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【発明の名称】 防振装置
【発明者】 【氏名】小島 宏

【要約】 【課題】リベツトにより閉止される液体充填口内のシール性を向上し、かつシール性の低下を長期的に防止する。

【解決手段】Oリング108の内径R1 はシールドリベット102の軸部104の外径R2 より小さくされており、軸部104の外周面へ嵌挿されたOリング108は周方向に沿って引張変形が生じる。またOリング108は、頭部105の閉止面105A及び座ぐり部32Cの上面により周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように軸方向へ圧縮されている。これにより、Oリング108は、弾性的な復元力により軸部104の外周面、頭部105の閉止面105及び座ぐり部32Cの上面へそれぞれ圧着する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 密封液室及び前記密封液室内へ連通する液体充填口が設けられる防振装置へ適用され、前記密封液室への液体充填後に液室外部側から前記液体充填口内へ嵌挿されるリベツト軸部及び、前記液体充填口の内径より大径とされたリベツト頭部が一体的に形成されたシールドリベツトと、弾性材料によりリング状に形成され、周方向に沿って引張変形が生じるように前記リベツト軸部の外周面へ嵌挿されると共に、前記リベツト頭部及び前記液体充填口の周縁部により軸方向へ圧縮変形されるシール部材と、を有することを特徴とする防振装置。
【請求項2】 前記シール部材は、周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように前記リベツト頭部及び前記液体充填口の周縁部により圧縮されることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、一般産業用機械のエンジンマウント等として適用される防振装置に係り、特に密封液室及び密封液室の内外を連通する液体充填口が設けられた防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】密封液室が設けられる防振装置が用いられている。この防振装置では密封液室がオリフイスを介して複数の小液室に区画されており、振動時に液体がオリフイスを通過する場合の抵抗によって振動を吸収するようになっている。この液室が設けられた防振装置を製作する場合には、例えば、装置の外壁面に開口し密封液室内へ連通した液体充填口を通して密封液室内へエチレングリコール等の液体を充填した後に、この液体充填口を金属製のリベットで閉止する。このとき、リベット頭部には、外壁部へ対向する面である閉止面に液状パッキンが塗布されており、リベツト軸部は、頭部の閉止面が液状パッキンを介して外壁面へ密着する深さまで液体充填口の密封液室側へ嵌挿される。このような液状パッキンは、例えば、一定時間経過後に硬化又は粘性が増加してリベツト頭部と外壁部との間にシール膜を形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のように液状パッキンによりリベツト頭部と外壁面との間をシールする場合には、リベツト頭部が外壁面に対して僅かにでも傾いていたり、リベツト頭部の閉止面又は液体充填口の周縁部が十分平滑にされていなかったりすると、シール性が不安定になり、密封液室内の液体から大きな液圧が作用したときに液漏れが発生するおそれがある。また液状パッキンにより形成されたシール膜は、長期的には振動や密封液室内からの液圧によりリベツトが回転したり、軸方向へ僅かにでも変位したりすると、リベツト頭部の閉止面又は外壁面から剥離してシール性が著しく低下する。
【0004】本発明の目的は、上記事実を考慮し、リベツトにより閉止される液体充填口内のシール性を向上でき、かつシール性の低下を長期的に防止できる防振装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の防振装置は、密封液室及び前記密封液室内へ連通する液体充填口が設けられる防振装置へ適用され、前記密封液室への液体充填後に液室外部側から前記液体充填口内へ嵌挿されるリベツト軸部及び、前記液体充填口の内径より大径とされたリベツト頭部が一体的に形成されたシールドリベツトと、弾性材料によりリング状に形成され、周方向に沿って引張変形が生じるように前記リベツト軸部の外周面へ嵌挿されると共に、前記リベツト頭部及び前記液体充填口の周縁部により軸方向へ圧縮変形されるシール部材と、を有するものである。
