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【発明の名称】 建造物の転倒防止装置と積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置
【発明者】 【氏名】杉沢 充

【氏名】小崎 照卓

【要約】 【課題】地震の発生時等に建造物が傾いたり横倒しになったりすることを防止する。

【解決手段】上部構造体10に固定される垂直材1の下部に抜け止め抵抗板2を設け、垂直材1の上動を抜け止め抵抗板2との当接により制限するための押え板3には貫通孔3aを設け、押え板3の貫通孔3aには抜け止め抵抗板2が押え板3の下方位置を占めるようにして垂直材1を遊嵌させ、更に、押え板3は下部構造体20に固定されるベースプレート5に対し該押え板3の周辺部において脚部材4を介して固設した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上部構造体に固定される垂直材の下部に周囲に張り出すようにした抜け止め抵抗板を設け、前記垂直材の上動を抜け止め抵抗板との当接により制限するための押え板には中央部に貫通孔を設け、その押え板の貫通孔には抜け止め抵抗板が押え板の下方位置を占めるようにして垂直材を遊嵌させ、更に、押え板は下部構造体に固定されるベースプレートに対し該押え板の周辺部において脚部材を介して固設したことを特徴とする建造物の転倒防止装置。
【請求項2】 押え板及び抜け止め抵抗板の対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着したことを特徴とする請求項1記載の建造物の転倒防止装置。
【請求項3】 脚部材を環状体としたことを特徴とする請求項1又は2記載の建造物の転倒防止装置。
【請求項4】 抜け止め抵抗板及びベースプレートの対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着し、支持部材として移動する垂直材、抜け止め抵抗板、前記の低摩擦摺動材及びベースプレートで滑り支承手段を構成し、ベースプレートに対し抜け止め抵抗板が垂直材と共に摺動するようにしたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の建造物の転倒防止装置。
【請求項5】 ベースプレート及び抜け止め抵抗板の対向面間に複数の転動可能な球体を介在させ、支持部材として機能する垂直材、抜け止め抵抗板、球体及びベースプレートで転がり支承手段を構成し、球体の転動によりベースプレートに対し抜け止め抵抗板が垂直材と共に水平に変位できるようにしたことを特徴とする請求項1,2又は3記載の建造物の転倒防止装置。
【請求項6】 上部構造体に固定される垂直材の下部に周囲に張り出すように設けた抜け止め抵抗板を、下部構造体に固定した積層ゴムアイソレータの上部支持板に固着し又は上部支持板と兼用させ、前記垂直材の上動を抜け止め抵抗板との当接により制限するための押え板には中央部に貫通孔を設け、その押え板の貫通孔には抜け止め抵抗板が押え板の下方位置を占めるようにして垂直材を遊嵌させ、更に、押え板は下部構造体に固定されるベースプレートに対し該押え板の周辺部において脚部材を介して固設したことを特徴とする積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置。
【請求項7】 押え板及び抜け止め抵抗板の対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着し、脚部材を外周鋼管としたことを特徴とする請求項6記載の積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、地震発生時や強風下に建築構造物、土木構造物あるいは機械構造物が傾いたり横転しになったりすることを阻止する建造物の転倒防止装置と、積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置に関する。この発明に係る転倒防止装置は、免震構造の建造物において、上部構造体と地盤(基盤)を含む下部構造体との間に設けられる積層ゴムアイソレータやダンパー等の免震手段に併設するに適している。
【0002】
