| 【発明の名称】 |
建築構造物用の振動低減装置およびそのチュ―ニング方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】松井 徹
【氏名】平野 正明
【氏名】内山 高
|
| 【要約】 |
【課題】建築構造物に応じて、固有振動数を容易に且つ高精度にチューニングすることが出来、防振すべき振動に対して良好な制振効果を容易に得ることの出来る、新規な振動低減装置を提供すること。
【解決手段】建築構造物に対してマス部材14を弾性支持せしめて副振動系を構成するバネ部材として、マス部材14に対する取付方向を変更することによって副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウント16を採用し、該ゴムマウント16のマス部材14に対する取付方向を変更可能とした。そして、このゴムマウント16の取付方向を変更することによって、副振動系において防振すべき振動が入力される水平方向のばね定数、ひいては副振動系の固有振動を、防振すべき振動に応じて、適宜に調節するようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめることにより、副振動系を構成する振動低減装置において、前記バネ部材を、前記マス部材に対する取付方向を変更することによって前記副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントを含んで構成すると共に、該ゴムマウントの前記マス部材に対する取付方向を変更設定し得る調節手段を設けて、該ゴムマウントの取付方向を該調節手段で変更することにより、前記副振動系における水平方向の固有振動数を調節可能としたことを特徴とする建築構造物用の振動低減装置。 【請求項2】 前記ゴムマウントとして、略鉛直方向に延びる中心軸回りで複数の異なる軸直角方向のばね定数が設定された異方性のゴムマウントを用いると共に、前記調節手段において、該異方性のゴムマウントの前記マス部材に対する取付方向を、該ゴムマウントの中心軸回りで変更設定し得るようにした請求項1に記載の振動低減装置。 【請求項3】 軸直角方向のばね定数が異方性とされた前記ゴムマウントにおいて、軸直角方向におけるばね定数の最小値と最大値を、互いに直交する方向に設定した請求項2に記載の振動低減装置。 【請求項4】 前記調節手段において、前記ゴムマウントの中心軸の前記マス部材に対する取付方向を変更調節し得るようにした請求項1乃至3の何れかに記載の振動低減装置。 【請求項5】 前記マス部材の重心を通って水平方向に延びる2本の直交する対称軸を挟んで、それぞれ対称位置するように、前記ゴムマウントの複数個を配設すると共に、前記調節手段により、それらのゴムマウントにおける取付方向を、かかる2本の対称軸を挟んで対称となるように設定可能とした請求項1乃至4の何れかに記載の振動低減装置。 【請求項6】 前記建築構造物における最上階の天井部分に対して、前記マス部材を前記バネ部材によって弾性支持せしめた請求項1乃至5の何れかに記載の振動低減装置。 【請求項7】 前記調節手段を、前記ゴムマウントの取付方向を変更するためのアクチュエータ手段と、該アクチュエータ手段を作動制御して該ゴムマウントの取付方向を変更するコントロール手段とを含んで構成した請求項1乃至6の何れかに記載の振動低減装置。 【請求項8】 建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめて副振動系を構成することにより、振動低減装置を得るに際して、前記バネ部材を、前記マス部材に対する取付方向を変更することによって前記副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントを含んで構成し、該ゴムマウントの取付方向を変更することによって、前記副振動系における水平方向の固有振動数を調節することを特徴とする振動低減装置のチューニング方法。 【請求項9】 前記マス部材に対する取付方向を変更することによって前記副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来る前記ゴムマウントを複数個用い、前記副振動系全体としての水平方向における弾性主軸の方向が維持されるように、それらゴムマウントの取付方向を変更する請求項8に記載の振動低減装置のチューニング方法。 【請求項10】 前記ゴムマウントとして、略鉛直方向に延びる中心軸回りで複数の異なる軸直角方向のばね定数が設定された異方性のゴムマウントを用いると共に、かかる異方性のゴムマウントとして、ばね定数の大きさが互いに異なる複数種類を予め準備しておき、要求される防振特性に応じて何れかの種類の異方性のゴムマウントを選択する請求項8又は9に記載の振動低減装置のチューニング方法。 【請求項11】 前記複数種類の異方性のゴムマウントとして、何れも、各軸直角方向でのばね定数比が略一定とされたものを準備する請求項10に記載の振動低減装置のチューニング方法。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【技術分野】本発明は、住宅等の建築構造物に対する副振動系を構成して、主振動系たる建築構造物に対する動的吸振効果を発揮し得る振動低減装置とそのチューニング方法に関するものである。 【0002】 【背景技術】一般住宅や倉庫等の建築構造物では、交通振動や風等の外力が加振力として作用することによって振動が発生する場合がある。特に、近年では、一般住宅でも2階建や3階建が多くなってきており、それらの住宅において、交通振動による微震動が、例えば就寝時における不快音や不快振動等の原因として問題となってきている。 【0003】ところで、建築構造物の振動低減装置としては、従来、高層ビルやタワー等の高層建築物の揺れを軽減するためのダンパ装置が、幾つか提案されている。例えば、特開平3−74649号公報や特開平8−338467号公報には、付加質量を建築構造物に対して多段積層ゴムで弾性支持せしめた構造のダンパ装置が開示されている。これらのダンパ装置は、水平方向で一つの副振動系を構成することにより、建築構造物に惹起される水平方向の振動に対して低減効果を発揮するようになっている。 【0004】ところが、これら従来のダンパ装置では、制振対象となる建築構造物で問題となっている振動に対して有効な制振効果が発揮されるように、その固有振動数を調節する際、多段積層ゴムの重ね合わせ段数や各段での設置数を変更する必要があった。