【0006】上記構成の防振装置によれば、弾性材料によりリング状に形成されたシール部材が周方向に沿って引張変形が生じるようにリベツト軸部の外周面へ嵌挿されると共に、リベツト頭部及び液体充填口の周縁部により軸方向へ圧縮変形されることにより、シール部材の引張変形に伴って生じる弾性的な復元力によりシール部材の内周部がリベツト軸部の外周面へ圧着すると共に、シール部材の圧縮変形に伴って生じる弾性的な復元力によりシール部材の上端部及び下端部がそれぞれリベツト頭部及び液体充填口の周縁部へ圧着するので、シール部材を高い面圧でリベツト軸部の外周面、リベツト頭部及び液体充填口の周縁部へ圧着でき、かつシール部材の径方向への変位を確実に防止できる。
【0007】この結果、密封液室内から高い液圧がシール部材へ作用した場合にも、シール部材とリベツト軸部の外周面との間、並びにシール部材とリベツト頭部との間及びシール部材と液体充填口の周縁部との間にそれぞれ隙間が生じないため、シール部材により密封液室からの液漏れを確実に防止できる。
【0008】請求項2記載の防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記シール部材は、周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように前記リベツト頭部及び前記液体充填口の周縁部により圧縮されるものである。
【0009】上記構成の防振装置によれば、シール部材の圧縮変形に伴って生じる弾性的な復元力の大きさが周方向において均一になるので、シール部材の上端部及び下端部とリベツト頭部及び液体充填口との間の面圧の大きさも周方向において均一になり、シール部材によるシール性が安定し、またシール部材の内部応力が周方向において均一に分布するので、局部的な内部応力の増加によるシール部材の寿命低下が防止される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態に係る防振装置を図面を参照して説明する。
【0011】図2には本発明が適用される防振装置10が示されている。この防振装置10では、装置下端部へ配置されたベースプレート12の中央部へ取付ボルト14が固着垂下されており、この取付ボルト14を介してベースプレート12が図示しない車両の車体へと固着されるようになっている。
【0012】ベースプレート12の外周部はテーパー状に屈曲された立上り部12Aとされ、この立上り部12Aの先端は半径方向に突出された平板部12Bとされ、更にこの平板部12Bの先端部は筒状に屈曲された案内部12Cとなっている。平板部12B上にはダイヤフラム16の外周部が載置され、ベースプレート12との間を空気室17としている。
【0013】更にこのダイヤフラム16の外周部付近には上隔壁板18及び下隔壁板22の外周部付近が載置されている。また案内部12Cの外周部には固定外筒24が配置され、この固定外筒24の下端部は平板部12Bの下面へとかしめられるかしめ部24Aとされている。この固定外筒24の上端部はコ字形の受部24Bとされており、ストツパプレート26の開口内周面へかしめられている。
【0014】このストツパプレート26と固定外筒24とのかしめ部にはゴム等の弾性体で形成される支持筒28の下端部が固着されている。この支持筒28の上端部はトツププレート32へ固着されており、このトツププレート32へ固着立設された取付ボルト34が図示しないエンジンへ固着されることによって、この防振装置10がエンジンを車体へ支持するようになっている。
【0015】支持筒28の内周部、トツププレート32及びダイヤフラム16によって形成される内部空間は水、オイル等が充填される液室36であり、この液室36は上隔壁板18及び下隔壁板22によって上小液室36Aと下小液室36Bとに区画されている。
【0016】下隔壁板22は外周部が直角に屈曲された筒状部22Aとされ、この筒状部22Aの下端部が更に半径方向に突出されたフランジ部22Bとされている。また上隔壁板18も同様に外周部から筒状部18Aが延長され、この筒状部18Aの先端部が半径方向に突出されたフランジ部18Bとなっている。このフランジ部18Bはフランジ部22Bと重ね合され、ダイヤフラム16の外周部と支持筒28の下端部との間に挾持されている。筒状部22Aと筒状部18Aとの間には防振装置10の軸心回りにリング形状とされた隙間が形成され、オリフイス42となっている。
【0017】このオリフイス42は上隔壁板18に形成される円孔44及び下隔壁板22の筒状部22Aに形成される円孔46を介して上小液室36A及び下小液室36Bと各々連通されている。これによって上小液室36Aと下小液室36Bとはオリフイス42を介して互いに連通されることになる。このオリフイス42は円孔44から円孔46へ至る液体が防振装置10の軸回りに何れの方向を回っても移動可能であるが、防振装置10の軸回りに一方のみ移動可能なように円孔44の一部を閉塞してもよい。
【0018】上隔壁板18の内周部からは断面略L字形の保持アーム18Cが突出され、下隔壁板22との間にゴム製の振動板48を保持している。この振動板48は保持アーム18Cの開口部を通して、及び下隔壁板22に形成される多数の小孔52を介して高周波振動時に上小液室36A及び下小液室36Bの圧力変化を受けるようになっている。すなわち振動板48の周囲は保持アーム18Cの内周面へ加硫接着されており、振動板48は下隔壁板22又は保持アーム18Cへ当たるまで弾性変形可能となっている。
