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【発明の名称】 チェーンブッシュおよびブッシュドチェーン
【発明者】 【氏名】加藤 令

【氏名】中野 健治

【要約】 【課題】含油率を増加させるために焼結密度を高くする必要もなく、また、金属製部材のみで構成された駆動用または搬送用のチェーンでは使用できない高温環境下でも使用できる駆動用または搬送用のチェーンを製造するために使用するチェーンブッシュ、および同ブッシュを使用して製造したブッシュドチェーンの提供。

【解決手段】チェーンブッシュをSiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料から製造することにより課題達成。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 SiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料からなることを特徴とするチェーンブッシュ。
【請求項2】 前記SiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料で、チェーンブッシュの長手方向の熱膨張率がチェーンブッシュの直径方向の熱膨張率に比較して小さいことを特徴とする請求項1に記載のチェーンブッシュ。
【請求項3】 SiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料からなるチェーンブッシュを使用したことを特徴とするブッシュドチェーン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、含油ブッシュドチェーンの代替用のチェーンブッシュとしても使用可能な高温環境下で使用する駆動または搬送用のチェーンに装着するブッシュ、および同ブッシュを使用したブシュドチェーンに関する。
【0002】
【従来の技術】 定期的に給油することを必要としない含油ブッシュドチェーンの場合には、含油率を高める工夫が色々なされているが、そのような試みの1つとして、特定の焼結密度を有し、その上に装着されるローラの肉厚よりも特定の範囲内で肉厚として使用するチェーンブッシュが実開平1−108445号公報に提案されている。しかし、この様な含油ブッシュドチェーンは油を含有しているために、食品加工の分野では、その使用が限定されている。一方、高温環境下で使用される駆動または搬送用のチェーンの部品またはチェーンそのものを炭素繊維強化炭素複合材料を使用して作製するという提案は、これまでに色々なされている。例えば、特公平3−5581号公報には、炭素繊維を一定の方式に従い型の上に巻き付け、これを接着剤で固定して作製した部材を使用して製造する搬送用手段が、また、特公平8−30519号公報には、炭素繊維強化炭素複合材料を少なくとも引張り強度部材として使用した駆動用または搬送用のチェーンが開示されている。
【0003】 しかしながら、実際には、炭素繊維強化炭素複合材料を少なくともその一部に使用した駆動用または搬送用のチェーンは極めて限られた分野で使用されているに過ぎない。これは、炭素繊維強化炭素複合材料が依然として高価であるか、または炭素繊維強化炭素複合材料から製造する際の加工上の各種の制約によるものと考えられている。さらに、炭素繊維強化炭素複合材料では使用環境によっては所望とする耐久性が出ないことがあるなどの障害が考えられる。また、更には、炭素繊維強化炭素複合材料と金属との熱膨張率の不一致により各部材間の嵌合力に緩みが生じ、チェーン構造を維持できなくなるといった障害もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 本発明は、食品加工の分野でも、油を使用していないために、油による製品への汚染などに特別に留意すること無く使用でき、また、特に高温環境下で使用する駆動用または搬送用のチェーンであって、炭素繊維強化炭素複合材料を使用した駆動用または搬送用のチェーンの様な経済上の制約や加工上の制約に影響を受けない様にするために金属製の部材を可能な限り使用して、金属製の部材のみから構成された駆動用または搬送用のチェーンの場合には、金属製部材同士の高温下での融着により使用できない高温環境下でも使用可能な金属製部材とSiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料製部材とから構成されるハイブリッド駆動用または搬送用のチェーンを製造するために使用するSiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料製部材からなるチェーンブッシュ、および同ブッシュを使用して製造したブッシュドチェーンを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】 本発明者等は、上記の様な現状に鑑みて種々検討した結果、チェーンブッシュをSiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料から製造することにより、焼結密度を特定の範囲にしたものを使用する必要もなく、また、金属製部材のみで構成された駆動用または搬送用のチェーンでは使用できない高温環境下でも使用できることを見いだして、本発明を完成させたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】 本発明に係るチェーンブッシュは、SiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料から構成される。