そのために、固有振動数の調節が面倒で時間がかかるという不具合があることに加えて、目的とする特性の実現のために積層ゴムを多段に重ね合わせるとダンパ装置全体が大型化するために、設置スペースの問題が生ずる場合があった。特に、ダンパ装置の設置後に、季節や天候,時間等の変化に起因する温度変化に伴って、建築構造物で問題となる振動周波数や、ダンパ装置の固有振動数が変化した場合など、再チューニングの必要が生じた場合に、その作業が極めて困難であるという問題があった。 【0005】しかも、積層ゴムの重ね合わせ段数や格段での設置数の変更では、ダンパ装置のばね定数を段階的にしか調節することが難しいために、ダンパ装置の固有振動数を細かくチューニングすることが困難であった。そのために、ダンパ装置の固有振動数を、建築構造物において防振すべき振動数に合わせて高精度にチューニングすることが難しく、必ずしも有効な制振効果を得ることが出来ないという問題もあったのである。 【0006】 【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、固有振動数を容易に且つ高精度にチューニングすることが出来、建築構造物において防振すべき振動に対して良好な制振効果を容易に得ることの出来る、新規な構造の振動低減装置と、振動低減装置における新規なチューニング方法を提供することにある。 【0007】 【解決手段】以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体の記載および図面に記載の発明思想に基づいて認識されることが理解されるべきである。 【0008】本発明の第一の態様は、建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめることにより、副振動系を構成する建築構造物用の振動低減装置において、前記バネ部材を、前記マス部材に対する取付方向を変更することによって前記副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントを含んで構成すると共に、該ゴムマウントの前記マス部材に対する取付方向を変更設定し得る調節手段を設けて、該ゴムマウントの取付方向を該調節手段で変更することにより、前記副振動系における水平方向の固有振動数を調節可能としたことを、特徴とする。 【0009】このような第一の態様に係る振動低減装置においては、ゴムマウントのマス部材に対する取付方向を変更することによって、マス部材とバネ部材で構成される副振動系における固有振動数を調節することが出来る。それ故、ゴムマウントの構造や配設数等を変更しなくても、副振動系の固有振動数を調節することが出来ることから、かかる副振動系を、建築構造物の防振しようとする振動に応じて、容易にチューニングすることが出来るのである。しかも、ゴムマウントの取付方向に応じて、副振動系の水平方向におけるばね定数を十分に細かく設定可能であることから、建築構造物の防振しようとする振動に対して、副振動系の固有振動数を高精度に合わせることが出来、それによって、優れた制振効果を効率的に得ることが可能となるのである。 【0010】なお、かかる第一の態様において採用される調節手段としては、例えば、ボルトによる位置決め穴等からなるゴムマウントの取付方向の決定位置を、マス部材と建築構造物の少なくとも一方の側に複数設けて、ゴムマウントの取付方向を多段階に調節可能とした構造や、或いはゴムマウントのマス部材側と建築構造物側への取付部位に摺動プレート等を配設して、一軸回りの回転により、ゴムマウントの取付方向を無段階に調節可能とした構造等、各種の構造が採用可能である。 【0011】また、かかる第一の態様においては、マス部材に対する取付方向を変更することによって副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントのみでバネ部材を構成する必要はなく、そのようなゴムマウントと、マス部材に対する取付方向が固定的に設定されて一定のばね定数を発揮するゴムマウントを組み合わせてバネ部材を構成することも可能である。また、マス部材に対する取付方向を変更することによって副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントを複数用いる場合には、必ずしもその全てのゴムマウントの取付方向を変更する必要はなく、一部のゴムマウントだけの取付方向を調節することによってチューニングすることも可能である。また、バネ部材は、前記公報にも記載されているように、ゴムマウントを多段的に積み重ねて構成することも可能であり、その場合には、一部の段階に配設されたゴムマウントだけを、取付方向の変更によってばね定数を変更し得るものとしても良く、また、一部の段階に配設されたゴムマウントだけの取付方向を変更することによって副振動系のばね定数をチューニングすることも可能である。 【0012】また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る振動低減装置において、前記ゴムマウントとして、略鉛直方向に延びる中心軸回りで複数の異なる軸直角方向のばね定数が設定された異方性のゴムマウントを用いると共に、前記調節手段において、該異方性のゴムマウントの前記マス部材に対する取付方向を、該ゴムマウントの中心軸回りで変更設定し得るようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、ゴムマウントを一軸回りで回転させるだけで、副振動系の特定方向におけるばね定数を、容易に変化させることが可能となるのである。なお、かかる第二の態様において採用される異方性のゴムマウントの構造は、特に、限定されるものでない。具体的には、例えば、マス部材側に取り付けられる第一の取付部材と、建築構造物側に取り付けられる第二の取付部材を、ゴム弾性体によって弾性的に連結した構造のマウントであって、そのゴム弾性体に肉抜穴や貫通スリット等を設けることによって異方性を付与したり、ゴム弾性体で連結される第一の取付部材と第二の取付部材の対向面を傾斜させることによって異方性を付与したり、前記特開平8−338467号公報に記載されているような傾斜板をゴム弾性体内に埋設固着することによって異方性を付与した構造などが、何れも採用可能である。また、ゴムマウントの中心軸とは、一般に、ゴム弾性体に安定した弾性変形が生ぜしめられる荷重入力方向とされ、通常は弾性主軸方向であって、好ましくは、ゴム弾性体に対して圧縮/引張変形が有利に生ぜしめられる方向に設定される。 