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【発明の名称】 サイレントチェーン
【発明者】 【氏名】鈴木 章

【要約】 【課題】動力損失を増大させることなく弦振動を抑制する。

【解決手段】両端に一対の連結孔12が設けられた複数のリンクプレート4と、厚さ方向に重ね合わされたリンクプレート4同士の連結孔12に挿入され、かつ、リンクプレート4同士を相対回転できる状態で連結して多数のリンクプレート4を無端状に連結するロッカーピン7と、リンクプレート4に接触してその厚さ方向に押圧力を作用させる皿ばね10とを備えたサイレントチェーンにおいて、皿ばね10の端部が、各リンクプレート4の厚さ方向の投影面で互いに重なり合うように配置され、これらの皿ばね10が、サイレントチェーンの走行方向と直交する平面内で「くの字形」に屈曲されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スプロケットに噛み合わされる歯部を有し、かつ、一対の連結孔が設けられた複数のリンクプレートと、厚さ方向に重ね合わされたリンクプレート同士の連結孔に挿入され、かつ、このリンクプレート同士を相対回転できる状態で連結して多数のリンクプレートを無端状に連結する連結部材と、前記リンクプレートに対して厚さ方向の押圧力を加える複数の板形状のばねとを備えているとともに、複数のスプロケットに巻き掛けられた状態で走行するサイレントチェーンにおいて、前記複数のばね同士の一部が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で互いに重なり合うように、複数のばねがサイレントチェーンの走行方向に配置されているとともに、前記各ばねにおける前記投影面内で重なり合う部分に、前記リンクプレートの歯部が、一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに噛み合うまでの間にこのリンクプレートに加えられる押圧力よりも、前記リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合った際にこのリンクプレートに加えられる押圧力の方が小さくなるように制御する押圧力制御機構が設けられていることを特徴とするサイレントチェーン。
【請求項2】 前記ばねを厚さ方向に貫通する一対の孔が形成され、この一対の孔には前記連結部材が挿入されているとともに、前記押圧力制御機構には、サイレントチェーンの走行方向に沿って直線状に形成されている押圧部が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のサイレントチェーン。
【請求項3】 前記押圧部が、サイレントチェーンの走行方向に沿い、かつ、前記一対の孔を通過する領域に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のサイレントチェーン。
【請求項4】 スプロケットに噛み合わされる歯部を有し、かつ、一対の連結孔が設けられた複数のリンクプレートと、厚さ方向に重ね合わされたリンクプレート同士の連結孔に挿入され、かつ、このリンクプレート同士を相対回転できる状態で連結して多数のリンクプレートを無端状に連結する連結部材と、前記リンクプレートに対して厚さ方向の押圧力を加える複数の板形状のばねとを備えているとともに、複数のスプロケットに巻き掛けられた状態で走行するサイレントチェーンにおいて、前記複数のばね同士の一部が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で互いに重なり合うように、複数のばねがサイレントチェーンの走行方向に配置されているとともに、前記各ばねにおける前記投影面内で重なり合う部分に、前記ばねを厚さ方向に貫通する一対の孔が形成され、この一対の孔には前記連結部材が挿入されているとともに、前記ばねの表面のうち、前記一対の孔を通過し、かつ、前記サイレントチェーンの走行方向に沿う帯状領域の摩擦係数の方が、この帯状領域以外の領域の摩擦係数よりも大きく設定されていることを特徴とするサイレントチェーン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、動力伝動装置の一部を構成するために用いられるサイレントチェーンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のサイレントチェーンの基本的な構造は、一対の歯を形成してある多数のリンクプレートを、長手方向および板厚方向のそれぞれに配列し、それらをピン(連結部材)によって相対回転できる状態で連結し、全体として無端状(環状)に構成したものである。このようなサイレントチェーンは、駆動側スプロケットおよび従動側スプロケットに巻き掛けられて走行し、駆動側スプロケットのトルクを従動側スプロケットに伝達する機能を有する。
【0003】ところで、サイレントチェーンの走行中において、順次移動するリンクプレートの歯部が従動側スプロケットから離れて駆動側スプロケットに噛み合うまでの領域、つまりスパン領域では、サイレントチェーンの諸元で決まる固有周波数で弦振動が発生し、不快なノイズの原因となる場合が多い。
