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【発明の名称】 フッ素樹脂被覆ベルト及びその製造方法
【発明者】 【氏名】柏原 秀樹

【氏名】滝口 敏彦

【氏名】池田 吉隆

【氏名】宮本 昌宏

【氏名】加藤 千明

【要約】 【課題】ゴムや樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトであって、ベルト基体とフッ素樹脂被膜との界面で熱劣化がなく、両者が一体的に複合化され、耐久性に優れたフッ素樹脂被覆ベルト、並びにその製造方法を提供すること。

【解決手段】ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトにおいて、ゴムまたは樹脂の熱分解開始温度(Trp)がフッ素樹脂の融点(Tf)未満であり、かつ、ベルト基体とフッ素樹脂被膜とが一体的に複合化されていることを特徴とするフッ素樹脂被覆ベルト及びその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトにおいて、ゴムまたは樹脂の熱分解開始温度(Trp)がフッ素樹脂の融点(Tf)未満であり、かつ、ベルト基体とフッ素樹脂被膜とが一体的に複合化されていることを特徴とするフッ素樹脂被覆ベルト。
【請求項2】 フッ素樹脂被膜の強度が100kgf/cm2 以上で、かつ伸びが150%以上である請求項1記載のフッ素樹脂被覆ベルト。
【請求項3】 ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法において、(1)円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成し、(2)円筒状金型の内腔に軸心を一致させて中芯を挿入し、次いで、(3)円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と中芯との間の隙間にゴムまたは樹脂材料を注入し、硬化または固化させてゴムまたは樹脂層を形成し、それによって、ゴムまたは樹脂層からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜を一体的に複合化させることを特徴とするフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法。
【請求項4】 前記工程(1)において、円筒状金型の内面にフッ素樹脂粉体を粉体塗装し、焼成して、フッ素樹脂被膜を形成する請求項3記載のフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法。
【請求項5】 フッ素樹脂被膜を形成した後、さらに該フッ素樹脂被膜の表面をエッチング処理する請求項3または4に記載のフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜を形成したフッ素樹脂被覆ベルト及びその製造方法に関する。本発明のフッ素樹脂被覆ベルトは、搬送用などの広範な用途に適用することができるが、特に電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置における各種ベルト(例えば、記録紙やトナー搬送ベルト、転写ベルトなど)として好適である。
【0002】
【従来の技術】従来より、各種ゴムや樹脂から形成されたベルトは、搬送用などの広範な用途に使用されている。このようなベルトにおいて、表面の離型性、平滑性、耐熱性などが高度に要求される用途に適用する場合には、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜を一体的に複合化して、フッ素樹脂被覆ベルトにすることが有効である。
【0003】例えば、電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置では、転写ベルト、帯電ベルト、定着ベルト、搬送ベルトなどとして種々のベルト部材が使用されている。これらのベルト部材には、トナーに対する離型性に優れていることが求められている。また、ベルト部材の用途によっては、離型性に加えて、表面平滑性や耐熱性などに優れていることも要求されている。より具体的に、転写ベルトを例にとって説明する。
【0004】電子写真方式の画像形成プロセスでは、一般に、■感光体表面を一様かつ均一に帯電する帯電工程、■像露光を行って感光体表面に静電潜像を形成する露光工程、■この静電潜像に逆電荷を帯びたトナーを付着させてトナー画像を形成する現像工程、■このトナー画像を記録紙などの転写材上に転写する転写工程、及び■転写したトナー画像を加熱するなどの手段で転写材上に定着させる定着工程を順次経ることによって、画像を形成している。
