係合させるワンウェイクラッチ24とを備える。
【0018】変速機構の主体をなすプラネタリギヤセットGは、大小径の異なる一対のサンギヤS2,S3と、互いに噛合して一方が大径のサンギヤS2に噛合するとともにリングギヤR3(R2)に噛合し、他方が小径のサンギヤS3に噛合する一対のピニオンギヤP2,P3を支持するキャリアC2(C3)からなるラビニヨ式のギヤセットで構成されている。そして、この形態では、小径のサンギヤS3が第1の変速要素、大径のサンギヤS2が第2の変速要素、キャリアC2(C3)が第3の変速要素、リングギヤR3(R2)が第4の変速要素とされている。
【0019】減速プラネタリギヤG1は、シンプルプラネタリギヤで構成され、その入力要素としてのリングギヤR1を入力軸11に連結され、出力要素としてのキャリアC1を第1のクラッチC−1を介して第1の変速要素すなわち小径サンギヤS3に連結されるとともに、第3のクラッチC−3を介して第2の変速要素すなわち大径のサンギヤS2に連結され、反力を取る固定要素としてのサンギヤS1をセンタサポート10Sに固定されている。
【0020】こうした構成からなる自動変速機は、図示しない電子制御装置と油圧制御装置とによる制御で、運転者により選択されたレンジに応じた変速段の範囲で車両負荷と車速に基づき、変速を行う。図3は各クラッチ及びブレーキの係合及び解放(○印で係合、無印で解放、△印でエンジンブレーキ時のみの係合、●印で変速段の達成に直接作用しない係合を表す)で達成される変速段を図表化して示す。また、図4は各クラッチ及びブレーキの係合(●印でそれらの係合を表す)により達成される変速段と、そのときの各変速要素の回転数比との関係を速度線図で示す。
【0021】両図を併せ参照してわかるように、第1速(1ST)は、クラッチC−1 とブレーキB−3の係合(本形態において、作動表を参照してわかるように、このブレーキB−3の係合は、エンジンブレーキ時とされ、代わってワンウェイクラッチF−2の自動係合が用いられているが、この係合を用いている理由及びこの係合がブレーキB−3の係合に相当する理由については後に詳述する。)により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由で小径サンギヤS3に入力され、ワンウェイクラッチF−2の係合により係止されたキャリアC3に反力を取って、リングギヤR3(R2)の最大減速比の減速回転が出力軸19に出力される。
【0022】次に、第2速(2ND)は、クラッチC−1 とブレーキB−1の係合に相当するワンウェイクラッチF−1の係合とそれを有効にするブレーキB−2の係合(これらの係合がブレーキB−1の係合に相当する理由についても後に詳述する。)により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由で小径サンギヤS3に入力され、ブレーキB−2及びワンウェイクラッチF−1の係合により係止された大径サンギヤS2に反力を取って、リングギヤR3(R2)の減速回転が出力軸19に出力される。このときの減速比は、図4にみるように、第1速(1ST)より小さくなる。
【0023】また、第3速(3RD)は、クラッチC−1とクラッチC−3の同時係合により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1とクラッチC−3経由で同時に大径サンギヤS2と小径サンギヤS3に入力され、プラネタリギヤセットGが直結状態となるため、両サンギヤへの入力回転と同じリングギヤR3(R2)の回転が、入力軸11の回転に対しては減速された回転として、出力軸19に出力される。
【0024】更に、第4速(4TH)は、クラッチC−1とクラッチC−2の同時係合により達成される。この場合、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−1経由でサンギヤS3に入力され、他方で入力軸11からクラッチC−2経由で入力された非減速回転が、中間軸12を経てキャリアC3に入力され、2つの入力回転の中間の回転が、入力軸11の回転に対しては僅かに減速されたリングギヤR3(R2)の回転として出力軸19に出力される。