【0004】このような弦振動を抑制することのできるサイレントチェーンの一例が、特開平8−74939号公報に記載されている。この公報に記載されたサイレントチェーンは、各々一対のピン孔が形成されたリンクプレートと、ピン孔に挿入されてリンクプレート同士を連結する連結ピンと、リンクプレートの最も外側に配置されたガイドプレートとを有している。また、ガイドプレートとリンクプレートとの間、または隣り合うリンクプレート同士の間には、一対のピン孔が形成されたばねリングが配置されている。この一対のピン孔には連結ピンが挿入されている。
【0005】上記構成のサイレントチェーンは、ばねリングの弾性力により、リンクプレート同士がその厚さ方向に押圧されて、リンクプレート同士の接触部分の面圧が高められる。すると、サイレントチェーンが走行する際に、前記スパンの領域でリンクプレート同士を相対回転させる力が働いたとしても、リンクプレート同士の接触面の摩擦力が高められているために、その相対回転が抑制され、弦振動を低減することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、サイレントチェーンの走行時には、スパン領域に位置していたリンクプレートが、順次、駆動側スプロケットに噛み合う際には、リンクプレートの移動方向が、直線方向からスプロケットの外形状に沿った方向(疑似円弧方向)に切り換わる。このようにして、リンクプレートの移動方向が切り換わる際には、隣り合うリンクプレート同士が連結ピンを中心として相対回転する。
【0007】しかしながら上記公報に記載されたサイレントチェーンにおいては、ばねリングの弾性力により、リンクプレート同士がその厚さ方向に常に押圧されてリンクプレート同士の接触面圧が高められている。このため、リンクプレートの移動方向が切り換わる部分において、各リンクプレート同士の相対回転する際にも大きな摩擦力が発生し、リンクプレート同士の相対回転が阻害される。したがって、動力損失が増加してサイレントチェーンのトルク伝達効率が低下する可能性があった。
【0008】この発明は上記の事情を背景としてなされたもので、動力損失を増大させることなく弦振動を抑制することのできるサイレントチェーンを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するため請求項1の発明は、スプロケットに噛み合わされる歯部を有し、かつ、一対の連結孔が設けられた複数のリンクプレートと、厚さ方向に重ね合わされたリンクプレート同士の連結孔に挿入され、かつ、このリンクプレート同士を相対回転できる状態で連結して多数のリンクプレートを無端状に連結する連結部材と、前記リンクプレートに対して厚さ方向の押圧力を加える複数の板形状のばねとを備えているとともに、複数のスプロケットに巻き掛けられた状態で走行するサイレントチェーンにおいて、前記複数のばね同士の一部が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で互いに重なり合うように、複数のばねがサイレントチェーンの走行方向に配置されているとともに、前記各ばねにおける前記投影面内で重なり合う部分に、前記リンクプレートの歯部が、一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに噛み合うまでの間にこのリンクプレートに加えられる押圧力よりも、前記リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合った際にこのリンクプレートに加えられる押圧力の方が小さくなるように制御する押圧力制御機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】請求項1の発明によれば、サイレントチェーンが走行する際に、リンクプレートの歯部が、一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに噛み合うまでの間で、リンクプレート同士を相対回転させる力が作用した場合の摩擦力よりも、リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合った際にリンクプレート同士を相対回転させる力が作用した場合の摩擦力の方が小さくなる。
【0011】請求項2の発明は請求項1の構成に加えて、前記ばねを厚さ方向に貫通する一対の孔が形成され、この一対の孔には前記連結部材が挿入されているとともに、前記押圧力制御機構には、サイレントチェーンの走行方向に沿って直線状に形成されている押圧部が含まれていることを特徴とするものである。
【0012】請求項2の発明によれば、請求項1と同様の作用が生じるほか、リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合うことにより、リンクプレート同士が相対回転すると、リンクプレートに対して厚さ方向の押圧力を加える押圧部同士が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で重なる面積が減少する。