本発明に係るチェーンブッシュを製造するに際しては、特定の大きさを有する炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジットと称されることもある)から、研削により製造してもよいが、研削ロスが多く出るので、できれば炭素繊維強化炭素複合材料を連結ピンの太さに対応した径を有する型に炭素繊維強化炭素複合材料を巻き付け、これに適当な接着剤を含浸させた後成形、焼成し、この焼成体にSiまたはCuを含浸させることにより容易に製造できる。内リンクとの嵌合部分は、焼成後に切削して形成するか、または、予め嵌合部分以外の部分に、嵌合部分に対応した長さ分だけ短い炭素繊維強化炭素複合材料を巻き付けることにより内リンクのブッシュ嵌合径の大きさに対応した嵌合部分を形成させてもよい。
【0007】 ところで、本発明に係るチェーンブッシュはその基本材質が炭素繊維で構成されている為に、潤滑性に富む。特に銅を含浸させたものは、銅の微粒子が潤滑剤の役割を果たすので、含油チェーンブッシュと同様に定期的に給油することも必要ではなく、また、高温条件下でも、油が表面に漏れ出ることもないので、特に高温条件下での使用分野で好適に使用される。特に、厳しい高温条件下、例えば700℃を超える環境温度で使用しても、非酸素雰囲気下であれば金属製部品と組み合わせて使用しても特に問題を引き起こすことなく、また、チェーンブッシュとそれと嵌合する例えば内リンクプレートが共に金属同士の場合のように、融着を引き起こすことなく使用できる。また、Siを含浸させたものは、一部その表面にSi−C結合を形成するので、炭素繊維強化炭素複合材料のみからなるものと比較して固さを有するので、摩擦による摩耗に対して十分な耐性を示す。また、炭素繊維強化炭素複合材料の炭素からなる表面が含浸金属で被覆されるので酸化雰囲気でも酸化による部材の減量が抑制され、特に、Siを含浸させたものは一部SiCが形成されているので、より好適に使用できる。従って、使用環境に応じて、両者を使い分けすることができる。
【0008】 本発明の第1の側面に係るチェーンブッシュの製造に使用するSiまたはCuを含浸させた炭素繊維強化炭素複合材料に使用する炭素繊維強化炭素複合材料は、その製法、原料の如何に関わらず使用できる。しかし、炭素繊維強化炭素複合材料の内、図1に示したように同一方向でかつ、均一に並べられた炭素繊維束(ヤーン)を相互に直交するように積層して製造したプリプレグシート積層体を使用することは耐久性の点で好ましい。
【0009】 本発明の第1の側面に関するブッシュは、炭素繊維布を積層して芯材に巻き付けて接着剤塗布して円筒状の成形体を得、次いで、この成形体を離型後焼成し、この焼成体にSiまたはCuを含浸させて得られる炭素繊維強化炭素複合材料からなる。Siを含浸させたブッシュの場合の長手方向、即ち、軸方向(X−Y軸方向)での熱膨張率は1.3×10-6、直径方向(Y−Z軸方向)での熱膨張率は5.3×10-6であり、Cuを含浸させたブッシュの場合の熱膨張率もほぼ同等である。従って、何れの場合も、X−Y軸方向の熱膨張率は、Y−Z軸方向に比較して金属の熱膨張率と近似しているといえる。
【0010】 チェーンは、外リンクプレートとピン、内リンクプレートとブッシュを嵌合させた構造を有する。しかし、高温下で、内リンクプレートとブッシュとの熱膨張率の差が大きいとこの嵌合が緩む傾向がある。この嵌合が緩むと内リンクプレートに係る張力によりブッシュが内リンクプレートから外れ、外リンクプレートと内リンクプレートとの間に本来ならば存在するクリアランスを減殺し、直接内リンクプレートと外リンクプレートが接触し焼き付け等の好ましくない現象を惹き起こす。本発明に係るブッシュは、金属とは異種材料ではあるが、ブッシュの直径方向においては、両者とも金属に近似した熱膨張率を示すので、高温下でも、同程度の熱膨張を示すこととなり上記した嵌合緩みが起き難い。
【0011】 本発明に係るブッシュは、図2に示すように好ましくは、△Pより△Bの方が大きいという形状的特徴を有している。これは、外リンクプレートと内リンクプレートとの間のクリアランス△C1を強制的に確保し、内リンクプレートと外リンクプレートとの直接接触による焼き付けを防止するためのものである。高温下に於いては、本発明に係るブッシュは軸方向には、金属と比較して充分に低い熱膨張率を有するためにブッシュと外リンクプレートとの間のクリアランス△C2は広がる方向となるので、チェーンの屈曲運動には好ましいこととなる。もしも、軸方向の熱膨張が大きく△C2を減殺することとなれば、屈曲運動に負荷が掛かり、駆動力の増大や、チェーン破断を招くこととなる。