【0025】次に、第5速(5TH)は、クラッチC−2とクラッチC−3の同時係合により達成される。この場合、一方で入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−3経由でサンギヤS2に入力され、他方で入力軸11からクラッチC−2経由で入力された非減速回転が、中間軸12経由でキャリアC2に入力され、リングギヤR3(R2)の入力軸11の回転より僅かに増速された回転が出力軸19に出力される。
【0026】そして、第6速(6TH)は、クラッチC−2とブレーキB−1の係合により達成される。この場合、入力軸11からクラッチC−2経由で非減速回転がキャリアC2にのみ入力され、ブレーキB−1の係合により係止されたサンギヤS2に反力を取り、リングギヤR3(R2)の更に増速された回転が出力軸19に出力される。
【0027】なお、後進(REV)は、クラッチC−3とブレーキB−3の係合により達成される。この場合、入力軸11から減速プラネタリギヤG1を経て減速された回転がクラッチC−3経由でサンギヤS2に入力され、ブレーキB−3の係合により係止されたキャリアC2に反力を取り、リングギヤR3(R2)の逆転が出力軸19に出力される。
【0028】ここで、先に触れたワンウェイクラッチF−2とブレーキB−3との関係及びワンウェイクラッチF−1と両ブレーキB−1,B−2との関係について説明する。上記の第1速と第2速時の両ブレーキB−1,B−3の係合・解放関係にみるように、これら両ブレーキは、両変速段間でのアップダウンシフト時に、一方の解放と同時に他方の係合が行われる、いわゆる掴み替えされる摩擦要素となる。こうした摩擦要素の掴み替えは、それらを操作する油圧サーボの係合圧と解放圧の精密な同時制御を必要とし、こうした制御を行うには、そのためのコントロールバルブの付加や油圧回路の複雑化等を招くこととなる。そこで、本形態では、第1速と第2速とで、キャリアC2(C3)にかかる反力トルクが逆転するのを利用して、ワンウェイクラッチF−2の係合方向を第1速時の反力トルク支持方向に合わせた設定とすることで、ワンウェイクラッチF−2に実質上ブレーキB−3の係合と同等の機能を発揮させて、第1速時のブレーキB−3の係合に代えて(ただし、ホイール駆動の車両コースト状態ではキャリアC2(C3)にかかる反力トルクの方向がエンジン駆動の状態に対して逆転するので、エンジンブレーキ効果を得るためには、図3に△印で示すようにブレーキB−3の係合を必要とする)、キャリアC2(C3)の係止を行っているわけである。したがって、変速段を達成する上では、ワンウェイクラッチを設けることなく、ブレーキB−3の係合により第1速を達成する構成を採ることもできる。
【0029】上記と同様の関係がサンギヤS2の場合について成り立ち、この場合は、ワンウェイクラッチF−1の係合方向を第2速時の反力トルク支持方向に合わせた設定とすることで、ワンウェイクラッチF−1に実質上ブレーキB−1の係合と同等の機能を発揮させることができる。ただし、このサンギヤS2は、キャリアC2(C3)とは異なり、第2速時のエンジンブレーキ効果を得るために係合するだけでなく、第6速達成のためにも係止される変速要素であるため、ブレーキB−1が必要となる。また、サンギヤS2は、図4の速度線図でも分かるように、第1速達成時には入力回転方向に対して逆方向に回転するが、第3速以上の変速段の場合は、入力回転方向と同じ方向に回転する。したがって、ワンウェイクラッチF−1は、直接固定部材に連結することができないため、ブレーキB−2との直列配置により係合状態の有効性を制御可能な構成としている。
【0030】このようにして達成される各変速段は、図4の速度線図上で、リングギヤR2,R3の速度比を示す○印の上下方向の間隔を参照して定性的にわかるように、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップとなる。この関係を具体的に数値を設定して、定量的に表すと、図3に示すギヤ比及びギヤ比間のステップとなる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=0.556、プラネタリギヤセットGの大径サンギヤ側のサンギヤS2とリングギヤR2(R3)の歯数比λ2=0.458、小径サンギヤ側のサンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=0.375に設定した場合であり、ギヤ比幅は6.049となる。