【0013】請求項3の発明は請求項2の構成に加えて、前記押圧部が、サイレントチェーンの走行方向に沿い、かつ、前記一対の孔を通過する領域に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】請求項3の発明によれば、請求項2と同様の作用が生じるほか、歯部がいずれのスプロケットからも離れているリンクプレートに対して押圧力を加えるばねは、複数のばねの押圧部同士が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内おいて、サイレントチェーンの走行方向で重なる長さが最大になる。
【0015】請求項4の発明は請求項1の構成に加えて、スプロケットに噛み合わされる歯部を有し、かつ、一対の連結孔が設けられた複数のリンクプレートと、厚さ方向に重ね合わされたリンクプレート同士の連結孔に挿入され、かつ、このリンクプレート同士を相対回転できる状態で連結して多数のリンクプレートを無端状に連結する連結部材と、前記リンクプレートに対して厚さ方向の押圧力を加える複数の板形状のばねとを備えているとともに、複数のスプロケットに巻き掛けられた状態で走行するサイレントチェーンにおいて、前記複数のばね同士の一部が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で互いに重なり合うように、複数のばねがサイレントチェーンの走行方向に配置されているとともに、前記各ばねにおける前記投影面内で重なり合う部分に、前記ばねを厚さ方向に貫通する一対の孔が形成され、この一対の孔には前記連結部材が挿入されているとともに、前記ばねの表面のうち、前記一対の孔を通過し、かつ、前記サイレントチェーンの走行方向に沿う帯状領域の摩擦係数の方が、この帯状領域以外の領域の摩擦係数よりも大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0016】請求項4の発明によれば、歯部が一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに噛み合うまでの間に位置しているリンクプレート同士において、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で摩擦係数の大きい帯状領域同士が重なる面積よりも、歯部が他方のスプロケットに噛み合って相対回転するリンクプレート同士において、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で摩擦係数の大きい帯状領域同士が重なる面積の方が狭くなる。
【0017】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明の実施例を図面を参照して説明する。図2はチェーン駆動機構ユニットK1を示す正面図であり、このチェーン駆動機構ユニットK1は、各種の動力伝達装置の一部を構成するために用いられるものであり、例えば四輪駆動車のトランスファや、車両用エンジンのカムシャフト駆動機構などに用いられる。チェーン駆動機構ユニットK1は、サイレントチェーン1と、サイレントチェーン1が巻き掛けられた駆動側スプロケット2および従動側スプロケット3を有している。
【0018】図1は、サイレントチェーン1の部分的な平面図であり、図3は、サイレントチェーン1の部分的な正面図である。サイレントチェーン1は、複数のリンクプレート4を有しており、各リンクプレート4の正面形状は、楔形の歯部5を2つ備えた形状に設定されている。各リンクプレート4における歯部5の基端側には、リンクプレート4を厚さ方向に貫通する連結孔6が、それぞれ2つずつ形成されている。この連結孔6の正面形状はほぼ円形に構成されている。
【0019】各リンクプレート4がその長手方向に多数配列され、かつ、厚さ方向に多数配列されている。ここで、各リンクプレート4をその厚さ方向に配列する場合は、隣接するリンクプレート4同士が、長手方向に半分ずつ位置ずれした状態で配置されている。そして、厚さ方向において隣り合うリンクプレート4同士の連結孔6にロッカーピン7を挿入することにより、各リンクプレート4が相互に回転可能に連結されている。
【0020】また、各リンクプレート4の厚さ方向の両端に配置されているリンクプレート4の側面側にはガイドプレート8がそれぞれ配置されている。また、ガイドプレート8を厚さ方向に貫通する2つの孔9が形成され、各孔9にロッカーピン7が挿入されている。そして、各ロッカーピン7の長さ方向の両端にカシメ加工が施されることにより、ロッカーピン7が連結孔6および孔9から脱落しないように構成されている。このようにして、各リンクプレート4をその長手方向および厚さ方向に連結することにより、図2に示すような無端状(言い換えれば環状)のサイレントチェーン1が構成されている。また、各リンクプレート4の歯部5が、サイレントチェーン1の内側に向けられており、サイレントチェーン1の一部を構成する複数のリンクプレート4の歯部5が、駆動側スプロケット2および従動側スプロケット3に噛み合わされている。