【従来の技術】本発明に関連する従来の技術として滑り支承装置及び転がり支承装置を図13〜図15にそれぞれ例示する。図13の滑り支承装置は、建造物における上部構造体10の下面に固定された支持部材91と、支持部材91の下面に固着された低摩擦摺動材92と、下部構造体20上に固定されたベースプレート93と、ベースプレート93上に固定され、前記低摩擦摺動材92に摺動可能に当接させた滑り板94とから成る。
【0003】また、図14の転がり支承装置は、建造物における上部構造体10の下面に固定された支持部材91と、下部構造体20上に固定されたベースプレート93と、ベースプレート93上に転動自在に装着され、前記支持部材91の下面に転動可能に当接させた多数の球体95と、ベースプレート93に固定され、支持部材91の水平方向の移動を制限する制限部材96とから成る。
【0004】そして、これらの支承装置は、上部構造体10の荷重を支持しつつ、地震時等に上部構造体10と下部構造体20との間に作用する水平力を摺動摩擦又は転がり摩擦により、これら支承装置と併設されるゴムアイソレータやダンパー等の他の免震手段の減衰作用と相俟って減衰されるものである。
【0005】また、図15の転がり支承装置は、建造物における上部構造体10の下面に固定された大径ボール97と、この大径ボール97を回転自在に上側で押さえ支承する少径ボール98とからなるボールベアリング99と、大径ボール97を下側で回転自在に支承するすり鉢状受け面100を有する受け皿101とから成る。
【0006】図15の支承装置は、上部構造体10の荷重を支持しつつ、地震時等に上部構造体10と下部構造体20との間に作用する水平力を大径ボール97がすり鉢状受け面100を中心部から外周方向に転動することによって減衰されるものである。
【0007】しかしながら、これら支承装置自体及び他の免震手段は、いずれも上部構造体と下部構造体との間を剛的に結合するものではないから、大地震等により上部構造体に対し重心近傍の点の回りに大きなモーメントが作用すると、傾こうとする上部構造物の浮き上がり側でこれら支承装置並びに他の免震手段が断裂し、結局、建造物(上部構造体)が傾いたり横倒しになったりする事態が時として生じることになる。このような事態は比較的軽量で高さのある建造物において顕著に生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、前述の問題点に鑑み、地震の発生時や強風下に建造物が傾いたり横倒しになったりする事態の発生を阻止する建造物の転倒防止装置並びに,滑り支承手段又は転がり支承手段が組み込まれた建造物の転倒防止装置および、これらと併用されることが多い積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、この発明に係る請求項1の建造物の転倒防止装置は、上部構造体に固定される垂直材の下部に周囲に張り出すようにした抜け止め抵抗板を設け、前記垂直材の上動を抜け止め抵抗板との当接により制限するための押え板には中央部に貫通孔を設け、その押え板の貫通孔には抜け止め抵抗板が押え板の下方位置を占めるようにして垂直材を遊嵌させ、更に、押え板は下部構造体に固定されるベースプレートに対し該押え板の周辺部において脚部材を介して固設したことを特徴とする。また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、押え板及び抜け止め抵抗板の対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着したことを特徴とする。更に、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、脚部材を環状体としたことを特徴とする。更にまた、請求項4の発明は、請求項1,2又は3の発明において、抜け止め抵抗板及びベースプレートの対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着し、支持部材として移動する垂直材、抜け止め抵抗板、前記の低摩擦摺動材及びベースプレートで滑り支承手段を構成し、ベースプレートに対し抜け止め抵抗板が垂直材と共に摺動するようにしたことを特徴とする。更にまた、請求項5の発明は、請求項1,2又は3の発明において、ベースプレート及び抜け止め抵抗板の対向面間に複数の転動可能な球体を介在させ、支持部材として機能する垂直材、抜け止め抵抗板、球体及びベースプレートで転がり支承手段を構成し、球体の転動によりベースプレートに対し抜け止め抵抗板が垂直材と共に水平に変位できるようにしたことを特徴とする。