【0005】転写ベルトは、現像工程で感光体上に静電潜像に従って形成されたトナー画像を、一度この転写ベルト上に移し、次に、転写したトナー画像を記録紙などの転写材上に移す役割を果たしている。従来の転写ベルトは、ウレタンゴムなどから形成されているが、ウレタンゴム表面は離型性に劣るため、ウレタンゴム製の転写ベルト上にトナーが固着しやすく、転写ベルト表面が汚れやすい。転写ベルト表面がトナーで汚れると、その汚れを記録紙に転写して、画像が二重写りになるオフセット現象が生じる。転写ベルトで記録紙を直接帯電させて、感光体上のトナー画像を記録紙上に転写する方式でも、転写ベルトの表面にトナーが付着して汚れると、その汚れが記録紙に付着する。
【0006】このような転写ベルトの汚れや、それに起因するオフセット現象などを防ぐには、転写ベルト表面にフッ素樹脂被膜を設けて、トナーに対する離型性を高める方法が効果的である。しかしながら、ウレタンゴムなどのゴムや樹脂からなるベルト基体上に、該ベルト基体を劣化させることなくフッ素樹脂被膜を形成することは極めて困難であった。その理由は、フッ素樹脂被膜を形成する工程では、ベルト基体上にフッ素樹脂塗料を塗布し、乾燥した後、フッ素樹脂の融点以上の温度で焼成して製膜する必要があるが、フッ素樹脂の融点が高いため、焼成工程で下層のベルト基体を構成するゴムや樹脂が劣化するためである。
【0007】例えば、ウレタンゴムからなるベルト基体は、フッ素樹脂の焼成温度で熱劣化して、変形するとともに亀裂を生じて破壊し、ベルトの形状を維持することができなくなる。このように、ベルト基体を構成するゴムや樹脂の分解開始温度がフッ素樹脂の融点未満であると、フッ素樹脂の焼成工程でベルト基体が劣化し、強度が著しく低下する。分解開始温度がフッ素樹脂の融点以上の樹脂からなるベルト基体は、弾力性、柔軟性または可撓性に劣ることが多く、転写ベルトなどの用途には必ずしも適していない。一方、ベルト基体を構成するゴムや樹脂が劣化するのを防ぐために、フッ素樹脂の焼成条件を緩和すると、フッ素樹脂が十分に焼成されないため、強度や伸びが低いフッ素樹脂被膜しか得ることができない。その結果、フッ素樹脂被覆ベルトの耐久性が著しく低下する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ウレタンゴムなどのゴムや樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトであって、ベルト基体とフッ素樹脂被膜との界面で熱劣化がなく、両者が一体的に複合化され、耐久性に優れたフッ素樹脂被覆ベルトを提供することにある。本発明の他の目的は、トナーの固着による表面汚れが防止され、画像の二重写りが発生しない転写ベルトとして好適なフッ素樹脂被覆ベルトを提供することにある。さらに、本発明の目的は、ベルト基体を構成するゴムや樹脂を劣化させることなく、ベルト基体上に機械的特性に優れたフッ素樹脂被膜を形成することができるフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法を提供することにある。
【0009】本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、ベルト基体上にフッ素樹脂被膜を形成する従来法にかえて、円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成し、該フッ素樹脂被膜上にゴムまたは樹脂材料を用いてベルト基体を形成する方法に想到した。この方法によれば、最初に高温での焼成工程を必要とするフッ素樹脂被膜の形成を行い、その後に、ゴムまたは樹脂層を形成することができるため、分解開始温度が低いゴムや樹脂を用いても、界面での熱劣化のない一体的に複合化したフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。この方法によれば、ベルト基体を熱劣化させることなく、フッ素樹脂を十分に焼成することができるため、強度と伸びに優れたフッ素樹脂被膜を形成することができる。フッ素樹脂として、特にフッ素樹脂粉体を用いて粉体塗装法によりフッ素樹脂被膜を形成すれば、フッ素樹脂被膜の強度や伸びなどの機械的特性が顕著に優れ、耐久性に優れたフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。本発明は、これらの知見に基づいて、完成するに至ったものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトにおいて、ゴムまたは樹脂の熱分解開始温度(Trp)がフッ素樹脂の融点(Tf)未満であり、かつ、ベルト基体とフッ素樹脂被膜とが一体的に複合化されていることを特徴とするフッ素樹脂被覆ベルトが提供される。