【0013】更にまた、本発明の第三の態様は、前記第二の態様に係る振動低減装置であって、ばね定数が異方性とされた前記ゴムマウントにおいて、軸直角方向におけるばね定数の最小値と最大値を、互いに直交する方向に設定したことを、特徴とする。このような第三の態様に係る振動低減装置にあっては、異方性のゴムマウントにおいて、取付角度に応じたばね定数の変化量を容易に知ることが可能となることから、ゴムマウントの取付方向の調節による副振動系のチューニング作業が、一層容易となる。 【0014】また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る振動低減装置であって、前記調節手段において、前記ゴムマウントの中心軸の前記マス部材に対する取付方向を変更調節し得るようにしたことを、特徴とする。なお、ゴムマウントの中心軸のマス部材に対する取付方向は、鉛直方向と水平方向の少なくとも一方向において変更調節可能とされていれば良く、ゴムマウントの構造や配設形態等に応じて、目的とする副振動系のばね定数のチューニングが実現出来るように、適宜に設定され得る。このような第四の態様に従う構造とされた振動低減装置においては、軸直角方向のばね特性が、中心軸回りの全方向で一定とされたゴムマウントを用いることによっても、マス部材に対する取付方向を変更することで、副振動系の固有振動数を調節することが可能となる。 【0015】また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の態様に係る振動低減装置であって、前記マス部材の重心を通って水平方向に延びる2本の直交する対称軸を挟んで、それぞれ対称位置するように、前記ゴムマウントの複数個を配設すると共に、前記調節手段により、それらのゴムマウントにおける取付方向を、かかる2本の対称軸を挟んで対称となるように設定可能としたことを、特徴とする。このような第五の態様に係る振動低減装置においては、複数のゴムマウントの取付方向の変更によるバネ部材全体としてのばね定数の調節が容易となると共に、それら複数のゴムマウントの取付方向を変更,調節した場合でも、マス部材の安定性が有利に維持されることにより、目的とする制振効果を安定して得ることが出来る。 【0016】なお、かかる第五の態様において、ゴムマウントのうち各対称軸を挟んで対称位置するもの同志は、互いに同一構造とすることが望ましい。一方、何れの対称軸に関しても対称関係を有しないゴムマウントは、ばね特性や構造が互いに異なっていても良い。また、ゴムマウントにおける取付方向を、2本の対称軸を挟んで対称とする設定は、例えば、何れの対称軸に関しても、その両側で対称位置に配されたゴムマウントを、該対称軸に対する水平方向および鉛直方向での傾斜角度が対称的に同じになるように配設することによって、有利に実現され得る。 【0017】また、かかる第五の態様において、ゴムマウントの配設位置の対称軸としての2本の直交する対称軸は、好ましくはその少なくとも1本、より好ましくはそれらの2本の何れもが、建築構造物において防振すべき振動方向となるように設定される。更に、かかる第五の態様において、望ましくは、ゴムマウントの配設位置の対称軸としての2本の直交する対称軸が、何れも、副振動系全体としての水平方向における弾性主軸として設定される。これにより、副振動系の安定性が更に向上されて、目的とする制振効果をより安定して得ることが可能になると共に、かかる副振動系のチューニングも容易となる。 【0018】また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る振動低減装置であって、前記建築構造物における最上階の天井部分に対して、前記マス部材を前記バネ部材によって弾性支持せしめたことを、特徴とする。このような第六の態様に係る振動低減装置にあっては、余剰空間を比較的容易に確保することが出来る天井上において、スペースを効率的に利用して、副振動系を配設することが可能となると共に、建築構造物の振動モード的にも、副振動系による制振効果を一層有利に得ることが出来る。 【0019】なお、かかる第六の態様において、建築構造物の構造や種類等に応じて、副振動系は、天井部分を構成する任意の部材に取り付けられて装着され得る。具体的には、該副振動系を構成するマス部材とバネ部材は、例えば、各種の梁やスラブ,桁,縁など、各種の部材に取り付けて支持せしめることが可能である。また、副振動系は、一つでも良いが、互いに独立して形成された複数の副振動系を、建築構造物に装着することも、勿論、可能であり、それら各副振動系を、互いに異なる周波数域にチューニングしても良い。 【0020】また、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係る振動低減装置であって、前記調節手段を、前記ゴムマウントの取付方向を変更するためのアクチュエータ手段と、該アクチュエータ手段を作動制御して該ゴムマウントの取付方向を変更するコントロール手段とを含んで構成したことを、特徴とする。このような第七の態様に係る振動低減装置においては、ゴムマウントの取付方向の変更によるチューニング作業が一層容易とされるのであり、副振動系を建築構造物に装着した後に、ゴムマウントの取付方向を変更してチューニングしたり、再チューニングすることも、容易となる。特に、アクチュエータ手段を遠隔操作するリモートコントロール構造のコントロール手段を採用すれば、建築構造物の完成後や住宅の上棟後等にも、施主等が、容易にチューニング修正を行うことが可能となり、例えば、季節や温度等に応じたチューニングの変更を、手動によって、或いはセンサ等を用いて自動的に実施することにより、より高度な制振効果をより安定して得ることが可能となる。 【0021】さらに、本発明の第八の態様は、建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめて副振動系を構成することにより、振動低減装置を得るに際して、前記バネ部材を、前記マス部材に対する取付方向を変更することによって前記副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来るゴムマウントを含んで構成し、該ゴムマウントの取付方向を変更することによって、前記副振動系における水平方向の固有振動数を調節する振動低減装置のチューニング方法を、特徴とする。