更にまた、請求項6の積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置は、上部構造体に固定される垂直材の下部に周囲に張り出すように設けた抜け止め抵抗板を、下部構造体に固定した積層ゴムアイソレータの上部支持板に固着し又は上部支持板と兼用させ、前記垂直材の上動を抜け止め抵抗板との当接により制限するための押え板には中央部に貫通孔を設け、その押え板の貫通孔には抜け止め抵抗板が押え板の下方位置を占めるようにして垂直材を遊嵌させ、更に、押え板は下部構造体に固定されるベースプレートに対し該押え板の周辺部において脚部材を介して固設したことを特徴とする。加えて、請求項7の発明は、請求項6の発明において、押え板及び抜け止め抵抗板の対向面のいずれか一方又は両方に低摩擦摺動材を固着し、また脚部材を外周鋼管としたことを特徴とする。
【発明の実施の形態】以下、図面に示す4例の実施形態に基づいてこの発明について説明する。図1〜図5は第1実施形態を、図6〜図9は第2実施形態を、図10は第3実施形態を、図11,図12は第4実施形態をそれぞれ表わしている。
【0010】図1〜図5の第1実施形態において、符号10は建造物の上部構造体、20は地盤(基盤)を含む下部構造体をそれぞれ示している。この発明を構成する各部材は、後記の高分子材料製の低摩擦摺動材8,9や球体11を除いては鋼鉄で製作するのが好ましいが、他の強靱にして強固な材料を用いて製作してもよい。
【0011】符号1で示される垂直材は例えば円筒状に形成され、その上部にはフランジ状の取付板1aが固設されている。垂直材1は中空であっても中実であってもよいが、その横断面の外形は円形であることが望ましい。この例の垂直材1は上部構造体10に対して取付板1aをボルト30及びナットで締着することにより固定してあるが、その固定手段は任意である。
【0012】そして、垂直材1の下部には好ましくは平面が円形をなす抜け止め抵抗板2(以下単に「抵抗板」ということもある)が該垂直材1の周囲に水平に張り出すようにして別体として又は一体として固設する。抵抗板2は垂直材1に対し同心的に設けるとよい。
【0013】一方、前記の垂直材1及び抵抗板2に対応してストッパの役割を果たす押え板3は、後述のようにベースプレート5に対し所要の間隔sを隔てて固定的に取り付けられるもので、その中央部には垂直材1を貫通させるために好ましくは円形の貫通孔3aを設ける。貫通孔3aを円形とし、かつ垂直材1の横断面の外形及び抵抗板2の平面形を共に円形とした場合、貫通孔3aの直径は垂直材1の直径よりも大きくし、抵抗板2の直径よりも小さく形成するものとする。
【0014】そして、押え板3の貫通孔3aには、抜け止め抵抗板2が押え板3の下方位置を占めるようにして垂直材1を遊嵌させる。
【0015】更に、前記の押え板3は下部構造体20にボルト40及びナット50等で固定されるベースプレート5に対し該押え板3の周辺部においてそれと別体とし又は、一体とした脚部材4を介して適当な間隔sを隔てて固設する。図示例の脚部材4は環状体としてあり、下面をベースプレート5に溶接で固設した環状体4の上面に押え板3をボルト6で固定してある。従って、押え板3、脚部材4及びベースプレート5は、押え板3における貫通孔3aの一部のみを外部に開放させた空間部3cを形成している。
【0016】また、前記の押え板3と抜け止め抵抗板2との間及び抜け止め抵抗板2と、ベースプレート5との間にはそれぞれ適当な間隔t及びuを設けるものとする。前者の間隔tは、後記の低摩擦摺動材8を固着する目的や本発明の装置と併設される他の免震手段である例えば、周知の積層ゴムアイソレータ60(図5参照)が地震時等に剪断変形する場合にその作用をスムーズに行わせる目的のために設けられ、後者の間隔uは、前記の積層ゴムアイソレータ60等が剪断変形する場合にその作用をスムーズに行わせる他、それらが圧縮変形する場合にその作用を許容する目的で設けられたものである。
【0017】また、前記の押え板3及び抜け止め抵抗板2の対向面3b,2aのいずれか一方又は両方に対しては、四フッ化エチレン等の高分子材料(例として、商品名テフロン)その他任意の材料から成る板状の低摩擦摺動材8を固着するを可とする。この低摩擦摺動材8は、地震発生時等に抜け止め抵抗板2に対し上部構造体10の変動に伴って垂直材1を介して引き抜き力(鉛直で上方に向く力)及び、水平力が同時に作用した場合に該抵抗板2が押え板3との間で大きな摩擦力を受けて水平方向の変位が不能となり、あるいは、併設された免震手段である積層ゴムアイソレータ60やダンパー70等(図5参照)が水平力の減衰機能を発揮できなくなるという現象を時として生じることになるが、抵抗板2と押え板3との間にスムーズな滑り作用を与え前記の現象を回避させるためのものである。