【0019】なおトツププレート32の外周端部にはアーム32A、32Bが突出しており、アーム32Bはストツパプレート26との間に弾性体56が掛け渡されてベースプレート12とトツププレート32との図2の左右方向の移動量を制限している。
【0020】トツププレート32には液体注入部62が設けられている。図1(A)に示されるように、液体注入部62はトツププレート32に液体充填口100が形成され、この液体充填口100へシールドリベット102が適用されて密閉されるようになっている。またトツププレート32の上面には、液体充填口100の周縁部を円形凹状とする座ぐり部32Cが形成されている。シールドリベット102は上小液室36Aの外部から図1(B)に示されるように有底筒状の軸部104を挿入し、この軸部104の一端に形成された円形鍔状の頭部105をトツププレート32へ押圧しつつ、このシールドリベット102内へあらかじめ挿入してある引抜軸106を引き抜くことによって第1図(C)に示されるように引抜軸106の拡径筒部106Aで軸部104の先端部である底部を塑性変形させて拡径部104Bとするようになっている。この拡径部104Bは軸部104の下端部に形成されて軸部104を閉止している。
【0021】また、この引抜軸106の引き抜き力で引抜軸106の中間部に設けた小径部106B付近から引抜軸106を破断するようになっている。
【0022】シールドリベット102の軸部104の外周面には、液体充填口100へ挿入される際にゴム製のOリング108が嵌挿される。このOリング108は、頭部105の下面である閉止面105Aとトツププレート32の座ぐり部32Cの上面とにより挟持され、軸方向へ圧縮される。このとき、頭部105の閉止面105A及び座ぐり部32Cの上面は、それぞれ十分平滑となるように加工されており、閉止面105Aは座ぐり部32Cの上面と平行となるように設けられている。これにより、閉止面105Aと座ぐり部32Cとにより軸方向へ圧縮されるOリング108は、その圧縮変形量が周方向へ均一に分布する。閉止面105Aと座ぐり部32Cとにより圧縮されたOリング108は、圧縮前には円形であったOリング108の断面形状が図1(B)に示されるように軸方向へ弾性変形して偏平な板状となる。但し、トツププレート32上面からのシールドリベット102の突出長が多少大きくても問題とならない場合には、液体充填口100の周縁部に座ぐり部32Cを形成する必要はなく、またトツププレート32上面からのシールドリベット102の突出長を減少させたい場合には、座ぐり部32Cを深く形成すればよい。
【0023】さらにOリング108は、図1(A)に示されるように内径R1 がシールドリベット102の軸部104の外径R2 より小さいものが選択される。具体的には、Oリング108の内径R1 は、材質や断面積等に応じて次式により規定される範囲内で選択される。
【0024】R1 =R2 ×0.40〜0.95上式及びOリング108の標準規格(JIS B2401)等を考慮すると、Oリング108の内径R1 は、例えば、軸部104の外径R2 =3.2mmである場合にはR1 =1.80〜2.80mm、R2 =4.0mmである場合にはR1 =2.00〜3.55mm、R2 =4.8mmである場合にはR1 =2.50〜4.50mmとなる。これにより、Oリング108は、軸部104の外周面へ嵌挿された状態では周方向に沿って引張変形が生じるように弾性変形している。
【0025】従って、Oリング108は、図1(D)に示されるように弾性変形されて頭部105と座ぐり部32Cとの間に介在することにより、頭部105とトツププレート32との間をシール状態に維持してシールドリベット102と液体充填口100との間から液室36内の液体が洩れ出すのを防止している。
【0026】また、本実施形態の防振装置10では、シール部材であるOリングが耐オゾン性が付与されたゴム材料により形成されている。このようなゴム材料としては、例えばHNBR(水素化ニトリルゴム)を使用する。HNBRは、Pb 系又はRh 系の触媒を用いてNBR(アクリルニトリルブタジエンゴム)の炭素・炭素二重結合を選択的に水素化したものものである。このHNBRでは、オゾン分子が二重結合した炭素と反応して、オゾン分子によりゴム分子鎖が切断されることがなくなる。これにより、NBR等の二重結合した炭素が存在するゴム原料と比較し、HNBRには極めて高い耐オゾン性が付与される。
【0027】また、HNBR以外にも二重結合した炭素が存在しない、又は二重結合した炭素が微量しか存在しないゴム原料であれば、耐オゾン性が高くOリング108の素材としては適している。この条件に合致するゴム原料としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、多硫化ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ヒドリンゴム等を選択できる。