このようなチューニング方法に従えば、ゴムマウントの構造や配設数等を変更しなくても、副振動系の固有振動数を調節することが出来るのであり、かかる副振動系を、建築構造物の防振しようとする振動に応じて、容易に且つ高い精度でチューニングすることが可能となるのである。 【0022】また、本発明の第九の態様は、前記第八の態様に係るチューニング方法において、前記ゴムマウントを複数個用い、副振動系全体としての水平方向における弾性主軸の方向が維持されるように、それらゴムマウントの取付方向を変更することを、特徴とする。このような第九の態様に係るチューニング方法に従えば、建築構造物の防振しようとする振動が入力された際の副振動系における角度変位乃至はねじれ変位が防止されて、より安定した制振効果が発揮され得る。なお、本態様において、副振動系全体としての弾性主軸とは、副振動系に対して、その軸に沿って荷重が入力された際に、荷重の入力方向と、バネ部材の弾性変形に伴うマス部材の変位方向とが一致し、且つマス部材に回転乃至は角変位が生じないような軸をいう。 【0023】また、本発明の第十の態様は、前記第八又は第九の態様に係るチューニング方法において、前記ゴムマウントとして、略鉛直方向に延びる中心軸回りで複数の異なる軸直角方向のばね定数が設定された異方性のゴムマウントを用いると共に、かかる異方性のゴムマウントとして、ばね定数の大きさが互いに異なる複数種類を予め準備しておき、要求される防振特性に応じて何れかの種類の異方性のゴムマウントを選択することを、特徴とする。このような第十の態様に係るチューニング方法に従えば、限られた種類のゴムマウントだけを準備し、且つその中から適宜に選択したゴムマウントを採用して、その取付方向を変更,調節することによって、極めて広いチューニング範囲を得ることが出来る。特に、一般住宅等では、高層ビルやタワー等に比べて、防振すべき振動の範囲が特定領域に多数分布する傾向があることと、需要量が多いこと等から、このように限られた種類のゴムマウントを予め準備しておくことが、コスト的にも大きな効果を生むことになる。 【0024】また、本発明の第十一の態様は、前記第十の態様に係るチューニング方法において、前記複数種類の異方性のゴムマウントとして、何れも、水平方向のばね定数比が略一定とされたものを準備することを、特徴とする。このような第十一の態様に係るチューニング方法に従えば、複数種類の異方性のゴムマウントによって、より一層広いチューニング範囲の全体を有利にカバーすることが可能となる。 【0025】 【発明の実施の形態】以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。 【0026】先ず、図1には、本発明に従う構造とされた建築構造物用の振動低減装置10の概略が示されていると共に、この振動低減装置10を一般の3階建住宅12に装着した状態の概略が、図2に示されている。かかる振動低減装置10は、マス部材としての質量体14と、該質量体14を弾性支持するバネ部材としての複数個のゴムマウント16から構成されており、図2に示されているように、3階建住宅12における3階の天井を構成する構造部材18上に装着されている。 【0027】より詳細には、質量体14は、金属等の高比重材で形成されており、例えば鉄系や鉛系の金属等で形成されたものが好適に採用される。この質量体14の形状は特に限定されるものでないが、一般に、板形状のものが好適に採用され、より望ましくは、矩形平板形状や多角形平板形状,円形平板形状等、幅寸法よりも高さ寸法が小さく且つ高さが一定の板形状であって、平面的に複数の対称軸を有する形状が望ましい。このような形状の質量体14を採用することにより、振動低減装置10を最上階の天井裏20等のスペースに収容状態で有利に設置することが出来ると共に、水平方向の変位に際して各ゴムマウント16に生ぜしめられる角変位を抑えて安定した吸振作用を得ることが可能となる。特に、本実施形態では、高さ寸法が全体に亘って一定とされた、平面矩形の板形状を有する質量体14が採用されている。 【0028】また、この質量体14の質量は、装着される主振動系たる住宅12の質量や振動状態、構造強度等を考慮して適宜に設定されるものであり、例えば、一般的な2〜3階建の住宅の場合で、100〜1000kg程度、或いはそれ以上の総質量が設定される。なお、総質量とは、全ての質量体14の質量であって、制振効果や住宅構造等を考慮して、単一の振動低減装置10を装着する場合には、該振動低減装置10を構成する一つの質量体14の質量であり、副振動系を複数の振動低減装置によって構成する場合には、全ての振動低減装置における質量体の合計質量として把握される。 【0029】また一方、ゴムマウント16は、何れも水平方向のばね定数が異方性とされており、本実施形態では、同一構造のゴムマウント16が4個採用されている。即ち、かかるゴムマウント16は、図3及び図4に示されているように、第一の取付部材としての第一の取付金具22と、第二の取付部材としての第二の取付金具24が、互いに離間して対向配置されていると共に、それら第一の取付金具22と第二の取付金具24が、両金具22,24の対向面間に介装されたゴム弾性体26で弾性的に連結された構造を有している。そこにおいて、第一の取付金具22は、断面が逆三角形のブロック形状を有しており、その上底面27の中央には、取付ボルト28が突設されている。また、第二の取付金具24は、矩形平板形状を有しており、中央に位置する平板部30を挟んだ長手方向両側が、第一の取付金具22側(図3中、上側)に斜めに立ち上げられて傾斜板部32,32とされている。また、第二の取付金具24における平板部30の中央には、下方(第一の取付金具22と反対側)に突出する取付ボルト34が固設されている。また、第一の取付金具22における両側の各傾斜面36,36と、第二の取付金具24における両側の各傾斜板部32,32は、マウント中心軸38を挟んだ両側において、該マウント中心軸38に対して略同一角度だけ傾斜した方向で、全面に亘って略一定の間隔を隔てて対向位置せしめられている。そして、これら傾斜面36と傾斜板部32の対向面間に、それぞれ、介装された一対の略矩形ブロック形状を有するゴムブロック40,40によって、第一の取付金具22と第二の取付金具24を弾性連結するゴム弾性体26が構成されている。更に、本実施形態では、第二の取付金具24において、平板部30の一方の側面から外方に向かって突出する位置決め片42が一体形成されている。そして、この位置決め片42には、位置固定用のボルト挿通孔44が形成されている。 