【0018】図示例では、押え板3における貫通孔3a近傍の下面に円環状の板体とした低摩擦摺動材8が固着してある。
【0019】図示はしないが、対向面3b,2aの両面に高分子材料から成る低摩擦摺動材8を設けてよいことは言うまでもないが、一方の面の低摩擦摺動材8を高分子材料のものとした場合、他方の面の低摩擦摺動材8は元来表面が平滑なステンレススチール板とすることもできる。
【0020】第1実施形態の転倒防止装置Aは、通常は図5に示すように、積層ゴムアイソレータ60等の免震手段と併用して用いられる。つまり、転倒防止装置Aは、免震構造の3つの要素である。■常時上部構造体10の荷重を支持する性能、■地震時等に柔らかく水平方向に変形できるばね性能及び■地震時に生じる上部構造体10と下部構造体20との間の過大な相対的変位を抑制する減衰性能については有しないから、建造物を免震構造とするためには、前述の通り図5に示すように、それら3つの性能を持つ積層ゴムアイソレータ60等の免震手段を並列の関係で併設することになる。同図で他の免震手段であるダンパー70は、■の減衰性能を補強させるために積層ゴムアイソレータ60と並列の関係で併設したものである。
【0021】図5に示す第1実施形態の転倒防止装置Aに係る使用例において、地震時等に建造物、すなわち上部構造体10における例えば、重心近傍の点Pの回りに矢印の通りの大きな転倒モーメントMが発生した場合、上部構造体10は図で左側を浮き上がらせて傾き始めようとし、また、上部構造体10と下部構造体20との間に剛的な結合力を持たない、換言すれば、連続した剛体の部材を有しない免震手段60,70の左側のものも上部構造体10の動きにつれて共に断裂されようとする。
【0022】そしてまた、図2で左側の転倒防止装置Aでは、上部構造体10の前記のような傾動の初期の段階で垂直材1と共に抜け止め抵抗板2が上方に向け引き抜かれようとするが、脚部材4及びベースプレート5を介して下部構造体20に強固に結合されている押え板3に対し抵抗板2が当接してその上動が停止される。ここに、上部構造体10の転倒が阻止され、また、免震手段60,70の断裂も喰い止められる。
【0023】第1実施形態の転倒防止装置Aにおいて、前記の転倒防止作用の間に上部構造体10に比較的大きな水平力が作用して図3及び図4に示すように垂直材1と共に抜け止め抵抗板2が押え板3に対し芯ずれを生じ水平方向について変位しても、抵抗板2と押え板3とが重なり合う面積は十分に確保できるので、転倒防止機能は前記と同様に発揮される。
【0024】その際の抵抗板2の水平方向の最大変位量(距離)は、常態における抵抗板2の周縁と脚部材4の内面との間のクリアランスc及び/又は垂直材1の周面と押え板3における貫通孔3aの内面との間のクリアランスdによって規制されるが、これらのクリアランスc又はdは本装置Aにとって機能上好ましい最大変位量と併設された免震手段60及び70の機能上好ましいそれぞれの最大変位量とのバランスを基に決定するものである。なお、上記の押え板3に対する抜け止め抵抗板2の芯ずれ並びに抵抗板2における水平方向の最大変位量の決定の事項に関しては、後述の第2実施形態の転倒防止装置B及び第3実施形態の転倒防止装置Cにおいてもほぼ同等である。
【0025】第1実施形態の装置Aは、使用例の図5に示すように、1つの免震構造の建造物に複数基設けるのが普通である。しかしながら、ごく狭い床面積の免震構造の建造物においては、いわゆる免震層の周囲に複数の免震手段を配し、その中央部に第1実施形態の装置Aを1基だけ装着しても、建造物の転倒の防止は達成できる。また、この装置Aは免震手段を持たない耐震構造の建造物に対しても装着することができる。この場合も転倒防止の目的は達成できる。
【0026】次に、図6〜図9に示すこの発明の第2実施形態の建造物の転倒防止装置Bについて説明する。第2実施形態において、図1〜図5の第1実施形態と同一の符号で指し示す部材ないし部位は、相互に等効の部材ないし部位を表わしているので、ここでは記述の重複を避け主として相違している部分について説明する。
【0027】第2実施形態の装置Bにおいては、第1実施形態の装置Aにおける抜け止め抵抗板2及びベースプレート5の対向面2b,5aのいずれか一方又は両方に対して四フッ化エチレン等の高分子材料その他任意の材料から成る板状の低摩擦摺動材9を固着する。