【0028】次に本実施形態の防振装置10による作用を説明する。
【0029】図2に示されるように防振装置10の液室36内へ液体充填口100を通して液体を充填した後にシールドリベット102を適用してこの液体充填口100を密閉する。
【0030】図1に示されるように液体充填口100へ挿入されたシールドリベット102は引抜軸106を引き抜くことによって拡径筒部106Aが拡径部104Bを形成して軸部104をトツププレート32へ固定する。このとき、Oリング108はシールドリベット102の頭部105と座ぐり部32Cとのをシールするので、上小液室36A内の液体が液体充填口100を通して外部へ洩れ出すことはない。
【0031】液体が充填された防振装置10は取付ボルト14を車体へ取付け、取付ボルト34を用いてトツププレート32へエンジンを固定すれば車両への組付状態となる。エンジンの振動時には上小液室36A、下小液室36B内の液体がオリフイス42を通して移動する場合の通過抵抗で振動が吸収される。また振動周波数が高くなるとオリフイス42が目詰まり状態となる。この場合には振動板48が上小液室36A、下小液室36Bの圧力変化に応じて微小移動するので液室36内の圧力増大が回避されて動ばねの上昇が抑制される。このような振動吸収時にも液室36内には残存空気が存在しないので効果的な振動吸収が可能である。
【0032】また、本実施形態の防振装置10によれば、Oリング108が周方向に沿って引張変形が生じるようにシールドリベット102の軸部104の外周面へ嵌挿されると共に、頭部105の閉止面105A及び座ぐり部32Cにより周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように軸方向へ圧縮変形されることにより、Oリング108の引張変形に伴って生じる弾性的な復元力によりOリング108の内周部が軸部104の外周面へ圧着すると共に、Oリング108の圧縮変形に伴って生じる弾性的な復元力によりOリング108の上端部及び下端部がそれぞれ頭部105の閉止面105及び座ぐり部32Cの上面へ圧着するので、Oリング108を高い面圧で軸部104の外周面、頭部105の閉止面及び液体充填口100の周縁部である座ぐり部32Cの上面へ圧着でき、かつOリング108の径方向への変位を確実に防止できる。
【0033】この結果、液室36内の液体から高い液圧がOリング108へ作用した場合にも、Oリング108と軸部104の外周面との間、並びにOリング108と頭部105の閉止面105Aとの間及びOリング10座ぐり部32Cの上面の間にそれぞれ隙間が生じないため、Oリング108により液室36内からの液漏れを確実に防止できる。
【0034】本実施形態の防振装置10では、Oリング108が周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように頭部105及び座ぐり部32Cにより圧縮されていることにより、Oリング108の圧縮変形に伴って生じる弾性的な復元力の大きさが周方向において均一になるので、Oリング108の上端部及び下端部と頭部105の閉止面105A及び座ぐり部32Cの上面との間の面圧の大きさも周方向において均一になり、Oリング108によるシール性が安定する。
【0035】また防振装置10がオゾンが高濃度となる自動車のエンジンルーム内にて使用される場合には、内部応力の増加、すなわち弾性変形量の増加はOリング108のオゾン劣化を促進するが、上記したようにOリング108が周方向に沿った圧縮変形量が均一になるように頭部105及び座ぐり部32Cにより圧縮されていることにより、Oリング108に局部的に大きな内部応力が生じることを防止でき、さらにOリング108が耐オゾン性が高いHNBRにより形成されていることから、Oリング108全体としての引張変形量及び圧縮変形量を大きくしても、Oリング108にはオゾン劣化による亀裂が長期間に亘って発生せず、Oリング108の亀裂からの液漏れを長期間に亘って防止できる。
【0036】なお、本実施形態の防振装置10では、断面が円形とされたOリング108をシール部材として用いたが、Oリング108の断面は円形に限定されるものではなく、楕円形や矩形等でもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明の防振装置によれば、リベツトにより閉止される液体充填口内のシール性を向上でき、かつシール性の低下を長期的に防止できる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【出願日】 平成10年12月25日(1998.12.25)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2000−193017(P2000−193017A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−370165