【0030】すなわち、本実施形態のゴムマウント16は、二つの独立したゴムブロック40,40の単体での弾性主軸が互いに傾斜していることから、図3において、マウント中心軸38に沿って延びる鉛直方向の弾性主軸と、紙面に垂直な方向に延びる水平方向の第一の弾性主軸と、図中の左右方向に延びる水平方向の第二の弾性主軸を有している。このような構造とされたゴムマウント16では、水平方向の第一の弾性主軸の方向で、荷重入力時におけるゴム弾性体26の主たる変形が剪断となって、水平方向におけるばね定数が最小となる一方、水平方向の第二の弾性主軸の方向で、荷重入力時におけるゴム弾性体26の主たる変形が圧縮/引張となって、水平方向におけるばね定数が最大となる。これにより、かかるゴムマウント16では、水平方向におけるばね定数の最小値と最大値が、互いに直交する方向に設定されている。なお、以下の説明では、ばね定数が最小値となる水平方向(図3において、紙面に垂直な方向)を、ゴムマウント16における水平基準方向という。 【0031】そして、かかるゴムマウント16は、その第一の取付金具22が質量体14に対して固着されている。なお、第一の取付金具22は、その取付ボルト28を質量体14に対して直接に螺着固定しても良いが、第一の取付金具22の質量体14に対する取付方向を容易に変更出来るように、例えば、ベアリング機構や摺接プレート機構等を介して、第一の取付金具22を質量体14に取り付けても良い。また、本実施形態では、図1に示されているように、4個のゴムマウント16が、矩形平板形状の質量体14における四隅部分に対して、それぞれ取り付けられている。また一方、ゴムマウント16の第二の取付金具24は、図2に示されているように、その取付ボルト34により、3階建住宅12の最上階の天井の構造部材18に対して、第一の取付金具22と同様、直接に、或いはベアリング機構や摺接プレート機構等を介して、取り付けられている。これにより、3階建住宅12の構造部材18に対して、質量体14が、4個のゴムマウント16を介して、弾性的に取り付けられているのであり、以て、質量体14をマス部材とし、4個のゴムマウント16をバネ部材とする一つの振動系が構成され、この振動系によって、3階建住宅12からなる主振動系に対する副振動系として機能する振動低減装置10が構成されている。 【0032】なお、かかる振動低減装置10の装着状態下では、質量体14が、水平方向に広がる状態で支持されていると共に、各ゴムマウント16は、何れも、そのマウント中心軸が鉛直方向に延びる状態で配設されている。 【0033】また、ゴムマウント16が取り付けられる3階建住宅12の構造部材18には、図5に示されているように、それぞれのゴムマウント16における第二の取付金具24の取付部分に対してボルト穴46が設けられている。そして、第二の取付金具24の位置決め片42に挿通された位置決めボルト48が、このボルト穴46に螺着されることにより、ゴムマウント16の構造部材18および質量体14に対する取付方向(マウント中心軸38回りの周方向位置)が、固定的に決定されるようになっている。ここにおいて、かかるボルト穴46は、マウント中心軸38の回りに略等間隔に複数個(本実施形態では、略90度の範囲に亘って5個)形成されている。これにより、ゴムマウント16をマウント中心軸38の回りに回転させて、位置決め片42に挿通された位置決めボルト48を何れかのボルト穴46に螺着することにより、ゴムマウント16の取付方向を、略22.5度の間隔をもって、任意に変更,設定することが出来るようになっている。 【0034】要するに、本実施形態では、第二の取付金具24に設けられた位置決め片42と、構造部材18に設けられた複数のボルト穴46、および何れかのボルト穴46に螺着されて位置決め片42を構造部材18に位置決め固定する位置決めボルト48を含んで、ゴムマウント16の質量体14および構造部材18に対する取付方向を変更,設定する調節手段が構成されているのである。なお、第一の取付金具22と質量体14の間にも、同様な調節手段を設けても良い。 【0035】ここにおいて、4個のゴムマウント16は、質量体14において互いに直交して水平方向に延びる2本の対称軸X,Yを挟んで、それぞれ対称位置するように配設されている。なお、本実施形態では、質量体14における2本の対称軸X,Yが、何れも、質量体14の水平方向に延びる慣性主軸とされている。また、質量体14と4個のゴムマウント16からなる弾性支持系において、その鉛直方向に延びる弾性主軸が、質量体14の重心を通るように設定されている。具体的には、図1において、第一のゴムマウント16aと第二のゴムマウント16bおよび第三のゴムマウント16cと第四のゴムマウント16dが、第一の対称軸:Xに関して互いに対称位置せしめられていると共に、第一のゴムマウント16aと第三のゴムマウント16cおよび第二のゴムマウント16bと第四のゴムマウント16dが、第二の対称軸:Yに関して互いに対称位置せしめられている。 【0036】また、これら4個のゴムマウント16a〜dは、その取付方向も、質量体14の2本の対称軸X,Yを挟んで、それぞれ対称となるように設定されている。具体的には、図1において、第一の対称軸:Xに関しては、第一のゴムマウント16aの水平基準方向線50aの交角:θxaと第二のゴムマウント16bの水平基準方向線50bの交角:θxbが同一となると共に、第三のゴムマウント16cの水平基準方向線50cの交角:θxcと第二のゴムマウント16dの水平基準方向線50dの交角:θxdが同一となるように設定されている。また、第二の対称軸:Yに関しては、第一のゴムマウント16aの水平基準方向線50aの交角:θyaと第三のゴムマウント16cの水平基準方向線50cの交角:θycが同一となると共に、第二のゴムマウント16bの水平基準方向線50bの交角:θybと第二のゴムマウント16dの水平基準方向線50dの交角:θydが同一となるように設定されている。 【0037】このように4個のゴムマウント16a〜dの取付方向が設定されることにより、ゴムマウント16a〜dの取付方向を変更した場合でも、質量体14と4個のゴムマウント16a〜dで構成された副振動系全体としての水平方向における弾性主軸の方向が、質量体14における第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称軸:Yの方向とに維持されるようになっている。