【0011】また、本発明によれば、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法において、(1)円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成し、(2)円筒状金型の内腔に軸心を一致させて中芯を挿入し、次いで、(3)円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と中芯との間の隙間にゴムまたは樹脂材料を注入し、硬化または固化させてゴムまたは樹脂層を形成し、それによって、ゴムまたは樹脂層からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜を一体的に複合化させることを特徴とするフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で使用する円筒状金型は、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製であることが好ましいが、フッ素樹脂の焼成温度に耐える耐熱性を持つものであれば、これらに限定されるものではない。また、円筒状金型は、金型として使用する円筒状の中空を有するものであればよく、外側の外形を含む全体が必ずしも円筒状の形状である必要はなく、成形操作に必要な凸部やフランジ等が存在していても構わない。この円筒状金型の内面に良好な離型性を持たせることが、最終工程で、フッ素樹脂被膜と一体的に複合化したベルト基体を円筒状金型から引き抜く操作(脱型)を容易にする上で好ましい。円筒状金型の内面に離型性を持たせるには、平滑化処理を行う方法がある。円筒状金型の内面を平滑化処理するには、例えば、アルミニウム製の場合には、引き抜き材を使用する方法があり、その他の材質からなる場合には、クロムメッキ、ニッケルメッキなどのメッキ処理を行う方法がある。その他の材質からなる円筒状金型の場合、ホーニング処理によって内面を磨き上げ、さらに、クロムメッキ、ニッケルメッキなどのメッキ処理を行う方法を採用してもよい。このような平滑化処理により、円筒状金型内面の表面粗さをできるだけ小さくすることが好ましい。円筒状金型内面を平滑化処理することにより、脱型が容易になることに加えて、表面平滑性に優れたフッ素樹脂層を形成することができる。円筒状金型内面の表面粗さ(Ra)は、1μm以下とすることが好ましく、特に高度の表面平滑性が求められる場合には、0.3μm以下とすることがより好ましい。
【0013】円筒状金型の内径及び長さは、所望の転写ベルトなどの目的とするベルト部材の外径と長さに応じて定めることができる。円筒状金型の内径は、実質的にベルト基体とフッ素樹脂被膜の厚みの和により規定される。円筒状金型の厚みは、特に限定されず、例えば、ゴム硬化時の熱伝導性や機械的強度などを考慮して決定することができるが、通常、1〜10mm程度である。
【0014】本発明で使用するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを挙げることができる。これらの中でも、非粘着性に優れ、トナーが固着しにくいフッ素樹脂被膜が得らやすい点で、PTFE、PFA、及びFEPが好ましく、溶融流動性が良好で、表面平滑性に優れたフッ素樹脂被膜が得られやすい点で、PFA及びFEPが特に好ましい。
【0015】フッ素樹脂の使用形態としては、液体中にフッ素樹脂粒子を分散させたディスパージョン(液状フッ素樹脂塗料)、フッ素樹脂粉体(フッ素樹脂粉体塗料)のいずれでもよい。しかし、ディスパージョンの場合、界面活性剤などの不純物が少量含まれており、これが製膜後も残留する可能性があり、それによって、円筒状金型からのフッ素樹脂被膜の脱型が困難になったり、フッ素樹脂被膜のトナー離型性が低下することがあるので、フッ素樹脂粉体を用いることが好ましい。フッ素樹脂粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、粉体塗装により均一かつ薄い被膜を形成する上で15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。その下限は、通常1μm程度である。特に、平均粒子径10μm以下のPFA粉体を用いることが好ましい。
【0016】液状フッ素樹脂塗料を塗装するには、常法に従って、円筒状金型内面に該塗料を塗布し、乾燥して、焼成すればよい。フッ素樹脂粉体塗料を塗装するには、汎用の各種粉体塗装法を採用することができるが、それらの中でも、粉体を帯電させて塗布する静電塗装法(静電粉体吹き付け法)を用いることが、円筒状金型の内面に、均一で、よく締まった塗着粉体層を形成する上で好ましい。円筒状金型の内面に粉体塗装法によりフッ素樹脂塗膜を形成した後、常法に従って、フッ素樹脂を焼成する。焼成後のフッ素樹脂被膜の厚みは、通常0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜40μm程度である。
