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【発明の名称】 免震支持装置及びこの免震支持装置を具備した免震構造体
【発明者】 【氏名】川口 澄夫

【氏名】五味 正

【要約】 【課題】十分な強度を得ることができる部位にアンカーボルト挿通用の貫通孔を形成でき、しかも、アンカーボルトへのナット部材の螺着において、積層体の角部が邪魔となって、設置作業、交換作業が極めて困難となるというような不都合も解消できる免震支持装置を提供すること。

【解決手段】免震支持装置1は、複数の弾性層2と複数の補強板3とを交互に積層してなり、平面から見て4辺4を有する正方形の積層体5と、積層体5の積層方向の両端面6及び7に配されており、平面から見て夫々4辺8及び9を有する正方形の上部及び下部の矩形状の取付板10及び11と、上部及び下部の剪断キー12及び13とを具備している。取付板10は、平面から見て、積層体5の各角部41の先端42が、取付板10の各辺8のほぼ中央部に位置するようにして、積層体5の上端面6に配されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性層と補強板とを交互に積層してなり、平面から見て4辺を有する方形の積層体と、この積層体の積層方向の両端面に配されており、平面から見て4辺を有する方形の取付板とを具備しており、平面から見て、積層体の各角部の先端が、取付板の各辺のほぼ中央部に位置するようにして、取付板の夫々が積層体の各端面に配されている免震支持装置。
【請求項2】 積層体及び取付板の夫々は、平面から見て正方形である請求項1に記載の免震支持装置。
【請求項3】 取付板の各角部に、アンカーボルト挿通用の貫通孔が形成されている請求項1又は2に記載の免震支持装置。
【請求項4】 積層体を貫通して鉛支柱が配されている請求項1から3のいずれか一項に記載の免震支持装置。
【請求項5】 基礎と、この基礎上に配された請求項1から4のいずれか一項に記載の免震支持装置と、この免震支持装置上に配されて、免震支持装置を介して基礎に対して免震支持される構造物とを具備しており、免震支持装置は、積層体の下端面に配された一方の取付板の各角部を貫通したアンカーボルトと、このアンカーボルトに螺着されたナット部材とにより基礎に固着されており、積層体の上端面に配された他方の取付板の各角部を貫通したアンカーボルトと、このアンカーボルトに螺着されたナット部材とにより構造物に固着されている免震構造体。
【請求項6】 請求項1から4のいずれか一項に記載の免震支持装置又は請求項5に記載の免震構造体に用いられる積層体又は取付板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、事務所ビル、集合住宅、橋梁、高架道路、戸建住宅等の構造物を地震から保護するための免震支持装置及びこの免震支持装置を具備した免震構造体に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】構造物を地震から保護するための免震支持装置としては、弾性層と補強板とを交互に積層してなる積層体を具備した免震支持装置が提案されている。
【0003】このような免震支持装置は、基礎と構造物との間に介在されるのであるが、これを基礎及び構造物の夫々に固着するために、通常、積層体の両端面に取付板が固着されて形成される。
【0004】このような積層体及び取付板としては、平面から見て円形のもの、方形のもの等々が提案されているが、積層体及び取付板として、いずれも平面から見て方形のものは、製造性の観点から及び特定の使用目的においては利便な場合があり、しばしば用いられるようになっている。
【0005】方形の積層体及び取付板からなる従来の免震支持装置では、通常、平面から見て取付板の方形の各辺を積層体の方形の各辺に平行になるようにして、しかも、積層体が取付板のほぼ中央部に位置するようにして、取付板を積層体の積層方向の各端面に固着するようにしている。
【0006】ところで、斯かる免震支持装置は、取付板の各角部に予め形成されたアンカーボルト挿通用の貫通孔に、基礎及び構造物に固定されるアンカーボルトを挿通して、更に、このアンカーボルトにナット部材を螺着して、基礎及び構造物に固着されるのであるが、上記のように、取付板の方形の各辺を積層体の方形の各辺に平行になるようにして、取付板を積層体の積層方向の各端面に固着してなる免震支持装置では、取付板の各角部に積層体の各角部先端が位置するために、取付板におけるアンカーボルト挿通用の貫通孔の形成部位が限られた狭い場所となり、十分な強度を得るためには、積層体の角部の先端近傍に形成せざるを得なく、また、アンカーボルトへのナット部材の螺着において、積層体の角部が邪魔となって、ナット部材を回転させる工具が上手く使えず、設置作業、交換作業が極めて困難となると言う不都合がある。
【0007】上記の問題を解消するために、取付板を単に大きくすることが考えられるが、取付板の設置スペースが限られている場合には、この解決手段も直ちには採用し難いものである。