そして、これら第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称軸:Yの方向が、それぞれ、制振対称たる住宅12において防振すべき主たる振動の方向、例えば、平面矩形の枠体構造を有する住宅の場合には各辺に平行な方向となるように、振動低減装置10の住宅12に対する設置方向が設定される。これにより、副振動系を構成する振動低減装置10に対して、防振すべき2方向の振動が、何れも、該振動低減装置における弾性主軸方向に入力されることとなり、それら2方向に入力される各振動に対して、何れも、有効な制振効果が発揮され得るのである。 【0038】また、かかる振動低減装置10においては、上述の如く、水平方向のばね定数が異方性とされたゴムマウント16a〜dをバネ部材として採用したことにより、かかるゴムマウント16a〜dの取付方向を変更することによって、防振すべき振動の入力方向となる2つの弾性主軸方向(第一の対称軸:Xの方向および第二の対称軸:Yの方向)でのばね定数が、何れも、変更されるようになっている。具体的には、本実施形態では、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値が小さくなるに従って、振動低減装置10における第一の対称軸:Xの方向でのばね定数が小さく、第二の対称軸:Yの方向でのばね定数が大きくなる方向に変更される。その結果、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を小さくすることによって、振動低減装置10における第一の対称軸:Xの方向の固有振動数を低周波側に、且つ第二の対称軸:Yの方向の固有振動数を高周波側に、それぞれ移行させることが出来、また、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を大きくすることによって、振動低減装置10における第一の対称軸:Xの方向の固有振動数を高周波側に、且つ第二の対称軸:Yの方向の固有振動数を低周波側に、それぞれ移行させることが出来るのである。 【0039】それ故、上述の如き構造とされた振動低減装置10においては、マス部材としての質量体14とバネ部材としてのゴムマウント16の何れも、変更することなく、単に、ゴムマウント16の取付方向(設置方向)を変更するだけで、装着される住宅12の種類や環境等を考慮し、問題となっている振動に応じてチューニング周波数を調節することが出来るのであり、それによって、有効な制振効果を、容易に且つ高精度に、しかも低コストで得ることが可能となるのである。 【0040】また、前記実施形態では、質量体14を弾性支持するバネ部材が、異方性のゴムマウント16のみによって構成されていると共に、全てのゴムマウント16の取付方向を連動させて変更するようにしたことから、ゴムマウント16の取付方向の変更による副振動系の固有振動数のチューニング幅が、より大きく確保されるといった利点もある。 【0041】なお、上述の如く、一つのゴムマウント16を用い、その取付方向を変更することによって調節することの出来る、振動低減装置10の固有振動数の範囲は、使用するゴムマウント16が有するばね特性によって限界がある。そこで、振動低減装置10においてより大きなチューニング自由度を得るためには、予め、互いに異なるばね特性を有するゴムマウント16を複数種類準備しておき、例えば住宅12の構造等を考慮して、その中から適当なばね特性を有するゴムマウント16を選択して採用することが望ましい。これにより、ゴムマウント16自体のばね特性の選択と、ゴムマウント16の取付方向の調節とを、互いに組み合わせて最適値を選定することにより、振動低減装置10の固有振動数を極めて広い範囲で設定することが可能となり、以て、多種類の建築構造物に対して、有効な制振効果を発揮し得る振動低減装置10を、効率的に提供することが可能となるのである。 【0042】因みに、本実施形態に従う構造とされた振動低減装置10において、質量体14として、400kgの質量を有する平面正方形状のものを採用すると共に、ゴムマウント16として、第一の弾性主軸方向(図3の紙面に垂直な方向)のばね定数:KIが、18000N/m,22000N/m,26000N/m,30000N/m,34000N/m,38000N/m,42000N/mとされた7種類を選択可能とした場合において、各ゴムマウント16の取付方向を変更することによって実現されるチューニング周波数(振動低減装置10における第一の対称軸:Xの方向での固有振動数および第二の対称軸:Yの方向での固有振動数)をシミュレーションした結果を、図6に示す。なお、かかるシミュレーションに際しては、ゴムマウント16として、何れも、第一の弾性主軸方向(図3の紙面に垂直な方向)のばね定数:KIと、第二の弾性主軸方向(図3の左右方向)のばね定数:KIIが、下式を満足するように設定されたものを採用した。また、各ゴムマウント16の取付方向については、第一の対称軸:Xに対する交角:θx (図1参照)を、0〜90度の範囲で変化させた場合について検討した。 KI:KII=1:3【0043】図6に示された結果から明らかなように、7種類のゴムマウント16を準備し、それらを選択的に採用すると共に、選択したゴムマウント16の取付方向を適当に調節することによって、振動低減装置の固有振動数を、一般の2〜3階建住宅で問題となり易い3〜5Hzの周波数の範囲の略全体に亘って、十分に細かいチューニング精度で設定することが可能となる。 【0044】以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定されるものでない。 【0045】例えば、バネ部材として採用されるゴムマウントの数や配設形態等は、何等限定されるものでなく、また、かかるゴムマウントの幾つかは、何れの水平方向でもばね定数が略一定のものであっても良い。 【0046】また、異方性のゴムマウントとしても、その具体的構造は、何等限定されるものでない。参考までに、本発明において採用され得る異方性のゴムマウントの別の具体例を、図7〜13に示す。図7に示されたゴムマウント60は、質量体側に取り付けられる第一の取付金具62が、取付ボルト64が立設された平坦な中央部分66の長手方向両側に、それぞれ斜め下方に向かって延びる傾斜板部68,68が一体形成された屈曲板形状とされている一方、住宅の構造部材側に取り付けられる第二の取付金具70が、山形に屈曲して上方に突出せしめられた中央部分72の両側にボルト孔74を有する平板形状の取付板部76,76が一体形成された屈曲板形状とされている。