【0017】フッ素樹脂被膜とゴムまたは樹脂からなるベルト基体との間の接着力を高めるために、フッ素樹脂被膜の表面をエッチング処理することが好ましい。フッ素樹脂被膜のエッチング処理法としては、UVランプ、エキシマランプなどによる紫外線照射、コロナ放電、プラズマ処理、電子線照射、イオン照射、レーザー照射などの照射による物理的処理(乾式エッチング処理);金属ナトリウムによる化学的エッチング処理;処理液による湿式エッチング処理;などが挙げられる。これらのエッチング処理によって、フッ素樹脂被膜の表面からフッ素原子が引き抜かれたり、表面が親水化されたりするので、ゴムまたは樹脂層からなるベルト基体との間の接着力が高まる。また、フッ素樹脂被膜の表面には、ゴムや樹脂層の材質に適した接着剤を塗布することができる。フッ素樹脂被膜のエッチング処理後に、接着剤を塗布してもよい。
【0018】フッ素樹脂被膜の強度は、100kgf/cm2 以上であることが好ましく、200kgf/cm2 以上であることがより好ましい。また、フッ素樹脂被膜の伸びは、150%以上であることがより好ましく、200%以上であることがより好ましい。フッ素樹脂被膜の強度が高く、かつ、靭性に優れていることによっって、耐久性に優れたフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。このような高い強度と伸びを有するフッ素樹脂被膜は、好ましくは、フッ素樹脂粉体塗料を使用することによって容易に得ることができる。
【0019】本発明では、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体を使用する。ベルト基体は、未硬化のゴム材料または熱硬化性若しくは熱可塑性樹脂材料を用いて、金型内面に形成したフッ素樹脂被膜の上に、ゴム層または樹脂層として形成する。ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、EPDMゴムなどが挙げられる。注入しやすいゴム材料として、2液を混合して硬化させる液状シリコーン、ポリオールとイソシアネートを混合して硬化させる液状ウレタンが好ましい。ゴム材料として、熱可塑性エラストマーを用いてもよい。ウレタンゴムとしては、ジイソシアネートとポリオールを重付加反応して製造するポリエステルタイプ及びポリエーテルタイプのポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。シリコーンゴムとしては、ジメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、ビニルシリコーンゴムなどが挙げられる。フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデンゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴム、フルオロポリエーテルなどが挙げられる。EPDMゴムは、エチレン、プロピレンに少量の第三成分を炭化水素溶媒中でチーグラー触媒により重合して製造したものを挙げることができる。樹脂材料としては、熱硬化性及び熱可塑性のいずれでもよく、例えば、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。実施例ではウレタンゴムを用いているが、特にウレタンゴムに限定されるものではない。
【0020】ゴムまたは樹脂には、所望により、カーボンブラック、マイカ、酸化チタンなどの無機充填材や有機充填材を配合することができる。充填材の配合割合は、ゴムまたは樹脂100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは80重量部以下である。また、ゴムまたは樹脂には、加硫剤、加硫助剤、安定剤、老化防止剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。ゴムまたは樹脂層(ベルト基体)の厚みは、用途や設置する機械装置の構造、目標とする弾性、用いる材料の硬度等を勘案して適宜設置されるが、通常100μm〜5mm、好ましくは0.1〜3mm程度である。
【0021】本発明の方法によれば、フッ素樹脂の融点をTf(℃)とし、ゴムまたは樹脂の熱分解開始温度をTrp(℃)とした場合、TrfがTf未満のゴムまたは樹脂を用いてベルト基体を作製しても、フッ素樹脂被膜とベルト基体との界面でベルト基体が熱劣化を起こすことなく、一体的に複合化したフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。ここで、熱分解開始温度は、熱重量天秤で測定し、重量減少が0.5%を越える温度と定義する。熱分解開始温度は、例えば、ウレタンゴムでは150℃付近、シリコーンゴムでは180℃付近となる。したがって、転写ベルトなどの用途に好適な弾力性や柔軟性、可撓性などを有するゴムまたは樹脂を使用することができる。ゴムまたは樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂塗料を塗装し、焼成する方法では、下層のベルト基体が熱劣化するため、フッ素樹脂被膜とベルト基体との界面での接着力が良好で一体的に複合化したフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができない。本発明のフッ素樹脂被覆ベルトは、図1に断面図を示すように、ゴムまたは樹脂からなるベルト基体1上に、フッ素樹脂被膜2が形成された層構成を有する複合化物である。