【0012】 本発明の第2の側面に係るブッシュドチェーンは、上記のチェーンブッシュを用いて、適当な金属から製造された連結ピン、内、外リンクプレートと共に組み立てればよい。上記した熱膨張率に異方性を有するブッシュを用いることにより高温下でも好適にその性能を発揮する。即ち、ブッシュの長手方向と同ブッシュの直径方向との熱膨張率に異方性を有するブッシュを使用すると、嵌合部分での熱膨張率の差異による遊びが生じることが少ないので好ましい。また、本発明の第1の側面に係るブッシュを内挿するローラを共に組み込んでもよい。本発明の第2の側面に係るチェーンをレール等でガイドするときにブッシュでレールなどを受けること無くローラが転動するために耐摩耗性の点から有利となる。本発明の第1の側面に係るブッシュには、内リンクプレートとの嵌合部分に切り欠き部を設けてもよい。これにより、ブッシュの内リンクプレート内での回転を防止することができる。図2には段付きブッシュを示しているが、内リンクプレート端面からブッシュが必要量突出ていれば、ことさら段付きとする必要はない。しかし、工業的に安定的に必要量突出させるためには、段付きとすることが好ましい。
【0013】 以下本発明の第1の側面に係るチェーンブッシュ、および第2の側面に係るブッシュドチェーンの製造例を挙げて説明するが、本発明はこの製造例により何ら限定されるものではない。
【0014】(チェーンブッシュの製造例1)炭素繊維を一方向に引き揃えたものにフェノール樹脂を含浸させ、直径10μmの炭素長繊維を約1万本束ね、繊維束(ヤーン)を得、このヤーンを簾状にしたヤーン配列体(プリプレグシート)を作り、これを図1のように配列し、プリプレグシート積層体を得た。かくして得たプリプレグシート積層体を直径が25mmの円柱状の型に巻き付け、この上から炭素系接着剤を塗布し、ヤーン同士を固着した。固着後、型から固着体を離型させ、離型させた円筒状のプリプレグシート積層体をオーブン中に入れ、含浸させたフェノール樹脂を180℃、常圧で硬化させた後、窒素雰囲気中で2000℃で焼成した。次いで得られた炭素繊維強化炭素複合材料に純度99.9%、平均粒径1mmのSi粉末を添加し、このものを炉内温度1300℃、炉内圧1hPaの焼成炉内に入れ、炉内に毎分アルゴンガスを20NLの割合で流しながら、4時間保持した。次いで、炉内圧はそのままとし、炉内温度を1600℃に昇温させて、Siを含浸させた。かくして、Si、Si−C、炭素繊維からなる炭素繊維複合材料を得た。得られた焼成体を切断、外周加工して、孔の内径が23mm、段付部(嵌合部分)の外周径が30mm、チェーンブッシュの外周径が35mm、両端部に形成された段付部の長さがそれぞれ10mm、両端の段付部を含む全長が77mmのチェーンブッシュを得た。
【0015】(チェーンブッシュの製造例2)Cu粉末を含浸させるに際して、製造例1と同様にプリプレグシート積層体を用い調製した円筒状のプリプレグシート積層体をオーブン中に入れ、同積層体に含浸させたフェノール樹脂を180℃、常圧で硬化させた後、窒素雰囲気中で2000℃で焼成させて得た焼成体を用い、この焼成体とCu粉末を相互に接触させずに同一炉内で加熱し、Cu粉末が溶融した時点で、両者を接触させると共に、同時に高圧力を掛けて溶融した銅を焼成体に含浸させ、直ちに冷却して製造した以外は上記製造例1と同様にしてチェーンブッシュを得た。
【0016】(ブッシュドチェーンの製造例)上記の製造例1および2で得られたチェーンブッシュを使用して、金属製の連結ピン、内、外リンクプレート、およびローラと共に組み立てた。このものを、窒素雰囲気下の700℃に保持した炉内を繰り返し通過させて、ブッシュドチェーンの耐久性を試験した。その結果、偏摩耗も融着も認められず、高温で好適に使用できることが判明した。
【0017】
【発明の効果】 本発明に係るチェーンブッシュは、基本材質が炭素繊維で構成されている為に、潤滑性に富むと共に、銅を含浸させたものは、銅の微粒子が潤滑剤の働きをし、また、Siを含浸させたものは、Si−C結合が形成されるので、炭素繊維強化炭素複合材料のみからなるものと比較して、摩耗に対して耐性を示すので、含油チェーンブッシュと同様に定期的に給油することも必要ではなく、特に高温に曝される部品加工分野等で好適に使用される。また、高温下、例えば700℃を超える環境温度で使用しても、非酸素雰囲気下であれば特別な問題を引き起こすことなく、また、チェーンブッシュとそれと嵌合する例えば内リンクプレートが共に金属同士の場合のように、融着を引き起こすことなく使用できる。また、酸化雰囲気においても炭素表面は含浸させた金属により被覆されているので、酸化による部品の減量が抑制されるという効果が発揮される。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成10年10月9日(1998.10.9)
【代理人】 【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
【公開番号】 特開2000−120806(P2000−120806A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−288425