【0031】図1に戻ってスケルトンから参照し得ない細部の構成について、更に具体的に説明する。なお、本明細書を通じて、各クラッチ及びブレーキという用語は、摩擦部材と油圧サーボを総称するものとする。したがって、クラッチC−1は、油圧サーボ30と摩擦部材35で構成される。同様に、クラッチC−2は油圧サーボ40と摩擦部材45で、クラッチC−3は油圧サーボ50と摩擦部材55で構成されている。また、バンドブレーキB−1はバンド6と図示しない油圧サーボで構成され、多板ブレーキB−3は油圧サーボ80と摩擦部材85で構成され、多板ブレーキB−2は各クラッチやブレーキB−3と同様の油圧サーボ70と摩擦部材75で構成されている。
【0032】まず、変速機ケース10の円筒ボス部10aは、第2のクラッチC−2の油圧サーボ40を支持するに足る長さだけ変速機ケース10の内方に延びている。円筒ボス部10aには、第2のクラッチC−2の油圧サーボ40へ油圧を供給するレンジ圧油路L2が形成されている。一方、センタサポート10Sは、変速機ケース10の周壁に外周円筒部を支持して、変速機ケース10の前寄りに配置されており、周壁側から径方向内方に延びる円環板状部10bに続く前方円筒状部10cは、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1を支持するに足る長さとされ、後方円筒状部10dは、2つのクラッチC−3,C−1の油圧サーボ50,30を配設するに足る長さとされている。このセンタサポート10Sには、2つのクラッチC−3,C−1の油圧サーボ50,30へ油圧を供給する2つのレンジ圧油路L3,L1が形成されている。
【0033】図5は、上記3つのレンジ圧油路の構成を模式化して示す。図に示すように、油圧制御装置のバルブボディ9が変速機ケース10の下方に取付けられている。このバルブボディ9は、周知のように、変速機ケース10の前端壁に取付けられるオイルポンプボディに組み込まれて、トルクコンバータ2のタービンランナ22で駆動されるオイルポンプを油圧源とし、その油圧をレギュレータバルブで調圧したライン圧をマニュアルバルブ経由のレンジ圧として出力するもので、このバルブボディ9のレンジ圧の各出力油路が、前端壁部10fの油路L2と、センタサポート10Sの油路L1,L3にそれぞれ接続されている。これら油路のうち、第2のレンジ圧油路L2は、円筒ボス部10aの外周油路で油圧サーボ40のシリンダに接続されている。また、第1のレンジ圧油路L1は、後方円筒部10dの後側の外周油路で第1のクラッチC−1の油圧サーボ30のシリンダに接続されている。更に、第3のレンジ圧油路L3は、後方円筒部10dの前側の外周油路で第3のクラッチC−3の油圧サーボ50のシリンダに連通している。
【0034】こうした配置によると、センタサポート10Sの外周上に、減速プラネタリギヤG1の出力要素C1をプラネタリギヤセットGの所定の変速要素に連結する第1及び第3のクラッチC−1,C−3を配置し、変速機ケース10前方の円筒ボス部10a外周上に、入力軸11をプラネタリギヤセットGの所定の変速要素に連結する第2のクラッチC−2を配置したので、回転速度の異なる2つの入力回転を分離して取り出すことができ、シールリングを最少とすることができる。また、センタサポート10S上に2つのクラッチの油圧サーボ30,50を、そして変速機ケース10の円筒ボス部10a上に1つのクラッチの油圧サーボ40を配置した構成となるので、油圧制御装置からそれぞれのクラッチの油圧サーボに油圧を供給する油路L1〜L3が長くなり過ぎるのを防止できる。
【0035】次に、入力軸11は、前端部が図2に示すトルクコンバータ2のタービンランナ22に連結され、変速機ケース10の前端壁部10fから円筒ボス部10aの先端まで延びている。そして、入力軸11は、前端側をローラベアリングを介して前端壁部10fに支持され、後端側をローラベアリングを介して円筒ボス部10aの先端の内周に支持されている。減速プラネタリギヤG1への入力部は、フランジとされ、それに連結された第2のクラッチC−2の油圧サーボ40を内包するドラム41を介して減速プラネタリギヤG1のリングギヤR1に連結されている。入力軸11の後端は小径化されて、中間軸12の支持部とされている。
【0036】出力軸19は、その前端部をローラベアリングを介して変速機ケース10の後端壁部10rに回転自在に支持され、後端部をボールベアリングを介して変速機ケース10に固定のエクステンションハウジングに回転自在に支持されている。出力軸19のプラネタリギヤセットGの出力要素への連結部は、フランジとされ、ドラム状部材を介してリングギヤR3に連結されている。出力軸19の前端には2段階に拡径する軸穴が形成され、中間軸12とのシール部及び中間軸12の支持部とされている。