【0008】本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、特に大きな取付板を用いる必要がなく、アンカーボルト挿通用の貫通孔の形成部位の自由度を増大させることができ、十分な強度を得ることができる部位にアンカーボルト挿通用の貫通孔を形成でき、しかも、アンカーボルトへのナット部材の螺着において、積層体の角部が邪魔となって、ナット部材を回転させる工具が上手く使えず、設置作業、交換作業が極めて困難となるというような不都合も解消できる免震支持装置及びこの免震支持装置を具備した免震構造体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の態様の免震支持装置は、弾性層と補強板とを交互に積層してなり、平面から見て4辺を有する方形の積層体と、この積層体の積層方向の両端面に配されており、平面から見て4辺を有する方形の取付板とを具備しており、平面から見て、積層体の各角部の先端が、取付板の各辺のほぼ中央部に位置するようにして、取付板の夫々が積層体の各端面に配されている。
【0010】第一の態様の免震支持装置は、積層体の各角部の先端が、取付板の各辺のほぼ中央部に位置するようにして、取付板の夫々が積層体の各端面に配されているために、取付板の各角部には、積層体の各角部が位置しなくなり、実質的に、積層体に占有されない、換言すれば重ならない取付板の各角部が大きくなり、したがって、取付板の各角部において、アンカーボルト挿通用の貫通孔の形成部位の自由度を増大させることができ、十分な強度を得ることができる部位にアンカーボルト挿通用の貫通孔を形成でき、しかも、アンカーボルトへのナット部材の螺着において、積層体の角部が邪魔となって、ナット部材を回転させる工具が上手く使えず、設置作業、交換作業が極めて困難となると言うような不都合も解消できる。
【0011】上記補強板としては鋼板等が用いられ、一つの好ましい例では、最上位及び最下位の補強板には、他の補強板よりも厚肉の補強板が用いられる。弾性層に使用される弾性材料としては、例えば、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、天然ゴム、シリコンゴム、ポリウレタン等のゴム材料や該ゴム材料にグラフアイト、カーボンブラック、アスフアルト等の充填剤を配合したもの等が用いられる。交互に積層される補強板と弾性層とは、互いに加硫接着されて固着されて積層体を構成するようになっている。
【0012】積層体の積層方向の両端面に配された各取付板は、通常、厚肉鋼板から形成されて、積層体の最上位及び最下位の補強板に、ボルト、剪断キー等を介して剪断方向、すなわち水平方向に互いに相対的に移動しないように固定されるが、積層体において最上位及び最下位に弾性層が配される場合には、この弾性層に、加硫接着して互いに相対的に移動しないように固定されてもよい。
【0013】本発明の第二の態様の免震支持装置では、第一の免震支持装置において、積層体及び取付板の夫々は、平面から見て正方形である。
【0014】本発明においては、積層体及び取付板の夫々は、平面から見て、方形、好ましくは相似の方形であればよいのであるが、本発明の第二の態様のように、正方形であると、もっとも本発明の効果を得ることができる。本発明において方形、正方形とは、実質的な方形、正方形であればよく、例えばそれらの角部が若干丸くなっていても、或いは全体的に若干菱形状に歪んでいるものをも含むのであって、正確な方形である必要はない。
【0015】本発明の第三の態様の免震支持装置では、第一又は第二の免震支持装置において、取付板の各角部に、アンカーボルト挿通用の貫通孔が形成されている。
【0016】この貫通孔は、少なくとも取付板の各角部に一個形成すればよいのであるが、更に基礎及び構造物への固着を確実にするために、その他の部位に複数個のアンカーボルト挿通用の貫通孔を取付板に形成してもよく、また、各角部には、一個毎だけ形成されるのが好ましいが、スペースがあり、更なる強度を必要とする場合には、複数個形成してもよい。
【0017】本発明の第四の態様の免震支持装置では、第一から第三の態様のいずれかの免震支持装置において、積層体を貫通して鉛支柱が配されている。
【0018】本発明では、地震による水平振動エネルギを効果的に吸収するために、第四の態様のように鉛支柱を具備してもよいのであるが、これに代えて、鉛支柱を具備することなしに本発明の免震支持装置を構成してもよく、また、鉛支柱は、一個に限らず、複数個を積層体を貫通して配してもよい。更に、水平振動エネルギを効果的に吸収するために、弾性層に高減衰ゴムを使用してもよい。
【0019】本発明の免震構造体は、基礎と、この基礎上に配された上記の免震支持装置と、この免震支持装置上に配されて、免震支持装置を介して基礎に対して免震支持される構造物とを具備しており、この免震支持装置は、積層体の下端面に配された一方の取付板の各角部を貫通したアンカーボルトと、このアンカーボルトに螺着されたナット部材とにより基礎に固着されており、積層体の上端面に配された他方の取付板の各角部を貫通したアンカーボルトと、このアンカーボルトに螺着されたナット部材とにより構造物に固着されている。
【0020】本発明の免震構造体における構造物としては、事務所ビル、集合住宅、橋梁、高架道路、戸建住宅等を含み、基礎としては、地盤、地盤に形成されたコンクリート製基礎台、橋脚等を含むのである。
【0021】
【発明の実施の形態】次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこの例に何等限定されないのである。
【0022】図1から図4において、本例の免震支持装置1は、複数の弾性層2と複数の補強板3とを交互に積層してなり、平面から見て(図2に示す状態)4辺4を有する正方形の積層体5と、積層体5の積層方向の両端面6及び7に配されており、平面から見て夫々4辺8及び9を有する正方形の上部及び下部の矩形状の取付板10及び11と、上部及び下部の剪断キー12及び13とを具備している。