【0022】本発明のフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法では、(1)円筒状金型の内面にフッ素樹脂被膜を形成し、(2)円筒状金型の内腔に軸心を一致させて中芯を挿入し、次いで、(3)円筒状金型内面のフッ素樹脂被膜と中芯との間の隙間にゴムまたは樹脂材料を注入し、硬化または固化させてゴムまたは樹脂層を形成し、それによって、ゴムまたは樹脂層からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜を一体的に複合化させる。成形後には、フッ素樹脂被膜/ベルト基体/中芯を円筒状金型から脱型し、次いで、中芯を引き抜いて、フッ素樹脂被膜/ベルト基体の層構成を有するフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。
【0023】本発明のフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法の概要を図2に示す。図2(a)の断面図を示すように、円筒状金型3の内面にフッ素樹脂塗料を塗布し、焼成してフッ素樹脂被膜2を形成する。次いで、所望により、フッ素樹脂被膜2の表面をエッチング処理したり、接着剤の塗布を行う。円筒状金型の内面は、予め平滑化処理を行っておくことが好ましい。次に、図2(b)に示すように、フッ素樹脂被膜2を内面に形成した円筒状金型3の中空内に、中芯4を挿入する。中芯4の表面には、離型剤を塗布しておくことが好ましい。円筒状金型3の中心と中芯4の中心が一致するようにセットする。すなわち、両者の軸心を合わせる。
【0024】次いで、図2(c)に示すように、フッ素樹脂被膜2と中芯4との間の隙間にゴムまたは樹脂材料1を注入し、硬化または固化してゴムまたは樹脂層(ベルト基体)を形成する。ゴムまたは樹脂材料の注入は、例えば、液状ゴム材料を用いたり、樹脂材料を溶融して注型するなどの方法が採用される。ゴム材料や熱硬化性樹脂材料を硬化するには、それぞれの硬化条件に適合した熱処理温度と熱処理時間などを採用すればよい。ゴムまたは樹脂の注入には、インジェクション、押し出し、注型などの適当な方法を採用することができる。なお、図示していないが、ゴムまたは樹脂の注入や硬化などに際し、通常は、円筒状金型の一端または両端を密封しておく。
【0025】図2(d)に示すように、ゴムや樹脂材料の硬化または固化後、フッ素樹脂被膜2及びゴムまたは樹脂層1と共に中芯4を円筒状金型から脱型する。脱型後の中芯付きのフッ素樹脂被覆ベルトを図2(e)に示す。次いで、中芯4を抜き去れば、ベルト基体1上にフッ素樹脂被膜2が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトを得ることができる。この製造方法によれば、フッ素樹脂を十分に焼成して、膜強度及び伸びの高いフッ素樹脂被膜を得ることができる。また、ベルト基体のゴムまたは樹脂がフッ素樹脂の焼成温度に曝されることがなく、熱劣化しない。
【0026】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
[実施例1]内径80mmφ、長さ300mmのステンレス製円筒(金型)の内面をクロムメッキし、次いで、形成されたクロムメッキ面にフッ素樹脂粉体ディスパージョン塗料(ダイキン社製AD2−CR)を塗布して、100℃で30分間乾燥後、380℃で30分間熱処理して、厚さ20μmのフッ素樹脂被膜を形成した。このようにして形成されたフッ素樹脂被膜の強度は100kgf/cm2 で、伸びは150%であった。一方、外径76mmφ、長さ300mmのアルミニウム製中芯の表面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。前記のフッ素樹脂被膜を形成したステンレス製円筒の内腔に、離型剤を塗布したアルミニウム製中芯を挿入し、両者の軸心が一致するようにセットした。ステンレス製円筒とアルミニウム製中芯との間の隙間に、液状ウレタン(住友バイエルウレタン社製SBUポリオール0620+SBUイソシアネート0389)を流し込み、120℃で60分間熱処理して液状ウレタンを硬化させた。その後、フッ素樹脂被膜と一体化したウレタンゴム層とアルミニウム製中芯をステンレス製円筒から脱型し、次いで、アルミニウム製中芯を抜き去って、フッ素樹脂被覆ベルトを得た。