【0028】そして、図示のように抵抗板2の一方の対向面2bにのみ低摩擦摺動材9を固着した場合は、その表面(外面)を滑り面とし、ベースプレート5の対向面5aを平滑に仕上げて滑り面に仕上げ、そこへ前記の抵抗板2における低摩擦摺動材9の滑り面を滑動自在に当接させる。
【0029】逆に、ベースプレート5の他方の対向面5aにのみ低摩擦摺動材9を固着した場合(図示しない)は、その表面を滑り面とし、抵抗板2の対向面2bを平滑に仕上げ、そこへ前記のベースプレート5における低摩擦摺動材9の滑り面を滑動自在に当接させる。
【0030】また、抜け止め抵抗板2及びベースプレート5の対向面2b,5aの両方に低摩擦摺動材9を固着した場合(図示しない)は、双方の低摩擦摺動材9の表面をいずれも滑り面とし、それら両滑り面を滑動自在に当接させる。この場合、対向面2b,5aの両面に高分子材料から成る低摩擦摺動材9を設けてよいことは言うまでもないが、一方の面の低摩擦摺動材9を高分子材料のものとし、他方の面の低摩擦摺動材8は元来表面が平滑なステンレススチール板とすることもできる。
【0031】いずれにしても、第2実施形態の装置Bでは、上部構造体10の鉛直方向の荷重を垂直材1、抜け止め抵抗板2及び1層又は2層の低摩擦摺動材9を介してベースプレート5で受けられるようにするため、第1実施形態の装置Aが有していた抵抗板2とベースプレート5との間の間隔uを廃して、抵抗板2側の滑り面とベースプレート5側の滑り面とを滑動自在に当接させたので、上部構造体10の支持部材として機能する垂直材1、抜け止め抵抗板2、低摩擦摺動材9及びベースプレート5で滑り支承手段7Bを構成する。
【0032】第2実施形態の転倒防止装置Bは、通常は、ゴムアイソレータ(水平ゴム)80等の免震手段と併用される。つまり、転倒防止装置Bは、免震構造の3つの要素の内、■の荷重の支持性能及び■の減衰性能は有しており、■の水平方向について柔らかく変形できるばね性能についてはそれを有していないので、建造物を免震構造とするためには、図9に示すように、■のばね性能を有するゴムアイソレータ(水平ゴム)80等の免震手段を並列の関係で併設することになる。ダンパー70は■の減衰性能を補強させるためにこの装置Bに並列の関係で併設したものである。
【0033】図5に示す第2実施形態の転倒防止装置Bに係る使用例において、地震時に建造物、すなわち上部構造体10における例えば重心近傍の点Pの回りに矢印の通り大きな転倒モーメントMが発生した場合、免震手段70,80は共に上部構造体10と下部構造体20との間に剛的な結合力を持たないので、上部構造体10は左側を浮き上がらせて傾き始めようとする。
【0034】しかしながら、図9で左側の転倒防止装置Bでは、垂直材1と共に抜け止め抵抗板2が上方に向け引き抜かれようとするが、脚部材4及びベースプレート5を介して下部構造体20に強固に結合されている押え板3に対向板2が当接してその上動が停止されるので、ここに、上部構造体10の転倒が防止できる。
【0035】この例の転倒防止装置Bでは、支持材として機能する垂直材1と、抜け止め抵抗板2と、抜け止め抵抗板2及びベースプレート5の対向面2b,5aの少なくも一方に固着した低摩擦摺動材9と、ベースプレート5とで滑り支承手段7Bを構成し、この支承手段7Bが常態では常に上部構造体10の荷重を主として支持しているので、地震時等に上部構造体10と下部構造体20との間に水平力が働いた場合、その水平力は摺動摩擦により減衰させる。なお、この例の装置Bは、図9に示すように、1つの免震構造の建造物に対し複数基設けるのが普通である。
【0036】次いで、図10に示すこの発明の第3実施形態の建造物の転倒防止装置Cについて説明する。第3実施形態において、図1〜図5の第1実施形態並びに図6〜図9の第2実施形態と同一の符号で指し示す部材ないし部位は、相互に等効の部材ないし部位を表わしているので、ここでは記述の重複を避け主として相違している部分について説明する。
【0037】第3実施形態の装置Cにおいては、抜け止め抵抗板2及びベースプレート5の対向面2b,5a間に複数の転動可能な球体11を介在させる。球体11は鋼鉄などの金属材料、比較的硬質な弾性高分子材料その他任意の材料で製作するものとし、それら球体11は前記対向面2b,5aのいずれか一方に適当な取付部材(図示しない)で転動自在に取り付け、他方の対向面に対し転動可能な状態で当接させてある。
【0038】このようにして、上部構造体10の支持部材として機能する垂直材1、抜け止め抵抗板2、球体11及びベースプレート5で転がり支承手段7Cを構成する。