【0037】プラネタリギヤセットGは、入力軸11の後端と出力軸19の前端との間に配置され、全体として中間軸12に支持されている。詳しくは、プラネタリギヤセットGのピニオンP2,P3を支持するキャリアC2,C3は一体化され、その前端部はサンギヤS2の軸部に軸受ブッシュを介して回転自在に支持され、後端部は中間軸12のフランジに固定されている。そして、サンギヤS3は、軸受ブッシュを介して中間軸12に回転自在に支持され、サンギヤS2は、軸受ブッシュを介してサンギヤS3に回転自在に支持されている。
【0038】減速プラネタリギヤG1は、センタサポート10Sの前方円筒状部10cの外周に配置され、詳しくはそのサンギヤS1が、前方円筒状部10cにスプライン嵌合等で回り止め嵌合されている。減速プラネタリギヤG1のキャリアC1は、その出力をセンタサポート10Sの前方から内周を通して後方に導く連結部材13を介して第1のクラッチC−1のドラム31に連結されている。この連結部材13は、センタサポート10Sの内周側にベアリングを介して回転自在に支持されている。そして、リングギヤR1は、第2のクラッチC−2のドラム41に連結されている。
【0039】第2のクラッチC−2は、そのハブ46の後端部を中間軸12の前端側のフランジに連結され、ドラム41を入力軸11のフランジに固定されて入力軸11の後端に支持されている。クラッチC−2の多板の摩擦材とセパレータプレートからなる摩擦部材45は、セパレータプレートをドラム41の内周にスプライン係合支持され、摩擦材の内周を中間軸12のフランジに連結されたハブ46の外周にスプライン係合支持されて、ドラム41とハブ46との間に配置されている。クラッチC−2の油圧サーボ40は、ドラム41に内包された形態で構成されており、ドラム41の内側をシリンダとし、それに軸方向摺動自在に嵌挿されたピストン42と、入力軸11に軸方向止めされたキャンセルプレートと、ピストン42とキャンセルプレートとの間に配設されたリターンスプリングとを備えた構成とされている。
【0040】第1のクラッチC−1は、そのドラム31の内周側のボス部を連結部材13に連結されて、該部材13を介して後方円筒部10dの内周側に回転自在に支持され、連結部材13を介して減速プラネタリギヤG1のキャリアC1に連結されている。クラッチC−1の多板の摩擦材とセパレータプレートからなる摩擦部材35は、セパレータプレートをドラム31の内周にスプライン係合支持され、摩擦材の内周をハブ36の外周にスプライン係合支持されて、ドラム31とハブ36との間に配置され、ハブ36は連結部材14を介してサンギヤS3に連結されている。クラッチC−1の油圧サーボ30は、ドラム31の内側をシリンダとし、それに軸方向摺動自在に嵌挿されたピストン32と、ドラム31の内周側のボス部に軸方向止めされたキャンセルプレートと、ピストン32とキャンセルプレートとの間に配設されたリターンスプリングとを備えた構成とされている。
【0041】第3のクラッチC−3は、そのドラム51の内周側のボス部が変速機ケース10の後方円筒部10dに回転自在に軸受を介して支持され、外周部がドラム状の連結部材15を介してサンギヤS2に連結されている。クラッチC−3の多板の摩擦材とセパレータプレートからなる摩擦部材55は、セパレータプレートをドラム51の内周にスプライン係合支持され、摩擦材の内周を第1のクラッチのドラム31により構成されるハブの外周にスプライン係合支持されて、ドラム51とハブとの間に配置されている。クラッチC−3の油圧サーボ50は、ドラム51の内側をシリンダとし、それに軸方向摺動自在に嵌挿されたピストン52と、ドラム51のボス部に軸方向止めされたキャンセルプレートと、ピストン52とキャンセルプレートとの間に配設されたリターンスプリングとを備えた構成とされている。
【0042】第1の係止手段を構成するブレーキB−1は、第3のクラッチC−3のドラム51をブレーキドラムとして、その外周に係合するバンド6を備えるバンドブレーキとされている。このバンド6の締結位置は、ドラム51のボス部を後方円筒部10dに支持する軸受と同様の軸方向位置における外周側とされ、ブレーキ締結時に、締結位置と支持位置とが軸方向にずれていることにより生じるモーメントをなくして、該軸受にかかる荷重を低減する構成とされ、これにより軸受の小型化がなされている。なお、このブレーキの油圧サーボについては、図示を省略されている。