【0027】このようにして得られたフッ素樹脂被覆ベルトの上に、キャノン社製レーザービームプリンターの4色のカラートナー(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナー)をマイナスに帯電させ、それぞれ0.1gづつ載せた。その上から普通紙を載せ、この紙の背面からプラス電荷を印可して、マイナスに帯電したトナーをクーロン力によって紙に付着させた。その結果、トナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。これを100回繰り返したが、いずれの場合でもトナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。さらに、この操作を1000回まで繰り返したところ、500回目からわずかにベルトにトナーの付着による汚れが発生したが、この汚れが紙に転写されて二重写りになるオフセット現象は生じなかった。また、500回目で、ウレタンゴム層とフッ素樹脂被膜との間の一部に剥離が生じたが、トナーの紙への転写には問題はなかった。
【0028】[実施例2]内径80mmφ、長さ300mmのステンレス製円筒(金型)の内面をクロムメッキし、次いで、形成されたクロムメッキ面に平均粒子径10μmのPFAフッ素樹脂粉体(デュポン社製MP−102)を粉体塗装し、380℃で30分間熱処理して厚さ20μmのフッ素樹脂被膜を形成した。このフッ素樹脂被膜の強度は200kgf/cm2 で、伸びは200%であった。一方、外径76mmφ、長さ300mmのアルミニウム製中芯の表面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。前記のフッ素樹脂被膜を形成したステンレス製円筒の内腔に、離型剤を塗布したアルミニウム製中芯を挿入し、両者の軸心が一致するようにセットした。ステンレス製円筒とアルミニウム製中芯との間の隙間に、液状ウレタン(住友バイエルウレタン社製SBUポリオール0620+SBUイソシアネート0389)を流し込み、120℃で60分間熱処理して液状ウレタンを硬化させた。その後、フッ素樹脂被膜と一体化したウレタンゴム層とアルミニウム製中芯をステンレス製円筒から脱型し、次いで、アルミニウム製中芯を抜き去って、フッ素樹脂被覆ベルトを得た。
【0029】このようにして得られたフッ素樹脂被覆ベルトの上に、キャノン社製レーザービームプリンターの4色のカラートナー(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナー)をマイナスに帯電させ、それぞれ0.1gづつ載せた。その上から普通紙を載せ、この紙の背面からプラス電荷を印可して、マイナスに帯電したトナーをクーロン力によって紙に付着させた。その結果、トナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。これを1000回繰り返したが、いずれの場合でもトナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。また、500回目で、ウレタンゴム層とフッ素樹脂被膜との間の一部に剥離が生じたが、トナーの紙への転写には問題はなかった。
【0030】[実施例3]内径80mmφ、長さ300mmのステンレス製円筒(金型)の内面をクロムメッキし、次いで、形成されたクロムメッキ面に平均粒子径10μmのPFAフッ素樹脂粉体(デュポン社製MP−102)を粉体塗装し、380℃で30分間熱処理して、厚さ20μmのフッ素樹脂被膜を形成した。このフッ素樹脂被膜の強度は200kgf/cm2 で、伸びは200%であった。このフッ素樹脂被膜の表面にエッチング処理液(潤工社社製テトラエッチ液)を塗布し、水洗して、エッチング処理を行った。次に、エッチング処理面にシリコーン系接着剤(東レダウコーニングシリコーン社製DY39−012)を塗布して、風乾した。一方、外径76mmφ、長さ300mmのアルミニウム製中芯の表面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。前記のフッ素樹脂被膜を形成したステンレス製円筒の内腔に、離型剤を塗布したアルミニウム製中芯を挿入し、両者の軸心が一致するようにセットした。ステンレス製円筒とアルミニウム製中芯との間の隙間に、液状ウレタン(住友バイエルウレタン社製SBUポリオール0620+SBUイソシアネート0389)を流し込み、120℃で60分間熱処理して液状ウレタンを硬化させた。その後、フッ素樹脂被膜と一体化したウレタンゴム層とアルミニウム製中芯をステンレス製円筒から脱型し、次いで、アルミニウム製中芯を抜き去って、フッ素樹脂被覆ベルトを得た。