そして、第一の取付金具62の傾斜板部68,68が、それぞれ、第二の取付金具70における中央部分72の両側斜面78,78に対して、離間して対向位置せしめられており、それらの対向面間に、ゴム弾性体としての一対のゴムブロック80,80が介装されている。このような構造のゴムマウント60においても、前記実施形態に係るゴムマウント(16)と同様に、図7において紙面に垂直な方向に延びる水平方向の第一の弾性主軸の方向で水平方向におけるばね定数が最小となる一方、図中の左右方向に延びる水平方向の第二の弾性主軸の方向で水平方向におけるばね定数が最大となる。従って、このようなゴムマウント60も、前記実施形態において有利に採用され得る。 【0047】また、図8〜9に示されたゴムマウント82は、質量体側に取り付けられる第一の取付金具84が、略逆円錐台形状とされている一方、住宅の構造部材側に取り付けられる第二の取付金具86が、大径の円筒形状とされている。そして、第一の取付金具84の中心軸上で鉛直下方に離間した位置に第二の取付金具86が配設されており、第一の取付金具84の外周面と第二の取付金具86の内周面との径方向対向面間に、中央部分が上方に向かって突出せしめられたテーパ付きの厚肉円環板形状を有するゴム弾性体85が介装されており、該ゴム弾性体85の内周面が第一の取付金具84の外周面に加硫接着されていると共に、ゴム弾性体85の外周面が第二の取付金具86の内周面に加硫接着されている。また、このゴム弾性体85には、第一の取付金具84を径方向一方向に挟んだ両側部分に、それぞれ軸方向に貫通する一対のスリット88,88が形成されている。このような構造のゴムマウント82においても、前記実施形態に係るゴムマウント(16)と同様に、図9中の上下方向で水平方向におけるばね定数が最小となる一方、図9中の左右方向で水平方向におけるばね定数が最大となる。従って、このようなゴムマウント82も、前記実施形態において有利に採用され得る。 【0048】また、図10〜11に示されたゴムマウント90は、質量体側に取り付けられる第一の取付金具92が、大径円筒形状とされている一方、住宅の構造部材側に取り付けられる第二の取付金具94が、小径の円筒形状を有している。そして、第二の取付金具94の径方向外方に離間して、且つ鉛直方向(図10,11中の上下方向)に偏心して第一の取付金具92が配設されている。なお、第二の取付金具94には、外周面上において水平方向両側に突出する平板形状のリテーナ96,96が固設されている。そして、これら第一の取付金具92と第二の取付金具94の径方向対向面間に、全体として略厚肉の円板形状を有するゴム弾性体98が介装されており、該ゴム弾性体98の外周面が第一の取付金具92の内周面に加硫接着されていると共に、ゴム弾性体98の内周面が第二の取付金具94の外周面に加硫接着されている。また、このゴム弾性体98には、第二の取付金具94を鉛直方向に挟んだ両側部分に、それぞれ軸方向に貫通する一対のスリット100,102が形成されており、質量体の重量作用時における引張応力が軽減されるようになっている。なお、図示された外力が及ぼされていない状況下では、上側のスリット100が大きく開口し、下側のスリット102が上下に潰れた形状となっているが、質量体の重量が作用することにより、ゴム弾性体98の弾性変形に伴って、上下のスリット100,102が、略同じ大きさとなるようにされている。このような構造のゴムマウント90においても、前記実施形態に係るゴムマウント(16)と同様に、図11中の左右方向(マウント軸方向)で水平方向におけるばね定数が最小となる一方、図10中の左右方向(マウント軸直角方向)で水平方向におけるばね定数が最大となる。従って、このようなゴムマウント90も、前記実施形態において有利に採用され得る。 【0049】また、図12〜13に示されたゴムマウント106は、それぞれ矩形平板形状を有し、互いに離間して対向配置された第一の取付金具108と第二の取付金具110を有していると共に、それら第一の取付金具108と第二の取付金具110の対向面間に矩形ブロック形状のゴム弾性体112が介装されている。そして、このゴム弾性体112の上下端面に、第一の取付金具108と第二の取付金具110がそれぞれ加硫接着されており、以て、第一の取付金具108と第二の取付金具110が本体ゴム弾性体112によって弾性的に連結されている。また、これら第一の取付金具108と第二の取付金具110には、各中央部分から上下外方に突出する取付ボルト114,116が固設されており、これらの取付ボルト114,116によって、第一の取付金具108が質量体側に取り付けられると共に、第二の取付金具110が住宅の構造部材側に取り付けられるようになっている。なお、かかるゴムマウント106は、そのマウント中心軸が略鉛直方向に延びる状態で装着せしめられ、装着状態下、第一の取付金具108と第二の取付金具110が、略鉛直方向で対向位置せしめられる。ここにおいて、本体ゴム弾性体112は、図13に示されているように、その水平方向の切断面において、辺長:aの短辺と辺長:bの長辺からなる長手矩形状を有している。このように隣接する2辺の長さが異なる本体ゴム弾性体112を採用したことによって、本実施形態のゴムマウント106においても、剪断変形に際して本体ゴム弾性体112に生ぜしめられる曲げ変形に対する変形し易さの違いから、図13中の上下方向(本体ゴム弾性体112における一対の長辺の対向方向)で水平方向におけるばね定数が最小となる一方、図13中の左右方向(本体ゴム弾性体112における一対の短辺の対向方向)で水平方向におけるばね定数が最大となる。従って、このようなゴムマウント106も、前記実施形態のゴムマウント106と同様な特性を有しており、前記実施形態において有利に採用され得る。 【0050】さらに、本発明においては、上述の如き異方性のゴムマウントの他、マウント中心軸に直交する軸直角方向のばね定数が何れの方向でも略一定とされたゴムマウントを採用することも可能である。例えば、図14〜15に示されているように、それぞれ円板形状を有し、軸方向で互いに離間して対向配置された第一の取付金具120と第二の取付金具122を、それらの対向面間に介装された円形ブロック形状のゴム弾性体124によって弾性的に連結せしめた構造のゴムマウント126を採用することも可能である。そして、かかるゴムマウント126は、第一の取付金具120から軸方向外方(上方)に突設された第一の取付軸128が、質量体14に対して、水平方向に延びる回動軸130の回りに揺動可能に取り付けられていると共に、第二の取付金具122から軸方向外方(下方)に突設された第二の取付軸132が、住宅の構造部材18に固設されたブラケット134によって、ゴムマウント126における回動軸130回りの任意の回動状態においてボルト固定されるようになっている。