【0043】第2の係止手段を構成するブレーキB−3は、多板の摩擦材とセパレータプレートを摩擦部材85とする多板ブレーキとされ、セパレータプレートが変速機ケース内周にスプライン係止支持され、摩擦材がキャリアC2に固定されたハブ86にスプライン係合支持されている。そして、このブレーキB−3の摩擦部材85は、プラネタリギヤセットGの小径のプラネタリギヤの外周側に径方向に重合させて配置されている。ブレーキB−3の油圧サーボ80は、変速機ケース10の後端壁部10rに形成された環状凹部をシリンダとし、それに摺動自在に嵌挿されたピストン82と、後端壁部10rに軸方向止めされてピストン82に当接するリターンスプリングとを備えた構成とされている。ピストン82の変速機ケース10の周壁に沿って延長されて摩擦部材85の後端に至る延長部は、その外周をケース周壁のスプラインに嵌合させて回り止めされている。
【0044】また、ワンウェイクラッチF−1は、そのインナレースをドラム51と一体化され、アウタレースをブレーキB−2のハブと一体化された構成とされ、第3のクラッチC−3の前方に配置されている。アウタレースを変速機ケース10に係止するブレーキB−2は、アウタレースにスプライン係合支持された摩擦材と、変速機ケース10の内周スプラインに係合支持されたセパレータプレートを摩擦部材75とする多板構成のブレーキとされている。ブレーキB−2の油圧サーボ70は、センタサポート10Sの円環板状部10bをシリンダとし、それに摺動自在に嵌挿されたピストン72と、円環板状部10bに軸方向止めされてピストン72に当接するリターンスプリングとを備えた構成とされている。こうした配置により、センタサポート10Sの円環板状部10bがブレーキB−2の油圧サーボ70の配設スペースとされているため、別途の油圧サーボ形成用部材が不要となり、部品点数が削減され、しかも、変速機の軸長が短縮されている。
【0045】そして、ワンウェイクラッチF−2は、そのインナレースをキャリアC2の前端部に結合され、アウタレースを変速機ケース10の内周のスプラインに係合させて、プラネタリギヤセットGの前方に配置されている。
【0046】上記に関連構成から、第1〜第3のクラッチの各油圧サーボ30,40,50は何れも、他の中空軸等を介することなく、直接変速機ケース10に連なる円筒ボス部10a、後方円筒状部10dの外周上に配置された構成となる。そこで、円筒ボス部10aと第2のクラッチC−2のドラム41との間、第3のクラッチC−3のドラム51と後方円筒状部10dとの間及び第1のクラッチC−1のドラム51と後方円筒状部10dとの間の相対回転部に、一対ずつのシールリングが配設され、最少数のシールリングによる漏れ止めがなされている。こうした配置は、クラッチの油圧サーボに油圧を供給する油路において、相対回転する部材の油路間での油の漏れを防ぐために配置されるシールリング数については、1本の油路が経由するシールリングが多いと、コストがかかるだけでなく、その油路に油圧がかかっている状態では、シールリングに圧力がかかることで摺動抵抗が増大し、動力伝達効率を考えた場合、ロスが大きくなるという欠点を解消している。
【0047】なお、上記実施形態を示す図1において、符号16は入力回転センサを示す。このセンサ16は、変速機制御のために電子制御装置への情報としての入力回転を検出するのに必要なもので、本形態では、入力軸11の回転が常時伝達される第2のクラッチC−2のドラム41の外周に形成された多数の凹凸を利用した回転数検出がなされる。
【0048】ところで、前記第1実施形態では、主として第1及び第3のクラッチの集約化による軸方向寸法の短縮と油路L1,L3の短縮との兼ね合いから、減速プラネタリギヤG1からの減速回転の第3のクラッチC−3への伝達が、第1のクラッチC−1のドラム31を介して成される配置を採ったが、油路L1,L3の長さを均衡させることを優先する意味では、上記減速回転の伝達が、第3のクラッチC−3へも並列的に行われる配置を採るのも有効である。図6は、こうした構成を採る第2実施形態の自動変速機の模式化した断面構造を示す。また、図7はその全体構造をスケルトンで示す。以下、重複を避ける意味で、この形態における前記第1実施形態との相違点のみ説明する。