【0021】さらに、厚さ方向に隣り合わせて配置されているリンクプレート4同士の間には、皿ばね10が配置されている。この皿ばね10はばね鋼などの材料を板形状に成形したものであり、皿ばね10の正面形状はリンクプレート4と相似する形状に構成されている。そして、図3に示すように、リンクプレート4の厚さ方向の投影面における皿ばね10の面積の方が、リンクプレート4の面積よりも狭く設定されている。
【0022】図4は、サイレントチェーン1を組み立てる前の状態における皿ばね10の正面図、図5は、図4のV−V線における平面断面図、図6は、図4のVI−VI線における側面断面図である。皿ばね10はサイレントチェーン1の内側に向けて突出する2つの歯部11を有し、2つの歯部11の基端側には一対の孔12が、皿ばね10を厚さ方向に貫通して形成されている。この一対の孔12の正面形状はほぼ円形に構成され、孔12の内径と連結孔6の内径とが同一に設定されている。
【0023】皿ばね10は、一対の孔12の中心を通過する帯状片13と、この帯状片13の幅方向の両側に接続され、かつ、帯状片13に対して所定角度傾斜した傾斜片14,15とを有している。つまり、皿ばね10は、図6に示すように側面断面形状がほぼ「くの字形」に折り曲げられている。言い換えれば、皿ばね10は、サイレントチェーン1の走行方向に対して直交する平面(図示せず)内で屈曲されている。このようにして、皿ばね10の見かけ上の曲げ剛性が高められている。各皿ばね10は傾斜片14,15が同じ方向に向けられた状態で、リンクプレート4同士の間に設けられている。そして、前記一対の孔12は帯状片13および傾斜片14,15に亘って配置され、一方の傾斜片15に前記歯部11が形成されている。この歯部11がサイレントチェーン1の内側に向けて配置されている。
【0024】上記のように構成された皿ばね10が、図1に示すようにリンクプレート4同士の間に対して、各皿ばね10の長さ方向の一部を重ね合わせた状態で組み付けられており、各孔12にロッカーピン7が挿入されている。そして、ロッカーピン7の両端にカシメ加工が施された状態、つまり、サイレントチェーン1の組立状態においては、その組み付け荷重により、皿ばね10の平面形状がほぼ一直線になっている。このため、皿ばね10の弾性力が各リンクプレート4に対してその厚さ方向に作用している。
【0025】ここで、この発明の実施形態とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、駆動側スプロケット2がこの発明の一方のスプロケットに相当し、従動側スプロケット3がこの発明の他方のスプロケットに相当し、ロッカーピン7がこの発明の連結部材に相当し、皿ばね10がこの発明のばねに相当し、帯状片13がこの発明の押圧力制御機構および押圧部に相当する。
【0026】上記構成のチェーン駆動機構ユニットK1の動作を説明する。駆動側スプロケット2が図2において反時計方向に回転すると、サイレントチェーン1が図2において反時計方向に走行(回転移動)し、駆動側スプロケット2のトルクが従動側スプロケット3に伝達されて、従動側スプロケット3が図2の反時計方向に回転する。つぎに、サイレントチェーン1の走行中における具体的な作用について説明する。
【0027】まず、リンクプレート4の歯部5が従動側スプロケット3から離れる離脱位置A1から、駆動側スプロケット2に噛み合うまでの噛み合い位置B1に至るまでの領域、つまりスパン領域S1においては、多数のリンクプレート4の一部がほぼ直線方向に移動する。そして、この実施形態のサイレントチェーン1においては、皿ばね10の弾性力によりリンクプレート4同士が厚さ方向に押圧されて、リンクプレート4同士の接触面圧が高められている。また、図3に示すように、隣り合う皿ばね10の帯状片13同士がほぼ直線状に位置している。つまり、帯状片13同士の長さ方向の中心線(図示せず)なす角度がほぼ零度に設定されている。
【0028】具体的には、皿ばね10からリンクプレート4に対して厚さ方向に押圧力を作用させる領域の主要部、つまり、リンクプレート4の厚さ方向の投影面内における帯状片13同士の重なり領域(斜線で示す領域)P1が、皿ばね10の長手方向における最大長さに設定されている。このようにして、帯状片13同士の全てが、リンクプレート4の厚さ方向の投影面内で重なって(交錯して)おり、リンクプレート4同士の単位面積あたりの接触面圧が、一層高められている。
【0029】このため、スパン領域S1においてリンクプレート4同士を相対回転させようとする力が働いたとしても、リンクプレート4同士の接触面の摩擦力が高められているために、ロッカーピン7を中心とするリンクプレート同士の相対回転が抑制される。したがって、スパン領域S1において、サイレントチェーン1の諸元で決まる固有周波数で弦振動(図2において上下方向の振動)することが抑制され、不快なノイズ(騒音)を回避することができる。