要するに、ブラケット134には、回動軸130を中心とする円弧上に複数の位置決め孔136が貫設されており、何れかの位置決め孔136に挿通される固定ボルト138によって、ゴムマウント126の第二の取付軸132が固定的に支持されるようになっいる。そして、この第二の取付軸132のブラケット134に対するボルト固定位置を調節することによって、質量体14を構造部材18に対して弾性的に支持するゴムマウント126の中心軸140の鉛直線に対する傾斜角度:αが変更設定可能とされているのである。換言すれば、かかるゴムマウント126は、一つの鉛直面内で、回動軸130を中心として取付方向を調節可能とされているのである。 【0051】すなわち、このような構造とされたゴムマウント126においては、その取付方向としての傾斜角度:αを変更することによって、副振動系における水平方向のばね定数を変更することが出来るのであり、αの値を小さくしてゴムマウント126の中心軸を鉛直方向に近づける程、質量体14の水平方向の変位に際してのゴム弾性体124の変形が剪断変形を主とするものとなって、水平方向のばね定数が小さくされる一方、αの値を大きくしてゴムマウント126の中心軸を水平方向に近づける程、質量体14の水平方向の変位に際してのゴム弾性体124の変形が圧縮/引張変形を主とするものとなって、水平方向のばね定数が大きくされる。それ故、このようなゴムマウント126も、前記実施形態において有利に採用され得るのである。 【0052】なお、かくの如きゴムマウント126は、その取付方向の変更に際しても、副振動系における水平方向の弾性主軸が一定に維持されるようにすることが望ましい。そのために、望ましくは、複数個のゴムマウント126を、質量体14の重心:Oを通って水平方向に延びる2本の直交する対称軸としての弾性主軸:X,Yを挟んで、それぞれ対称位置するように配設すると共に、それらのゴムマウント126における取付方向を、かかる2本の弾性主軸:X,Yを挟んで対称となるように設定する。 【0053】より具体的には、例えば、図15に示されているように、X軸を含む鉛直平面と平行な鉛直平面上でマウント中心軸の傾斜角度が変更調節可能とされた2対のゴムマウント126a〜dと、Y軸を含む鉛直平面と平行な鉛直平面上でマウント中心軸の傾斜角度が変更調節可能とされた2対のゴムマウント126e〜hを配設し、一方の対を為すゴムマウント126a〜dの傾斜角度を互いに同一に設定すると共に、他方の対を為すゴムマウント126e〜hの傾斜角度を互いに同一に設定することによって、副振動系における水平方向の弾性主軸を一定に維持しつつ、水平方向の各弾性主軸方向でのばね定数を有利に変更調節することが可能となる。特に、図15に記載のマウント配置形態を採用すれば、一方の弾性主軸:X方向でのばね定数と、他方の弾性主軸:Y方向でのばね定数を、互いに独立的に設定することが出来るといった利点がある。 【0054】或いはまた、図16に示されているように、質量体14の重心:Oを通る2本の弾性主軸:X,Yを挟んで対称となるように、合計4個のゴムマウント126a〜dを配設し、各ゴムマウント126a〜dの質量体14に対する取付方向を、2本の弾性主軸:X,Yに対する傾斜角度の対象性を維持しつつ、鉛直方向および水平方向に調節することによって、両弾性主軸:X,Y方向のばね定数を同時に設定することも可能である。 【0055】更にまた、図16に示されたゴムマウント126a〜dの配設形態を採用する場合でも、各ゴムマウント126a〜dを、Y方向には回転させないで(水平方向には傾斜角度を変化させないで)、X軸を含む鉛直平面上だけでマウント中心軸の傾斜角度を変更することによっても、副振動系における水平二方向(X軸方向とY軸方向)でのばね定数比率(固有振動数比)を変更チューニングすることが可能である。けだし、図14において、ゴムマウント126の傾斜角度(α)を鉛直面内で変化させた場合のばね定数の変化は、紙面に左右方向で大きく、紙面に垂直な方向では、ゴムマウント126のゴム弾性体124における弾性変形が剪断変形を主とするものであって、紙面に垂直な方向よりも小さいことから、ゴムマウント126の傾斜角度(α)を鉛直面内だけで変化させて大きくすることによって、副振動系における水平二方向(X軸方向とY軸方向)でのばね定数比率を大きくすることが可能となるのである。 【0056】さらに、質量体14の構造部材18に対する変位に際して減衰力を及ぼし得る減衰器も、必要に応じて採用可能である。 【0057】また、振動低減装置10の配設位置も、例示の如き最上階の天井部分の他、床下部分等、建築構造物の構造や振動モード等を考慮して、適宜に変更可能である。 【0058】加えて、本発明は、例示の如き3階建の住宅の他、1階建や2階建、或いは4階建以上の住宅、或いは倉庫やビル,タワー等、各種の建築構造物用の振動低減装置に対して、何れも適用可能であることは、言うまでもない。 【0059】その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。 【0060】 【発明の効果】上述の説明から明らかなように、本発明に従えば、ゴムマウントの取付方向を変更することによって、副振動系の固有振動数を容易に且つ高精度にチューニングすることが出来るのであり、それ故、建築構造物において防振すべき振動に対して良好な制振効果を容易に且つ安定して得ることが可能となるのである。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000219602 【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年12月28日(1998.12.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078190 【弁理士】 【氏名又は名称】中島 三千雄 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−193019(P2000−193019A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月14日(2000.7.14) |
| 【出願番号】 |
特願平10−373940 |
|