【0049】この形態では、第1実施形態に対して第1のクラッチC−1がセンタサポート10Sの前方円筒状部10cの外周上に移設され、減速プラネタリギヤG1の前方に配置されている点が基本的に異なる。すなわち、この場合、減速プラネタリギヤG1の前方に位置する前方円筒状部10cの外周上に第1のクラッチC−1の油圧サーボ30が配置され、減速プラネタリギヤG1の後方に位置する後方円筒状部10dの外周上に第3のクラッチC−3の油圧サーボ50が配置されている。そして、センタサポート10Sの円環板状部10bから前方円筒状部10cにかけて第1のクラッチC−1の油圧サーボ30への油圧供給油路L1が形成され、センタサポート10Sの円環板状部10bから後方円筒状部10dにかけて第3のクラッチC−3の油圧サーボ50への油圧供給油路L3が形成されている。
【0050】この場合の油路構成は、図8の模式的断面図に示すようになる。こうした配置によると、センタサポート10S内の油路L1と油路L3の長さをほぼ均等にすることがきる。
【0051】こうした配置の変更に伴い、ギヤトレイン上は、第1のクラッチC−1のドラム31が直接減速プラネタリギヤG1のキャリアC1に連結され、ドラム31の内周側ボス部が連結部材13を介して第3のクラッチC−3のハブ56に連結された構造となる。また、第1のクラッチC−1のハブ36を第1の変速要素としてのサンギヤS3に連結する連結部材14は、連結部材13の内周を通る配置となる。
【0052】ところで、上記両実施形態では、プラネタリギヤセットGをラビニヨ式としたが、ギヤセットGは、これに限るものではない。そこで、次に、プラネタリギヤセットGを他の形式のものに変更した実施形態について説明する。
【0053】図9は第2実施形態に対して、プラネタリギヤセットGの部分だけを一部変更した第3実施形態を示す。この形態では、プラネタリギヤセットGは、大径のサンギヤS2と小径のリングギヤR2とそれらに噛合するピニオンギヤをキャリアC2で支持したシンプルプラネタリギヤG2と、相互に噛合する一対のピニオンギヤの一方が小径のサンギヤS3に噛合し、他方が大径のリングギヤR3に噛合する両ピニオンギヤをキャリヤC3で支持したダブルピニオンプラネタリギヤG3とから構成されている。そして、この形態では、両サンギヤS2,S3が互いに連結された減速回転の入力要素、小径のリングギヤR2が減速回転の入力要素兼第2速達成時の反力要素、互いに連結されたキャリアC2,C3が非減速回転の入力要素兼第1速達成時の反力要素、大径のリングギヤR3が出力軸19に連結した出力要素とされている。
【0054】こうしたプラネタリギヤセットGによる場合も、前記第2実施形態の場合と同様に、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップが得られる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=0.556、プラネタリギヤセットGのサンギヤS2とリングギヤR2の歯数比λ2=0.636、サンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=0.333に設定すると、入出力ギヤ比とステップは、次の表1に示すようになる。ちなみに、この場合のギヤ比幅は7.111である。
【表1】

【0055】更に、図10はプラネタリギヤセットGの部分だけを一部変更した第4実施形態を示す。この形態では、プラネタリギヤセットGは、互いに噛合する一対のピニオンギヤP2,P2’の一方が小径のサンギヤS2に噛合し、他方が大径のリングギヤR2に噛合するダブルピニオンプラネタリギヤと、大径のサンギヤS3と小径のリングギヤR3に噛合するピニオンギヤP3を備えたシンプルプラネタリギヤとの組み合わせで構成されている。そして、小径のサンギヤS2がクラッチC−1からの減速回転の入力要素、ダブルピニオンを支持するキャリアC2とそれに連結されたサンギヤS3がクラッチC−3からの減速回転の入力要素兼第2速達成時の反力要素、大径のリングギヤR2とキャリアC3が互いに連結されてクラッチC−2からの非減速回転の入力要素兼第1速達成時の反力要素、小径のリングギヤR3が出力軸19に連結した出力要素とされている。したがって、この形態の場合、サンギヤS2が第1の変速要素、キャリアC2とサンギヤS3が第2の変速要素、キャリアC3とリングギヤR2が第3の変速要素、リングギヤR3が第4の変速要素となる。