【0030】つぎに、サイレントチェーン1の走行により、リンクプレート4がスパン領域S1から噛み合い位置B1に向けて、順次移動する場合の作用を説明する。この場合は、リンクプレート4の移動方向が駆動側スプロケット2の外径状に沿って疑似円弧形状になるため、リンクプレート4同士がロッカーピン7を中心として所定角度の範囲で相対回転する。つまり、帯状片13同士の長手方向の中心線(図示せず)の成す角度が、零度を越えた状態になる。すると、リンクプレート4の厚さ方向の投影面内において、帯状片13同士の重なり領域P2の面積が、スパン領域S1の時点の重なり領域P1の面積よりも急激に減少する。このため、スパン領域S1から噛み合い位置B1にさしかかった場合は、リンクプレート4同士の接触面圧が低減され、リンクプレート4同士の接触面の摩擦力が減少して相対回転が容易になる。したがって、リンクプレート4同士の摩擦力による動力損失が抑制され、チェーン駆動機構ユニットK1のトルク伝達効率の低下を抑制することができる。すなわち、サイレントチェーン1の弦振動の抑制機能と、動力伝達損失の抑制機能とを両立させることができる。
【0031】この実施形態においては、皿ばねにおける一対の孔を含む帯状領域の表面粗さを、その他の領域の表面粗さよりも粗く設定することもできる。このように構成すると、リンクプレート同士がスパン領域にある場合は、各皿ばねの帯状領域がほぼ直線状に位置し、互いにリンクプレートの厚さ方向の投影面内で全て重なることになり、各リンクプレート同士の接触面の摩擦力が高められる。これに対して、リンクプレートがスパン領域から噛み合い位置にさしかかった場合は、リンクプレート同士の相対回転により帯状領域同士の重なり面積が減少するため、リンクプレート同士の接触面の摩擦力が減少する。したがって、上記実施形態と同様の効果を得られる。このように、皿ばねの一部の領域の表面粗さを、ほかの領域の表面粗さよりも粗く設定する、つまり、皿ばねの一部の領域の摩擦係数を、ほかの領域の摩擦係数よりも大きく設定する具体例としては、皿ばねの表面に摩擦材を貼着する方法が例示される。また、この実施形態において、皿ばねをリンクプレートとガイドプレートとの間に配置することも可能である。
【0032】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、サイレントチェーンの走行中は、リンクプレートが一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに到達するまでの間は、リンクプレート同士を相対回転させようとする力が働いたとしても、リンクプレート同士の接触面における摩擦力が高められてサイレントチェーンの弦振動を抑制することができる。これに対して、リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合ってリンクプレート同士を相対回転させようとする力が働いた場合は、リンクプレート同士の接触面の摩擦力が減少するため、動力の損失が抑制されてトルク伝達効率の低下を抑制することができる。
【0033】請求項2の発明によれば、リンクプレート同士が相対回転すると、複数のばねからリンクプレートの厚さ方向に対して押圧力を加える押圧部同士が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で重なる面積が減少し、押圧部同士による単位面積あたりの押圧力が低下することにより、請求項1と同様の効果を得られる。
【0034】請求項3の発明によれば、請求項2と同様の効果を得られるほか、リンクプレート同士が相対回転しない状態では、複数のばねからリンクプレートの厚さ方向に対して押圧力を加える押圧部同士が、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内において、サイレントチェーンの走行方向で重なる長さが最大になる。したがって、サイレントチェーンの一部が直線移動する場合の相対回転抑制機能が向上し、弦振動を一層抑制することができる。
【0035】請求項4の発明によれば、歯部が一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに噛み合うまでの間に位置しているリンクプレート同士において、各リンクプレートの厚さ方向の投影面内で摩擦係数の大きい帯状領域同士が重なる面積が広くなる。したがって、リンクプレートが一方のスプロケットから離れて他方のスプロケットに到達するまでの間は、リンクプレート同士を相対回転させようとする力が働いたとしても、リンクプレート同士の接触面における摩擦力が高められてサイレントチェーンの弦振動を抑制することができる。これに対して、リンクプレートの歯部が他方のスプロケットに噛み合ってリンクプレート同士を相対回転させようとする力が働いた場合は、摩擦係数の大きい帯状領域同士が重なる面積が減少してリンクプレート同士の接触面の摩擦力が減少するため、動力の損失が抑制されてトルク伝達効率の低下を抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年4月22日(1999.4.22)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2000−304105(P2000−304105A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−115400