【0039】第3実施形態の装置Cにおける機能、使用例、作用については、上記した第2実施形態の装置Bに準ずる。但し、転がり支承手段7Cでは、地震時等に働く水平力は転がり摩擦により減衰させる。
【0040】次に、図11,図12に示すこの発明の第4実施形態すなわち、建造物に設置する積層ゴムアイソレータの引き抜き防止装置Dについて説明する。第4実施形態において、図1〜図10の第1実施形態〜第3実施形態と同一の符号で指し示す部材ないし部位は、相互に等効の部材ないし部位を表わしているので、ここでは記述の重複を避け主として相違している部分について説明する。
【0041】第4実施形態の装置Dにおいては、支持杭12の上端にフーチング13が構築されており、フーチング13上面に積層ゴムアイソレータ14が載置され、その下部支持版15がフーチング13に植設されたアンカー部材16で固着されている。前記積層ゴムアイソレータ14によってH型鋼からなる柱17および梁18が組まれてなる鉄骨構19が支持されており、その積層ゴムアイソレータ14は図示例では前記柱17の直下に配置されている。
【0042】また、第4実施形態の装置Dにおいては、第2実施形態の装置Bにおける抜け止め抵抗版2が積層ゴムアイソレータ14の上部支持版21を兼用している。そして、上部支持版21(つまり、抜け止め抵抗版2)は低摩擦摺動材8を下面に取り付けた押さえ板3の下部に位置して、その上動を拘束されている。押さえ板3は外周鋼管からなる脚部材4の上端に固着されており、脚部材4の下端に固着されたベースプレート22はアンカー部材23によってフーチング13の上面に固着している。
【0043】第4実施形態の装置Dによると、地震時建造物に上揚力が作用しそれに伴い積層ゴムアイソレータ14に引抜き力が作用したとき、該積層ゴムアイソレータ14の上部支持板21(つまり抜け止め抵抗版2)の上動が押さえ板3で拘束されるので、その引抜きが防止される。また第4実施形態の装置Dでは押さえ板3が防火カバーを兼用しており、万一火災が発生したとき押さえ板3が防火カバーとなって火が積層ゴムアイソレータ14に及び焼損するおそれを防止できる。第4実施形態の装置Dにおけるその他の機能、作用については、上記した第2実施形態の装置Bに準ずる。なお、積層ゴムアイソレータ14による支承手段では、地震時等に働く水平力は積層ゴムアイソレータ14のせん断変形とその復元作用によっても減衰される。
【0044】
【発明の効果】以上に説明したこの発明に係る建造物の転倒防止装置と、積層ゴムアイソレータの引抜き防止装置は次の通りの効果を奏する。
(1)装置が全体として簡単にして扁平に作られているに関わらず、地震時等に建造物に大きな転倒モーメントが作用しても建造物の転倒を確実に阻止でき、極めて優れた機能を発揮する。
(2)扁平に作られているので、上部構造体と下部構造体との間の高さの限られた空間に設置するに有利である。
(3)請求項2の発明によれば、押え板及び抜け止め抵抗板の対向面の少なくとも一方に固着された低摩擦摺動材が地震時等において抜け止め抵抗板の水平方向の変位をスムーズに行えるようにしたので、併設された免震手段による水平力の減衰を確実に行えるところとした。
(4)請求項3の発明によれば、装置の中枢部材が納められる空間部をベースプレート、押え板及び環状体に形成された脚部材によって構成したので、空間部の開口が最小限にとどめられ、特にごみ類が侵入しやすい側壁部を封じることができた。
(5)請求項4又は5の発明によれば、異質の機能を呈する建造物の転倒防止装置と地震等の水平力を減衰させる滑り支承手段又は転がり支承手段とを巧妙に組み付けることにより、機能の割りに装置の小型化が達成され、いわゆる免震層の空間の有効利用が果たせる。
(6)請求項6又は7の発明によれば、地震時建造物に作用する上揚力によって、当該建造物を支承する積層ゴムアイソレータに作用する引き抜きを防止でき、かつ機能の割りに装置の小型化が達成され、いわゆる免震層の空間の有効利用が果たせる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成11年4月21日(1999.4.21)
【代理人】 【識別番号】100107250
【弁理士】
【氏名又は名称】林 信之
【公開番号】 特開2000−304089(P2000−304089A)
【公開日】 平成12年10月31日(2000.10.31)
【出願番号】 特願平11−113609