【0056】こうしたプラネタリギヤセットGによっても、前記第2実施形態の場合と同様に、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップが得られる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=0.556、プラネタリギヤセットGのサンギヤS2とリングギヤR2の歯数比λ2=0.447、サンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=0.444に設定すると、入出力ギヤ比とステップは、次の表2に示すようになる。ちなみに、この場合のギヤ比幅は6.245である。
【表2】

【0057】図11はプラネタリギヤセットGの部分だけを一部変更した第5実施形態を示す。この形態では、プラネタリギヤセットGは、それぞれが一対ずつのピニオンギヤP2,P2’,P3,P3’を有するダブルピニオンプラネタリギヤG2,G3で構成されている。そして、キャリアC2とサンギヤS3が相互に連結されて減速回転の入力要素、サンギヤS2が減速回転の入力要素兼第2速達成時の反力要素、リングギヤR2とキャリアC3が相互に連結されて非減速回転の入力要素兼第1速達成時の反力要素、リングギヤR3が出力軸19に連結されて出力要素となっている。したがって、この形態の場合、サンギヤS3とキャリアC2が第1の変速要素、サンギアS2が第2の変速要素、リングギヤR2とキャリアC3が第3の変速要素、リングギヤR3が第4の変速要素となる。
【0058】こうしたプラネタリギヤセットGによっても、前記第2実施形態の場合と同様に、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップが得られる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=0.556、プラネタリギヤセットGのサンギヤS2とリングギヤR2の歯数比λ2=0.556、サンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=0.361に設定すると、入出力ギヤ比とステップは、次の表3に示すようになる。ちなみに、この場合のギヤ比幅は6.252である。
【表3】

【0059】最後に図12に示す第6実施形態では、上記第5実施形態に対して、プラネタリギヤセットGへの入力経路を逆の接続としたものである。すなわち、この形態では、サンギヤS2が第1のクラッチC−1に連結され、互いに連結したキャリアC2とサンギヤS3が第3のクラッチC−3に連結されている。この場合、サンギヤS2が第1の変速要素、キャリアC2とサンギヤS3が第2の変速要素、リングギヤR2とキャリアC3が第3の変速要素となり、リングギヤR3が第4の変速要素となる。
【0060】こうしたプラネタリギヤセットGによっても、前記第2実施形態の場合と同様に、各変速段に対して比較的等間隔の良好な速度ステップが得られる。この場合のギヤ比は、減速プラネタリギヤG1のサンギヤS1とリングギヤR1の歯数比λ1=0.556、プラネタリギヤセットGのサンギヤS2とリングギヤR2の歯数比λ2=0.444、サンギヤS3とリングギヤR3の歯数比λ3=0.361に設定すると、入出力ギヤ比とステップは、次の表4に示すようになる。ちなみに、この場合のギヤ比幅は6.252である。
【表4】

【0061】以上、本発明をFR車用自動変速機に適用した6つの実施形態に基づき詳説したが、本発明は、フロントエンジンフロントドライブ(FF)車用自動変速機、リヤエンジンリヤドライブ(RR)車用自動変速機等、他の変速機にも適用可能なものであり、更に、特許請求の範囲の個々の請求項に記載の事項の範囲内で種々に細部の具体的な構成を変更して実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成10年10月16日(1998.10.16)
【代理人】 【識別番号】100095108
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英幸
【公開番号】 特開2000−120813(P2000−120813A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−314046