【0023】補強板3は、本例では、複数枚の矩形状又は円盤状の薄肉補強板21と、最上位及び最下位に配された矩形状又は円盤状の厚肉補強板22及び23とからなり、これらの間に加硫接着されて矩形状又は円盤状の弾性層2が配されている。厚肉補強板22及び23の中央部の夫々には、剪断キー12及び13嵌合用の円形凹所24及び25が夫々形成されている。
【0024】本例では、直方体状の積層体5は、弾性層2及び補強板3の周囲を覆った四角筒状の被覆層31を具備しており、被覆層31は、弾性層2と同一の材料から当該弾性層2に一体形成されている。
【0025】取付板10の4個の角部35の夫々のほぼ中央部には、アンカーボルト挿通用の貫通孔36が形成されており、同じように、取付板11の4個の角部37の夫々のほぼ中央部には、アンカーボルト挿通用の貫通孔38が形成されている。また、取付板10及び11の夫々の中央部には、剪断キー12及び13嵌合用の円形凹所39及び40が夫々形成されている。
【0026】取付板10は、平面から見て、積層体5の各角部41の先端42が、取付板10の各辺8のほぼ中央部に位置するようにして、積層体5の上端面6に配されており、同じく、取付板11は、平面から見て、積層体5の各角部41の先端42が、取付板11の各辺9のほぼ中央部に位置するようにして、積層体5の下端面7に配されている。
【0027】剪断キー12は、円形凹所24と円形凹所39とに嵌合されて、取付板10の積層体5の上端面6に対する剪断方向、すなわち水平方向Hの相対的移動を阻止しており、剪断キー13は、円形凹所25と円形凹所40とに嵌合されて、取付板11の積層体5の下端面7に対する水平方向Hの相対的移動を阻止している。
【0028】以上の免震支持装置1は、基礎51と構造物52との間に介在されて構造体53を構成するように使用される。すなわち、構造体53は、地盤上に形成されたコンクリート台等の基礎51と、基礎51上に配された免震支持装置1と、免震支持装置1上に配されて、免震支持装置1を介して基礎51に対して免震支持される事務所ビル等の構造物52とを具備している。
【0029】構造体53は、地震において基礎51が水平方向Hに振動すると、免震支持装置1の積層体5に水平方向Hの剪断変形を生じさせて、これにより、構造物52の横揺れを低減して、地震による振動から構造物52を保護するようになっている。
【0030】免震支持装置1は、積層体5の下端面7に配された取付板11の各角部37を貫通して、基礎51に埋め込まれたアンカーボルト61と、アンカーボルト61に螺着されたナット部材62とにより基礎51に固着されており、積層体5の上端面6に配された取付板10の各角部35を貫通して、構造物52に埋め込まれたたアンカーボルト63と、アンカーボルト63に螺着されたナット部材64とにより構造物52に固着されている。
【0031】以上の免震支持装置1では、積層体5の各角部41の先端42が、取付板10及び11の辺8及び9の夫々のほぼ中央部に位置するようにして、取付板10及び11の夫々が積層体5に配されているために、取付板10及び11の角部35及び37の夫々には、積層体5の各角部41が位置しなくなり、実質的に、取付板10及び11の各角部35及び37において、積層体5に重ならない部位を広くでき、したがって、取付板の各角部35及び37において、アンカーボルト挿通用の貫通孔36及び38の形成部位の自由度を増大させることができ、十分な強度を得ることができる部位に貫通孔36及び38を形成できる。
【0032】しかも、免震支持装置1では、アンカーボルト61及び63へのナット部材62及び64(ナット部材64では下側のナット部材64)の螺着において、積層体5の角部41が邪魔とならず、ナット部材62及び64を工具によって容易に回転でき、設置作業、交換作業を迅速に困難なしに行うことができる。
【0033】なお、免震支持装置1としては、図5に示すような積層体5のほぼ中央部を積層方向に貫通して鉛支柱71が配されたものでもよく、また、鉛支柱71としては、図示のように一個だけではなく、その複数個が積層体5を積層方向に貫通して配されていてもよい。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、特に大きな取付板を用いる必要がなく、アンカーボルト挿通用の貫通孔の形成部位の自由度を増大させることができ、十分な強度を得ることができる部位にアンカーボルト挿通用の貫通孔を形成でき、しかも、アンカーボルトへのナット部材の螺着において、積層体の角部が邪魔となって、ナット部材を回転させる工具が上手く使えず、設置作業、交換作業が極めて困難となるというような不都合も解消できる免震支持装置及びこの免震支持装置を具備した免震構造体を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
【出願日】 平成10年12月28日(1998.12.28)
【代理人】 【識別番号】100098095
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 武志
【公開番号】 特開2000−193026(P2000−193026A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−372296