【0031】このようにして得られたフッ素樹脂被覆ベルトの上に、キャノン社製レーザービームプリンターの4色のカラートナー(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナー)をマイナスに帯電させ、それぞれ0.1gづつ載せた。その上から普通紙を載せ、この紙の背面からプラス電荷を印可して、マイナスに帯電したトナーをクーロン力によって紙に付着させた。その結果、トナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。これを1000回繰り返したが、いずれの場合でもトナーの全量が紙に転写され、ベルトに汚れは発生しなかった。また、ウレタンゴム層とフッ素樹脂被膜との間に剥離は生じなかった。
【0032】[比較例1]内径80mmφ、長さ300mmのステンレス製円筒(金型)の内面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。一方、外径76mmφ、長さ300mmのアルミニウム製中芯の表面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。前記の離型剤を塗布したステンレス製円筒の内腔に、離型剤を塗布したアルミニウム製中芯を挿入し、両者の軸心が一致するようにセットした。ステンレス製円筒とアルミニウム製中芯との間の隙間に、液状ウレタン(住友バイエルウレタン社製SBUポリオール0620+SBUイソシアネート0389)を流し込み、120℃で60分間熱処理して液状ウレタンを硬化させた。その後、ウレタンゴム層とアルミニウム製中芯をステンレス製円筒から脱型し、次いで、アルミニウム製中芯を抜き去って、ウレタンゴムベルトを得た。このようにして得られたウレタンゴムベルトの上に、キャノン社製レーザービームプリンターの4色のカラートナー(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各トナー)をマイナスに帯電させ、それぞれ0.1gづつ載せた。その上から普通紙を載せ、この紙の背面からプラス電荷を印可して、マイナスに帯電したトナーをクーロン力によって紙に付着させた。その結果、トナーの90%は紙に転写されたが、10%はウレタンゴムベルト上に残り、ベルトに汚れが発生した。さらに、この操作を10回繰り返すと、ベルト全面に汚れが発生し、この汚れが紙に転写して二重写りが生じた。
【0033】[比較例2]内径80mmφ、長さ300mmのステンレス製円筒(金型)の内面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。一方、外径76mmφ、長さ300mmのアルミニウム製中芯の表面に離型剤(旭硝子社製モールドスパット)を塗布した。前記の離型剤を塗布したステンレス製円筒の内腔に、離型剤を塗布したアルミニウム製中芯を挿入し、両者の軸心が一致するようにセットした。ステンレス製円筒とアルミニウム製中芯との間の隙間に、液状ウレタン(住友バイエルウレタン社製SBUポリオール0620+SBUイソシアネート0389)を流し込み、120℃で60分間熱処理して液状ウレタンを硬化させた。その後、ウレタンゴムとアルミニウム製中芯をステンレス製円筒から脱型し、次いで、アルミニウム製中芯を抜き去って、ウレタンゴムベルトを得た。このウレタンゴムベルト上にフッ素樹脂ディスパージョン塗料(ダイキン社製AD2−CR)を塗布し、100℃で30分間乾燥後、380℃で30分間熱処理して、厚さ20μmのフッ素樹脂被膜を形成した。その結果、フッ素樹脂被膜を形成することができたが、ウレタンゴムベルトが熱劣化して、変形するとともに亀裂を生じて破壊し、ベルトの形状を維持することができなかった。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、ゴムや樹脂からなるベルト基体上にフッ素樹脂被膜が形成されたフッ素樹脂被覆ベルトであって、ベルト基体とフッ素樹脂被膜との界面で熱劣化がなく、両者が一体的に複合化され、耐久性に優れたフッ素樹脂被覆ベルトが提供される。本発明によれば、トナーの固着による表面汚れが防止され、画像の二重写りが発生しない転写ベルトとして好適なフッ素樹脂被覆ベルトが提供される。さらに、本発明によれば、ベルト基体を構成するゴムや樹脂を劣化させることなく、ベルト基体上に機械的特性に優れたフッ素樹脂被膜を形成することができるフッ素樹脂被覆ベルトの製造方法が提供される。本発明のフッ素樹脂被覆ベルトは、搬送用などの広範な用途に適用することができるが、特に電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置における転写ベルトをはじめとする各種ベルトとして好適である。
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成11年4月20日(1999.4.20)
【代理人】 【識別番号】100093528
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 繁明
【公開番号】 特開2000−304101(P2000−304101A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−112171